5/7 第2話『LBXを狩る者』のあとがきに、本作品におけるAC(アーマークラス)の扱いについて説明を追加しました。
「やったぁ……リュウセイくんが勝った!」
「っシャアッ! いよっし! 良いぞリュウセイ!」
時は少し遡り………とある病院の一室で、テレビを前に可憐な少女といかついオッサンが子供のようにはしゃいでいた。
テレビに映っているのはLBX世界大会アルテミスのEブロック決勝の様子。映っているのはLBXの様子だけであり、プレイヤーの様子は映らなかった為に、灰原ユウヤが倒れた事に二人は気付かない。
「しっかし流石だぜリュウセイのヤツ。あのジャッジとかいうLBXだって相当強かっただろうに、蓋開けてみりゃ無傷での完全勝利だぜ」
「リュウセイくん………ほんとに強いんだね」
「当ったり前よ。なんたって今までの公式戦無敗のバケモンだぜ?」
「あはは。どうしてガトーさんが自慢気なの?」
「アイツとは長い付き合いだからよ、ついつい自慢したくなっちまうんだよ」
ガトーは穏やかな目でテーブルの上の愛機『ブルド改』を眺め、腕を組んだ。
「俺もアルテミス出場したかったんだがなぁ………まさか予選落ちするたぁ思わなかったぜ」
「ガトーさんの………ぶるど? でしたっけ。とても強そうなのに、それでも勝てないんですね」
「ハハッ。ルナちゃん、問題なのは機体の性能じゃねぇんだ。リュウセイならデクーでだってあのジャッジに勝ってただろうさ。単に俺の腕が足りてなかったってだけよ」
「でも、リュウセイ君は『ガトーさんは強い』って……」
そう言って首を傾げるルナを見て、ガトーはベッドの上の彼女へと身体を向けてその頭をわしわしと撫でた。突然頭を撫でられて恥ずかしかったのか、ルナは目を細める。
「そういやぁ……例のヤツ、認可も下りてあと数日で手術予定日なんだってな。アイツも頑張ってるし、ルナちゃんも頑張るんだぜ」
「うん、頑張るよ。それに………約束、したんだ」
「約束? 誰と?」
「リュウセイくんと」
ルナは今まで毎日、セイリュウが静かに佇んでいた窓辺を眺め、頬をほんのりと赤く染める。
「リュウセイくんがね…………私が、元気になったら、LBXを買ってくれるって」
「へぇ! ついにルナちゃんも自分のLBXが手に入るってワケだ。ルナちゃんずっと欲しがってたもんなぁ。何だよ、リュウセイのやつ、優しいじゃねぇか」
「えへへ………だからね、お願いしたんだ。リュウセイくんのLBXと同じ、青いLBXが欲しいって。そしたらリュウセイ君、すぐに頷いてくれた」
「そうか。それじゃあ尚更頑張って元気にならねぇとな。おじさんもルナちゃんとバトル出来るのを楽しみにしてるぜ」
「うん! 頑張るね、ガトーさん!」
そうして、彼女は花が咲いたような笑みを見せた。会ったばかりの頃からは、考えられないような明るい笑顔で、ガトーは思わず自分の頬が緩むのを感じた。
あと数日で石森ルナは健康な身体を手に入れる。この事はイノベーターに潜入している仲間から石森里奈へと伝えられ、彼女は思い残すことも無く、アンドロイドの海道義光を銃で撃つ事も無くイノベーターから脱出する事が出来るだろう。
原作よりも早い時点で石森ルナは健康になり、石森里奈は何の後ろめたさも無く彼女とまた暮らす事が出来る。リュウセイの思い描く、一つの幸せの形だった。
『いよいよクライマックス!! 世界一のLBXを決めるアルテミス・ファイナルステージ!!』
スタジアム中央、決勝戦の舞台になるジオラマを囲むようにして、全員が背を向けて並んだ。客席からは歓声や、応援しているLBXプレイヤーの名を叫ぶ声が聞こえる。
『さぁ、ご覧ください! 激戦を勝ち抜いてきたファイナリストの勇姿を!』
今までただの一度さえ勝てた事の無い相手、虎杖ハクビとの戦いを前にして、収まらない緊張をどうにかしようと関係の無いことに意識を巡らせた。
例えば、観客達が応援するLBXプレイヤーは、やはり海道ジンが多いな、なんていう事。例えば、今やハクビと同じく敵になったヒスイとグレンはどうしているかな、なんて事。
『まずは『秒殺の皇帝』の異名を持つ天才LBXプレイヤー、海道ジン! LBXはエンペラーM2!』
しかしそんな関係の無い事を考えようとしても、思考は虎杖ハクビへと傾いていき、臆病に心臓を脈動させた。これまで幾度と大会に出場し、ただの一度さえ緊張してこなかった筈が、最強のライバルを相手にして身体が危険を訴えている。
『次はまさかのダークホース! 無名にも関わらず、圧倒的な実力で並み居る優勝候補を蹴散らしてきた! 彼の快進撃は止まらない、虎杖ハクビ! LBXはビャッコ!』
彼の名前がMCによって叫ばれる。
僕からすれば彼は、現時点では機体性能の差もあり、海道ジンすら寄せ付けぬ最強のLBXプレイヤー。しかし何も知らない観客達からすれば、数々の優勝候補をなぎ倒してきた、恐ろしく強いだけの普通の少年だ。
観客達は予想外のヒーローの登場に沸き立った。
『続いて、驚異のルーキー!! 期待の超新星!! 山野バン!! LBXはアキレス!!』
山野バン。いずれ全てのLBXプレイヤーの頂点に立つ、最強の主人公。現時点では、僕が守らなければならない希望でもある。この決勝戦の舞台で、僕はマスクドJにかわって彼のプラチナカプセルにLBX【オーディーン】の設計図を送らなければならない。
『さらに、自称、愛と平和のLBXバトラー!! ユジン!! またの名をオタクロスの弟子!! 彼は勝利して本物のヒーローになれるのか!? LBXはビビンバードX!!』
「オタレンジャー・オタレッド参上! この世に悪がある限り、私の戦いは終わらない! アルテミスの平和は俺が守る!!」
『…………』
満を持して名乗りを上げたのは、アキハバラの平和を守る正義のLBXプレイヤー集団オタレンジャーのリーダー、オタレッドのユジン。原作のアルテミス決勝では、サイコスキャニングモードになったジャッジに倒されるだけのちょい役だった彼だが、僕にとっては違う。僕と共にイノベーターと戦う仲間として自分から進み出てくれた友人であり、優勝を狙って競い会うライバルの一人だ。
『さ、さぁ気を取り直して、ラストは遂に世界大会にも姿を表したこの男! 決勝戦までただの一度さえ本体への攻撃を許さず、無傷で勝ち上がってきた! 付けられた異名は『無敗の龍神』、青柳リュウセイ! LBXはセイリュウ!』
自分の名を呼ばれ、汗の滲む手を握り締めた。緊張している暇なんてもう無い。LBXさえ揃っていればこのような事にはならなかったのだが、恐らく現時点で虎杖ハクビに対抗し得る選手は僕一人。僕が虎杖ハクビを倒せなければ、間違いなく最後に残るのは彼だ。
『ファイナルステージは生き残りをかけたバトルロワイヤル! 自分以外は全て敵という状況の中で、最後まで生き残った者が勝者となる過酷なサバイバルバトル!! 優勝し、勝利の栄光と、超高性能CPU『メタナスGX』を手中に納めるのは果たして誰なのか!!』
手のひらの上のセイリュウを見下ろして、視線をあわせた。ただの機械でしかないセイリュウが何の反応も示すことは無いとわかってはいたが、運命の大一番を前にして長年の相棒は何を感じているのだろうかと、そんな事を思う。
『それでは、第三回LBX世界大会アルテミス・ファイナルステージ!! バトルロワイヤル、まもなくスタートです!!』
MCの言葉が終わった瞬間、フィールドを囲んでいた選手達は一斉に振り返り、フィールドへとそれぞれのLBXを投下した。
アルテミス決勝戦に選ばれたフィールドは『火山』。奇しくも前回、虎杖ハクビと戦ったフィールドと同じフィールド。
一つのフィールドに、各ブロックをここまで勝ち上がってきたLBXが揃う光景は圧巻だった。
皇帝をイメージして作られた紫色のLBX、エンペラーM2。
五つの金色の目を妖しく光らせる白いLBX、ビャッコ。
聖騎士をモチーフにして作られたトリコロールカラーのLBX、アキレス。
人々の平和を守るヒーローをイメージして作られた赤きLBX、ビビンバードX。
そして、燃えたぎる炎をイメージしたクリアパーツを光らせる青きLBX、セイリュウ。
ふと視線を感じて顔を上げると、彼と目が合った。
「……どうして裏切った、リュウセイ」
「僕らのしていた事の、真実に気付いたからだよ。ハクビ」
「真実? 俺たちの理想、無限のエネルギーによる争いの無い世界の創造だろう……まあ良いさ。俺はいつも通りお前を倒すだけだからな」
CCMを開き、LBXを起動させた。
隣では向かい合ったバンとジンが何やら言葉を短く交わし、ユジンはいつもの決めポーズを決めている。
「ハクビ、ここで僕は君に勝利する」
「やれるもんならやってみな。いつも通り叩きのめしてやるよ」
「バン君、これまでの戦いに決着をつけよう」
「ああ、望むところだ、ジン!」
「正義の翼は今ここに舞い降りた! 悪党共め、覚悟しろ!」
バトルスタート!
戦闘開始の合図と共に5機のLBXは一斉に攻撃を開始する。観客たちは世界最高のLBXを決める最後の戦いに沸き立った。
「セイリュウ! 行くよ!」
「赤き正義の翼、ビビンバードX!」
「行くぜビャッコ!」
「行っけー! アキレス!」
「行くぞ、エンペラーM2!」
最初に激突したのはセイリュウ、ビビンバードX、ビャッコの三機。続いてアキレスとエンペラーM2が一騎討ち。
タイマンでセイリュウを相手する予定だったビャッコは、ビビンバードXという思わぬ相手からの妨害を受けて攻めあぐねていた。
セイリュウへと攻撃しようとすれば、横からビビンバードXによる攻撃が飛んできて、かと言って邪魔なビビンバードXを攻撃しようとすると、今度はセイリュウの剣がビャッコに襲いかかる。
「くっ、手ぇ組みやがったなお前ら!」
「僕に特別な才能は無い。そう簡単に君を一人で倒せるようにはなれないから」
「バトルロワイヤルだからな少年! 一時の共闘ぐらいは当たり前だとも!」
ハクビにとって、ユジンのビビンバードXは本来ならば取るに足らない相手だ。山野バンや海道ジンも、タイマンであれば確実に勝利を納められる相手だろう。唯一対等に戦えるリュウセイも、1対1の戦いではただの一度さえ敗北した事も無い。
アルテミスなど、ハクビにとっては優勝する事など容易いもののはずだった。
「地味に面倒臭ェ……」
しかし、近距離に特化したリュウセイ操るセイリュウと、遠距離に特化したユジンのビビンバードXが組んだ事によってパワーバランスは一転した。
ビャッコはセイリュウの二刀を両手の爪で受け止めるが、その間にビビンバードXからは雨のように弾丸が降り注ぐ。射線をずらしてセイリュウを盾にしようと目論むものの、ビビンバードXも流石は遠距離のスペシャリストと言うべきか上手く立ち位置を変えてそれを阻止する。
アキレスとエンペラーM2は完全に一対一の勝負に集中しており、此方の戦いに干渉してくる事はまず無いだろう。
ビャッコは劣勢に追い込まれていた。
「一気に攻める、セイリュウ!」
「ビビンバードX、必殺ゥッ!」
肩に被弾、更に頭部を下から切り上げを受けてビャッコの身体は浮かび上がった。その瞬間にセイリュウの四聖獣セイリュウにオレンジ色のエネルギーが、ビビンバードXのビビンバードガンに蒼いエネルギーが集中し始める。
アタックファンクション!パワースラッシュ!
アタックファンクション!ハイパーエネルギー弾!
ビャッコの胴体中央めがけてセイリュウから飛ぶ斬撃が放たれた。ビャッコはそれを回避出来ず、装甲に深い傷とひび割れを作る。更に、くの字になって吹っ飛んだビャッコ目掛けて蒼い破壊のエネルギーの塊が飛来した。
「くっ、ビャッコ!」
エネルギーの塊はビャッコの身体と重なりあい、空中で凄まじい爆発を起こす。そして、バラバラと白い装甲の破片と紫色のクリアパーツの破片が降り注いだ。
『必殺ファンクションが二発連続で直撃ィィッ! これは決まったか!?』
アキレスの槍とエンペラーM2のハンマーがぶつかり合う音が響く中、セイリュウとビビンバードXは静かにビャッコの居た方へと武器を構えたまま様子を見守り続ける。
「おかしい、ビャッコが破壊されたなら破片はあの程度じゃ………」
爆発の後も一向にビャッコがその姿を表さず、降ってきた破片の少なさにリュウセイが不安を覚えた瞬間だった。
「なっ!? ビビンバードX!」
突如としてビビンバードXが背後から攻撃を受けた。
不意打ちによりビビンバードXは受け身をとれずに前方へと転がり、重い一撃だったことも相まってビビンバードガンを落としてしまう。
「ビャッコか、何処にいる!?」
即座にビビンバードXの居た場所の周囲を見渡すが、ビャッコの姿は何処にも見当たらない。CCMのレーダーにもそれらしい反応は一切無く、何が起きたのかを理解した。
「『インビジブル』……!」
「まさか、マッドドッグ等一部のLBXにしか使えない技では!?」
ユジンが驚きの声をあげる中、倒れ伏していたビビンバードXの背中に見えない何かが深く突き刺さり、ビビンバードXは耐えきれずに爆発を起こしてしまった。
そして、その爆発の煙の中から幽鬼のようにふらりと姿を現したのはビャッコ。その手には二つあったはずの四聖獣ビャッコは一つしか無く、装甲には多くのひび割れを作っていた。
「ビャッコは最強のワイルドフレームとして作られた機体だぜ? 有象無象に出来ることが出来ないわけないよなァ」
「さっきの爆発………四聖獣ビャッコの片方を身代わりにしたのか。そして同時にインビジブルを発動したから、音が爆発音に飲まれて必殺ファンクションの発動に気付けなかった!」
「流石だリュウセイ。よくわかってんじゃねぇか。まあ武器は半分になっちゃったけど? お前相手なら丁度いいハンデってとこだなァ」
未だ無傷のセイリュウと満身創痍のビャッコ。
形勢はまだ此方に傾いたままにも関わらず、ビャッコは不敵にもゆったりとした動作で、指差すように残った左腕の爪をセイリュウへと向けた。
【ビビンバードX】
アキハバラを守る正義のヒーロー『オタレンジャー』のリーダーである『オタレッド(ユジン)』の専用機。製作者はオタクロスであり、フレームはナイトフレーム。オタレンジャーのコスチュームと同じく鳥を模した頭部と、オタレッドのイメージカラーである燃えるような赤いボディが特徴。一点もののLBXではあるが、実はアキハバラの裏模型ブルータスで性能の下がった量産型が売られている。
初出はゲーム『ダンボール戦機』。
【エンペラーM2】
海道ジンの操作速度についていけるように【ジ・エンペラー】に改良を施した機体。神谷重工製の機体であり、デクーやデクー改などのブロウラーフレームの汎用機からデータをとって作られていた経緯もあってか、見た目はブロウラーフレームのようだが実はナイトフレームの機体。使用武器『エンペラーランチャー』はハンマーとランチャーの複合武器であり遠近共に強い。
初出はゲーム『ダンボール戦機』。
追記・今回、必殺ファンクション『インビジブル』についてLBX『マッドドッグ』にしか使えないはずといったような描写をしましたが、ゲームでは『インビジブル』は格闘武器の成長で覚える普通の必殺ファンクションです。しかし、LBXの『マッドドッグ』のゲーム内説明で『インビジブル』が専用必殺ファンクションのように書かれていたのでそちらを優先させて頂きました。混乱した方は申し訳ありません。
アミの最終機体、どれがいい?
-
シャルナック
-
ダークパンドラ
-
ホーネット
-
パンドラのままが良い!
-
正直どれでも良い……