『ああっとぉぉ! ここでユジン選手のビビンバードXがブレイクオーバー! なんとハクビ選手のビャッコ、あの必殺ファンクションを武器を身代わりにする事で防いでいたぁぁっ! 』
僕は満身創痍のビャッコを前に戦慄していた。
恐らくあと一撃アタックファンクションを食らわせれば、確実にビャッコはブレイクオーバーする。だと言うのに、勝てるビジョンが頭に全く浮かばない。
「そんな、ビビンバードXが………リュウセイ少年!」
「わかってる、大丈夫です。貴方の犠牲は無駄にしない!」
あの状態からアタックファンクションを回避するなど、トップのプロプレイヤーでさえ同じ事が出来る数人居るだろうかという神業。更に、最初に自身がビャッコに食らわせたあの一撃も、恐らくは立て直しの為に甘んじて受けたもの。まともに受けていたのならば、一撃でブレイクオーバーしてもおかしくないものだった筈だ。
「ビャッコ、お前が最強のLBXだ!」
アクセルフォース!
傷付いたビャッコの身体を青と紫の光が風のように包み込み、その表面に薄い膜を形成してゆく。
恐れていた事態が起きてしまった。必殺ファンクション『アクセルフォース』は直接攻撃を行うような必殺ファンクションではない。大量のエネルギーを消費する上に、戦いの決め手とならないのならばデメリットにしかならないと思われ、実際にこの必殺ファンクションを使用しているプレイヤーは少ないのだが、恐るべきはその能力。
簡単に言うならば、一定時間の無敵。それも山野バンと海道ジンがストーリー終盤から使用する『
「行くぜリュウセイ! 一瞬で終わらせてやるよ!」
「………望む、所だ!」
守りを気にする必要が無くなったビャッコは、防御を完全に捨てて躍りかかってきた。ブーストもかけて恐ろしい速さで迫るビャッコに対し、足の遅い部類に入るセイリュウでは逃げることは不可能。出来ることは無敵時間が過ぎるまで耐え続ける事のみ。
全力で振り下ろされる爪を両の剣で受け止め、押し返す。しかし、重量で勝るセイリュウが一瞬ビャッコを押し返したものの、ビャッコはすぐに体勢を立て直して恐ろしい速さの斬撃を繰り出した。
鬼神の如き神速の連撃にセイリュウのガードは崩され、胴に4回、右肩に1回、左腕に2回と立て続けに攻撃を食らってしまった。ラストにビャッコの宙返りアッパーが決まり、セイリュウの身体は仰け反るように吹っ飛ばされる。
「とどめだァ!」
アタックファンクション! ガトリングバレット!
ハクビが叫び、ビャッコの左の爪と右の素手にエネルギーが集中していく。このまま食らえばブレイクオーバーはほぼ確実。
「させるか!」
アタックファンクション! コスモスラッシュ!
しかし空中で仰け反りながらもアタックファンクションを発動させ、ビャッコのアタックファンクションの迎撃を図る。
二本の四聖獣セイリュウに蒼い光が集中し、その凄まじいエネルギーに周囲の空気はビリビリと震えた。
「ガトリングバレットぉぉぉ!」
「コスモスラッシュ!」
LBXの動きの限界に迫るスピードで放たれるラッシュに、コスモスラッシュの推進力によって空中で体勢を立て直したセイリュウの四聖獣セイリュウが激突。
重なり一つの巨大な剣と化した四聖獣セイリュウは、不利な状態であったにも関わらずビャッコを僅かに後退させた。しかしアクセルフォースによって完全な無敵状態であるビャッコは一瞬押し返されたのみで、仰け反りすらせずに連撃でセイリュウのコスモスラッシュを押し返す。
「っシャァァァッ!」
「セイリュウっ!」
必殺ファンクション同士の勝負に押し負けたセイリュウは、ガトリングバレットの最後の一撃をモロに受けて大きく吹っ飛んだ。
胸部パーツに大きな穴を作ったセイリュウは、地面を転がりながら吹っ飛んで行き、最後に先程ブレイクオーバーしたビビンバードXの近くで止まった。
同時にビャッコのアクセルフォースの無敵時間も終了し、彼の表面を覆っていた膜は消滅。どうにか無敵時間の終了まで凌ぐ事は出来たが、セイリュウ、ビャッコ共に満身創痍。互いにあと一撃貰えばブレイクオーバーは免れない。
結果的に形勢は均衡に持っていかれ、プレイヤーの腕を考えると形勢はハクビに傾いていた。
「ッ………よく、耐えた、セイリュウ」
「チッ、耐えたか。まあ、次で終わらせる。どう転んだってお前じゃあ俺には勝てねぇってな」
ハクビはニヤリと笑い、静かにセイリュウを指さした。
「見てみろ、四聖獣セイリュウは今の衝撃で機能停止したみたいだぜ。いつもは出てるエネルギーブレードが消えてる。二本ともだ」
セイリュウの装備していた剣『四聖獣セイリュウ』は度重なる激闘により破損、刃を失ってしまっていた。こうなってしまっては、最早ただの金属の棒も同然。素手よりはマシだろうが、相手にまともなダメージはもう与えられないだろう。
「でも、諦めない。必ず、君を止める。ハクビ!」
四聖獣ビャッコを光らせ、ブーストをかけて突撃してくるビャッコ。セイリュウは刃を失った四聖獣セイリュウの内の一本を放棄し、残った一本を力強く握りしめて迎え撃つ。
刃を失った四聖獣セイリュウの周りに紫色のエネルギーが纏わり付き、一時のみの刃を作り出した。
アタックファンクション!Xブレイド!
「まだ残してやがったか! だがそいつぁ俺もなんだよ!」
アタックファンクション! 気功弾!
普通のバトルではまず見られないほどの必殺ファンクションの応酬に観客達は沸き立つ。
連続での必殺ファンクションの使用により、二機のエネルギーは最早限界寸前。これが二機の最後の必殺ファンクションであると、僕はCCMを握り締めた。
「今度こそ、止めだァァ!」
ビャッコは大きく飛び上がり、両拳からハイパーエネルギー弾のそれと酷似した蒼いエネルギーの塊を投げ落とす。セイリュウはその二つのエネルギー塊を相殺するように、Xの字を描く斬撃を繰り出した。
両者が衝突した瞬間、ドォォォン!という凄まじい音と共に爆発が発生し、そうして出来た煙が二機の姿を包み込んだ。
爆心地を中心にして起きた強風に、戦っていたリュウセイ、ハクビ、バン、ジンの四人は腕で顔を覆い、戦いの手を止めざるを得なくなる。
『虎杖ハクビvs青柳リュウセイ! 山野バンvs海道ジン!どちらの戦いも両者共に一歩も譲らず、しかしビャッコとセイリュウとの戦いで遂に決着かぁぁぁっ!?』
「ぐうっ……ビャッコ!」
「セイリュウ!」
煙の晴れた先、立ち上がって居たのは。
「ビャッコ!」
静かに爪を構えたまま、直立するビャッコ。
片膝をつき、動かないセイリュウ。
『こ、これは………?』
直後、ビャッコの身体からは力が失われ、膝から崩れ落ちて地面に倒れ伏して青い光を散らした。その身体の中央には丸く大きな穴が空いており、その傷が剣によるものではない事は自明の理だった。
「よくやった………セイリュウ!」
右手に四聖獣セイリュウ、左手にビビンバードガンを持ったセイリュウは、満身創痍ながらもなんとか立ち上がる。
最後の最後で、戦いに勝利したのはセイリュウだった。
『な、なんと! リュウセイ選手、ビビンバードXのビビンバードガンを拾い、己の武器としていたぁっ!! バトルロワイヤルであったからこその驚きの戦術だぁ!』
「そんな………馬鹿な。俺がリュウセイに、負けた?」
自身が負けたという事実を受け入れられず、ハクビは頭を抱えて膝をつく。
ビャッコの気功弾とセイリュウのXブレイドが衝突したあの瞬間、ビビンバードXの近くに倒れた時に拾っていたビビンバードガンを使って、至近距離からチャージショットを撃ち込んだのだ。
まさか此方が必殺ファンクション以外での遠距離攻撃手段を持っていたとは予想もしていなかったのだろう。チャージショットは寸分の狂いもなくビャッコの胴体中央に命中し、その体力を最後まで削りきった。
「でも、僕もここまでみたいだ……」
セイリュウは数歩歩いた後、静かにその目から光を失って、立ったままその機能を停止した。
原因は必殺ファンクションの使いすぎだ。確実にハクビのビャッコを倒すためとはいえ、必殺ファンクションの為のバッテリーを使いきった上に、本来ならばLBXの動作に回すバッテリーまで使いきってしまった。
『ああっと、まさかのセイリュウもバッテリー切れで立ち往生! 必殺ファンクションの連発が祟ったかーっ! 残るは終始一騎討ちを続けていた山野バンと海道ジン! 優勝の栄光とメタナスGXはいったいどちらの手に!?』
僕の世界大会アルテミスは終わってしまったが、これで大会本戦での僕の目的は完了した。紙一重であったが、ユジンさんの協力のおかげでハクビを倒す事に成功。あとは山野バンが優勝するだけだが、見ている限りならもう大丈夫だろう。
「うおおおっ! 必殺ファンクション!」
「はあああっ! 必殺ファンクション!」
必殺ファンクション! 超プラズマバースト!
アタックファンクション! インパクトカイザー!
戦いは前世で自分が見た物語のままに進み、最後の必殺ファンクションが両者から放たれる。
海道ジンのエンペラーM2のハンマーが地面を叩き付けると同時に青の衝撃波がアキレス目掛けて真っ直ぐ延びていき、しかし超プラズマバーストの発動によって大きく飛び上がった山野バンのアキレスに『インパクトカイザー』は当たらず、回転する槍によって集められた電撃は真っ直ぐエンペラーM2を貫いた。
「エンペラーっ!」
伝説のLBXプレイヤー『レックス』から直々に教わった必殺の一撃はエンペラーM2の体力を余すこと無く刈り取り、皇帝の膝を地につけさせた。
膝をついて動かなくなったエンペラーM2の全身から青い光が弾け、ブレイクオーバーした事を皆が確認した。
「か………勝った?」
山野バンが勝利を信じきれずに呆然と呟く中、会場にはMCの大きな声が鳴り響く。
『決まったぁぁーっ! 第三回LBX世界大会アルテミス、優勝者は山野バン! 何と言う大激戦! 何と言う死闘! 何と言う大波乱! そのファイナルステージに最後まで生き残ったのは、驚異の新人、山野バン!! 皆さま、盛大な、そして惜しみない拍手をこの勝者に送ろうではありませんかーー!』
バンも段々と自身の勝利を実感し、握り締めていた拳を振り上げた。
「やった………やったぞー!」
喜ぶ彼をジンは穏やかな表情で眺める。
その時だった、機能停止していた筈のエンペラーM2の目が赤く光り、独りでに動き出した。
「んっ、これは!?」
何が起きたのかとジンは咄嗟にCCMを操作するが、その操作の一切を無視してエンペラーM2はゆっくりと立ち上がった。
『デストロイ』
「………デストロイ?」
聞き慣れない言葉がCCMから聞こえ、ジンは思わずその言葉を繰り返した。異変に気付いたバンがジンの方を気にするように首をかしげる。
「ジン、どうしたんだ?」
そう聞いた瞬間、エンペラーM2はアキレスに飛び掛かり、無防備だったアキレスは組み伏せられてしまった。
装甲の内側から漏れ出る光を見たジンは、それがいったい何を意味しているのかに気付き、声をあげた。
「まずい、コントロールがきかない……皆、伏せろ!」
既に膝をついて項垂れていたハクビを除く、四人のファイナリスト達はその言葉を聞いて咄嗟に身体を伏せた。
直後、フィールドの中でエンペラーM2を中心とした爆発が起こり、アキレスだったものとエンペラーM2だったものの破片が降り注ぐ。
「そんな………」
突如として起きた異常事態に会場じゅうがどよめき、更に次の瞬間には会場の全ての照明がダウンした。
「っ、来たか! イノベーター!」
戦いの合図と共に僕はLBX『トロイ』を取り出し、CCMと接続。暗視カメラを起動して、停電と同時にアキレスのプラチナカプセルを狙って現れたデクー改達を次々に破壊させる。
更にメタナスGXを狙って現れるだろうイノベーターのLBXを迎撃すべく、ダクトの中で待機させていた全部で18体のLBXを起動させた。
「何が起きてるんだ!? LBX、まさかプラチナカプセルが………誰が戦ってる!?」
突然の暗闇に目が慣れず、デクーの赤く光るモノアイを見て驚きの声を上げるバン。
「リュウセイ少年っ、これはまさか!」
「ユジンさん、貴方は観客達の守りを!」
「了解した! 再起動だ、ビビンバードX!」
以前にイノベーターがここを襲撃するかもしれないと言うことを話していた事もあり、ユジンさんがビビンバードXを再起動し、セイリュウの手からビビンバードガンを取って戦いに参加してくれた。
しかし、原作よりも明らかに多いデクー改や、更に黒くカラーリングされた神谷以外のLBXであるクノイチやグラディエーター、ブルド達が押し寄せてくる。
フィールド内のプラチナカプセルを守りつつ、この全てを破壊するのはこの二機のLBXの力を以ってしても困難を極めた。
「これは、どういう事だ!?」
「ハクビ、まさか知らなかったのか?」
「聞いていない、こんな事をするなんて、俺は」
作戦を聞かされていなかったのか、予想だにしていなかった出来事にハクビも混乱し、CCMからLBXを起動しようとした。しかし完全に破壊されたビャッコは反応を一切示さず、立ち上がらない。
「戦力が………トロイ、セイリュウを!」
迫り来るクノイチとインビットを続けざまに鉄屑へと変えたトロイ。CCMからの命令を受けてセイリュウの元へと駆け付けると、四聖獣セイリュウを拾い上げてその手に握らせ、此方に向かって投げて寄越した。
飛んできたセイリュウをキャッチするとトロイの操作をAIに切り替え、バッグからツールを取り出してセイリュウのコアパーツの交換を行う。バッテリーを充電済みの物と取り換えて、再びセイリュウを起動させた。
「セイリュウ、もうひと頑張り頼んだ!」
既に満身創痍ではあるが、セイリュウは再び息を吹き返し、壊れた二本の四聖獣セイリュウを手にLBXの群れに向かって飛び降りた。
セイリュウは恐ろしい速さで敵のLBX達を薙ぎ倒し、刃を失ったその二刀で叩き潰していく。
セイリュウの投入によって戦況は一変した。迫り来るLBX達の処理に苦戦していたトロイとビビンバードXはより安定してプラチナカプセルの防御にあたる事が出来るようになった。
このまま行けばイノベーターの襲撃からメタナスGXとプラチナカプセル両方の防衛に成功する、そう確信したその時だった。
「何!? 保管庫前のLBXが!」
メタナスGXの防衛の為に配置して戦わせていたLBX達からの通信が次々と途絶していく。破壊されたのは『ウォーリアー』『アマゾネス』『ブルド』『デクー』『オルテガ』の五機。咄嗟にセイリュウをAI操作に変えて、向こう側の指令機として配置していたLBX『マスターコマンド』にCCMを接続した。
「何が………起こってる」
LBXの群れの数は此方とほぼ変わり無い。せいぜい200程度といった所。機体性能は悪くとも、より良いAIを積んでいる此方のLBXの方が単体同士では優勢であったが、戦線は一機の謎のLBXによってじりじりと後退させられていた。
メタナスGXを守っていた警備員達は何人かが倒れたまま動かず、数人は迫り来るLBX達に向けて銃を放ち、そして二人ほどが外部への応援を呼びにその場から逃げ出している。戦場となった保管庫前は床や壁の至る所で火災が発生し、地獄の様相を呈していた。
「アサシンっ!」
キタジマ模型店で購入したLBX『ムシャ』『ジョーカー』『ブルド改』『グラディエーター』『ズール』『カブト』が次々と撃破される中、長い間共に戦ってきたLBX『アサシン』までもが破壊され、彼との通信が切れる。これ以上の戦闘はいたずらに此方の戦力を削るのみの無駄な足掻きである事は明白、最早撤退せざるを得ない。
「『これ以上は抑えられない、全員撤退してください! 殺されてしまう!』」
マスターコマンドのマイクとCCMを繋ぎ、警備員達に逃げるように伝える。再びマスターコマンドから残った全LBXに撤退の命令を出し、通気ダクトから此方まで集合するように指示。
マスターコマンドをAI操作に切り替え、再びセイリュウとCCMを接続しようと顔を上げた。
「リュウセイ君、後ろだ!」
「ユジンさん!? 後ろって」
咄嗟に背後を振り向く、その先では、一体のデクーがその銃口をLBXではなく、僕の身体へと向けていた。
【マスターコマンド】
神谷重工製のブロウラーフレームのLBX。イノベーターの作戦の為に作られた自律稼動型のLBX。赤いモノアイと頭部に五本、背部に二本、両肘に二本あるコードが特徴。合計9本のコードによって様々な機械のハッキングが可能。
初出はゲーム『ダンボール戦機』。
アミの最終機体、どれがいい?
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シャルナック
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ダークパンドラ
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ホーネット
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パンドラのままが良い!
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正直どれでも良い……