偶然の結果ではあるが、山野淳一郎博士と共同戦線を築くことになり、情報共有の後、LBXの産みの親である彼の腕によって僕の主戦力となるLBX達は次々と直されていった。
前線を支え続けた『セイリュウ』と『トロイ』は修復作業に時間がかかるという事でまだ手元に戻ってきてはいないが、現時点での最高戦力『マスターコマンド』に加え、『デクーエース』と『エジプト』が復帰し、一先ずの戦力は整えられた。
「本当に良いのかい?」
「ええ、どうぞ。貴方の元で、この二機が生まれ変われるのなら。バン君達の為に、使ってください」
「………わかった。ならこの二機は貰おう。神谷重工のまだ発売していない高性能のコアパーツに、弄りやすいコアスケルトンが二つも手に入るとは、中々に燃えてくる展開だよ」
山野博士はLBX『サラマンダー』と『クノイチ』を手にして、きゅっと口元を引き締めた。
この二機はバン君達を強くする特訓の為に、キタジマ模型店で用意したものだ。このまま僕が使っていくという選択肢もあったが、使いなれていない僕に使わせてすぐ壊してしまうよりも、彼のもとで新たなLBXへと進化してバン君達のもとに届けられた方が良いだろうと判断しての事だった。
「ところで、次の計画は決まっているのかい? リュウセイ君」
「ええ、まあ。そろそろ彼から連絡が来る頃なので、その結果次第です」
彼の質問に、そう言ってCCMを開く。プロLBXプレイヤーとして活動してきて、繋がった知り合いは何もプロLBXプレイヤーだけでは無い。それはLBXを専門とするメカニックであったり、別の会社に属するテストプレイヤーであったり。
今回、仲間として名乗りを上げてくれた彼も、そんな中の一人だった。
『こんばんは、石森さん。夜遅くに何方へ?」
「ッ……!?」
宇崎達を裏切ってまで、妹の命を助けるためにイノベーターについた石森里奈。
イノベーターの計画と共に、どんどん遅れていくオプティマの認可。このままでは妹の石森ルナの命が危ない。もしかしたら、身体を悪くして自分の知らない内に死んでしまっているかもしれない。
そんな焦りから、彼女は拳銃を片手に海道義光の居る部屋へと向かっていた。理由は一つ、オプティマの認可を差し止めている海道義光を脅迫する為だ。
しかし、だれも居ないと思っていた廊下を背後からつけてくる足音。咄嗟に振り替えると、引きつった笑顔を張り付けた顔の彼と目があった。
『随分と物騒な物をお持ちのようだが、それで何をするつもりだ?』
「貴方は………!」
名前も知らない、イノベーターに所属するスタッフの一人。
前から彼の事を基地内で目にすることはあったが、何処か超越したような不思議な雰囲気をいつも身に纏っている彼は多くのスタッフの中でも異質だった。
命令には忠実で、他のスタッフ達と共にイノベーターに貢献する。量産型のLBX『アヌビス』を片手に日々訓練し、だが特別強いわけでは無い。他に埋もれていくような目立たない人間のようで、しかし妙な違和感を心の隅にのこしていく。
『その選択は、貴女の未来の為にもやめた方が良い』
自身の口で一切喋らず、LBXの音声機能に喋らせ続ける彼は、ハッキリ言って不気味だった。
「う、動かないで!」
見られたという焦り、なんとしても妹を救いたいという焦り。二重の焦りによって思考する事さえままならなくなった彼女は、咄嗟に拳銃を彼へと向けた。
しかし、拳銃を向けられているにも関わらず、彼は眉一つ動かさず、その平静を崩さない。顔に張り付けた笑顔もそのまま、ただ眼鏡だけが薄暗い廊下の照明を反射させてキラリと光った。
『その銃で人を撃ってしまったら、もう戻れないぞ?』
「構わない………妹が、ルナが助かるなら!」
里奈は叫ぶ。
AX-00をイノベーターから盗み出し、しかし今度は宇崎達を裏切ってイノベーターに戻り。彼女の行動は滅茶苦茶に見えるかもしれないが、それも全ては正義感と妹への愛の板挟みになった結果。
妹の石森ルナは生まれた時から身体が弱く、ずっと病院で生きてきた。学校にも通えず、同年代の友達も居らず。
このままでは幸せを知らずに死んでしまうかもしれない彼女を、石森里奈はどうしても救いたかっただけなのだ。どんなに汚い手を使っても、どんなに無様な姿になっても、愛する妹に会えなくなったって良い。
これがエゴだとはわかっている。
それでもただ、救いたいだけなのだ。
『………石森ルナは助かるぞ』
「なっ、どこでそれを!?」
『仲間が居る。一人や二人ではなく、多くの』
「それで、私を脅す気……?」
『いや、私はただ事実を述べただけだ。私のクライアントは年の割に随分とお人好しでな、石森ルナを救う為に大分危ない橋を渡ってきた。その結果だ』
彼は『クライアント』と言った。イノベーターではなく、彼は他についている人間がいるのだ。
「そんな………じゃあ、私のやってきた事は?」
『徒労と言う訳だ』
ばっさりと一言で切り捨てられ、今まで妹を救うために自分がやってきた事が無意味だった事を知り、全身からどっと力が抜け落ちていく。
銃を構えていた腕もだらりと垂れ、立っている床がパッと消えてなくなったような感覚に思わずへたりこんでしまう。
こんな後悔は結果論でしかないが、ただ自分は自分の思う「正義」の為に真っ直ぐに走り続けるだけで良かったのだ。妹の命の為とはいえ、裏切る必要なんて微塵もなかった。
『私の仕事の一つは貴女をここから安全に脱出させる事。現在、私が協力を取り付けた海道ジンと八神英二、オペレーター数名がイノベーターへの離反を表明し、LBXの大群と交戦中だ。この混乱に乗じて八神達と共にエクリプスで脱出しろとクライアントから命令を受けている。立て』
「………わかったわ」
もはや抵抗する気力も無い。石森里奈は差し出された手を力なくとり、おぼつかない足取りで立ち上がった。
そんな彼女の身体を、意外にもその眼鏡の男は優しく支え、立ち上がらせる。
『別に貴女を脅迫しよう等と言う考えは一切無い。この仕事もクライアントの善意からのものであるし、私も十分な成功報酬を約束されている。裏切るような事は無いから安心すると良い』
「そう………その、随分なお人好しのクライアントが誰なのか、教えてはくれないの?」
『悪いがそれは話せない。先程も言ったようにクライアントも随分と危険な橋を渡った。故に自身も危険な状況にある』
「そう、よね………」
ふと自分たち姉妹を助けてくれている『クライアント』とやらが何者なのか気になり尋ねたが、やはりと言うべきか望んだ答えは得られなかった。
当たり前だ。一国の大臣二人に大企業が裏につく巨大なテロ組織を相手にして、ただでいられるはずが無い。むしろこうして助けを寄越してくれている事が奇跡のようなものだ。
眼鏡の男に連れられて石森里奈は来た道を戻り、そして巨大ステルス機エクリプスが保管されているイノベーターの格納庫へと向かった。
到着すると既にエクリプスは発進準備が始められており、追手を撒いてきたのか八神英二と何人かのイノベーター隊員の姿があった。八神はこちらに気が付くと、はやあしで寄ってきた。
「ゴジョーさん、そちらは成功したようですね」
『見ての通りだ。しかし『そちらは』とはどういう事だ?』
「ああ、なんとかエクリプスを仲間達と動かす事には成功したが追手の数が如何せん多くてな、ジンが一人残る形になってしまった」
『海道ジンが? ………仕方ない、二分でカタをつける。彼女を頼んだ』
「え、ちょっと、ゴジョーさん!」
眼鏡の男、ゴジョーは力の抜けていた里奈の身体をひょいと八神に押し付け、アヌビスを操作してジンが戦っている方向へと駆けていってしまった。突然の事に八神も引き留める事すら出来ず、走っていく彼の背中を眺める事しか出来なかった。
「行ってしまった………まあ彼なら多分大丈夫だろうが」
「……八神さん、あの人いったい何者なんですか?」
「彼ですか? 彼はA国のクリスターイングラム社のテストプレイヤー、『M・ゴジョー』です。あまり有名ではありませんが、知る人ぞ知るLBXのトッププレイヤーなんですよ」
「全然、気付かなかった」
「目立たない人ですからね………しかし彼ほどの人をいったい誰がイノベーターに送り込んで来たのか。確かに助かりましたが。まあ、それはさておき彼等が敵を足止めしてくれている間にエクリプスに乗り込みましょう」
「……はい」
そう言って、エクリプスの搭乗口へと移動する八神。その途中、一瞬M・ゴジョーが駆けていった方向を見て彼の口元が緩んだのを、里奈は見逃さなかった。
安心したような、少し困ったようなその表情は、イノベーターで黒の部隊を指揮していた頃の険しい顔ばかりしていた彼からは想像もつかないものだった。
【アヌビス】
イノベーター専用のナイトフレームのLBX。安心安全の神谷重工製。LBX【エジプト】を元にした量産機であり、エジプトの催眠機能こそ失われたものの基本性能はあらゆる面においてエジプトを凌駕している。イノベーターでの基本装備は剣【ファラオブレード】。
初出はゲーム『ダンボール戦機』。
カズの最終機体もやっぱり原作のフェンリルが人気ですね。多分他のキャラクターも原作通りのLBXが望まれていると思うのですが、本作ではバンとハンゾウの二人に関してはラスボスの関係もあって原作とは別のLBXを最終機体にする予定なので少し申し訳ないです。
カズの最終機体、どれがいい?
-
ハンターⅡ
-
アーミージェネラル
-
ファルコン
-
フェンリルのままがいい!
-
それ以外