LBXを兵器になんてさせない   作:青蛙

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原作ブレイクが止まらない二次小説、はーじーまーるーよー。

今回あとがきに『オリ主とセイリュウ』の挿絵をのせてみました。クッソ下手な上にシャーペンイラストですが良かったら見ていって下さい。




タイニーオービットへ

 

 

 

 

 

 

 

「遅いなぁ、ハンゾウ」

「珍しいな。郷田のヤツに限って遅刻なんて。もう予定時間15分も過ぎてるぜ」

 

 ミソラ第二中の校門前に止められた宇崎の車の横で、バン、アミ、カズの三人と宇崎拓也は郷田ハンゾウの到着を待っていた。今日は拓也から「プラチナカプセルの解析を行いたいのと、タイニーオービット社で見せたいものがある」との話を聞き、バン達三人と郷田の四人は拓也の車でタイニーオービットまで行く予定だったのだが、珍しくハンゾウが出発の予定時刻を過ぎてもやって来なかった。

 

「何かあったのかな………」

「郷田君の事だから大丈夫だとは思うけど、少し心配ね」

 

 ハンゾウの身に何かあったのではないかと三人が心配になりはじめた頃、校舎の方から走ってくる人影が見えた。

 よく見るとその人影はハンゾウで、彼は到着するなりバッと頭を思いきり下げて、手をあわせて謝った。

 

「すまねぇみんな! 遅れちまった!」

「ハンゾウ! 良かった。遅刻なんて珍しいから、何かあったのかと心配だったんだ。何してたの?」

「あー、いや。まぁ………『罪滅ぼし』ってヤツだ。俺自身の問題だから、あんま気にしないでくれ」

「? ………うん」

 

 首をかしげるバンの頭をハンゾウはわしゃわしゃと撫で、そして拓也の前まで歩き、深く頭を下げた。

 

「拓也さん、遅れてすいませんでした」

「いや、来たならいいんだ。ただ君の身に何かあったのかと心配してしまったよ。次からは遅れそうになったらちゃんと連絡してくれよ?」

「はい、わかりました」

「うん。じゃあみんな、車に乗って。予定からは少し遅れたけど、この程度誤差みたいなものだからね。タイニーオービットに向かおうか」

 

 いつもと違った様子のハンゾウに拓也は少し違和感を感じたが、何か決意したような彼の目を見て『理由はわからないが、彼の中で何かがいい方向に向かったのなら良いだろう』と開きかけた口を閉じる。

 前の座席に拓也とハンゾウが。後部座席にバンとアミ、カズの三人が乗り込み、車はタイニーオービット本社へと向けて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 渋滞も無く車は順調にタイニーオービット社へと走り続け、遠くにはタイニーオービット社へと繋がるリニアモーターカーの線路も見えてきた。

 あと十数分もすれば到着するだろうと、一瞬腕時計を確認し、視線を前へと戻した拓也の目にチラリと何かが映り込む。嫌な予感を感じた彼は、隣のハンゾウに話し掛けた。

 

「今、何か後ろの方に見えなかったか? 運転に集中したいから後ろを確認してくれると嬉しいんだが……」

「ん? ああ、いいっすよ。後ろ、後ろか……」

 

 ハンゾウは車のルームミラーから、車の後方をじっくりと確認した。すると、妙なものが見えた。

 

「あれ、何……」

 

 それは大きなトラックだった。1台程度であれば、別に大きなトラックが走っているのも当たり前だろう。しかしその大きなトラックは1台だけでなく、まったくの同じ種類のトラックが、隊列でも組んでいるように並んで走ってきているのだ。

 その異様な光景に、ハンゾウは良くないものを感じ取り、即座にCCMを取り出した。

 

「ハンゾウ君?」

「トラックだ、拓也さん。多分俺たちを追い掛けてきてる。バン! アミ! カズ! 念のためにいつでもLBX出せるようにしておけ!」

「えっ? う、うん!」

 

 速度を上げたトラックがじりじりと接近してくる中、ハンゾウの言葉を聞いてバン達三人はLBXを取り出してCCMを構えた。

 ふと、今はLBXを持っていないはずのバンがCCMを開いた事にカズは気付く。バンの手元を見ると、前に見たことのあるLBXが握られていた。

 

「あれっ? バン、お前の持ってるソレって……」

「俺もプラチナカプセルを守るために、LBXが必要だと思って。そしたらキタジマ店長がくれたんだ、『LBXの基本みたいな性能だし、俺が改造したアーマーフレームだから弄りやすいだろう』って」

「成る程。キタジマ店長らしいや」

 

 バンの手にあったのは『グラディエーター』にキタジマ店長が改造を施した『グラディエイター』。大きな改造こそ施されてはいないものの、ほぼ全ての面において元となった『グラディエーター』を越える。元々あった扱いやすさには若干のクセが加わっているものの、山野バンほどのプレイヤーともなればその程度のクセは障害にならない。

 森上ケイタの『ウォーリアー』から山野バンの『アキレス』へ。そして今、『グラディエイター』の手には『アキレス』から受け継がれた『水月棍』が握られていた。

 

「くっ、速い。すまない皆、追い付かれる!」

「来やがったかイノベーター。バン、アミ、カズ! 公式戦じゃねぇんだ、四人で行くぜ!」

「ああ、ハンゾウ!」

 

 スピードを上げて迫ってきたトラックは遂にバン達の乗っていた車を囲むように並び、完全に逃げ場を無くした。そしてトラックの中から次々とLBXが飛び出して、バン達の乗る車の上に着地する。

 バン達四人はイノベーターの死角を迎え撃つべく、車のサンルーフから各々のLBXを出撃させた。

 

「ブッ壊してやるぜ、ハカイオー絶斗!」

「いっくぞー、グラディエイター!」

「いくわよ、クノイチ!」

「行くぜ、ハンター!」

「みんなバトルで盛り上がるのは良いが、あんまり運転の邪魔しないでくれよ!」

 

 車から飛び出した直後、グラディエイターは車のボンネットに立っていた一機のデクーエースへと一直線に突撃。水月棍はデクーエースの胸部装甲を深々と穿ち、開幕早々に手痛い反撃を受けたデクーエースは車の前方へと大きく吹っ飛んでいき、空中で爆発を起こした。

 

「へっ、さっすがバン。やるじゃねーか!」

「ああ、俺たちはこんな事で止まってるわけにはいかないんだ!」

 

 四方のトラックから山のように降り注ぐLBXの群れ。バン達四人は途方もない数のそれらに真っ正面から躍りかかった。

 グラディエイターは水月棍で迫り来るLBX達をひたすらに粉砕し続け、ハカイオー絶斗は絶・破岩刃を振り回してLBX達を斬りまくる。クノイチは持ち前のスピードを活かして前線を撹乱し、ハンターはトラックの上から銃で攻撃をしてくるLBX達をライフルで次々と撃ち抜いてゆく。

 

 イノベーターのLBX軍団は基本的に完全自律型ゆえ、当然ではあるが一機ずつの力ではバン達の方が圧倒的に上。3、4機程度で取り囲んだ所でバン達には敵わない。

 しかし数の暴力とは恐ろしく、バン達一人ずつが相手するLBXは3、4機どころかどんどん増え続け、じわじわと追い込まれて行く。

 

「くっ、数が多すぎる!」

「このままじゃ車の中に入られちゃうわ!」

「クソッ、俺のハンターも少し貰い過ぎた。倒しても倒してもキリがねぇ、奴ら無限にいるのかよ!?」

「無理すんなカズ。お前がやられちゃトラックの上の敵を倒せなくなっちまう」

 

 デクー改がハカイオー絶斗にヒートブレイズを振り上げて襲いかかり、それをハカイオー絶斗は一刀にて上半身と下半身の二つに切り捨てた。その直後、腕を振り抜いたハカイオー絶斗の背後にインビットが飛び降り、その鋭利な爪をハカイオー絶斗へと振り下ろす。

 

「ハンゾウ!」

「ぐっ、油断した! ったく俺も人の事言えねぇなぁ」

 

 しかし不意打ちを受けたと言えど、一点もののLBX『ハカイオー絶斗』と量産型の『インビット』とでは機体性能に大きな差が空いている。受けた傷は浅く、ハカイオー絶斗はすぐに体勢を立て直してインビットを破壊した。

 

「まずいわ、押されてきてる……!」

「なんとか立て直さなきゃ………っ、アミ、後ろ!」

「バン……? きゃっ!」

 

 兎に角速く倒そうという焦りからか、アミのクノイチは前に出過ぎてしまっていた。孤立状態になったクノイチに、チャンスとばかりに敵のLBXが群がってくる。数の暴力に押され、流石のクノイチも反撃すら出来ずに四方八方から攻撃を受けた。

 咄嗟にバンがグラディエイターで助けに行こうとするも、そうはさせないとグラディエイターにもLBXが大量に押し寄せた。

 

「くっ、前に進めない!」

「操作がきかない………お願い、動いて!」

 

 ストライダーフレームは全てのアーマーフレームの中でも最も速さに優れたフレーム。しかし速さに優れているという事は、それだけ軽く作られていると言う事。装甲は薄く、相手から攻撃を貰ってしまえば受けるダメージは他のフレームの比にならない。

 ひたすら攻撃を受け続けたクノイチは本体の自動防御機能と姿勢制御で手一杯になり、CCMからの命令を受け付けられない程の状態に陥っていた。

 

 一人でも欠ければ更に戦況は苦しくなり、前線は更に押し込まれていってしまう。絶体絶命かと思われた、その時だった。

 

「クノイチ!?」

 

 突如としてクノイチを囲んでいたLBX達が纏めて吹き飛んだ。

 砕けた装甲がバラバラと降り注ぎ、ブレイクオーバーしたLBXは車のボンネットから道路へと落下して爆発を起こす。

 

 アミは驚きに目を見開いた。

 まさかクノイチがあの状態から一気に逆転したとでも言うのか? CCMからの操作も受け付けられない状態だったのに、そんな事はあり得ない。

 

 クノイチは予想通りと言うべきか、装甲に沢山のひび割れを作ってその場に膝をついていた。そしてその傍に立つのは見覚えのある白いLBX。

 

「あれは……パンドラ!」

「パンドラ?! どうしてここに」

 

 白いLBXはクノイチがふらつきながらも立ち上がるのを見届けると、凄まじいスピードで敵のLBXを破壊し始めた。

 圧倒的な強さのLBXの出現によって、数による力は最早無意味となった。形勢は完全にバン達に傾き、車の上に乗ってきた敵のLBXは次々と破壊されてゆく。

 終わりの見えない戦いの中、謎のLBX『パンドラ』の登場によってバン達に希望の光が見え始めていた。

 

「ハンター、一発ブチかますぜ!」

 

 アタックファンクション! スティンガーミサイル!

 

 トラックの上の敵を一掃すべく、ハンターが必殺ファンクションを発動。ハンターの背中についているトゲ型のミサイルがアーマーフレームから外れ、エンジンを点火させてあらゆる方向の敵へと向けて発射した。

 普段はLBXの装飾でしかないこのミサイル。LBXの飾りとあって大きさはかなり小さいのだが、威力は見た目によらず凄まじい。通常武器の『ランチャー』のそれを大きく上回る。

 ハンターから放たれたミサイルは次々と周囲のトラックの上に着弾し、そこから狙撃を行っていた敵を余すこと無く一掃した。

 

 残るは車の上に居るLBXのみとなり、前衛のバン、アミ、ハンゾウの三人はパンドラと協力して一斉に残りのLBXへと襲いかかろうとした。その時だった。

 

「ッ!? パンドラ!」

 

 最初に気付いたのはアミだった。

 咄嗟にパンドラの前にクノイチを立たせ、デクーエースの銃撃をクナイで防ぐ。

 

「どうしたんだ、アミ」

「パンドラが………動いてない!」

「えっ、どうして!?」

 

 敵へ襲いかかろうと、クナイを握りしめて前のめりになった姿勢のまま、パンドラは完全に停止していた。

 アーマーフレームに傷は一切ついていないことから、ブレイクオーバーした訳では無いようなのだが、パンドラは何故か微動だにしない。

 

「そんな。なら今度はパンドラを守りながら戦わなきゃ」

 

 そう言ってパンドラの前にグラディエイターを移動させ、襲ってくる敵のLBXを迎え撃とうとした瞬間、グラディエイターとクノイチの目の前を白い風が駆け抜けた。

 

「え? えっ!?」

「また………動いた」

 

 先程まで完全に機能停止していたはずのパンドラが機能を回復し、敵のLBXを蹴散らしていったのだ。

 これにはバン達も困惑せざるをえなかった。

 何故パンドラは突然その機能を停止したのか。何故パンドラは機能停止状態から即座に復帰できたのか。今回もまた助けに来てくれたことは良いのだが、奇妙な点の多いLBXだ。

 

「あっ、パンドラが……」

 

 そんな事を考えている内に、パンドラは残りのLBXをあっという間に片付けて、車から飛び降りてどこかへと居なくなってしまった。

 

 戦えるLBXを失ったトラック達はじわじわと減速し、バン達の乗る車から離れていく。やがて車の周囲は元の通りに何もいなくなり、バン達はなんとか敵を退けることが出来たことにひとまず安心するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バン達が乗る車が走っていた道路からほど近い場所に建つビルの上に、一人の少年と一人の少女が立っていた。

 少年は双眼鏡を覗いて何かを観察しており、少女は気だるそうにその様子を眺めている。一通り観察が終わったのか、少年は双眼鏡から目をはなすと、少女の方へと振り返った。

 

「ふむ、少ししか見れなかったからハッキリとは言えないが、全員『そこそこ』といったぐらいの強さかな。各個の腕前は今のところ『アキハバラキングダム』参加者平均程度といった感じだ」

「『そこそこ』? じゃあ今すぐにでもやれるじゃない。アタシ行ってもいい?」

「何馬鹿な事を言ってるんだ。戦力確認までが任務だと言われただろう。戦うのは『侵攻計画』の時だから、それまで我慢するんだ」

「ちぇっ。せっかく久々に『スザク』と暴れられると思ったのに」

 

 眼鏡の少年から呆れたような表情を向けられ、赤髪の少女はムスッと頬を膨らます。彼女の肩の上で、真紅のLBXが太陽の光を浴びて輝いていた。

 

 

 








※下手+シャーペン注意

【挿絵表示】





投票の結果から、カズの最終機体はフェンリルで決めようと思います。皆さん、沢山の投票ありがとうございました!

カズの最終機体、どれがいい?

  • ハンターⅡ
  • アーミージェネラル
  • ファルコン
  • フェンリルのままがいい!
  • それ以外

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