LBXを兵器になんてさせない   作:青蛙

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やっぱりヤマジュンが全ての元凶だって、はっきりわかんだね
第18話、始まります




プラチナカプセル

 

 

 

 

 

 イノベーターのLBX軍団との戦闘をくぐり抜けた後、拓也の運転する車は10数分ほど走り続け、タイニーオービット本社に到着した。

 バン達が車を降りて入り口の方に向かうとすぐに、タイニーオービットの現社長の宇崎悠介が秘書の女性を伴って現れ、バン達の来訪を歓迎した。

 

「やあ、よく来てくれた。確か、山野バン君に川村アミくん、青島カズヤ君に郷田ハンゾウ君と言ったかな。私はこのタイニーオービットの社長『宇崎悠介』だ。適当に『悠介』とでも呼んでくれ。宜しく頼むよ」

「はい、宜しくお願いします悠介さん」

 

 タイニーオービットの現社長『宇崎悠介』は、現在バン達と行動を共にする宇崎拓也の兄であり、その事を事前にきいていたバンは真っ直ぐに彼の瞳を見つめた。

 

 悠介はそんなバンの視線に一瞬だけ、僅かに気圧された。表情に出すことは無いが、驚きと少しの悲しさが入り交じったような感情が胸の奥に沸き上がる。

 山野バンの視線に籠められていた感情。それは中学生のまだ幼い少年が持つべきようなものでは無いと言う事に、気付いてしまったが故。『イノベーター』なるLBXを使用したテロリスト集団と戦っているとは聞いていたが、まさかそれがこれ程までに心に影響を及ぼしているとは予想していなかったのだ。

 

「プラチナカプセルがこの中に入ってます、悠介さん」

「ありがとう。よくここまで無事に運んでくれた。プラチナカプセルの解析は我々が責任持って行う。私とはこれが初対面だから難しいとは思うが、どうか信用してくれ」

 

 バンからプラチナカプセルの入ったアタッシュケースを受け取った悠介は拓也と一瞬だけ視線を交わし、僅かに頷く。

 

「これからすぐに解析を行う研究室まで向かう。バン君達も一緒に来るといい。何か聞きたいことがあったら秘書の霧野くんに聞くと良い」

 

 そう言って歩きだそうとした時だった。

 悠介の背中に声がかけられる。

 

「あの、もしかしてですけど………悠介さんと私たちって初対面じゃない、ですよね?」

「………どうしてそう思ったんだい?」

 

 僅かの驚きと興味から悠介は振り返り、声の主と目を合わせた。

 声をかけてきたのは紫色の髪の少女。彼女は何かを確信したように、少し嬉しそうな表情で続けた。

 

「だって、いつも私たちの事を助けてくれていたじゃないですか。『パンドラ』を使って。さっきだって、大量のLBXに襲われてた私たちのピンチに駆け付けてくれましたし」

「フフッ、まさか。私はずっとこの建物の中にいたんだ。CCMでLBXを操作出来る範囲からじゃあ君たちのいた所まで助けになんていけないさ」

「そんな事ないはずです。タイニーオービットはCCMの機能を拡張してLBXを遠隔操作出来るツールを研究してるって、LBXマガジンに書いてありました。試作機が出来てる可能性は十分にありますし、それがあったとして、使えるとしたらテストプレイヤーか社長である悠介さんだけ。私の記憶ではタイニーオービットはテストプレイヤーは雇ってないはずですから、そうなると可能性があるのは悠介さんだけです。そして私たちが襲われた場所とここまでの間にはリニアモーターカーの線路が通っている。ツールがLBXを直接操作するものだと仮定すると、リニアモーターカーの通過で通信が妨害され、パンドラが戦いの途中で突然停止したのにも説明がつきます」

 

 流れるように自身の推理を述べたアミはにっこりと悠介に微笑む。悠介は困ったように頭をかき、苦笑した。

 

「ハハハ、参ったなぁ。全くもってその通りだよアミくん。君の言う通り『パンドラ』を操作していたのは私だ。まさかここまで完璧に当てられるとは思っていなかったよ」

「えへへ、本当ですか? ほとんどカンみたいなものだったので少し心配だったんですけど、やっぱり『パンドラ』を操っていたのは悠介さんだったんですね!」

「って事は、ずっと俺たちの事を見守ってくれてたんですね………ありがとうございます!」

 

 パンドラの操縦者が悠介だったという驚きからか、呆けているカズとハンゾウ。バンもパンドラの操縦者が悠介だったという事実と、それを見事当ててみせたアミに一瞬驚いたが、すぐに悠介の方へと向き直り、頭を下げた。

 

「あぁ、バン君、そんな頭を下げられる程の事じゃない。むしろこれまで何度もイノベーターと戦ってきた君達には感謝しかないんだ」

「でも悠介さん、悠介さんの助けが無ければ『エンジェルスター』で重機と戦った時も、『アングラビシダス』でVモードが解除できなくなった時も俺は勝てませんでした」

「フッ………どうかな、私が手を出さなくても勝てていたかもしれない。さ、そろそろ中に入ろうか。話しているのも良いが、時間が無くなってしまうからね」

 

 悠介達に案内され、バン達はタイニーオービット社の中へと入っていった。

 建物の中では多くのタイニーオービット社員達が働き、平日だというのに流石は人気玩具メーカーと言うべきか、小学生ぐらいの年齢の子供達が会社見学に来ている。

 バン達が案内されて進んだのは、本来ならばタイニーオービットの社員、それもごく一部の限られた人間のみが入ることの出来る研究施設エリア。そこの研究室Aにバン達が入ると、一人の研究員が気付いて駆け寄ってきた。

 

「宇崎社長、解析準備完了しました」

「ああ、準備ありがとう。この中に例のプラチナカプセルが入っている。くれぐれも慎重に頼むぞ」

「はい、勿論です」

 

 彼は悠介からプラチナカプセルの入ったアタッシュケースを受け取ると、バン達の方に向き直った。

 

「ええと、君たちが拓也さんの言っていたシーカーの子達だね。僕は『結城研介』と言います。皆さんが命がけで守ってくれたプラチナカプセルは、僕たちが責任持って解析を行わせて頂きますね」

「はい、宜しくお願いします!」

 

 研究員の男『結城研介』はそう言ってニカッと笑うと、すぐに踵を返してプラチナカプセルを機械へとセットしに向かった。

 モニターには解析の進行状況が表示され、部屋にいた研究員達は皆作業に取り掛かる。時間がかかりそうだと判断した悠介は拓也に何か耳打ちすると、拓也はバン達へと振り返った。

 

「? どうしたんですか、拓也さん」

「少し時間がかかりそうだからね、見せたいものがあるって言っていただろう? 今から見に行かないか」

「だって、皆は?」

 

 バンがそう言って仲間達へと視線を向けると、全員が頷く。それを確認して、バンは再び拓也へと視線を戻した。

 

「わかりました、行きます!」

「よし、じゃあ行こうか。まずはさっき乗ったエレベーターまで戻って………あぁ、その前にLBXのメンテナンスをしてもらったらどうだ? 前の戦いで大分傷付いただろう」

「えっ、タイニーオービットでメンテナンスしてくれるんですか!?」

「ああ。タイニーオービットでは会社見学に来た子供達のLBXのメンテナンスもやっててね、バン君達は会社見学に来たわけじゃないけど頼めばやってくれるよ」

「へぇ、それじゃあお願いします!」

 

 そう言うと、近くに控えていたタイニーオービットの研究員が歩み寄ってきて、バン達から戦いで傷付いたLBX達を受け取って隣の研究室へと歩いていった。LBXを持っていった研究員は室内だというのにサングラスをかけ、時代遅れな髪型をした妙な格好の男で、バンは思わずその後ろ姿をじっくりと眺めてしまう。

 

「バン君どうしたんだい? 行くよ?」

「バンー! ぼーっとしてたら置いてっちゃうわよ!」

「あっ、待ってよー!」

 

 拓也とアミが振り返り、立ち止まって待ってくれている。バンはハッとして研究員から目を離し、慌てて先へ行った皆を追い掛けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 灼ける金属。

 舞い上がる砂煙。

 砕け散るコンクリート。

 

 両手銃を携えたモノアイのLBXは三体のLBXを同時に相手取り、数で不利であるにも関わらず圧倒していた。

 様々なゲームでもそうであるように、LBXバトルにおいてもガンナーは中、遠距離にて無類の強さを発揮する。しかし敵に近くまで寄られてしまうと一気に形勢が悪くなるのも、LBXバトルでも同様だった。

 

 だが、そのモノアイのLBXは違った。

 

 離れた場所のLBX二体を素早い射撃で足止めし、接近してきたLBX『ウォーリアー』の剣を銃身で受け止めて押し返す。そのまま仰け反ったウォーリアーの胴体を下から蹴り上げ、完全にがら空きになった身体に向けて至近弾を撃ち込んだ。もしもレギュレーションがアンリミテッドだったのであれば、弾は胴体を貫通してウォーリアーを破壊していただろう。それほどまでに強烈な一撃を受けたウォーリアーは爆発こそしなかったもののガクガクと四肢を痙攣させ、落下してきたところをモノアイのLBXによる回し蹴りを受けてビルのジオラマにめり込んだ。

 しかしモノアイのLBXがウォーリアーに専念していた短時間に残りの二体のLBX『ムシャ』『マスカレードJ』はブーストをかけて接近し、二方向から同時に襲い掛かってきた。数での不利、剣などの武器のように同時に大人数を相手にするのが難しい両手銃の辛いところだ。並のプレイヤーならばここで片方は攻撃出来ても、もう片方の対処に間に合わず手痛いダメージを受けることになるだろう。だが、

 

 アタックファンクション! レーザーカッター!

 

 操作しているのは並のプレイヤーではないのだ。

 モノアイのLBXはその場で大きく飛び上がると空中で逆さまになり、両手銃を構えて二体のLBXへと狙いを定めた。

 直後、両手銃の銃口から極太のレーザービームが射出され、マスカレードJの胴体を貫いた。更に一つ目が空中で身を捻った事によりレーザービームは円を描くように地を焼き、もう一方のムシャをも両断して破壊。モノアイのLBXが再び地面に降り立った時には最早周囲には動いているLBXの姿は一体も居らず、焦げた地面やLBXの残骸から煙が上るだけだった。

 

 モノアイのLBX『マスターコマンド』。

 神谷重工がイノベーターの為に作り上げた高性能のLBX。アーマーフレームの各部からのびるコードを使用してあらゆる機械へのハッキングが出来、主に潜入任務等に使われることを想定されていた。機体そのものの性能も従来の神谷重工の量産型と比べると段違いであり、神谷がそれだけ本気だという事が伺える。

 

 マスターコマンドは周囲を見渡して敵が居なくなったことを確認すると、ジャンプでフィールドを抜けて操縦者の手の平に飛び乗った。

 

「動きは上々、やっぱり今動けるのだとマスターコマンドが一番強いな」

 

 青柳リュウセイはそう言ってマスターコマンドの駆動部をじっくりと眺めた。

 首、肘、腰、膝など、関節部分はLBXでも特にデリケートな部分だ。一定以上の腕前の選手なら試合でも積極的にこうした関節部分を狙ってくる。

 マスターコマンドの関節は見たところ目立つようなキズは一つも無く、正常に動作している事は一目でわかった。

 

「でも少し動きに余裕が無いかな。動作範囲がセイリュウより小さいのは仕方ないんだけど……」

 

 マスターコマンドは強力なLBXだ。自動操縦でも一体で多くのLBXを相手取ることが可能なぐらいには強い。しかし、あくまでマスターコマンドは『量産機』だ。一点物の特別なLBXである『セイリュウ』に並び立てるかと言われると、それは否だ。動きの自由度でも、パワーでも、例えMGだったとしてもマスターコマンドはセイリュウには敵わない。リュウセイは自身がいかに『セイリュウ』の高い性能に頼りきってしまっていたのか、マスターコマンドをひとしきり動かして気付かされた。

 

「ふむ、毎日頑張っているね、リュウセイ君」

 

 不意に背後から声が聞こえ、振り替えると山野博士が小脇に分厚いファイルを抱えて立っていた。

 

「山野博士! いつからいたのですか」

「先程来たばかりさ。まさか『レーザーカッター』をあんな風に使うとは驚いたよ。普通は横に凪払うだけだと言うのに」

「確かにその使い方は単純でかつ効果的なんですけど、それだと360度全方位攻撃出来るだけの時間が無いんですよね」

「全くだ。精々もって1、2秒といった所だろう?」

「そうですね。だから流石に立ったままLBXを一回転させる時間は無いので、空中でブースターを片方だけ吹かしたら間に合わないかなと思いまして」

「ほう、試しにであれだけ上手くいったなら成功じゃないか」

「あー………確かに見た目は上手く行ったんですけど、姿勢制御と武器の性能に助けられた感じというか………まだまだこれからって感じです」

 

 咄嗟の事で若干雑になった操作でも、空中でああして綺麗に回転出来たのは神谷製のCPUによる高性能な姿勢制御技術のお陰。

 通常のレーザーカッターよりも短い時間しか直撃しなかったにも関わらず、あっという間に二機のLBXを両断出来たのは、簡単に高火力を叩き出せる武器自体の強さのお陰。

 特別高いLBX操作技術があった訳ではない。ただ思いつき、そして実行したというだけの話なのだ。だから、感心される程の事では無いというのが、青柳リュウセイの考えだった。

 

「それより、山野博士はどうして此処へ? 僕に何か用が無ければ此処へは来ないでしょう」

 

 普段リュウセイがLBXバトルの訓練に使用している部屋。山野博士の研究室からこの部屋までには廊下しか無く、この部屋にも研究に必要な何かが置いてあるという訳でもない。この部屋にわざわざやってくる理由なんて決まっている。

 

「ああ、その通りだよリュウセイ君。キミに頼みがあって来たんだ」

「何ですか、博士の頼みなら『犯罪』以外は引き受けますよ」

「うん、そうだな………まずはこれを見てくれ」

「これは………新型のLBX?」

 

 見せられたのは抱えていたファイルの中の1ページ。どうやらタイニーオービットの新作のストライダーフレームのLBXのコンセプトデザインらしい。どこでこんなものを手に入れたのかは知らないが、パッと見たところ単純なスピードタイプというよりもアクロバティックな動きを得意とするジョーカーに似ていると感じる。ジョーカー、ジョーカーMk-Ⅱに続く後継機といった所だろうか。

 

「これが、どうしたんです?」

「ああ、これは『ナイトメア』というタイニーオービットの新作のLBXだ。量産型ながら従来のLBXとは一線を画す性能。多少の扱いづらさはあるようだが、素組みでもプロの使用に耐え得る程だ」

「へぇ、それは凄いですね……僕も初めてセイリュウを見たときはその性能の高さに驚きましたが、量産型でプロの使用に耐え得るとなるとセイリュウ程のLBXが当たり前になる日も遠くないかもしれませんね」

「フフッ、流石にそれは言い過ぎだ。セイリュウをそのままの性能でだと如何せんコストがかかりすぎる。だが別の方法でならあり得ない話じゃないな。例えば、アキレスのような」

 

 そう言って山野博士は腕組みをして顔を上げ、何処か遠くを眺める。LBXの産みの親であり、世界の最先端を行く偉大な研究者である彼の頭の中ではどんな未来が描かれているのだろうか。願わくば、その未来が破滅へと繋がるような物では無い事を。

 しばらくして、彼はハッとした表情になりファイルへと視線を戻した。そしてやけにスッキリとした表情で一言。

 

「まあそれはさておきとしてだ、君に頼みたい事なんだが、この『ナイトメア』の試作機をタイニーオービットから盗んできてくれないか?」

「…………はい?」

「盗んできてくれないか」

「あの、『犯罪』以外って、言いましたよね?」

「ああ、そんな事言っていたかもな。私は覚えていないが」

「ハァ………山野博士」

 

 当たり前だと言わんばかりのドヤ顔の彼に、リュウセイの口から思わず溜め息が出る。

 命の危機を助けてもらったり、破損したLBXを修理して貰ったりと世話になっていたせいですっかり忘れていたが、山野淳一郎という男はどうしようもない程に頭のネジがぶっ飛んでしまっているのだ。

 自身の目的の為ならば犯罪にだって平気で手を出すし、自身の作る物に関しても多少の危険性は承知で世に送り出す。前世の記憶では確かに『父ート』とか『全ての元凶』なんて呼ばれていたが、それも頷ける。

 

「うん? 何かな、リュウセイ君」

「博士、せめてカケラぐらいの良識は持っていて下さい」

「ははは、私に『良識』なんて面白い事を言うなぁキミは」

「…………ハァ」

 

 話がまるで通じない。とりあえず面倒事がこれから先、色々と舞い込んでくることになるのだけは用意に想像出来た。

 

 






そろそろ仙道が出てくる頃ですね。
本来ならアングラビシダスやアルテミスで顔出しのはずだったのですが、本作では完全に空気状態でした。

と、言うわけで。
アンケートとります!

※『それ以外』で何か提案のある方は活動報告の方からお願いします

仙道ダイキの最終機体アンケート!

  • ナイトメア
  • ジョーカーX
  • インセクター
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