LBXを兵器になんてさせない   作:青蛙

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三話なのにまだ原作キャラ出てこないってマ?



離反

 

 

 

 

「ほう、それで、取り逃がしたと?」

「はい。隠し持っていた二体目のLBXによる不意打ちを受け、逃げられてしまいました」

「ふむ……まあ良い。貴様がこのようなミスをするのは珍しいが、戦力を削げただけでも良しとしておこう。もう下がって良いぞ」

「はっ!」

 

 神谷重工のオーサカ支部にて重役達に今回の任務の失敗を報告し、逃がした件については必死に考えた嘘でどうにか誤魔化すことが出来た。やはりサラマンダーの残骸を回収して持ってきたことが説得力に繋がったらしい。サラマンダーと彼には申し訳無いが、このおかげで助かった。

 今日も今日とて年寄りのお偉いさんの無駄話を聞かされて無駄な時間を過ごす事になってしまったが、これも今日で最後だ。ご丁寧に辞表願いなんて出すつもりも無い。追手に邪魔される前にさっさと逃げてしまうのが最善手だ。

 

 会議室を退出し、エレベーターに乗って三階へと向かう。三階には神谷重工お抱えのLBXプレイヤー達が訓練を行っているスペースがあり、今日もその部屋では数人のLBXプレイヤー達が訓練を行っていた。

 いずれも無名ではあるが、世間的に見れば強者に位置する者ばかり。しかしただの『強者』では許されないのが、神谷重工のテストプレイヤーである。

 

 まだ専用機も与えられず、ただひたすらに訓練を続ける彼等を見ていると昔を思い出す。まだプレイヤー人口も少なかったLBX黎明期からLBXプレイヤーとなるべくLBXに触れ、同じ境遇の仲間達と共にああして切磋琢磨してきた。

 今日で僕は神谷重工から離れ、イノベーターとの戦いに臨む事は既に決めていたが、残していく四神の仲間達の事は最後まで気がかりだった。

 

「あっ」

 

 ふと、いつものLBXプレイヤー達の中に、見慣れない少年が混ざって訓練の様子を眺めているのに気がついた。真っ白な白髪と、攻撃的につり上がった蒼い目が特徴的な彼は、此方が見ていたことに気が付いたのか、観戦をやめてゆったりとした足取りで歩み寄ってくる。

 

「よォ、リュウセイ。今日は居ないのかと思ったぜ」

「ハクビ、どうして此処に。君は本部所属だろう」

 

 虎杖(いたどり)ハクビ。僕と同じく『四神』の一人にして神速のLBX『ビャッコ』の使い手。四神最強とも名高い彼には練習試合で散々煮え湯を飲まされてきた。

 しかし、だからといって彼を嫌っていたり苦手としている訳ではなく、彼とはライバルとして、友人として、家族として互いに信頼しあう仲。

 ただ、神谷コウスケが日本にいない今、本部にてイノベーターの守りの要を任された彼が何故ここにいるのかが疑問だった。彼は良くも悪くも命令に対して忠実であり、任務を放ったらかしてまで友人を訪ねてくるような性格では無かったはず。

 

「何不思議そうな顔してんだよ。俺がここにいちゃ悪いか?」

「いや、そういう訳じゃないし、むしろ会えたことは嬉しいけど」

「フン………さてはお前、俺が任務を放ってここに来たとか考えてないか?」

 

 考えを読まれていた事に驚いて目を見開くと、ハクビはさも可笑しそうにケラケラと笑って僕の肩を叩いてきた。

 

「バッカ、お前、俺がそんな奴に見えるかよ。俺は任務から外されたから暇だったんだよ。神谷コウスケが戻ってきたからさ。それに、お前のほうもじきに今の任務から外されるだろうさ」

「え? そんな話まだ聞いてないよ」

「あくまで俺の予想ってワケ。例の『サイコスキャニングモード』?とかいうやつの使い手がイノベーターからアルテミスに派遣されるらしくてさ。どんなのかは知らねぇけど、もしそうなったらお前がアルテミスで戦う必要は無いって事」

「そうか……」

 

 つまり僕は任務から外されて、アルテミスには出場しなくなるはずだったと言うこと。一応このまま神谷重工に残って戦う事も考えていたが、神谷重工を離れる選択は間違っていなかったらしい。

 アルテミスは物語の大きなターニングポイントだ。あの場で奪われるのはメタナスGXと偽物のプラチナカプセル。本物のプラチナカプセルは奪われなかったものの、どちらも世界を揺るがしかねない危険物で、それが揃ってイノベーターに奪われでもすれば正に絶望的。

 確実にこの二つを守る為にも、アルテミス出場は絶対条件だ。それを神谷重工に邪魔される訳にはいかない。

 

「なんだよ変な顔しやがって。任務から外されるって聞いてそんなにショックだったのか?」

「いや、そんな事はないよ。それより、ハクビはどうして僕に会いに来たんだ?」

「ンー、暇だったし、グレンの奴とヒスイの奴は他の任務で忙しいらしいし。丁度大会も終わって時間がありそうなお前のとこに来てみたってだけだ。んで、時間あるんだろ? 久し振りに一戦やろうぜ」

「ハクビ………よし、じゃあやろうか」

 

 空きのバトルフィールドへと歩いて行き、フィールドを挟んで向かい合う。勿論取り出すのは愛機『セイリュウ』。

 対するハクビも『ビャッコ』を取り出してフィールドに投入した。

 名前のとおりどちらも中国の神話に登場する神をモチーフにしたLBXで、『セイリュウ』は青と白を基調としたナイトフレーム、『ビャッコ』は白地に藍色のワイルドフレームになっている。

 

「レギュレーションは?」

「勿論そこん所はわきまえてる。ブッ壊して任務に支障をきたす訳にはいかないからな。一般的なストリートレギュレーションで、先に三機撃破した方が勝利だ」

「オーケー。こっちも準備できたよ」

 

 両手に剣『四聖獣セイリュウ』を構えたセイリュウが火山のフィールドに降り立つ。対するビャッコは、装備している爪『四聖獣ビャッコ』を静かに構えた。

 ここでゲームとの相違点が出てくるのだが、現実ではLBXはサブウェポンを装備する事は出来ない。そんな事をすれば重量もスペースもとってLBXの機動性が損なわれ、バトルどころでは無くなってしまうからだ。だからLBXプレイヤー達は常に自身が最も得意とする武器を選んでLBXに装備させている。

 また、ゲームのように『リペアキット』や『アタックリキッド』などのアイテムも現実には存在していない。一瞬にしてLBXの傷が治ったり、よくわからない力によってLBXの攻撃力が上昇する等の都合の良い物は現実では作れなかったようだ。万一作れたとしても、サブウェポンと同じように装備すること自体がデメリットになり、使用される事は無いだろうが。

 

「久々に骨のある奴が相手なんだ。ワクワクするぜ」

「今度こそ君に勝つ。四神二番手とは言わせない」

 

 僕と彼が試合を始めようとしているのに気が付いたのか、先程まで訓練をしていたプレイヤー達が集まってきていた。そもそも、たった二人でも四神が揃うことは珍しいのだ。彼等はざわつきながらフィールドを囲むように集まり、始まるのを今か今かと待っている。

 

  バトルスタート!

 

「行くぜビャッコぉぉ!」

「行こう、セイリュウ!」

 

 開始と同時にブーストをかけて真っ向からぶつかり合う二機のLBX。あのルシファーにも匹敵する強さのLBXが凄まじい速度でぶつかり合った事により、二機を中心として衝撃波が発生した。

 見ていたプレイヤー達は衝撃波によってある者はふらつき、ある者は尻餅をついて倒れ、またある者は腕で顔を守ろうとする。

 

 二刀流と爪。手数は互角。

 しばらくつばぜり合いをしていた二機は同時に距離をとり、互いに様子を伺う。常に相手の攻撃を防ぎ、また攻勢に転じれるように武器を構える。

 数分の膠着状態の後、先に動きを見せたのはセイリュウ。マグマの河を挟んで二機が向かい合った瞬間、セイリュウはブーストをかけてビャッコに迫り、さながらインファイトの如くビャッコに斬撃を浴びせる。

 しかしビャッコもそれを予期しており、見事にそのほとんどを爪でいなしきった。恐るべきはビャッコのプレイヤー、虎杖ハクビの反応速度。その動体視力と反応速度はかの『秒殺の皇帝』にも匹敵すると言われるほど。

 

「っ、相変わらず」

「そっちこそ。また腕上げたんじゃねーの? 俺がお前の攻撃を完全に防ぎきれなくなったのはいつからだっけか?」

「四年前ッ!」

 

 カウンターとばかりに放ってきたアッパーを宙返りでギリギリ回避し、セイリュウは形勢を立て直そうとする。が、暇を与える間も無くビャッコの猛攻がセイリュウを襲った。

 セイリュウを越えるスピードで放たれる斬撃をセイリュウは二刀流でいなしきれず、4度胴体に受け、最後に重い一撃をモロに食らって遺跡のオブジェクトまで吹っ飛ばされてしまう。

 

「セイリュウ!」

「まずは一機目ぇっ!」

 

アタックファンクション!コウソクケン・イッセン!

 

 土煙の中から立ち上がったセイリュウの眼前まで、金色の光を全身から放つビャッコが急接近する。圧倒的なスピードで光輝く爪がセイリュウの胴をしっかりと捕らえ、そして一気に駆け抜けた。

 

「……くっ」

 

 セイリュウの身体が力なく崩れ落ちる。そして全身から青い光を弾けさせた。

 先制したのはハクビのビャッコ。強いとはわかっていたが開幕から苦しい展開だ。周りからすれば良い戦いをしていたように見えたかもしれないが、セイリュウはビャッコに殆どダメージを与えられておらず、その上うまくコンボを決められて一機落とされてしまっている。完全にハクビのペースだ。

 

「セイリュウは速さで劣る。ビャッコを走らせずに仕留めるつもりだったんだろうが、悪いな、俺はそう簡単にはやられないぜ? 二機目はもっと速く落としてやるよ」

 

 そう言ってハクビはニヤリと笑った。

 実感させられる。自分が特別な存在では無いのだと。どんなにLBXが好きで、どんなに強くなろうと頑張っても自分は一般人の枠を抜け出すことが出来ない。まだ見たことは無いが、きっと海道ジンや山野バンはこのハクビをも凌駕する才能の持ち主だ。

 そんな事を考えて、またしても迷いが生じた。自分が神谷重工を抜けてイノベーターとの戦いに身を投じた所で何が変わるのか。自分など居なくても、山野バン達ならばどうにかしてくれるのではないだろうか。

 

「………いや、違う」

 

 数秒のクールタイムの後、セイリュウは再び立ち上がる。

 そのセイリュウに、ビャッコは容赦なく襲い掛かってきた。

 

「そうじゃない!」

 

 ビャッコの攻撃を弾き、その身体を空中に跳ね上がらせた。ブーストをかけて頭上を抜けようとするビャッコに、セイリュウは二本の剣を同時に天へと掲げる。

 

アタックファンクション!ギロチンカッター!

 

「何ッ!? ビャッコ!」

 

 紫色の闇を纏って放たれる縦方向の回転斬りは、ブーストをかけて飛び出したビャッコの頭に確実に重い一撃を与え、更に後方へと吹っ飛ぶビャッコに追い討ちをかけるが如く二撃、三撃と大ダメージを食らわせた。

 予想だにしなかった凄まじい反撃に、ギャラリーからは歓声が上がる。

 ビャッコはそのままフィールド外縁まで転がっていき、壁に激突して全身から青い光を弾けさせた。

 

「二機目は……何だって?」

「っ、く、クハハハッ! そう来なくっちゃなぁ、リュウセイ!」

 

 そうだ。違うのだ。

 僕の目的はイノベーターを倒すことでも神谷重工の悪を暴くことでも無い。僕はLBXが人殺しの道具にされるのを止めたくて神谷重工を抜けるんだ。

 目の前の悪よりも、見据えるのはもっと先の未来。これから先、LBXがいつか人殺しの道具として使われる未来がやってくる。そんな未来が許せないから、例えモブだとしても僕は戦うことを決めたのだ。

 

「行くぜビャッコ、仕切り直しだ!」

「迎え撃つよ、セイリュウ!」

 

 立ち上がり、大きく跳躍するビャッコ。それに向かってセイリュウは握っていた四聖獣セイリュウを一本、思い切り投げ付けた。ビャッコはそれを空中で回転しながら弾くが、剣に続いて跳躍していたセイリュウは弾かれる場所を予測していたのか、空中で再び剣を握り締め、ビャッコへと襲い掛かった。

 

 そして、それから数十分もの間、激しい戦いが繰り広げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷはーっ! 染み渡るわぁ」

 

 建物二階、神谷重工社員の憩いの場、社員食堂にて目の前の美少年は実に中年臭い仕草でサイダーを呷っていた。

 

「ハクビ、なんかオッサンみたいだよ」

「気にすんな気にすんな。それより今日は凄かったなぁ! まさかお前があそこまで強くなってるなんて思ってなかったぜ。俺ァもう大満足だ!」

「今回も勝った癖によく言うよ」

「ハァ? あんなん紙一重だろ。LBXバトルであんなに追い詰められた事なんて初めてだぜ俺は」

「それはハクビが異常なだけ。ところでハクビさ、今日はどうするのさ。もう時間も遅いし、泊まる場所は?」

「…………あっ」

 

 完全に頭に無かったらしく、滅多に聞けない彼の間抜けな声が聞こえ、彼は両手でサイダーのペットボトルを握ったまま完全に沈黙してしまった。

 彼もまたLBXが好きでたまらないからこそ、こうしてLBXバトルに没頭し、強くなっていく。だがそれで他の事が見えなくなってしまっていては駄目だ。あくまでLBXバトルは遊びであり、スポーツであるのだから。最低限生きることに気を遣うぐらいはしなければならない。

 

「あはは、やっぱり。家、泊まる? どうせ僕一人だし。夕飯は外で食べるつもりだけど」

「えっ、いいのか! 俺さぁ、今まで生活とか全部会社任せだったからさぁ、泊まるとことか全然考えて無かったんだよなぁ」

「構わないよ。ハクビも明日にはトキオシティの本部に戻るんでしょ?」

「ああ、まあな。暇っつってもずっと暇な訳じゃ無いし。上も使える戦力を遊ばせとくような事はしないだろ。どうせ明日か明後日ぐらいには新しい任務にでも回されるな」

 

 ハクビは残りのサイダーを一気に飲み干すと、空になったペットボトルを離れた屑籠に投げ入れた。ペットボトルは綺麗な放物線を描いて、吸い込まれるように円形の穴の奥へと消えていく。

 

「いよっし、ホールインワン!」

 

 そうして嬉しそうに笑う彼の横顔を眺めながら、こうして親しい仲間達に会うこともこれで最後かもしれないな、なんて一人で勝手にセンチメンタルに浸る。

 

 次の日。

 朝一番にトキオシティの神谷重工本社に向かったハクビの後を追うように、僕は新幹線に乗って山野バンの住む街『ミソラタウン』へと向かった。

 

 






【ビャッコ】
四聖獣『白虎』の名を冠したワイルドフレームのLBX。白いボディと長い尻尾、そして不気味な五つの目が特徴的。全体的に、激しく吹き荒れる吹雪を連想させるような、鋭くとがった角の多い見た目をしている。
初出はゲーム『ダンボール戦機』のダウンロードコンテンツ。この時点では製作元不明の謎の多い機体だったが、続編『ダンボール戦機W』にて、神谷重工製のLBXだった事が判明した。また、公式からは『格闘戦で敵無し』と紹介されていた。


【セイリュウ】
四聖獣『青龍』の名を冠したナイトフレームのLBX。頭部のパーツから延びる龍の尾をモチーフにした飾りと、頭と脚につけられた羽を思わせるクリアパーツ、腕と脚の龍の手を模した飾りが特徴的。顔は同時期のLBXとしては奇妙な程に丸くなめらかで、表面に鋭い目が浮かび上がる。
初出はビャッコと同じくゲーム『ダンボール戦機』のダウンロードコンテンツ。続編『ダンボール戦機W』にて、神谷重工製のLBXだった事が判明した。また、公式からは『LBX最強剣士』と紹介されていた。

アミの最終機体、どれがいい?

  • シャルナック
  • ダークパンドラ
  • ホーネット
  • パンドラのままが良い!
  • 正直どれでも良い……
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