LBXを兵器になんてさせない   作:青蛙

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(海道邸攻略まで進めたので)初投稿です
今回は山野バン視点から始まります




二人目の転校生

 

 

 

 

 ミソラ第二中学校、一年二組の教室にて、いつもの三人で集まり楽しく談笑していた山野バンの元に、一人の太った少年が慌ただしい様子で駆け寄ってきた。

 

「なぁ、なぁ! みんな! 大ニュースだぞ!」

「あれ、リュウ? ニュースって、何かあったの?」

「ふふふ……なんと、またしてもこの一年二組に転校生がやって来るんだって!」

 

「「「ええーっ!?」」」

 

 太った少年『大口寺リュウ』の持ってきた驚きの報せに、三人は揃って驚きの声を上げた。

 転校生といえば、つい最近、あの海道ジンが入学してきて間もないはずだ。そのジンもアングラビシダス以降学校で見かけることは無くなってしまったが。

 

「それで、その転校生は今何処にいるんだ?」

「多分今は職員室だと思うぜ。つってもそろそろ教室に来るだろうけどな」

 

 リュウがそう言った直後、教室の前の扉が開いて先生が入ってきた。そして、その後ろから入ってきた一人の少年に、クラスにいた皆は驚き、ざわつき始める。

 生粋のLBXファンである山野バンも、その少年の姿を見て驚き、目を見開いた。

 

「っ、彼は!」

 

 青空の如く澄んだ色をした水色の髪と、血のように紅い瞳。黒板の前に立った彼は、教室を見渡して人当たりの良さそうな笑みを浮かべた。

 

「はーい、皆席ついた? 皆さんおはようございます。みんなも気付いてると思うけど、今日はまた新しく転校生の子が来たの。もう知ってる子もいるかもしれないけど、それじゃあ、自己紹介して貰える?」

「はい、僕は青柳リュウセイと言います。今日からミソラ第二中学校の仲間として、皆さん宜しくお願いします」

 

 そう言って静かに礼をした彼にクラスじゅうから歓声が上がった。

 LBX好きならばきっと誰もが知っている。未だ出場した大会においてただ一つの敗北も無し。初めて公の場に出た10歳の時から、完璧なプレイングで観客達を沸かせ、全ての戦いを勝利で飾ってきた西日本の絶対王者。

 彼の愛機である『セイリュウ』を駆り、数多のLBXをひれ伏させて来たその姿から、付けられた二つ名は『無敗の龍神』。

 

「バン。確か奴もアルテミスに出場するって」

「ああ、カズ」

 

 突如として現れた強力なライバルに、バンは彼から目が離せなくなっていた。

 そうか、メタナスGXだけじゃない。アルテミスに出れば、あの彼とも戦えるのだ。

 探していた父親を見つけて目の前まで行ったにも関わらず、家へ連れて帰れなかった悔しさ。頼りになるはずだったシーカーはイノベーターの攻撃によって壊滅し、皆バラバラになってしまった。

 そんな時に流星のように現れた新たなライバルが、バンの心に新たな火を灯す。イノベーターにメタナスGXを渡さない為にも、負けてはならない戦いだとわかってはいたが、不謹慎にもワクワクしている自分が居た。

 

「絶対に勝とう、アミ、カズ」

「ええ、必ず勝ちましょう!」

「ああ、勿論だ、バン!」

 

 その瞬間だった。

 顔を上げたリュウセイと、バンの視線が交差する。

 言葉は無かった。しかし彼が自分の事をライバルとして認めている。そんな気がした。

 山野バンはアングラビシダスという、LBXオタクのバンでさえ知らなかった一般のLBXからすればインディーな大会でアルテミスへの出場権を得た。公に大会の内容が報道されるような事は無いし、彼が自分の事を知り得る筈はないのだが。

 

 

 

 しかし、その日の放課後に予感は悪い意味で的中してしまった。

 

「青柳さんってアルテミスに出場するんでしたよね! 俺、応援してます!」

「あはは……さん付けは良いって。応援ありがとう。必ず優勝してみせるよ」

 

「そういえば青柳クンってアルテミスでのサポートメンバー二人って決めたの?」

「んー、まだ決まってないんだけど、やっぱり出来るだけ強い人がいいかな。連携が出来るに越したことは無いけど」

 

 放課後、クラスメートだけでなく、他クラスからも集まってきたLBXプレイヤーの生徒達に囲まれた彼は、流石はプロと言うべきか一人一人に丁寧に対応していた。

 バン達も彼と話したかったのだが、とんでもない量の人の波で彼に近付けずに困っていた。

 

「ありゃすげえな。流石は人気LBXプレイヤーってとこか」

「なんたって強くてカッコイイ『無敗の龍神』なんだ! みんな集まって当然だよ」

「なんで貴方が自慢気なのよバン。アルテミスで戦うライバルでしょ?」

「彼がデビューした時からのファンなんだ。ああ、俺もはやく話したいなぁ!」

「全く、バンらしいぜ………ただ俺はアイツが神谷重工のLBXばっか使ってんのがどうも引っ掛かるんだけどな」

 

 カズはそう言って、クラスメート達の中心で笑う彼に訝しげな視線を向けた。その時だった。

 

「邪魔するぜ! 青柳リュウセイってのは………ソイツだな。話がある、来やがれ!」

 

 乱暴に扉を開いて教室に怒鳴り込んできたのは、ミソラ第二中学校の番長にして『地獄の破壊神』の異名をとる男、郷田ハンゾウ。

 多くの生徒から恐れられている彼の登場に、賑やかだった教室は一瞬にして静かになり、笑顔だった青柳リュウセイも真顔になって彼をまじまじと眺める。

 

 まさに一触即発。

 

 普段は「郷田さん郷田さん」とうるさい根っからの郷田ファンである御影ミカまでもが無言になり。山野バン、青島カズヤ、川村アミ、御影ミカ、大口寺リュウの五人は事態の行く末を見守る。

 

 静寂を破り、静かに口を開いたのは青柳リュウセイだった。

 

「別に構わない。でも様子を見るに、君は随分嫌われているみたいだけど。熱血漢は悪くないが、行動を省みたらどうかな」

「フン、どの口で言ってやがる。来るんならさっさと来やがれ、クズ野郎!」

 

 郷田ハンゾウは、普段の番長らしくどっしりと構えた様子の彼からは想像もつかない程に激昂していた。そんな彼の口から出た「クズ」という言葉に反応して、一人の男子生徒が飛び出した。

 

「青柳さんがクズだと! さんざん他人の大切にしてたLBXを壊してきたお前の方がよっぽどクズだ!」

「んだと………! テメェは引っ込んでやがれ!」

 

 凄まじい剣幕で怒鳴る郷田。しかしその男子生徒が付けた火はみるみるうちに膨らんで、大きな炎になっていく。

 

「そうだ………何が『地獄の破壊神』だ! ミソラ第二中に番長なんて要らない! この学校から出てけ!」

「そうよそうよ! 私の大事にしてたアマゾネス、壊した事忘れてないんだから!」

「俺のズールだって。返せ、返せよクズ野郎!」

「僕のムシャもだ! 誕生日に買ってもらって大切にしてたのに!」

「アタシもよ! 頑張ってかっこよく塗装したインビット、壊されたあと何日もご飯が喉を通らなかった!」

 

 青柳リュウセイは一度の敗北すらない西日本の絶対王者。一つの中学校の中で幅を利かせているだけの番長とでは、隔絶した差が存在していた。

 絶対に郷田ハンゾウよりも強いLBXプレイヤーが自分達の後ろにいる事に、たまっていた恨みが決壊したダムのように溢れ出す。

 

「な、邪魔を、邪魔すんじゃねぇ! クソッ!」

 

 バンはその様子を半ば呆然として見つめていた。

 郷田ハンゾウとの出会いは最悪だった。盗まれたアキレスを取り返すために向かった体育館裏スラム。そこでリュウのブルドとカズのウォーリアが彼らによって破壊されながらも、なんとかアキレスの奪還に成功。

 以降、彼とはレックスを通じて再び繋がりができ、アングラビシダスの時は対戦相手の情報をくれたり、壊れたアキレスの腕のかわりにハカイオーの腕を貸してくれたりと世話になった。

 しかし忘れてはいないか。郷田ハンゾウは地獄の破壊神としてミソラ第二中学校の生徒達に恐れられる存在であり、数々のLBXを破壊して多くの恨みをかっていた事に。

 彼はそれに対しての償いなんて一つもしていない。ただ自分が強くなる事、それだけに純粋なのだ。

 バンは世話になった存在であり、シーカーの仲間である郷田を庇いたい気持ちでいっぱいだったが、LBXを破壊された彼等を止めるだけの言葉が見付からなかった。

 

 だが、そんな彼等の怒りを鎮めたのも、例の彼だった。

 

「皆、静かにして! 彼が話があると言ったのは僕だけだ!」

 

 よく通る大きな声で彼はクラスメート達を制止する。

 

「で、でも、あんな奴と青柳さんを二人きりになんて」

「大丈夫。でも、そうだな。ねえ、そこの君たち」

 

 リュウセイはバン達五人を指差すと、生徒達の波を割って前へと出る。

 

「お、おれ?」

「うん。でも君だけじゃなくて、五人全員。二人だけだと心配らしいから、一緒に来てくれる?」

「ああ、俺は良いけど、皆は?」

 

 バンは振り返り、仲間達を見回す。全員が了解を示し、五人は青柳リュウセイ、郷田ハンゾウと共に教室を出た。

 

「チッ、何だってアイツらは」

「僕も他人に言えたことじゃないが、だから行動を省みるように言ったんだ」

「んだとテメェ!」

「ま、待ってよ二人とも! まだ建物の中なんだから喧嘩なんてしたら」

 

 イライラのおさまらないハンゾウと煽るような言葉を投げ掛けるリュウセイ。リュウセイにつかみかかろうとしたハンゾウに、慌ててバンが間に入って仲裁する。

 どうも互いに互いの事が気に入らないらしく、二人の間には険悪なムードが流れ続ける。バンもリュウセイの一ファンではあったが、心の中の彼のイメージがボロボロと崩れていくような感じがして溜め息をついた。

 

「まあまあ、気を落とさないでバン。いくらチャンピオンだって言っても人だもの」

「うん、そうだよね………ありがとうアミ」

 

 そんなバンの様子にいち早く気付いたのか、アミが甲斐甲斐しく慰めてくれる。やはり持つべきものは良い友達だと顔を上げると、二人は早足でずんずん先に進んでいってしまっていた。

 

「バン、イチャつくのも良いけどはやく行こうぜ。置いてかれちまう」

「んなっ! イチャついてなんか無いって! アミ、行こう!」

「ふふっ。そうね、バン」

 

「ううっ、アミちゃん………いつからあんなにバンと親密にぃぃ」

「郷田センパイ、かっこいい………馬鹿にした、アイツ許さない」

「お前らもはやく行こうぜ、な?」

 

 ついていくとは言ったものの、面倒な事になったものだと、カズは苦笑いした。

 

 五人がリュウセイとハンゾウに追い付いて到着した先は、人気の少ない体育館裏スラム。

 そこに到着した途端、ハンゾウはリュウセイの胸ぐらを掴み、校舎の壁に押し付けた。中学生の割りに身長のあるハンゾウと、まだ中学一年生であるリュウセイ。身長差は歴然で、リュウセイの身体は僅かに浮かぶ。

 

「ちょっと、なんて事するんだよハンゾウ!」

「黙ってろバン! コイツは……コイツは!」

 

 突然の暴挙を止めさせようとするバンを振り切り、ハンゾウは憎しみの籠った目でリュウセイを睨み付ける。ハンゾウの謎の怒りと、意味もわからず振るわれるリュウセイへの暴力にただ狼狽える事しか出来ない五人の前で、ハンゾウは叫ぶ。

 

「コイツは、神谷重工の、イノベーターのLBXプレイヤーなんだぞ!!」

 

 その言葉で、全員に衝撃が走る。

 間違いは無いと言わんばかりに怒気を強めるハンゾウ。

 バトルでは正々堂々、真っ向からぶつかりあい、文句の付けようがない完璧な勝利を見せてくれるチャンピオン。皆からの尊敬を集めるそんな彼が、テロリスト組織『イノベーター』のLBXプレイヤーであるなんて信じられない。

 

 しかし、胸ぐらを掴まれながらも、彼は顔色一つ変えずに全員の前で宣言した。

 

「うん、そうだよ。君の言う通り、僕は神谷重工のLBXプレイヤー、四神の一人で間違いない」

 

 

 山野バンの憧れが、崩れ去った瞬間だった。

 

 

 

アミの最終機体、どれがいい?

  • シャルナック
  • ダークパンドラ
  • ホーネット
  • パンドラのままが良い!
  • 正直どれでも良い……
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