LBXを兵器になんてさせない   作:青蛙

7 / 20
(マスターコマンドがかっこよかったので)初投稿です
ダン戦小説流行れ流行れ……



キタジマ模型店

 

 

 

 

 

 あれから、お医者さんと看護師さんのお陰で、石森ルナの容態は安定した。しかし彼女の発作は普段よりも長い時間続き、容態はあまり良いものとは言えなかった。

 僕はその日、お医者さん達が去った後も、眠る彼女の傍で看病を続けた。時折苦しそうに呻く彼女。額に浮かび上がる汗を清潔なタオルで拭い、いつまた発作が起きてもお医者さんを呼べるようにナースコールをいつでも押せるようにして、そうしている内に夜が明けた。

 

 翌朝。

 結局一睡もしないでいた為に、窓から差し込む日を浴びながら欠伸をしていると、ベッドに横たわっていた彼女が目を覚ます。

 

「ん………くぅ」

「おはよう、ルナさん」

「ふあぁ……おはよう、リュウセイ君。昨日は、ごめんね。また、あんな事になっちゃって」

「君が謝る事じゃないよ。君が悪い事なんて何もない」

「でも、私………」

「大丈夫。もうひと頑張りすれば、自由に外を出歩けるようになるんだ。そうしたら君のお姉さんと一緒に、ピクニックに行ったり、水族館や動物園に行ったり、LBXバトルも出来る。そうそう、ああ見えて君のお姉さんも中々のLBXプレイヤーなんだ」

「うん、そうだね……」

 

 昨日の夜、話している途中で発作が起きてしまったせいか、酷く落ち込んでいる彼女を元気づけようと色んな事を話してみるが、彼女の表情は暗いままだった。

 俯いて、悲しそうな表情になっていた彼女は暫くした後にふと顔を上げ、しかし取り繕ったような笑顔になって聞いてくる。

 

「ねぇ………もし、もしもね、リュウセイが言うみたいに、私が健康になっても、今みたいに、ずっと一緒に居てくれる?」

 

 表面上は僕を信用しきったような笑顔で、しかし何処か不安そうに、彼女は言った。そんな彼女と真っ直ぐ目を合わせ、彼女の細く、小さな両手をぎゅっと握り締めて、僕は言う。

 

「もちろん。ずっと一緒だ」

 

 彼女がどうして僕をこんなにも信頼してくれているのか、解せないところはあるが、少しでも彼女の心の支えになれるならと、僕はそう強く、宣言した。

 

 

 

 

 

 

「外で聞いていたぞ。男だな、リュウセイ氏」

「オタブルーさん………ヒーローが盗み聞きなんて、らしくないですよ」

「ハハ……それは失敬。しかし、あの子もお姉さんの事もあって、寂しい日々を過ごしていた事だろうな。そんな彼女の心の支えになろうと、付き合いもまだ浅いと言うのに手を差しのべるリュウセイ氏には、我らヒーローに通じるものがある」

 

 学生としてミソラ第二中学校に通う以上、ずっとはここに居られない僕は、セイリュウを置いたまま、病室を出て頼んでいた協力者に後を任せる。

 外に出て待っていたのは、アキハバラの平和を守る正義のヒーローが一人、アイドルオタクのオタブルー。イロモノ揃いのオタレンジャーの中でも、僅かに常識人寄りの人間である彼は、ビビンバードX-Ⅱを肩に乗せてベンチからゆっくりと立ち上がった。そして胸をはり、力強くサムズアップを見せてくれる。

 

「後の事はこの、アキハバラの平和を守る青き翼、オタブルーに任せたまえ!」

「任せました、オタブルー。何があっても、必ず彼女を守ってくださいね」

 

 オタブルーの力強い宣言に僕は安心し、眠気でふらつく足を動かしながら再びミソラ第二中へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リュウセイ君、どうしてもお願いしたい頼みがあるんだ!」

「私からも、お願い!」

 

 山野バンが両手を合わせ、頭まで下げてきたのは、その日の放課後の事だった。彼の隣では揃って川村アミまで両手を合わせて頭を下げていて、なんだか面食らってしまった。

 

「ちょ、ちょっと、そんな頭下げなくて良いって! 二人とも顔上げてって。そんな慌てて、いきなりどうしたのさ」

 

 慌てて二人に頭を上げさせ、どういう事なのかと事情を聞くと、どうやら二人はLBXバトルの練習に付き合って欲しいとの事。

 昨日の僕とハンゾウのバトルを見て、バンがレックスから超プラズマバーストを教わったとはいえ、アルテミスでの優勝は今のままでは難しいと思ったらしい。

 そこで、既にプロとして活躍している僕にLBXバトルの腕を鍛えて貰えないかと考えたと言うことだ。しかし、僕もアルテミスで戦うことになるかもしれないライバルの一人である為、断られるだろうも思いつつもお願いしに来た、と。

 

「良いよ。確かキタジマっていう模型店が商店街の方にあったよね。そこのジオラマを使わせて貰おうか」

「え、良いの!? 絶対断られると思ってたのに」

「プラチナカプセルを守るためにも、バン君達には強くなって貰わないと困るからね。それにこれからは、僕たちはイノベーターと戦う仲間だ。この程度、いくらでも協力するよ」

「ありがとう! アミ、やったな!」

「ええ! これでもっと強くなれるわね!」

 

 手を合わせて喜ぶ二人を見ると、思わず顔がほころんだ。原作ゲームでは結局最後まで何事もなく、Wではアミの方は後半殆ど空気になってしまっていた二人だったが、この世界ではこのまま上手く行って欲しい。前世、ネット上で流行っていたカップリングは青島カズヤと川村アミの『カズアミ』だったが、実際に二人を目にしていると案外これも悪くないんじゃないかなんて思った。

 

「あの、リュウセイ君、その………他のみんなも、呼んでいいかな」

「構わない。あいにくセイリュウは今手元に無いけど、何人でも相手になろう。僕はここで帰りの支度をして待ってるから、呼びたい人は呼んできて」

「本当!? じゃあ、俺みんなのこと呼んでくる!」

 

 そう言って、山野バンは教室を飛び出していった。

 教室には僕とアミが残り、僕はバッグに教育用デバイスなんかを仕舞いながら、バンが走っていった先を眺め続けていたアミに話し掛けた。

 

「………ねぇ、いつから彼の事が好きになったの?」

「っ! ……やっぱりバレてた?」

「うん、バレてた。茶化すような感じで誤魔化してるみたいだけど、結構みんな気付いてる。気付いてないのなんてバン君ぐらいじゃないかな」

「うわぁ、なんか恥ずかしいな。そんなに外に出ちゃってたかぁ」

 

 彼女は頬をほんのりと赤く染めて、恥ずかしそうに手を組んだ。暫く困ったような表情でもじもじした後、勿体ぶった様子で話し始める。

 

「前にね、バン達と、神谷重工のエンジェルスターっていうところに忍び込んだ事があったの」

「エンジェルスター………最初に山野博士が幽閉されていた施設か」

「そう。それで、そこの奥でおっきな機械と戦う事になったんだけど、狙撃してたハンターを鬱陶しく思ったのかしら。ハンターを狙ったその機械のレーザーが私の方に飛んできて、私動けなかった」

 

 機械、おそらく『イジテウス』の事だろうが、その話を聞いて、また一つ原作との乖離が起きていた事を知る。原作ゲームでは、目の前にLBXの操縦者であるバン達がいるにも関わらず、イジテウスはバン達を狙う事は無かった。イジテウスの操縦者であった霧島に残っていた良心が、バン達を狙うことを許さなかったと考えていたが、流れ弾の一つもバン達に行かないと言うのも不思議な話だとは思っていたが。

 

「レーザーが? 流石に子供を狙う筈は無いから、誤射か………でも、今君は無事に生きている」

「そうねぇ。わたし、もしかしたらあの時死んでたかも。でも、アキレスの操作に集中してたはずのバンが飛び出してきて、お陰で助かった」

「へえ。もしかしてそれで好きになったの?」

「ううん、それはただの切っ掛け。幼馴染みだったからかな。あんまりバンの事、男の子として見たこと無かったんだけどね、あの時「大丈夫か!?」って叫びながら抱き締めてきて、あぁ、いつものバンだなぁって思った」

 

 そう言って、彼女はピンク色にカラーリングしたクノイチをジャンプさせて手に乗せた。学校一の美少女である彼女と、その手の上で立つクノイチはさながら天使と妖精のようで、彼女に愛される山野バンはとんでもない幸せ者だなと、心の中で呟いた。

 

「つまり、いつものバン君に惚れてた事に、やっと気付かされたって事?」

「惚れてるって! まぁ、そう、だけど………なんだろうね。多分、ずっと心のどこかで意識してたんだ。LBXだって、バンが好きだって聞いたから始めて、色々教えてあげられるように沢山勉強して、結局自分もLBXが大好きになっちゃったけど、やっぱりバンと一緒にLBXで戦えるのは、凄く楽しい」

「そうかぁ。いいなぁ、青春だなぁ」

「青春って、リュウセイ君だって同い年じゃない! お年寄りみたいな事言うのね」

「僕はずっと会社暮らしで、そういうのとはてんで縁が無かったから。応援してるよ、アミさん。絶対に上手く行く」

「ほんとぉ? バンの事だから私の気持ちになんて気付きもしなさそうだけどなぁ」

「大丈夫だって………あっ、バン君も戻ってきたみたいだし、そろそろ行こうか」

 

 学校じゅうに散らばっていたシーカーの仲間達を集めてきたバンが、全速力で教室に戻ってきた。大きな声で僕とアミを呼ぶ彼に、乙女の顔を隠していつもの川村アミになった彼女は駆け寄っていく。僕も、そんな彼女に続いてバンの元へと駆け出した。

 

 集まったのは山野バン、川村アミ、青島カズヤ、大口寺リュウ、郷田ハンゾウ、御影ミカの六人。四天王郷田三人衆の三人は、それぞれ別に用事があるとかで集まれなかったらしい。

 最後に僕を加えた計7人は、すぐに商店街のキタジマ模型店へと向かった。キタジマ模型店につくと、僕は真っ先に模型店の入り口から店内に入ろうとする。

 

「リュウセイ君? 練習用のジオラマなら外にあるけど……」

「うん、わかってるよ。でもその前に準備しておこうと思って」

「準備?」

 

 店内に入るとすぐに、元気な女性の声に出迎えられた。

 

「いらっしゃい! キタジマ模型店へようこそ」

 

 上半身はその豊満な胸を隠すチューブトップのみと、お年頃の青少年には些か刺激が強すぎる格好の金髪の女性。キタジマ模型店の販売担当、北島沙希である。

 

「おう、いらっしゃい皆! 新しい顔が増えてるな。例の転校生クンかい? って、もしかして」

 

 続いて店のバックヤードから沢山のLBXの箱を抱えて現れたのは、健康的に日焼けした肌のがっしりとした体つきの男性。言わずもがな、キタジマ模型店の店長、北島小次郎だ。

 

「ああ、本物の青柳リュウセイなんだ! 今日はアルテミスに向けて一緒に練習しにきたんだ」

「先日こっちの方に引っ越して来ました、青柳リュウセイと申します。これから何度もお世話になるかと思うので、宜しくお願いします」

「ハッハッハ、マジかよあの青柳リュウセイが! ほら、みんな入り口で固まってないでもっと中に入りな。あんま広い店じゃないけどな」

 

 ぞろぞろと7人が店の中に入り、店の中はほとんど埋め尽くされる。確かに他のLBX販売店と比べれば多少こぢんまりとしてはいるが、暖かみのある店の雰囲気と丁寧にメンテナンスされた展示用のLBXには好感を持てた。ざっと見たところ、LBXは一般に流通しているものばかりだが品揃えも広く、むしろ今まで見てきたLBX販売店の中でもかなり良い。

 

「成る程………良い、お店ですね」

「本当かい? 西日本チャンプにそう言って貰えるなんて嬉しいねぇ。アルテミスでも応援してるから、是非ともウチの贔屓になってくれよな」

「ちょっ、キタジマ店長! 俺たちの事は応援しないの?」

「ハハハ。もちろん応援するに決まってるだろ。全員が優勝なんて出来ないけどさ、みんなの事、応援してるぜ」

 

 キタジマ店長はそう言って笑いながらバンの頭をわしゃわしゃと撫でた。いきなり子供扱いされて恥ずかしがるバンを、皆は微笑ましそうに眺める。キタジマ模型店の北島小次郎と北島沙希。まるで、みんなのお父さんとお母さんと言ったところだろうか。

 

 バンがキタジマ店長のわしゃわしゃ攻撃から解放されたのを見て、僕はバッグからちぎって折り畳んでいたメモを取り出した。そしてキタジマ店長と沙希さんの前に行き、メモを開いて見せる。

 

「それで早速なんですけど、アルテミスに向けてこのメモに書いてあるぶんのLBXを、コアスケルトンごと欲しいんですが……」

「へぇー。どれどれ? って、こんなに!?」

「うおっ! マジか! 本当に、これだけのLBXを買うのか? クレジットとか、足りるのか?」

「僕は大丈夫です。お金の心配なら要りません」

「はー、流石は一線で活躍するLBXプレイヤーって訳だ。そうだな……生憎タイタンは切らしてるが、他なら全部あるぜ。それでも良いか?」

「はい、お願いします!」

 

 メモの内容に二人は少々面食らっていたものの、一機を除いて全部用意出来ると言ってくれた。正直断られるかと思っていた所だったのだが、流石は山野バンも足しげく通うLBX販売店。天下のキタジマ模型店様は器が違った。

 メモを片手にキタジマ店長はバックヤードへとすっとんで行き、頼んだLBXを次から次へと持ってくる。カウンターには組み立て済みLBXの箱が山のように積まれ、LBX好きなら垂涎ものの光景が出来上がった。

 

「えーと、合計で16万5千クレジットね。まいどあり!」

「じゃあカードで……」

「あとこれも宜しく!」

「ん?」

 

 料金を支払おうと財布を出していると、ずいっと一枚の色紙を差し出された。

 

「ウチもそろそろ有名人の色紙とか? あったら良いなぁって……」

 

 恥ずかしそうに笑うキタジマ店長。僕はそれに笑顔で返し、料金を支払って色紙にサインを書いた。

 

「うわぁ………すごい量のLBX。こんなにどうするの?」

「しかも全部コアスケルトン付きって……そんな一度に操作出来ないだろ」

 

 ドン引きするバンとカズに横目に、僕は早速箱からLBX達を取り出して片っ端から自分のCCMと接続させていく。

 これは全てアルテミスでのイノベーターとの戦いに向けての布石であり、確実にバン達を勝ち上がらせる為の仮想敵。

 中身を出し終わった箱はDキューブと同じように小さく格納され、全てバッグの中にしまった。

 

「今からバン達にはこの12機のLBX達と戦って貰う。流石にレギュレーションはスタンダードで止めておくけど、これから先、イノベーターとの戦いで複数のLBXを同時に相手にする事もあるから、慣れといた方がいい。こっちは三体を除いて残りはCPU任せにするよ」

「成る程! でも、この練習方法で、アルテミスでの戦いに通用するかな……」

「大丈夫だよバン君。僕もデビュー前はいつも10人を相手にして練習してたから。僕が強くなれたんだから、バン君達ならもっと強くなれるよ」

「……うん。わかった。よぉーし、頑張るぞ!みんな!」

 

「「おおーっ!」」

 

 再び気合いを入れるバン達六人。キタジマ店長にジオラマを借りる事を伝えて、僕たちは外に出た。

 大量のLBX達を引き連れてジオラマの前に立つと、郷田ハンゾウがリュウとミカを引き連れてジオラマの反対側に立った。

 

「まずは俺からでも良いか? バン達はチームが決まってるからよ、残った俺たちが組む」

「バン達がいいなら大丈夫。でも、ハンゾウのハカイオーは昨日僕が壊しちゃったばかりだったと思うんだけど………」

「おう! それがよ、実はハカイオーの後継機を親父が会社で作ってくれてたらしくてな……見てくれよ、これが俺の新しいLBX!」

 

 そう言ってハンゾウは一機のLBXを取り出した。出てきたのは、本来ならばまだ彼の手元にはあるはずの無かったLBX。それを見て、僕の介入によって着々と未来が変わってきている事を実感した。

 

「『ハカイオー絶斗』だ!」

「郷田さんかっこいい」

 

 胸の砲門を2基に増やし、剣という名のチェーンソー『絶・破岩刃』を手に、ハカイオーはハカイオー絶斗へと進化して、戻ってきたのだった。

 

 

アミの最終機体、どれがいい?

  • シャルナック
  • ダークパンドラ
  • ホーネット
  • パンドラのままが良い!
  • 正直どれでも良い……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。