世界大会アルテミス攻略RTAはーじまーるよー
「これがアルテミス……世界最高の舞台」
「あ、あわわ。い、いっ、いまから緊張してっ」
「ユジンさん落ち着いて下さい。ほら、深呼吸して、スー、ハー」
「…………すぅぅぅぅっ」
「不味い! ユジンさんが息を吸ったまま戻ってこなくなった! 衛生へーい!」
「チャリオット2、お前も落ち着け」
世界最高のLBXプレイヤーが決まる瞬間を見ようと、大勢の人々が集まったアルテミスの会場を前にして、僕は同じく大会参加者の『オタレッド』ことユジンさんと、プロメテウス社をスポンサーにつけるLBXチーム『アーミーチャリオット』の三人と一緒にその舞台を見上げていた。
元来気が弱く、人前に出るのが苦手なユジンさんが、大勢の人々が集まった会場を見て速攻で倒れ、それをアーミーチャリオットの三人の内の二人が慌てて介抱している。息を吸ったまま息を引き取るというだいぶ器用な事をやってのけたユジンは、気絶したまましばらく戻ってきそうには無かった。
「やっぱりユジンさんにアキハバラ以外での大会はキツかったかなぁ」
「ふあぁぁ……大丈夫ですよ。ユジンさんはヒーローですから。やる時はやりますって」
「リュウセイくん。君も大丈夫かい? 随分と眠そうだし、隈もひどい。例の山野バン君って子の訓練と、ルナちゃんを守るので忙しくて寝る間も無かったんじゃないか?」
「だい、じょうぶです、チャリオット3さん。バトルが始まれば、目は覚めますから」
「大丈夫じゃないじゃないか、全く。まだ開会まで時間もあるし、会場内に休憩室ぐらいあるだろうし、そこで仮眠でもとろう。時間になったら僕らが起こして挙げるから」
「すみません………ありがとうございます」
チャリオット3さんに言われた通りに、バン君達の訓練とルナさんの護衛とでここの所忙しく、ロクに睡眠時間を取れていなかった僕は余りの眠気に倒れる寸前だった。
チャリオット1とチャリオット2の二人が気絶したユジンの身体を支え、五人揃って会場に入った僕らは全員分の選手登録を済ませ、休憩室へと直行した。僕とユジンさんはすぐにソファに横にされ、その瞬間に溜まっていた疲れがどっと放出されたのか、自分でも驚くほどに速く眠りへと落ちる。気がついた時には開会式直前の時間になっていて、アーミーチャリオットの三人に連れられて、僕は開会式の行われるスタジアムへと向かったのだった。
スタジアム内は照明が消され、暗闇に包まれるなか、スポットライトと共にスタジアム中央に現れたMCの声だけが大きく響く。
『2046年。『強化ダンボール』の発明によって世界の物流は革命的な進歩を遂げた。革新的な『未来の箱』が、運送手段の常識を覆したのだ。しかし、その箱は全く別の目的で使われることになる。ホビー用小型ロボット『LBX』の戦場として』
MCによる静かな語りから始まった開会式。会場に集まった誰もが静かに、彼の語りに耳を傾けていた。
『少年達の戦いはストリートを飛び出し、そして世界へ飛び出した。 集え! LBXプレイヤー達よ! 世界の頂点をかけて!』
力強く会場に響き渡る彼の言葉に、観客や参加者達から大きな歓声があがる。そうだ、今年も遂に始まるのだ。
『これより! 第三回LBX世界大会『アルテミス』を開幕致します!』
会場じゅうから「おおーっ」という声があがり、会場の熱気は留まることを知らずに上昇を続ける。
アルテミスMCはマイク片手にステージの上を端へと移動して、更に声をはりあげた。
『いよいよここで、アルテミスの賞品の発表となります! 今回のLBX世界大会、アルテミスのその栄えある優勝者に与えられる賞品は………こちらです!』
踊る四色のスポットライト。MCがサッと腕でその場所を示した瞬間、四色のスポットライトは一点を集中して照らして止まった。スポットライトの下に居たのは、アルテミスのコンパニオンの格好をした一人の女性。
人々がいったいどういう事だとどよめく中、彼女は堂々とした歩みでステージの中央に立ち、ポーズを決める。その瞬間、驚くべき事に女性の胸の中心が開き、中から精密機械が姿を現した。
『さあ、今回の賞品が姿を現しました!! 今回の賞品はこの高性能アンドロイドをたった一つの回路でコントロールできる超高性能CPU、『メタナスGX』です!!』
その瞬間、スタジアムに凄まじい歓声が沸き起こった。なんたって見た目だけだと本物の人間との区別がつかないほどの高性能アンドロイドを、たった一つの回路でコントロールできてしまう程のCPUなのだ。もしも、あのCPUをアンドロイドではなくLBXに使ったならば………きっとそれは世界で最強のLBXになる。優勝者はそんなとてつもないものを手にできるとあって、参加者達の気合いも充分。
「メタナスGX……必ず私達で守り抜いてみせましょう」
「はい。ユジンさん………いえ、オタレッド」
共にイノベーターと戦う仲間として、アルテミスに参加することが出来たユジンさんとアーミーチャリオットの三人。アルテミス優勝と、メタナスGXの防衛という二つの目標に、五人の心は今、一つになった。
「あ、私はここで。大丈夫です、一番落ち着くので……」
「わかりました。それじゃあオタレッドさん、また後で」
「はい、また………あ、いえ。スゥーーッ………また会おう、少年!」
アルテミス会場には、様々なLBXメーカーや販売店がブースを出している。その中にあったアキハバラの正規模型店のブースに、オタレッドは吸い込まれるように引き寄せられていった。どうやらあのブースだけ空気がアキハバラで、落ち着くのだと言う。
「それでは我々もこの辺で。決勝で会いましょう」
「はい、中々に厳しいブロックですけど、お互い頑張りましょう」
プロメテウス社のブース前まで来て、アーミーチャリオットの三人とも別れた。彼等は山野バンや森上ケイタと同じCブロックに振り分けられており、順当に行けば山野バンチームとCブロック準決勝でぶつかる事になるだろう。
青柳リュウセイとして生きてきた身としては、付き合いの長いアーミーチャリオットに勝ってほしい所だが、ストーリーの進行上、勝利するのは山野バンチームになるだろう。僕が大会直前まで彼等を鍛え続けたせいで、彼等は原作を遥かに凌駕する程の強さへと成長した事もあり、おそらくこれは揺るがない。
「それにしても、速くマスクドJを見つけないと」
開会式が終わり、発表されたトーナメント表を見て僕は衝撃を受けた。
何故なら、マスクドJこと山野淳一郎の振り分けられたブロックに、神谷重工の『四神』が一人、虎杖ハクビの名前があったのだ。しかもどうやらご丁寧に神谷のテストプレイヤーまで連れてきている。
これを見て、自分が灰原ユウヤと同じブロックだった事さえもどうでも良くなる程に驚いた。あの男に勝てるようなプレイヤーなんて、山野バンか海道ジンくらいしか思い浮かばない。
もしもマスクドJが勝ち上がらなかった場合、何が起きてしまうのか。それは、決勝戦にてマスクドJのLBX『マスカレードJ』がバンの『アキレス』に接触する事が出来ず、プラチナカプセルに後のバンのLBX『オーディーン』の設計図を書き込む事が出来なくなってしまうのだ。
主人公の機体が強化されないのは余りにも大きすぎる痛手だ。山野バンにオーディーンを持たせるためにも、決勝戦にマスクドJを進める以外の方法での、マスカレードJとアキレスとの接触が必要だった。
「マスクドJ。どこだ、どこだ……」
「私をお探しかな、少年」
「う、うわっ!?」
中々見付けられないマスクドJを探していると、突然背後から聞きなれた声がした。驚きつつも後ろを振り返ると、怪傑ゾロのような格好をした壮年の男性がこちらを見下ろしていた。
「ま、マスクドJ。あなたでしたか」
「驚かせてすまなかったね、青柳少年。それより、私に話があったのだろう?」
「ああ! それなんですけど……」
万一、今から話すことをイノベーターの人間に聞かれたら困る。周囲にだれもいない事を確認して、彼と目を合わせた。
「虎杖ハクビ。彼は強い。貴方では敵わないかもしれない」
「ふむ。私では勝てないと言うのかね?」
「えっ! あっ、まぁ………はい」
「だがそれを私に話すことに何の意味がある。虎杖少年が勝ち上がると考えているのなら、わざわざ私を煽りに来たという訳でもあるまい」
「それは……」
言葉にしようとして、一瞬躊躇した。このままだと起こり得る最悪の展開を話すべきなのか。それを話して、彼に不信感を抱かれて、敵対されてしまえばそれまでだ。だが、
「……このままでは、アキレスは破壊され、プラチナカプセルはメタナスGX共々イノベーターに奪われてしまいます」
オーディーンの設計図を渡せなくなる未来に気付かせようと、出来るだけ遠回しに、それでいて誰でも知り得る可能性のある情報を出した。マスクドJはそれを聞いて、訝しむような視線を此方に向けてくる。
「! ………何故、君がそれを知っている? シーカーの仲間だとは聞いていないが」
「………」
僕は無言でポケットから神谷重工の、未だ試作段階にあるLBX『トロイ』を取り出して彼に見せた。彼の表情は一層険しいものになり、しかし納得したといった風に僅かに頷く。
「山野バンという大きな戦力が失われるのは、イノベーターとの戦いにおいて大きな痛手になります。そして、身を隠して生活している貴方がこれ程の大舞台に現れた理由。それは山野バンにどうしても接触しなければならない目的があったからとしか思えない」
「ふむ………成る程。イノベーターが君の裏切りに慌てふためく訳だ。良いだろう、CCMを出しなさい、少年」
「? ええ、はい」
言われた通りにCCMを出すと、彼は自身のCCMをそれに近付けて、何かのデータを送ってきた。データには厳重な保護がかけられていて、僕一人の力ではまず開くことは出来ないだろう。
「君が決勝戦に進む事があったら、これをアキレスに送信しなさい」
「っ! ………新たなる希望、ですか」
「その通り。君が私では難しいと言い出したのだぞ? ならば君が私の目的を果たしたまえ」
「……はいっ!」
彼は帽子を深く被り直すと、CCMを操作してマスカレードJを自身の肩に乗せてくるりと振り返り去ってゆく。
彼から送られてきたデータ。これこそ、山野バンが最後の戦いまで愛用する事になるLBX『オーディーン』の設計図に違いない。
本来であれば彼のプラチナカプセルにこのデータを書き加えるのはマスクドJの操るマスカレードJの仕事だったが、それが出来そうにない現状、彼は大切なこのデータを僕に託す事に賭けたのだ。少々予想外だったが、そんな彼の期待を裏切るわけにはいかない。身の引き締まる思いだった。
「山野バン……」
ふと見上げたモニターに、Cブロックでの戦闘の様子が映っていた。
戦っているのは山野バンチームとジョン&ポール。戦闘に出ているのは山野バンと川村アミで、仮にも北米エリアチャンピオンである彼等を相手に一方的とも言える戦いを繰り広げていた。
「いっけー、アキレス!」
「いくわよ、クノイチ!」
アタックファンクション! ライトスピア!
アタックファンクション! 旋風!
ぴったりと息のあったアキレスとクノイチのコンビネーション攻撃に、二人同時に空中へと吹っ飛ばされたオルテガとタイタン。回避不可能な二機に向かって、アキレスとクノイチのアタックファンクションが容赦なく襲いかかる。
アキレスの槍から真っ直ぐに放たれた光の槍がオルテガを貫き、クノイチの回転しながら放たれる高速の拳がタイタンの装甲をボコボコに凹ませていく。二機は大きすぎるダメージに、限界を迎えて爆散してしまった。
『おおっと山野バンチームvsジョン&ポールが決着ゥゥ~! 山野バンチーム、まさかのファイナルブレイクでの圧倒的な勝利だぁぁっ!』
「やったー! 勝ったぞ!」
「私達にかかればこんなもんよ!」
同い年だと言うのに、そう言って笑いあい、ハイタッチをして喜ぶ彼等が、とても眩しく見えた。
【マスカレードJ】
山野バンの父、山野淳一郎が世界大会アルテミスに参加する為に作り上げたストライダーフレームのLBX。オレンジと白がメインカラーの流線的なフォルムの機体。原作ゲームではレイピアを片手に圧倒的な実力で決勝戦まで駆け上がった。
初出はゲーム『ダンボール戦機』。
【クノイチ】
サイバーランス社製のストライダーフレームのLBX。女忍者をモチーフにした機体で、メインカラーは紫。アマゾネス、クイーンと並んで女性からの人気が高い。川村アミの使うピンク色のクノイチは、独自の調整が施されており通常のクノイチよりも高い性能を発揮する。
初出はゲーム『ダンボール戦機』。
アミの最終機体、どれがいい?
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シャルナック
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ダークパンドラ
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ホーネット
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パンドラのままが良い!
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正直どれでも良い……