【この面倒くさがり屋の星狩に、祝福を!】   作:完龍卞

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六話

 

 

 「おーし、ご苦労さーん!今日はこれで上がっていいぞ!ほら、今日の日当だ」

 

 「どうもです。お疲れっしたー!」

 

 「どもです!したー!」

 

 

 親方の仕事の終了の声で、俺とアクアは日当を受け取ると挨拶と共に頭を下げる。

 

 

 「じゃあ、皆さんお先―っす!」

 

 「お先ーっす!」

 

 「おーう、お疲れ! また明日も頼むな!」

 

 俺が先輩達に挨拶すると、アクアも俺に続いて挨拶する。先輩の声を聞きながら、俺とアクアは現場を後にした。

 

 ああ、今日も一日働いた。

 

 俺がニートだったなんて、自分でも信じられない話だ。俺とアクアは日当を握り締め、街の大衆浴場に向かう。大衆浴場は日本の銭湯とほぼ変わりは無い。

 

 日本に比べれば、一般の人の平均賃金に換算すると入浴料は割高だが、仕事終わりの風呂は、ちょっと高くともやめられない。

 

 

 「オウフ…………生き返るわー…………」

 

 

 熱い湯船に肩まで浸かり、仕事の疲れをゆっくり癒す。異世界では風呂なんて贅沢品だと思っていたが、異世界イコール中世ヨーロッパと認識している、俺の勝手な思い込みだった様だ。

 

 地球でヨーロッパ辺りでの風呂文化が無かったのは、水が貴重であるという事が理由の一つにある。

 

 そして、湯を沸かす大変さだ。

 

 ここでは、日本ほどではないが水はそれほどの貴重品では無いらしい。湯を沸かすのも、風呂の様に大量のお湯を沸かすなら、ファイアーボールを水に放り込んで一発らしい。

 

 むしろ、鍋に張った水の様に、少量のお湯を用意する方が大変なのだそうな。この大衆浴場には、専用のお湯沸し魔法使いなんてのも居たりする。

 

 水に放り込むファイアーボールの熱量の加減で、ぬるかったり沸騰したりするから意外と難しい。

 

 風呂から上がると、アクアが浴場の入り口で待っていてくれた。女よりも長風呂なのもどうかと思うが、風呂好き日本人のサガだ。

 

 こればっかりはどうしようもない。

 

 

 「今日は何食べる?私、スモークリザードのハンバーグがいい。あとキンキンに冷えたクリムゾンビアー!」

 

 「俺も肉系がいいな。それじゃ、宿屋のおっちゃんにスモークリザードのハンバーグ定食二人前頼むか」

 

 「異議なし!」

 

 

 アクアと二人、定食を平らげて満足すると、特にやる事もないし馬小屋に。馬糞が付いていない藁を選んで寝床を作ると、早々と横になった。

 

 隣には当たり前のようにアクアが寝転がる。

 

 

 「じゃあ、お休みー」

 

 「おう、お休み。…………ふう、今日もよく働いたなあ…………」

 

 

 そして俺は、心地よい疲れと共に、深い眠りに…………

 

 

 「いや、待ってくれ」

 

 「…………?どしたん?寝る前のトイレ、行き忘れた? 暗いし付いてってあげようか?」

 

 「いらんわ。いやそうじゃなくてな。俺達、何で当たり前の様に普通に労働者やってんだって思ってさ」

 

 

 そう。

 

 俺とアクアはここ2週間ほど、ずっと街の外壁の拡張工事の仕事をしていた。

 

 つまりは土木工事の作業員。

 

 俺がこの世界に求めていた、冒険者稼業なんて物とは程遠い。いや、というかなんでアクアは何の疑問もなくこの生活に馴染んでんだ。

 

 お前は一応女神だろ。

 

 

 「そりゃ、仕事しなきゃご飯も食べられないじゃん。工事の仕事は嫌なの?全く、これだからニートは。一応、ドブさらいとかの仕事もあるけど?」

 

 「そうじゃねえ!そうじゃなく、俺が求めてるのはこう、モンスターとの戦闘!みたいなね?」

 

 

 熱くなり、つい大声になる俺の声に、周りから罵声が飛んだ。

 

 

 「おい、うるせーぞ!静かに寝ろ!」

 

 「あっ、すいません!」

 

 

 駆け出しの冒険者は貧乏です。宿に部屋をとって毎日寝泊りとか、普通はありえない。一般的には、他の冒険者達と金を出し合って大部屋で雑魚寝とか。

 

 今の俺達の様に、宿の馬小屋を借りて藁の上で寝るとかそんなんらしい。

 

 うん、想像してた異世界暮らし、期待していた冒険者生活と全然違うな。宿暮らしって事は、日本で言えば毎日ホテルで寝泊りする様なもの。

 

 収入が不安定な冒険者には無理な話だ。

 

 収入が不安定。そう、予想していた簡単な採取クエストだの、街の近くでのモンスター討伐だのといったクエストなんて一つも無かった。

 

 コボルト討伐とかしてその日の宿代稼ぐとか、そんなお約束はどこ行ったとばかりに、危険な仕事しか残っていなかった。

 

 街の近くにある森に住んでいたモンスターは、とっくの昔に軒並み駆除されたそうだ。モンスターもいない安全な森の中、採取クエストなんてものをわざわざ金出してまで人に頼む者はあまりいない。

 

 そりゃそうだ。

 

 街の外には子供だって出るだろう。

 

 門番もいるが、蟻の子一匹出入りさせないなんて警備をずっと続けるよりも、それ程巨大な森でないならとっとと人に害をなすモンスターを駆除してしまえばいい話だ。

 

 言われてみれば当たり前だが、そんな現実的な事はあまり知りたくなかった。

 

 RPGによくある、素人に毛が生えた様な冒険者でも簡単に見分けが付く様な薬草だのを、森に入って半日ほど採取しただけで、その日のホテル代と三食分の金が稼げる。

 

 そんなおいしい仕事がある訳もないってか。

 

 日本で例えれば、半日ほど山で山菜取りでもしたって、そこまで稼げないだろう。ましてや、アフリカだとかの発展途上国の一部とかだと、丸一日働いて、トウモロコシのスープとちょろっとした穀物が一日二回貰える程度とか聞いた。

 

 ここより文明が発達した地球ですらそんなんなのに、ここでそんなにうまい話が転がっている訳が無い。

 

 考えてみれば、地球でも裕福な国である日本ですら、ホテル暮らしの日雇い労働者なんていないだろう。最低賃金?労働基準法?なにそれおいしいの? 

 

 ここは、そんな世界だ。

 

 

 

 「つまり、冒険者らしい事がしたいって訳?まだロクな装備が整ってもいないのに?」

 

 

 アクアの真っ当な意見にぐうの音もでない。

 

 そう、俺とアクアは、必要最低限の冒険用の道具や装備すら持っていない為、まずそれらを手に入れる為に、ここのところずっと、安全な土木作業のバイトに勤しんでいたのだ。

 

 

 「そろそろ土木作業ばっかやってるのも飽きたんだよ…………。俺、労働者やりに異世界に来たんじゃないぞ。パソコンもゲームもロクに娯楽の無い世界だが、俺は冒険する為にここに来たんだ。一応魔王やらに対抗する為にここに送られてきたんだろ、俺は?ならレベル上げくらいしとかないと、いざ街が攻められた時とか、逃げられもしないで殺されるかもしれないし。今のところ、簡単な討伐クエストとやらは無いらしいが、逆に言えば簡単じゃない討伐クエストならあるって事だろ?」

 

 

 俺の言葉に、なんの話だ?といった顔でしばし考え込んでいたアクアは、

 

 

 「おおっ! そういえばそんな話もあったわね。そうよ、労働の喜びに夢中になって忘れてたけど、そうじゃないわ。カズマの前にここに送り込んだ、あの頼りない連中が魔王討伐に失敗してこの世界が滅ぼされたら、この世界に降りて来た私も他人事じゃないじゃないの!」

 

 

 そういや、こいつは受付のお姉さんに知力のステータスが人より低いって言われてたなと納得する。

 

 

 「いいわ、討伐行きましょう討伐!大丈夫、この私がいるからにはサクッと終わるわよ!期待して頂戴!」

 

 「な、なんかもの凄く不安だが…………おし、それじゃ、貯まった金で最低限の武具を揃えて、明日はレベル上げだ!」

 

 「おうともさ!」

 

 「うるせーってんだろこらっ!しばかれてーのか!」

 

 「「すいません!」」

 

 

 他の冒険者に謝りながらも、俺は心を躍らせて眠りに付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□□□□

 

 

 よう、俺だ。

 

 あ?俺って誰だって?

 

 …………お前、喰われなきゃわからないらしいな?

 

 変、身。

 

 

 『ガオウフォーム』

 

 

 銅色のオーラアーマーに、身体の至る所にワニの意図が見られるその外観。

 

 そう、それは【仮面ライダーガオウ】。

 

 平成ライダーシリーズの一つである【仮面ライダー電王】の劇場版に登場した悪役仮面ライダー。俺の端末に登録されている【ライダーショップ】にて売られている【ガオウツール】を購入する事で変身できる仮面ライダーだ。

 

 

 「そ、それが貴方の転生特典ですか?」

 

 「ん、そうだ」

 

 

 俺が仮面ライダーガオウへと変身する様を見ていたエリーが驚愕に染まった顔を向けていた。ちなみに嘘である。

 

 

 「よし、殺るか」

 

 「は、はい!」

 

 

 さて、食事といきますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんでこうなったかと言うと、それはカズマ一行がギルドに来ては冒険者になった日のことだ。

 

 

 「どうも、ルナさん。こんにちは」

 

 「あ、亜神さん!クエストですか?」

 

 「いや、今日は…………」

 

 「私の冒険者登録をしに来ました。その後、亜神さんと一緒にクエストに」

 

 「あ、はい…………それでは登録手数料として1000エリス掛かりますが、大丈夫でしょうか?」 

 

 

 ルナさんに言われ、俺は千エリスを差し出す。…………ん?隣から視線が…………なんだエリーか。

 

 

 「?どうした?」

 

 「い、いえ、どうしたも何も、お金ぐらいありますって」

 

 「さすがに同じパーティを組もうとしている人がいるし、協力者には優しくすることを決めてるからな。ここは払わせてくれ」

 

 「わ、分かりました…………」

 

 「…………亜神さんは、この人とどういう関係なんですか?」

 

 「俺と?…………色々あったんだよ、色々」

 

 「そう、ですか…………」

 

 

 …………なんだ?ルナさんの顔色が暗いが。

 

 

 「どうかしm「はい、丁度お受け取りました。冒険者についての説明は大丈夫ですか?」…………」

 

 「大丈夫です」

 

 「わかりました。それでは…………こちらの書類にございます、空欄の項目、体重、年齢、身長、身体的特徴等の記録をお願いします」

 

 「はい、分かりました」

 

 

 スラスラと用紙に書き入れていくエリー。

 

 

 「はい、結構です。エリー様ですね、次はこちらのカードに触れてください。そうすると、エリー様のステータスが分かりますので、その数値により職業を選んでください、選んだ職業によって専用スキルがあるので、それも踏まえてお願いします」

 

 

 ルナさんに言われ、エリーはカードへと触れる。

 

 彼女がカードに手を触れると、俺と同じように青色に光り、文字が浮かび上がってくる。

 

 さ〜て、なんて書いてるかな?

 

 

 「はい、ありがとうございますエリー様。ええと…………ん?は?えぇ?」

 

 

 目の前にいる職員さんが何度も目を擦りカードを見直している、なんでだろう…………もしかしてヤバいこと書いてあった?でもそんなの原作になかったしよ。どうなんだ?

 

 

 「あ、あなたは何者ですか!?生命力、器用度、知力、幸運が高いどころか高すぎます!あ、それでも筋力と敏捷性が平均よりも低いですね…………これでしたら、筋力を使うソードマスターやクルセイダーなどにはなれませんが、アークウィザードやアークプリーストなどの上級職になることができますよ!」

 

 「なら、アークプリーストでお願いします」

 

 「アークプリーストですね?それではで…………冒険者ギルドへようこそエリー様。今後の活躍を期待しています!」

 

 「よし…………そんじゃ早速で悪いんだが、クエストに行きたいんだ。ジャイアントトードのヤツは、まだあるかな?」

 

 「ジャイアントトードですか…………はい、まだありますよ。お受けしますか?」

 

 「ああ、頼む。少し試したいことがあるからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………という事だ。

 

 無事俺は、アークプリーストになったエリーと共に実験ついでにジャイアントトードを狩りに来ている。ってよく見たら…………あれってカズマ一行じゃねえか。

 

 

 『…………まあいい。顔は割れてない』

 

 「いや、私のは割れてますよ!?」

 

 『…………行くぞ!』

 

 「ちょ!?ちょっと待ってください!」

 

 『なんだ、エリー。怖いのか?』

 

 「い、いえ…………私は、どうすれば良いでしょうか?アークプリーストは後衛なので、亜神さんに守っていただかないと…………」

 

 『…………これを使え』

 

 

 ギャレンラウザーをエリーに渡す。これさえあれば後衛でも戦えるだろ。

 

 

 「これは…………銃、ですか?」

 

 『まんま見ての通りだ。…………行くぞ?』

 

 「はい!」

 

 

 さて、まず最初に俺が買った【ガオウツール】について説明しようじゃないか。

 

 【ガオウツール】とは文字言葉通り【仮面ライダーガオウ】に関係するものを纏めた物だ。

 

 付属しているものは、インフィニティのマークが描かれた、金色のパス【マスターパス】と変身時にかなり荘厳なパイプオルガンの変身音と同時に炎と共に腰に出現する【ガオウベルト】、そして専用武器の鋸状の刃が付いた【ガオウガッシャー】。

 

 劇場版には、【ガオウライナー】とかいう『時を消す列車』とか言われた奴もあったが、あれは付属されてなかったわ。

 

 

 『オラッ!』

 

 

 ガスっと【ガオウガッシャー】を蛙の頭に叩きつけては切るのではなく強く押し潰すように引く。【仮面ライダー電王】の武器である似た形状をした【デンガッシャー】だったら普通に剣のように切ってくスタイルなのだが【ガオウガッシャー】の刃は鋸状のため、こうやった方が殺りやすいしダメージが大きい。

 

 

 「ゲゴオォォ!?」

 

 『フッハッハッハッハ!喰われろ!』

 

 「ゲゴッ!?ゲゴ!?ゲッゴォ!?」

 

 

 BAN!BAN!BAN!

 

 

 「…………何か、楽ですね」

 

 『そりぁ、そうだろ。銃だからな』

 

 「終わったのですか?」

 

 『聞くより見ろ。百聞は一見にしかず、そこにあるぞ』

 

 「え?…………うわぁ」

 

 『なんだその声』

 

 「いや、だって…………」

 

 

 周りを見て、俺に引くエリー。

 

 …………確かに俺は押し潰す感覚でガオウガッシャーを振り回しては蛙を殺していった。それで、蛙殺しが楽しくなった俺はエリーが戦っている奴以外の蛙をバッタバッタと斬り殺して言ったら…………辺り一帯が蛙の地獄と化していた。

 

 やり過ぎたわ、これ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ああああああああ!助けてくれ!アクア、助けてくれえええええ!」

 

 「プークスクス!やばい、超うけるんですけど! 顔真っ赤で涙目で、必死過ぎるでしょカズマ!」

 

 

 よし、こいつは殺そう。

 

 俺はそう決心しながら、巨大なカエル、ジャイアントトードに追いかけられながらアクアに助けを求めて逃げ回っていた。

 

 必要最小限の武器、俺はショートソードとダガーを。アクアは、プリーストって言ったら素手じゃね? メイスもいいけど、素手でモンスターを屠る武闘派美人僧侶ってよくね?とアホな事を口走って、無装備でのん気に、カエルに追われる俺を眺めていた。

 

 たかがカエルと侮れない。

 

 大きさは牛を越える巨大さで、こいつらは繁殖の時期になると、産卵の為の体力を付ける為か、エサの多い人里にまで現れて、農家の人の飼っている山羊を丸呑みにしてまわるらしい。

 

 山羊を丸呑みってんだから、俺やアクアだってもちろん余裕だろう。実際に、毎年このカエルの繁殖期には人里の子供やら農家の人やらが行方不明になるそうだ。

 

 見た目はただの巨大なカエル。

 

 だが、街の近隣で駆除された、弱っちいモンスターとは比較にならない程に危険視されているモンスター。ちなみに、その肉は多少の硬さはあるが、淡白でサッパリしていて食材として大変喜ばれるらしい。

 

 腕のいい冒険者は、こいつらを好んで狩るというのだが…………。

 

 

 「らめええええええええ!食われちゃううううううううう!アクアー!アクアー!!お前いつまでも笑ってないで助けろよおおおおおおお!」

 

 

 泣きながら、俺の後ろをビョンビョンと飛び跳ねて追いかけてくるカエルを見る。だがカエルは、すでに逃げ回る俺とは違う方向を向いていた。

 

 その視線の先には…………

 

 

 「あっははははははははは!いいわよいいわよ、助けてあげるわよロリニート!その代わり、明日からはこの私をアクア様と呼び、崇めなさい!街に帰ったらアクシズ教に入信し、一日三回祈りを捧げる事!毎晩、私にクリムゾンビアを一杯奢ること!そしてひゅぐっ!?」

 

 

 ふんぞり返りながら何かを言っていたアクアが突然姿を消した。ふと見ると、俺を追いかけていたカエルの動きが止まっている。

 

 そのカエルの口の端からは、白い物が生えていた。

 

 その白いのは…………

 

 

 「アクアー!おま、食われてんじゃねえええええええええ!」

 

 

 アクアの白い太ももだった。カエルに食われたアクアの足が、カエルの口の端から覗き、ビクンビクンと震えている。俺はショートソードを抜くと、カエルへ向かって駆け出した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『何やってだあいつら』

 

 「…………その、どうします?」

 

 『無視で良いだろ。明日、あいつらは新しい仲間と共にここに来るだろ』

 

 「…………なんですそれ?」

 

 『予言だよ』

 

 

 原作通り進んでくれればね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐふっ…………うっ、うええええええええっ…………あぐうっ…………!」

 

 

 俺の前には、うずくまり、カエルの粘液でねちょねちょになって泣くアクアの姿。その隣には、俺に頭を砕かれたカエルが横たわっていた。

 

 

 「ううっ……ぐずっ……あ、ありがど……、がずま、あ、ありがどうねえ……っ! うわああああああああああんっ…………!」

 

 

 カエルに食われたアクアを何とか救出し、カエルの口から引っ張り出されたアクアは泣きじゃくっている。流石の女神も、捕食は堪えたらしい。

 

 

 「だ、大丈夫かアクア、しっかりしろ……、その、今日はもう帰ろう。クエストは、三日の間にカエル五匹の駆除だけど、これは俺達の手に負える相手じゃない」

 

 

 正直俺がカエルを仕留められたのも、アクアを捕食したカエルが獲物を飲み込もうと、その動きを止めていた事が大きかった。

 

 元気に俺に向かって捕食に来るカエルに、正面から立ち向かっていく勇気は無い。だがアクアは、粘液でヌラヌラと体中をテカらせながらも立ち上がる。

 

 

 「ぐすっ…………女神が、たかがカエルにここまでの目に合わされて、黙って引き下がれるものですか……っ! 私はもう、汚されてしまったわ。今の汚れた私を信者が見たら、信仰心なんてダダ下がりよ!でも、カエル相手に引き下がったなんて信者が知ったら、美しくも麗しいアクア様の名が廃るってものだわ!」

 

 

 心配するな。

 

 日頃の、大喜びで他のおっさんの数倍の荷物を運んで汗を流し、ジョッキを豪快にあおり、馬小屋の藁の中でよだれを垂らして気持ちよく寝てるあの姿を見れば、今の粘液まみれの姿なんて今更だ。

 

 だがアクアは、俺が止める間も無く、離れた場所にいたカエルに向かって駆け出した。

 

 

 「あっ! おい、待てアクア!」

 

 

 制止も聞かずにアクアはカエルに距離を詰め、そのまま駆けて来た勢いはそのままに、拳に白い不思議な光を宿らせてカエルの腹に殴りかかった。

 

 

 「神の力、思い知れ!私の前に立ち塞がった事、そして神に牙を剥いた事!地獄で懺悔しながら眠るがいい!ゴッドブローおおおおっ!」 

 

 

 ぶよんとカエルの柔らかい腹に拳がめり込み、そのままカエルは何事もなかったかの様に…………。

 

 

 「くっ、喰われてんじゃn『フルチャージ』え?」

 

 『ふんっ』

 

 

 何処からか電子音と共に斬撃?が飛んできてはアクアを捕食した蛙を横一閃に切り裂いた。

 

 

 「ぐべっ!?」

 

 「お、おい、大丈夫か?」

 

 『おい、そこの坊主』

 

 「は、はい!」

 

 

 呼ばれた俺は、声が聞こえてきた方へと目を向ける。するとそこには、銅色のオーラアーマーに、身体の至る所にワニの意図が見られるその外k…………ってあれは…………忘れるわけない。子供の時代、よく見た仮面ライダー物の劇場版に登場した…………

 

 

 「仮面ライダー、ガオウ…………?」

 

 『ちゃんと準備してから来い。じゃねえと…………喰うぞ?この俺が』

 

 「はい!」

 

 

 その後俺は、またしても粘液まみれにされて泣きながら二匹のカエルの肉を引きずるアクアを連れて、今日の討伐は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………良かったんですか?助けて」

 

 『借りだ借り。もし文句言ってきたら殺すだけだ』

 

 「…………物騒ですね、貴方は」

 

 『なんとでも言え…………そう言えや、女性って何貰ったら嬉しいんだ?』

 

 「?どうしたんですか、急に」

 

 『いやな?ルナさんにプレゼントでもしようと思っててな?』

 

 「ルナさんに?」

 

 『今度飲みに誘おうと思っててな?そんときに何かプレゼントでもしてやろうと思っててな…………』

 

 「…………そうですか」

 

 『…………なんだよ。お前も不機嫌になってよ』

 

 「不機嫌?なんの事ですか?」

 

 『全く…………俺は、美人のお姉さんと可愛い子には優しくするんだよ。つまり、ルナさんもお前も充分綺麗だし可愛いよ』

 

 「…………どうしたんですか?急に」

 

 『…………オッサンのありがたい言葉だ。覚えとけ』

 

 「…………ふふふっ、一応覚えておきますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やあ、ルナさん」

 

 

 キザ風にルナさんに挨拶する、俺。いやー、ほんと俺に似合わねえな、おい。

 

 

 「あ、亜神さん。お疲れ様です。依頼の報告ですか?」

 

 「そんな感じだ」

 

 「では、失礼します…………ちゃんと依頼の分であるジャイアントトード五匹分と他10匹ですね?それでは報酬の10万エリスと、他10匹分の5万エリスです。お疲れ様です、亜神さん」

 

 

 10万エリスと5万エリス、合計15万エリスだな。きっちり貰いましたっと!…………っとここからが本題だったな。

 

 誘わねぇと…………。

 

 

 「あ、る、ルナさん」

 

 「?どうしました?」

 

 「今日、食事でもどうだ?」

 

 「お食事ですか?良いですけど…………仕事終わりになりますけど、大丈夫ですか?」

 

 「大丈夫大丈夫。それじゃあ、仕事終わりに迎えに行くから。時間、教えてくれないか?」

 

 「シフトは…………10時ですね」

 

 「了解。その時間帯に迎えに行くわ」

 

 「はい、それでは」

 

 「Ciao♪」

 

 

 ふぅ、無事誘えたわ。

 

 …………楽しみだな、飲みに行くの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数時間の時が経ち、約束の10時頃。ギルドの入口にある石柱に寄りかかりながら、ルナさんを待っていた。

 

 

 「…………しかし、全く来ないなルナさん」

 

 

 約束の10時頃から既に10分が経っている。ルナさんの事だから、約束を忘れるってことは無さそうだが、どうなってるn『ブーッブーッ』

 

 あ?メールか?

 

 

 「…………転生者か。今回のターゲットは…………なん、だと?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『【三人称視点START】』

 

 

 「はぁ…………」

 

 

 ここは、ギルド内にある職員専用の休憩室。そこで金髪のナイスバディの美女もといルナが鏡を前に溜め息を吐いていた。丁度職務を終わらし、亜神との約束の場所に向かおうとしていた彼女だったが、何やら思い悩んだ表情を浮かべていた。

 

 

 「…………はぁ」

 

 「どうしたんですか、ルナさん。そんな溜め息ついて」

 

 「レン君」

 

 

 そんなルナを心配したのか、彼女の後輩に当たる男性職員のレンと言う男が話しかけてきた。

 

 

 「実はね──────────」

 

 

 亜神のことを話す、ルナ。

 

 内容を簡略化すると、顔がタイプの男性、初めて自分に対していやらしい視線を向けてこなかった、美人やら可愛いやらと下心がない言葉を言われた、彼がエリーという女性と笑顔で話している様子を見ていてモヤモヤした感情に襲われた、今日デートのようなものに誘われた、と全て亜神に関しての事だった。

 

 

 「そう、ですか」

 

 「どうしたらいいと思う?レンくん」

 

 「…………ケイカクヲハヤメルカ」

 

 「?どうしたの?」

 

 「あ、すみませんルナさん。自分、こう言うのには疎いもので…………」

 

 「そっか…………ごめんね。それじゃあ、約束があるから」

 

 「はい、それではまた後で」

 

 

 荷物を纏め始めるルナ。するとふとした時鏡を見ると、後ろで此方へと人間とは思えない鋭い爪を持ち、紫色の血管がある手を伸ばすレンの姿が…………

 

 

 「…………え?」

 

 

 ニタァと笑うレン。それを見た彼女は逃げようとするが恐怖のあまり足は動かず、ゆっくりと近付いてくるその手を鏡越しから見ていた。

 

 そして、その手が彼女に触れようとしたその瞬間、レンの身体は後ろへと飛ばされ、壁へと叩きつけられた。そのとき、彼の体には茨のようなものが巻きついていた。

 

 

 「っ!?がはっ!?」

 

 「…………ったくよ。お前、誰に手を出そうとしてたんだ?」

 

 「っ、亜神さん!?」

 

 

 休憩室の入口に立っていたのは、神の一人ゼドによってここ【この素晴らしい世界に祝福を!】の世界に送り込まれた、転生者の死神【亜神大成】。彼の掌からは一本の茨のようなものが生えていた。

 

 

 「レン、もとい佐々木蓮司。お前を、強姦及び殺人の罪でこの死神の名のもとに殺処分とする。いいな?と言ってと拒否権はないが」

 

 「どういう、事ですか?」

 

 「…………仕事だよ、俺のな。俺は殺し屋みたいな感じでこいつみたいなやってはいけないことをした者を処分しなきゃいけないんだ」

 

 「レンくんが、それをしたと?」

 

 「こいつは気に入った女がいたら無理矢理にでも連れていき、そのまま強姦。で飽きたら殺して魔物の餌にしていたようだ」

 

 「嘘…………」

 

 「…………mれ」

 

 「あ?」

 

 「黙れよ…………黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れっ!!!俺はオリ主だぞ!?俺の世界だ俺が主人公だ!この世界にあるもの全てが俺のものだ!!!」

 

 

 叫ぶレンもとい佐々木蓮司。

 

 

 「…………踏み台そのものだな」

 

 「テメェこそ俺のルナに手を出してんじゃねえよ!?あの女は俺のものだ、俺の物にするんだ!」

 

 「ひっ…………」

 

 「…………」

 

 

 舐め回すような視線でルナを一目見ては狂ったような目付きで亜神を睨む。変な視線で見られたルナは軽く悲鳴をあげ、彼女のその声に亜神の目付きが変わった。

 

 

 「…………それが、お前の言い分か?」

 

 「あ?」

 

 「女ってのは確かに美しく、そして綺麗で可愛い。独占したいや自分のものにしたいと考えるのは別にどうでもいい。でもな?女を泣かすようなテメェに、それを考えることも実行する権利もねぇんだよ、ゴミが」

 

 「っ、なんなんだよ…………なんなんだよ、お前!!何者なんだよお前は!?」

 

 「通りすがりの死神だ、覚えとけ」

 

 『オーバー・オーバー・ザ・レボリューション!』

 

 

 亜神の意思に答えるように、腰部に派手な色合いの【エボルドライバー】が光とともに装着。そして彼はレバーを勢いよく回し…………

 

 

 『Ready go!』

 

 『フィーバーフロー!』

 

 『フハッハッハッハハハハ!フハッハッハッハッハハハハハ!』

 

 

 赤い光に全身を包み込まれると共に、彼は姿を変える。紅いコブラを思わせるエイリアンといった風貌に合わせ、顔には複数の眼のような器官が。【エボルト(怪人態)】、地球外生命体だ。

 

 

 「な、なんなんだよ、その姿は…………」

 

 「亜神さん…………」

 

 『…………俺の後ろに、ルナさん』

 

 「っ、は、はい!」

 

 「ちっ、俺の物の名前を呼ぶなァァァ!!」

 

 『テメェのものじゃねえだろ、カスが!』

 

 

 鋭い牙と爪を剥き出しにしながら飛びかかる佐々木蓮司。しかし亜神はそんなこと関係ないかのように、彼の顔面を思いっきり殴り飛ばした。

 

 

 「グベバ!?」

 

 『…………ふんっ!』

 

 

 吹き飛ばされ、地面に転がっては蹲る佐々木蓮司へと歩いて、足を振り下ろす亜神。スペック差は大きく、それを受けた彼は地面に踏みつけられると同時に背中の骨が悲鳴をあげた。

 

 

 「あっ──────────!?!」

 

 『…………どうした。もう終わりか?』

 

 「っ黙れ!!俺は、太陽を克服した吸血鬼だぞ!?お前なんかに負けるはzぐぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ!?!」

 

 『おっとすまん、話している途中だったな。だけどいいことを教えてやろう。お前みたいな不死身なやつはな?ただ不死身なだけで、対処方法なんて幾らでもあるんだよ』

 

 

 首根っこを掴んでは持ち上げる亜神。そして大きく上に投げ飛ばしては、何処からか天井に現れた小型のブラックホールへと入っていった。

 

 

 『消えな』

 

 『ブラックホールブレイク!!』

 

 『『Ciao♪』』

 

 

 電子音と共に彼はイタリア語で別れを告げ、ブラックホールはその場で圧縮させると同時に消滅。佐々木蓮司は完全にこの世から消え去った。

 

 

 

 

 

 『【三人称視点END】』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………危ねぇ危ねぇ。

 

 ルナさんが無事で良かったわ。

 

 

 『…………ふぅ』

 

 「っ…………亜神、さん。貴方は、何者なんd」

 

 『すまない』

 

 

 掌を光らせ、ルナさんを気絶させる。エボルトが持つ記憶操作の能力だ。これで佐々木蓮司のことと、今日起きたこの出来事に関しての記憶を消す。

 

 

 『巻き込む訳にはいかないんでな』

 

 

 だが…………彼女が気絶する前、ルナさんの俺を見る目は恐怖に染まっていた。まあそれは仕方ないだろ。

 

 

 「…………他の奴は、ゼドに任すか」

 

 

 …………もう、11時か。

 

 食事は、出来なそうだな。

 

 

 「…………」

 

 

 一枚の手紙とプレゼントを置き、ここから去る。また今度飲みにでも行きましょうか、ルナさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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