《バラティエ》編 その3
■1■
今、スターマンの目の前には血を吹いて虫の息の男が倒れている。
男の名前はギン……現在、戦闘中のクリーク海賊団の総隊長だった男であり……たった今、首領・クリークの毒ガスを喰らい瀕死になっていた。
クリークの忠臣でもあるギン……しかし、空腹のところをサンジに助けられ人としての情を手に入れたギンは、恩人であるサンジに手をかけることが出来ずにクリークの命令に背く。
怒ったクリークはギンに向けて毒ガス弾『M・H・5』を使用する。発射された毒ガス弾は戦場に命中……辺り一面は毒ガスによって覆われた。
数十分後……毒ガスが晴れるとそこには、毒ガスマスクを着けたルフィにマスクと一緒に取り押さえられたサンジ……そして、
血を吐き出し倒れこむギン。そんなギンを見て嘲笑うクリークに対し、ルフィは激怒……クリークに突撃し、一騎打ちが始まった。
「馬鹿な奴だな……今更『人の心』を取り戻すなんて……」
パティとカネルに連れられ二階のテラスまで運び込まれたギン……そこには上からルフィ達の様子を見ていたスターマンがおり、連れてきた二人は店から解毒剤を探すため、ギンをスターマンに預けて店の中に引っ込んでいった。
……残ったのは少しでも解毒できるようマスクを被り横になったギンとその横に立っているスターマンの二人のみ、今だ血を吐くギンに対しスターマンはまるで下らないを見るような目で見下していた。
「命を救ってもらい、そのおかげで『鬼』から『人』に戻ったって……?ふんッ 言葉にすれば美談だが……今更心を取り戻したところでお前が『海のクズ』である事実は何も変わらないよ。お前は、このまま海賊らしく、惨めに死ぬのがお似合いだ」
鼻で笑いながら吐き捨てるスターマン。顔の穴という穴から出血し痙攣を繰り返すギン……恐らく、解毒の薬を得ても持って数時間後にはもう命はないだろう。
スターマンは二階から見ていた戦場を思い出す……ギンがここに連れてこられる前、ルフィに意地でも生きろと言われたことを……そして、サンジがギンの命を助けるために必死になっていたことを……
「…………」
別に、助けようだなんて思ったわけでもない……それどころか、かわいそうとも哀れだとも思わないし、正直言えば……この毒で苦しんでいるギンが助かろうが助からなかろうが
だから、これからすることが
「……そういえば、一つ試したいことがあったな……」
倒れているギンの傍まで移動し、しゃがみ込む。掌から黒い球体──『
押し付けられ、一瞬びくりと身体を跳ね上げるギン。星種から吸収音のような音が鳴ると……黒い球体がみるみるうちに毒々しい紫色に変色していく。どうやら、ギンの身体の中に蓄積した毒が吸収されているようだ。
少しして星種をギンから取り外すスターマン。紫色に染まった球体を手に取ると……
毒を吸収した島種を身体に取り込み目をつぶるスターマン……暫くして、何も変化が起きずにいると、目を開けて自笑気味に呟いた。
「──
まるで分っていたように呟くと、クリークと戦っているルフィに目を向けようとギンの傍から離れるスターマン……と、足の下から声が聞こえた。
「う……あ、あんたは……っ?」
「ん?ああ……なんだ、意識あったんだ君」
スターマンが能力を使い毒を除去したおかげか……先程より幾分か顔色の良くなったギンが、スターマンに声をかける。
「ガフッ!はァ……はァ……さっきよりも、大分楽になってる……?も、もしかして……これ、あんたが……?」
「勘違いするな」
ギンの呟くような疑問に対し、スターマンは吐き捨てるようにルフィの戦いを見ながら答える。
「僕は君を助ける気なんかない……事実、毒はまだ身体に残留している状態であえて止めたからからねェ……ボクはお前みたいな
「……は、……あんた、変な……人、だな……ゲフッ!」
「はぁ?」
不快げに倒れたギンに目線をやるスターマン……しかし、喋るのも辛いらしくそれ以上しゃべらなくなったギンに対し、再び目線をルフィの戦闘の方に向けるスターマン。
その後、店の中からパティとカネルが戻ってくると、騒ぎながらギンに解毒剤を与え始める……その間、スターマンはギンたちの方には一度も顔を向けず戦闘を観戦していた。
しばらく観戦していると……激しい戦闘の末、ついに勝敗は決する────勝ったのは麦わらのルフィ、原作通りの展開となった。
こうして、バラティエでの戦い────クリーク海賊団の戦いは、幕を引いたのである。
■2■
ルフィはクリークとの激闘の末戦いに勝利し、そのまま力尽き意識を失う……その後、残ったクリーク海賊団は瀕死のギンと一緒に小舟で海上レストランから離れ、撤退した。ギンは原作よりも毒は取り除かれてはいるが、体内にはまだ毒が残っており……いつ命が尽きてもおかしくない状況であった。
その後、ギンが猛毒から生き残れたのか……それは、スターマンたちには最後まで知ることはなかっのだった……。
眠りから覚めたルフィは、再度仲間になってくれとサンジに頼むが、どうしても了承を得ることが出来ずにいた。しかし、ゼフをはじめとするコックたちは、サンジに旅立ちを決心させるため、手荒い芝居を打つことに……暖かい(?)仲間の行為に胸を打たれ、サンジはルフィ達と行くことを決意……4人目の仲間が誕生した。
ヨサクの案内を受け、ルフィ達はナミを追いかけ出向することとなった。
■3■
念願の『海のコック』サンジを仲間に引き入れたルフィ達……よく晴れた天気の中、船を奪ったナミを連れ戻すため、船に乗った四人はいま、ナミの向かった先……¨魚人海賊団¨が支配する土地に向かっていた。
現在、これから行く場所がどんな所か理解していないルフィとサンジの二人に、ヨサクが説明をしているところであった。これから入ろうとしている
ちなみに、その時スターマンも一緒にいたが……そもそもスターマンは主に
スターマンが呆けている間にもヨサクの説明は続き……ナミの正体は人魚ではないかとサンジが妄想し、ルフィが足の生えた魚の絵をナミと言い、サンジにキレられていると……ふと、思い出したかのようにスターマンに話を振るルフィ。
「あ、そういえばよースターマン!おめー
「!……うん?どうした、突然…」
「あの時、ゾロが戦った後……鷹の目がスターマンを見て言ってただろ」
「そういやあいつ……去り際になんか言ってたな……たしか、¨島盗み¨がどうとか……」
「チッ! 鷹の目め、余計なことを…っ」
ゾロの勝負が終わった後のミホークの言葉を思い出すルフィとサンジ。置き土産をしたミホークに舌打ちし、ため息をつくと観念したように説明をするスターマン。
「はぁ……、鷹の目の言う通り……ボクは
「なにーっ!?そうなのか!」
「へェーじゃあ、おまえ
「うーん、確かに……ボクの一番古い記憶の中で覚えている場所は
「? なにいってんだ?」
「まぁとにかく、僕にとって
「…て、金取んのかよ!」
不思議がるルフィ……スターマンの言葉にツッコむサンジはおもむろに顔を近づけると、興奮したようにスターマンに問いただしてきた。
「なァあんた、
「ん、あ~……悪いけど¨魚人島¨って行く手段が限られててさぁ、ボク一回も行ったことがないんだよねぇ……でも『魚人』や『人魚』自体は仕事柄、結構見たことがあるなぁ」
「なあなあ!! じゃあよ、こんな『魚人』も見たことあるのか!?」
「ねぇよ……いや、なにソレ!?」
足の生えた魚の絵を見て絶句するスターマン……そんな騒いでいる三人に対し、ヨサクが大声で叫ぶ。
「ちょっとあんたがた、あっしの話ちゃんと理解したんすか!?」
「ああ、強い魚人がいるんだろ……わかったよ」
「いいえ!わかってやせんね!? 大体強さをわかってねェ!!」
「そんなもん着きゃあわかんだろうがよ……」
「そうそう…心配すんなよヨサク」
「あんまり神経質だとストレスでハゲちゃうよ……あ、もう遅いか」
「これは自分で剃ってるだけですからッ!! てか、あっしが話した意味がねェっ!!!」
騒ぐヨサクに対しマイペースな三人組……と、サンジがおもむろに立ち上がると、三人にしゃべりかける。
「まァとにかくメシにしようぜ。何が食いたい?」
「骨のついた肉のやつ!!!」
「あっし モヤシ炒めッ!!!」
「ボクはコンソメスープにフルーツサラダたっぷりッ!!!」
「よし!! 任せろ!!」
そう言い、船のキッチンに入るサンジ。三人は唾を垂らしながら料理ができるのを待つ。
「んーーいいよなー!コックがいると……!」
「いやーほんとだよ。料理できるナミに作らせるとお金取られちゃうし……」
「おれはお前らなんかより、早くナミさんにお食事作って差し上げてェよ」
「あっし!モヤシ!大盛りで!」
「あっズリーぞ!おれも肉大盛りで!」
「ボクも!ボクもっ!」
「おとなしくクソ待ってろッ馬鹿ども!」
■4■
しばらくして、料理が出来上がり食事を楽しむ四人。
しかし、その途中……美味しそうな料理の匂いにつられ、海中から巨大な怪獣が現れた。それはどこか牛のような雰囲気の巨大生物『海牛モーム』、
驚くルフィ達……モームの狙いが料理だとわかると、いきなりルフィが腕を伸ばしモームを殴り飛ばした。流石に一発では倒れず、怒り出すモーム……もう一度殴ろうとするが、サンジに蹴られ止められる。
サンジはどうやらモームは腹をすかしているのだと思い、料理を手に与えようとする。
そんなサンジにモームは大口を開けて食べようとした瞬間……今度はサンジによって顎を蹴り飛ばされた。どうやら、自分ごと食べようとしたことに怒ったらしい。
二度目の攻撃についに激昂するモーム……船を沈める気で襲ってきた。が、今回は相手が悪くサンジに反撃される。何事もなく三人は食事の続きをはじめ、戦慄するヨサク。
その後、モームを躾けると、モームにロープと船を取り付けることで船を曳いてもらうことに成功。ナミのいる場所……アーロンパークを目指すのだった。
■5■
モームに船を曳かせることしばらく、ルフィ達は遂に魚人が支配する島に到着する。
正面には魚人海賊団の根城でもある『アーロンパーク』が見えており、そのまま突撃しようとするが……何故か建物から大きく右にそれ始める。
「おいっ!! 違うぞもっと左だ!!!」
「あの建物だぞ!!」
「あ~やっぱあれだよ、サンジの蹴りが効いたんだよ、絶対!」
「おれのせいだってのか!?」
「駄目だ、岸にぶつかるゥ!!!」
ダメージがかなり残っているのか、フラフラになりながら激走するモーム。そのままの勢いで岸に向かって突撃する。
『あああああああ!』
凄まじい衝突音を周囲に響かせ岸に激突したモーム。まるで爆発音のような音を立てる程の事故を起こすと、ついに力尽きたのかモームはそのまま力なく海中に沈んでいった。
そして、ルフィ達を乗せた船はというと……もちろん、ただで済むはずもなく、激突の衝撃で前方に船ごと空中に投げ出されたのだった。現在、島の林の上を飛んでいる最中である。
「うほ――――――っ!まるで空を飛んでいるようだー」
「ブッ飛んでんだよバカ‼」
「落ちる――――――っ!!!!」
飛んでいる船の上で大騒ぎの海賊たち……このままだと、すぐに地面に激突するだろう。
「!そうだっ……おい、お前!!たしか空飛べたよな!?」
スターマンが宙に浮けることを思い出したのか、サンジはスターマンに問い詰める……問いかけにはッとなるスターマン。
「……あ!?そうだ、ボク空飛べるんだったよ!!」
「なら、お前の能力でおれたちの四人宙に浮かせられないのか!?」
「よ~し、それなら……離脱ッ!!!」
甲板からジャンプするスターマン……すると、ジャンプしてから空中で停止し、笑顔でサンジに向き直る。
「よっしゃ、成功!!!」
「よし、よくやったァ!あとはおれたちも能力で宙に……?」
脱出に成功したスターマンに自分たちも浮かせるよう促すサンジ……しかし、宙に浮いた当の本人はそのまま一人で船から離れていく……どうやら、三人を見捨て一人だけで助かるようだ
『なにいいいいいッ!!!?』
「お前ら、あとはがんばれよー」
「なに一人で離脱してんだお前ッ!!!?」
「!? 噓でしょあの人ッ!この状況であっしら見捨てます!!?」
「林に突っ込むぞォ!!!」
『うわあああああ!!!』
満面の笑みを浮かべ、手を振って見送るスターマンにルフィ達は怒鳴りながら林の中に落ちていった。
一人空中に取り残されたスターマン。船の落ちた方向を見ながら呟く。
「しまった……つい何時もの癖で一人で逃げてしまった。まだ仲間じゃないがさすがにまずかったなっ……!」
思わずといった行動に汗を垂らす。と、ルフィ達の進んだ方向で大きな音が響く……どうやら、やっと船が止まったようだ。
「これで先行したゾロに会えただろう……ちょうどいいし、このまま用事を済ませちゃお~と!」
空中を駆け下りながら林の奥に入っていくスターマン……しばらくして、人の気配がない場所まで来ると、そのまま立ち止まる。
「……この辺でいいかな~?いちいち集中が必要だから時間が掛かるんだよね、コレ」
両手を前方に伸ばすと
―――約十数分が経過……"星種"の大きさが約五メートルと巨大になったところで、ピタリと膨張が止まる。
どうやら、目的の大きさになったからか大量の汗を流しているスターマンは力を込めるのを止めた。どうやら…この大きさの"星種"を維持するのに相当の体力がいるのか、かなりの疲労が表情に表れている。
息を乱しながら、今度はゆっくりと膨張した球体を地面に沈めていく……かなり緊張しているのか、表情はかなり真剣であった。
「
慎重に沈めていくスターマン……"星種"はズブズブと音をたてながら、ゆっくりと地面に吸い込まれていき――全ての球体が完全に見えなくなると、緊張が解け大きく息を吐くスターマン。
「―――ふーー……っ!やっと終わった……!毎度毎度の事ながら神経使うよ、コレは……」
汗を拭きながら空を仰ぐスターマン。顔を歪め、明るい口調で一人呟く。
「さて!これでこの島へ来た
……この後の展開を危惧しながら先程、船の飛んでいった方向に跳んでいくスターマン。その後、ルフィ達に追い付いたスターマンは見捨てられたことに腹を立てたサンジに蹴り飛ばされたのは、ご愛敬である。