仮面に縁を、歌に血を   作:星鱈

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方針を徐々に固めつつ初投稿です。




特機部二の日常①

「バベル、ですか」

 

 

『神が壊した塔の名前のはず』

『組織か何かだったか』

『神の門って意味だったか?』

 

 

「ええ、元はその意味です。しかしこれを見る限りだと『塔』の方がしっくりきませんか?」

 

特機部二から帰宅した夜のこと。

大学で使っていたノートパソコンに件のUSBメモリを挿入して中身を閲覧していた結。

当然のようにラヴェンツァも彼の膝の上でそれを見ているのだが、これは彼女が自分の中(他意はない)で了子との会話を聞いていたからである。

 

しかし正直二人で取り掛からなくては恐らく『塔』の設計図であろうそれの朧気な内容すらも分からず、ちんぷんかんぷんだっただろう。

 

くまなく情報を探ってみれば緯度と経度が記載されていたのでMAPのアプリに打ち込んでみれば、示された場所はリディアン音楽院──それも二課本部の真上だ。

 

>リディアン音楽院を塔にでもする気なのだろうか。いや、わざわざそんな意図を了子が『誰にも言うな』と念押しするか?

 

「私もこれが意図することは分かりません。しかしアレがわざわざただの設計図を渡すタマとも思えません。ですので今後彼女と話す時は、特に気を払ってくださいね」

 

 

『わかった』

『善処する』

『余裕だ』

 

 

「それくらいふてぶてしいくらいが結にはちょうどいいのかもしれませんね」

 

少し眉を寄せてラヴェンツァは微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

「特訓だ!」

「おーっ!」

「オオッ!」

「頑張ってくださーい!」

 

 

『どうしてこうなった』

『響もやらないか?』

『弦十郎、ステイッステイッ』

 

 

「気持ちはすげぇ分かるけど、旦那は止まらないと思うぞ」

「そうだぞ結!風鳴流の指南とあっては俺が出ないわけにはいかないさ。もっとも俺が教えられるのは徒手空拳系統のものばかりだがな!」

 

了子から渡されたUSBの中身を確認した次の日、結は風鳴翼との約束のために特機部二本部にある訓練室を訪れていた。

入室すると翼は既にシンフォギアを展開して準備万端のようだった。

 

しかし視線を動かせば訓練室の端で入念にストレッチをしているジャージ姿の弦十郎、演舞の如く撃槍を振るってなまり気味の身体の感覚を確かめている奏、そしてベンチに座ってこちらに手を振っている響が見える。

響は後学のために見ておいた方がいいとでも言われたのだろうか。

 

確かに翼とマンツーマンとは一度も聞いていないし、勝手に結が想像していただけなのだが、これだとただの合宿的なサムシングでは?結は訝しんだ。

 

「……まぁ私も人のことは言えない。アームドギアを使う都合上、風鳴流というより翼流と言った方が適切かもしれないが」

 

 

『気にしてない』

『そちらの方がいい』

 

 

「なら良かった。じゃあ、まず私から始めよう」

 

翼がゆっくりと絶刀の切っ先を結へと向け、おもむろに構えを取る。

翼から発せられる殺意が如きオーラを感じ取り、結はすぐさまギャラハッドを展開させた。

 

「奏ともこうして得物を交えつつその技を盗んだと聞いている。なれば私も、それに倣おう」

 

 

『そういう形式?』

『確かにそうだが……』

『この剣、可愛くない……ッ!』

 

 

「ハッ!常在戦場を体現する防人に愛嬌や可憐さなどは期待しないことだな!では往くぞッ!」

 

翼は超人的な脚力で肉薄、対してギャラハッドは距離を詰められたために大盾を展開する暇はない。

よって翼の斬撃に間に合う数のビットを展開、小型の盾を大量に作成する方向で防御しようと試みる。

 

──結の判断は正解だが、同時に悪手である。

 

 

逆羅刹

 

 

群れる盾壁に横一閃。

盾の群を両断したのは彼女が握るアームドギアではなく、鎌足をもたげた旋風陣。

脚部ブレードが展開し、翼自身が独楽のように高速回転。浮遊する盾を粉微塵にせしめた。

 

「ハァッ!」

 

盾群が消失したことを翼が悟れば、勢いのままに片脚を着地させ再び創出させたアームドギアをギャラハッドへ袈裟斬りに振るう。

 

鈍い音が訓練室に響くも──暗紫の鎧は未だ健在。

 

逆羅刹の間に放出したビットと翼に木っ端微塵切りされた小盾を形作っていたビットを集合させ、天羽々斬が振るわれる寸前にギャラハッドの手には大盾が形成されていたのだ。

 

「お見事……!」

 

 

『そちらこそ』

『第2Rだ』

 

 

そこから彼らにおよそ会話と呼べるものは存在しなかった。

いや、あるにはあるのだろう。

 

口頭ではなく拳──否、『得物で語る』無冠の武芸者たちの語らいがそこにはあったのだ。

 

 

 

 

 

 

「ここで箸休めのペルソナ紹介コーナーです」

「誰に向かって言ってるんですかラヴェンツァさん?」

「画面の前の……いえ、失礼しました。では簡単にですが結の力について説明させていただきますね。では『ペルソナ』について────」

 

翼と結がしのぎを削っている頃、訓練室の端っこではラヴェンツァが響に結の能力について教えていた。

何気にこの二人が出会ったのは今日が初めてである。

ちなみに弦十郎と奏はというと端の方で暇を持て余してスパーリング中だ。

 

「────もう一人の自分……。だとしたら結さんのギャラハッドってかなりごつくないですか?」

「否定はできませんね。ですが、あれは彼の誰かを守りたいという心の具現。堅牢な鎧もその想いの一端と言っても差支えはないでしょう。本来結の場合はあれだけではないのですけど……」

 

うむむと考え込むラヴェンツァに響は質問を投げかける。

 

「さっきまでの説明だと普通はペルソナって一人一体じゃないんですか?」

「ええ、本来なら。今はまだ花開く途中ではありますが、彼には多数のペルソナをその身に宿す素養があります。ですがシャドウに相対することがない今は……」

 

いえ、とりあえずはこの辺りにしておきましょうと強引に話を打ち切ってしまった。

これからが肝心というところだったので、響はモヤッとした気持ちを抱えてしまった。

 

「えー!?ちょっと変なところで切らないでくださいよ!何か気になるじゃないですか!」

「いずれ貴方に来るべき運命が訪れれば、またお話しすることを約束します。あ、終わったみたいですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、結……」

 

結の視線の先で奏はその身をボロボロにして大の字になっていた。アームドギアにはおびただしい殴打の跡。彼女を保護するプロテクターはその早すぎる役目を全うして機能不全に陥っていた。

 

 

『諦めるのか?』

『立つんだ』

 

 

「アタシ、もうダメみたいだ」

 

立ち上がろうとするも両膝が笑う。力を入れようにも筋繊維が嫌な音を立てて行動を阻害した。

少し前まで彼女の五体に迸っていた力の奔流は巌の如きOTONAの手によって枯渇寸前にまで追いやられてしまったのだ。

 

「サシで旦那に勝てるわけないだろォ!」

 

 

『むしろよくやった』

『バトンタッチするか?』

 

 

「ああ、旦那の体力はかなり削られてるはず……後は頼んだ、ぜ……」

 

クタリと力なく倒れる首。

微かに震えていた奏の身体は弛緩し、僅かに見開かれたその瞳はついに光を失った。

 

「奏ェェ────ッ!!」

 

即興寸劇ができるくらいにはツヴァイウィングの二人は元気なようだ。

翼が必殺技のオーバーロードでバックファイアをくらったような顔で奏を抱き起こしていたが、多分命に別状はないはずだ。

……吐血・血涙が見えるが迫真の演技による幻視だろうと結は無理やり解釈する。

 

「病み上がりにしては中々の技量だったがな!では結、始めようか」

 

 

『自分は大丈夫だが』

『休憩はいいのか?』

 

 

「自分よりも相手を気遣うその心意気、素晴らしいな。だが戦場でそんなことを気にする余裕はない──ぞッ!」

 

空気が爆ぜ、瞬き一つの間に結の眼前へ到達し、その剛腕を振りかぶった弦十郎。

咄嗟にギャラハッドを展開するも視界が暗転。

意識が覚醒した時には既にギャラハッドは背後にあった壁に激突していた。壁との間は数十mあったにも関わらずだ。

 

「手加減無用。分かったならばこいッ!」

 

 

『やってやる』

『なるようになれ』

『別に、司令を倒してしまっても構わんのだろう?』

 

 

諸事情によりギャラハッドと弦十郎のタイマン勝負は割愛するが、見事フラグ回収を成し遂げたとだけここに記しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

>特訓いう名の苦行の後に弦十郎に映画を見ないかと誘われた。特に断る理由もないので了承したが、まだ何を観るのか聞かされていない……。

 

「お疲れのところすまない。どうも今後忙しくなるような気がしてな」

 

彼の第六感はあながち間違っていないが地の文でそれを叙述しても仕方ないので、とりあえず彼の超感覚については一先ず置いておこう。

 

二課にある弦十郎の私室のソファで待つこと数分、彼は一枚のBDを持って来た。

 

「待たせたな」

 

 

『そんなことはない』

『何を観るんだ?』

 

 

「む、そういえば一言も言ってなかったか。今日君と観るのはこれだ」

 

レコーダーにディスクを入れるとTVの画面にタイトルが表示される。

 

 

『ニューシネマラビリンス』

 

 

>確か数年前に中高生・自主制作映画祭で最優秀賞を獲得した映画のタイトルだったはずだ。

 

「飯食って、映画観て、寝る。それが俺の基本鍛錬形式だが、これは鍛錬用のアクション映画ではない。何と言うか……多感な君たちにだからこそ観てもらいたい」

 

ポチっと再生ボタンを押した弦十郎は結の隣にどっかりと腰を下ろした。

 

>映画の中──スクリーン上の世界を巡る形式で自らの葛藤、そしてそれを乗り越えての成長を描いた作品だった。中高生のそれとは思えないほど卓越したクオリティの見応えある映画だ。

 

「こうして壁にぶつかって、それを超えて成長する。俺は、そんな幸せを護りたい」

 

画面を注視したまま弦十郎は呟いた。

 

「君たちが護る人々を今一度しっかり知っておいて欲しくてな。身が締まる感じがしないか?」

 

 

『ああ』

『そうだな』

 

 

【弦十郎の熱い思いを感じる……】

 

 

 

COOPERATION【風鳴弦十郎】

 

『皇帝』

【■■□□□□□□□□】 RANK2

 

【GET ABILITY】『風鳴流・戦闘理論(徒手)』

〘弦十郎から徒手空拳での戦闘に関するアドバイスを聞けるようになった。彼に手合わせ願うこともできるが、それ相応の覚悟の上で挑もう〙

 

 

 

 

 

>鑑賞会は終わった。だいぶ日も暮れているようなので、今日のところは帰るとしよう。

 

「あ、ちょっと結。私、昨日貴方に何か渡さなかった?」

 

エレベーターに乗ろうとしたところで了子に声をかけられた。結は彼女から特に不審な点を感じない。ただ一つ、あることを除いて。

 

>あれだけ念押しした筈なのに忘れている?妙だな……。

 

昨日彼女は『誰にも言うな』と結に告げ、B.A.B.E.L.と刻印されたUSBメモリを手渡した。

それだけ重要な内容のはずだが、内容はともかく何を渡したことすら忘れるような人物ではないはずだ。

 

もしくは警戒に警戒を重ねて自分の記憶を消去した可能性も彼女ほどの博識な人物ならば考えられなくもないが……あまり現実的ではないだろう。

 

>もしや『誰にも』とは自分自身も含まれているのだろうか……?

 

 

【……ここは慎重に考えた方が良さそうだ】

 

 

────了子に昨日のことを

 

『話す』

『話さない』

 

 

特に何も渡されてない。というか、いつももらっていた櫻井女史の過去の研究論文をもらっていないと結は答えた。

 

「あらやだ、渡し忘れてたかしら……。最近頭痛とか目眩が酷くてね。物忘れも激しくなってきたのよ」

 

明日まとめて渡すわねと彼女は肩をすくめた。

 

一瞬だけ了子の目が黄金色に染まったように見えたのは、多分気のせいだろう。

 

 




またまた今回もコープ回というか訓練。

OTONAはすっげぇ強い、はっきりわかんだね。

奏とも特訓予定ではあったけど、弦十郎相手にタイマンを挑んだせいで体力が底をついてしまった。

そして更に履修推奨作品を増やしていくスタイル(一応ナンバリング外だけどATLUS謹製ではある)。
全部知ってれば更に楽しいはずだから見とけよ見とけよ〜。

そういえば結がまともにワイルド使い始めるのはいつになるんだろうか……。

あっやめて!石投げないで!後ちょっとだけだから!先っぽだけだから!アーッ!

そもそも認知世界行ってないし、マヨナカテレビやってないし、影時間そもそもないし……まだ無理やな!


……それはそうと次回は流れ星が煌めきそうですね!
陽だまり、曇らないといいなぁ(他人事)


そしていくつか雑な伏線を生やしていくスタイル。
おっ了子さん物忘れとか更年k((殴




キネクリ先輩の怪盗服案にご協力してくださった皆様、ありがとうございました。
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