仮面に縁を、歌に血を 作:星鱈
最新話で触れた補足の一話はこちらとなっております。
「力は益にもなるし、害にもなる」
弦十郎の自宅にて響と共に
「振るう者の心一つで善にも悪にもなれる。君が扱う力はそういうものだと理解するんだ」
「善にも、悪にも……」
ふと考え込んでしまった響の頭を弦十郎はワシワシと撫でると飯にするか!と言った。
「要は使いようってことだ。今はまだ深く考えなくとも、自ずとわかるようになる。それまではまず身体に武道とは何たるかを叩き込まないとな!」
その日から響は弦十郎が出す『考えるな……感じろ』と語りかけてきそうなメニューを死に物狂いでこなしていく。
全ては自分を伸ばし、もっともっとたくさんの人を助けるために。
助けを求める誰かの手を取れないままで終わったら、死ぬほど後悔する。
それがいやだから、彼女は必死に必死にその手を伸ばすのだろう。
たとえそれが余計なお節介かもしれずとも。
⚫
「だっはぁ〜」
ㅤ『随分お疲れのご様子で』
ㅤ『何食べたい?』
「う〜ん……ご飯で!」
ㅤ『ヘイお待ち』
弦十郎との修行が開始されて早2週間目のある日、響は空腹に耐えきれず帰路の途中でフラリとルブランを訪れた。
結はそろそろ来る予感がしていたとばかりにできたてのカレーをよそって響に配膳する。
いただきますも言わずに一心不乱にかぶりついているところを見るにかなりハードなものなのだろう。
半分までカレーを平らげたところで響は修行開始日に聞いた弦十郎の言葉について結に質問した。
「力って……何でしょうね」
ㅤ『哲学か?』
ㅤ『……早めに家に帰った方がいい』
ㅤ『タチ・バナヒ・ビーキ(1875誕生〜1961死没)』
「ちょっと!私だって深いこと考える時だってありますよ!……少し不安なんです。私なんかがちゃんとガングニールを使っていけるのかなって」
>……かなり悩んでいるようだ。
ㅤ『スタートから天才はいない』
ㅤ『挫けても立ち上がればいい』
「それは、そうですけど。取り返しのつかないことなんて、いっぱいあるじゃないでふ……かぁぁぁ」
話しながら食べ進めていたカレーの最後の一口を名残惜しそうに頬張ると大きく欠伸をした。
ㅤ『今日はもう寝ようぜ』
ㅤ『今日はもう寝ようぜ』
ㅤ『今日はもう寝ようぜ』
「そうしますぅ……。うぅ、眠い」
>眠かけながら響は帰って行った……。
⚫
「つッ……ぐぅ、あぁッ!」
特機部二本部、二課の訓練室にて響は仮想ノイズ相手に修練を重ねていた。
今日はツヴァイウィングがいつの日かに会敵したらしいぶどう型ノイズと一騎打ち。
既に響は50度くらい地面に転がされてしまっている。
「ま、まだまだ!」
「そこまでにしておきなさい」
「つ、翼さん!」
ちょっと待ってなさいと言われ訓練室内のベンチで汗を拭いながら腰掛けていると、翼はスポーツドリンクの入ったペットボトルを持ってきた。
響にそれを投げ渡すと翼も隣に腰掛ける。
「そんなに当てずっぽうに突撃したって無意味だぞ。もっと余裕を持て、立花」
「余裕、ですか」
「……私も立花のように力を、強さを求めて我武者羅に駆けた時がある」
遠い記憶を眺めるようにして翼は天井に視線を向け、目を細めた。
「時にはそうあることも必要だ。しかし奏がいて、雨城がいて、二課がいて……それに私もいる。今はそこまで気負わなくともいい」
「覚悟が固まらないうちは、アームドギアも形成できないかもしれない。しかし、立花ならきっとできる。どんな困難も、へいき、へっちゃらなんだろう?」
「……はい!」
一気にペットボトルを呷って空っぽにした響はダストボックスに向かって走って行った。
「ふ〜ん、珍しいこともあるもんだな」
「ふふ、たまに先輩風を吹かせるのも悪くは……か、奏?いつからそこに?」
「いつから……えーと響がぶどう型ノイズとドンパチ始めたのを翼が見守ってた辺り──」
「全部じゃない!」
「ナハハ、悪い悪い!」
「あ、奏さん!」
「お、響!私たちも訓練混ざっていいか?」
「もちろんですッ!憎きぶどう型ノイズをみんなで倒しましょうッ!」
激動到来直前のほんの僅かな日常の一幕。
各々示し合わせたかのように最後になるかもしれない英気を養っていた。
???「今日はもう寝ようぜ?」
というわけで挿入日常回です。
取り急ぎ作成したのでかなりボドボドですが許してくだしい。
感想にて指摘された通り私はプロットのままこのお話をほったらかしてました。
一部展開に首を傾げていた皆様、誠に申し訳ございません。
その代わり多少最新話の文字数が多くなっておりますので、それをお詫びにご査収くださいますようよろしくお願いいたします。
あ、ぶどう型ノイズは奏と翼がツヴァイウィングとして活動していた時に一度出会っていた設定です。