仮面に縁を、歌に血を 作:星鱈
お詫びと言っては何ですが少しだけ文量多め。
いつの間にか評価バーが真っ赤に染まって轟き叫んでました。これからも頑張ります!
「聞いてますか?」
ㅤ『聞いてる聞いてる』
ㅤ『縦のカギは……』
ㅤ『ああ!それってハネクリボー?』
「聞いてないじゃないですかもう!」
バァン!とテーブルが叩かれる。決してテーブルが大破したわけではない。
白い大きなリボンがチャームポイントの小日向未来はルブランにて結にポツポツと響への思いの丈をこぼしていた。
「最近響が帰ってくるのが遅いんです」
そんな切り出しから始まった愚痴を既に結は3時間ほど聞き続けている。
まとめれば未来の目から見て響が周りとの関わりをさけているような、何か大切なことを隠しているような気がしているとのこと。
無論、結はその理由を知っている。
最近異常なほどにリディアン周辺でノイズの発生率が高い。それが通知される度に結も響も現場へと駆り出されているのだ。
響自身も未来や周りと精神的疎遠になっていることを申し訳なさそうに語っていたが……これを未来には話せそうにない。
「結さん、何か知りませんか?」
ㅤ『何も』
ㅤ『知らない』
ㅤ『……』
淡白に返した言葉にそうですか、と返す未来。元よりそこまで期待していたわけではなかったのだろう。
>しかしこのままでは遠からず彼女たちの関係は拗れてしまうだろう。ならば自分がするべきことは……。
「未来。響は確かに、何かを隠しているかもしれない」
結にしては妙にはっきりとした声色。
未来は少し驚いて彼を見つめた。
「でも、悪事を働いているわけじゃない。そうだろう?」
「それは……」
未来から見ても、もちろん誰から見られても響の人間性は善性比率100%。
そんな人物が好んで悪事に手を染めるだろうか。
「響は未来や周りを突き放したいわけじゃない。大切に思っているから、かけがえのない存在だから、自分のしていることを言えないんだ……と思う」
「何か含みのある言い方ですね」
一瞬未来が向ける視線にヒヤッとした結だが諦めたように彼女はため息をついた。
「……今度、響と流れ星を見に行く約束をしたんです。そこで隠し事、根掘り葉掘り聞いてやろうと思ってます」
「その後で結さん、あなたにも聞かせてもらいますよ」
ㅤ『何をだ?』
ㅤ『やましいことなど何も無い』
「何か隠してるってことくらい分かります。響のことも知ってたような口ぶりでしたし。でも、あえて今は聞きません」
先ほど背中を伝った冷や汗は間違いではなかったようだ。確信に至ったわけではないだろう。しかし未来は着実に真実へと歩みを進めていた。
「でも、いつかは教えてくださいね」
COOPERATION【小日向未来】
『太陽』
【■■□□□□□□□□】 RANK2
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そうして幾ばくかの時間が過ぎ去り、天体観測一週間前。
午前中、結は新宿で居を──店というにはかなりこじんまりとした屋台のような形ではあるが──構える巷で噂のタロット占い師のところに来ていた。
占い師は円の形に並べたタロットを慣れた手つきでパラパラと捲っていき、最後に中央に据えたカードを確認する。
「むむ、この配置だと彼女は近々友人と不和になってしまいそうですね」
ㅤ『不和、か』
ㅤ『……』
現在占ってもらっているのは響のことだ。
ダメもとで断片的な情報しか出せないが占えるだろうか?と聞くとまっかせてください!と得意げな様子。
恋愛占いの類で好きな相手のことを占うことは度々あったそう。純粋に相手のことを心配して占いに来たのは結が初めてだそうだ。
「あ、でもそんなに悲観することはないですよ。ほら」
占い師が指し示したのは『愚者』のアルカナ。
このアルカナは物事の始まりを暗示するカードであり、不仲のままで終わる結末というわけではないようで、関係はその後も続くらしい。
ただ、それが響にとって良い関係なのか悪い関係なのかの判定はできないようだが。
ㅤ『ありがとう』
ㅤ『糸口が見つかった気がする』
「それはよかった!ですが、運命は『定め』。それは変えられないということを念頭に置いてください」
忠告するように結に告げる占い師。
少しだけ眉をひそめた結はすぐにニヤリと笑ってこう言った。
「運命はきっと変えられる」
「何であのお客さん、あんなに自信に満ち溢れてたんだろう……」
件の占い師──御船千早は先ほど彼女の交友関係が心配だと訪ねてきた客が去り際に見せた自信に少しだけ気圧されていた。
「いや……いやいやいや!運命は変わりませんよ……変わるわけ、ないんです」
どこか諦念したような顔で彼女はボヤく。
しかし彼女の手はかなり正直なようで、既に響を占うためのタロットを並び終えてしまっていた。
「ハッ!……う〜、一回だけですからね!」
誰に言い訳しているのだろう。
ブツブツ文句を口にしつつ、ペラリペラリとタロットを捲っていく。
「う、嘘……!?」
カードの配置が変わっている。
今までも、そしてこれからも変わるはずがないと思われた運命がその指針を変えたのだ。
ただし、そこには少しだけ悪い方向にといった注釈が入るが。
机の中央にはバフォメット────『悪魔』のアルカナが我が物顔で鎮座している。
カードに描かれた悪魔が自分ではない誰かをせせら笑っている、千早の目には何故だかそう見えて仕方なかった。
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約束の時間まで、後一時間。
晴天を臨んでいた響の心は、移ろいやすい秋の空のように急激にその風景を一変させた。
原因はカバンの中のスマホが叫ぶアラート。ノイズ発生の合図だ。
行きたくない、行きたくはないが……残念なことに出撃をバックれるという選択肢は、響には存在しない。
もう少し正確に言うなら一応存在はしている。しかし彼女の人間性がそれを選ぶことを良しとしなかった。
響の顔の半分に夕焼けが差す。同時に反対側に影が生まれた。
憔悴した面持ちで響は電話帳から未来の名前を────
「へ?」
────押せなかった。
視線の先にはスマホを取り上げた結の姿。人差し指をピンと立て、無表情でチッチッチと振る。
何故だか酷く腹ただしい気分になった響は返してください!と自分のスマホの奪取を試みる。
しかし、身長差故に高く掲げられたそれに全く届きそうにない。
ㅤ『流星群、見るんだろ?』
ㅤ『未来と約束、あるんだろ?』
「……知ってたんですか」
結が首肯すれば響はバツの悪い顔をした。
「でも、ノイズが……ノイズがいるんです!私が出なきゃいけなあだっ!」
額に衝撃。ヒリっとした感覚が走るおでこを押さえつつ前を見やれば、スマホを取り上げた彼が自分にデコピンしたのだと容易に想像できた。
文句の一言でも言ってやろう、そう息巻いて喉元からせり上がった感情は次に彼が口にした言葉で引っ込んでしまった。
「少し、二課と交渉してきた」
結は占いの結果が芳しくないことから、未来が話していた流星群の日に響か未来の身に何かが起こるとアタリをつけていた。
二課との交渉以外にも自分の持てる力を最大限に使って可能な限り根回しをしていたが、予想の27番目『ノイズ発生で響と未来は流星群を一緒に見れなくなる』が見事ドンピシャ。
二課には「この日だけは響に自由を与えてください。例え何があっても」と欠員分2倍自分が働くことを条件に結はこれを許可されたのだった。
「私の……ために」
ㅤ『行ってこい』
ㅤ『お膳立ては済ませたぞ』
ㅤ『響が悲しむ顔を見たくなかった』
「もう、それだと何か告白してるみたいじゃないですか」
目元をゴシゴシと擦った響。
今にも雫が頬を伝いそうな顔ではなく、太陽のような真っ直ぐな微笑み。
そう、涙は君に似合わない。
雨でしょげた向日葵より、蒼天を仰ぐそれの方がずっといい。
しぼんだ顔じゃ未来に詰め寄られてしまうぞ、と結は忠告すると喝を入れるように響は自分の頬を叩いた。
「よし!えっと、本当にありがとうございます!その、お礼はいつかで!」
喜びと戸惑いが入り交じった顔で響は駆け出した。
自分なんかのためにみんなが許してくれた。
自分なんかのために自分の分まで働くと言ってくれた。
それがすっごく嬉しくて、でもかなり申し訳なくて。
でも今は、結の言った通りしょげた顔をしている場合ではない。
ただ今は、約束を果たすために────
COOPERATION【立花響】
『正義』
【■■□□□□□□□□】 RANK2
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「ゴメン、遅れちゃった!」
消滅しかけていた未来の目のハイライトが光を取り戻した。
小高い丘のてっぺんで広がる星空見つめていた彼女は汗だくになって駆けてくる響をその目で注視する。
「もう!まだ流れ星降ってないけど、かなり待ったんだよ?」
「面目無い……」
次は遅れない、彼女はそう言ってくれなかった。
言い忘れているのならそれまでだが、これまでの響の言動を省みた未来はそれはありえないと断定する。
やはり何か隠しているのではないだろうかと。
しかし、聞けなかった。
決意したはずなのに口火を切れないのは知ることが怖いからだろうか、それとも……。
「あ、流れ星!」
隣に腰を下ろしていた響が立ち上がった。
未来もおもむろに空を見上げれば夜空にはポツリポツリと光の線が走っていた。
次第にその数は多くなり、途切れることなく宇宙を駆ける星々はどこか幻想的で儚く感じられた。
今ある幸せもどこかで終わってしまいそうで────
そんな考えが脳裏に過ぎった未来はふと、一際目立つ流星を目撃する。しかもだんだんとその形は大きくなりこちらに近づいてくるような……。
「未来ッ!!」
ふんわり考え事をしていた未来は何かを察知した響に抱かれその場を退避する。
立ち上る土煙を見つめながら響は未来を地面に下ろす。
「ごめん、未来」
本人が目の前にいるにも関わらず、響は未来を視界に入れようとはしなかった。
二人が夜空を見つめていた丘には轟音と共にちょっとしたクレーターができ、その中心には白銀の鎧を纏った何者かの姿。
「よう、お仲間が戦ってる時に呑気に天体観測たぁ度し難てぇ。ま、そのおかげであたしはラクにターゲットを掻っ攫えるってわけだ。なぁ、第3号!」
空気を切り裂き刃を伴う鞭が寸分の狂いなく響を狙って強襲する。
シンフォギアさえ纏っていない彼女が、よしんば纏ったとしても完全聖遺物であるこの鎧──ネフシュタンの鎧に敵うはずがない。
そうタカをくくっていた鞭の主だったが────
震えた声で聖詠が紡がれ、響のシンフォギアが形成される。始めに拳から作られたそれは見事に刃鞭を掴み取った。
まさか防がれるとは思わなかったのか鞭の使役者は焦りを顔に張り付けそれを引っこめた。
「ヴ、うぅ……ううううううぅぅぅぅッ」
響の身体に赤黒い葉脈のようなラインが走り、彼女の身体と心を侵食しながら広がっていく。
鞭を止めたところまでは響の意志の元で動かしていたはずの体だったが、もう彼女の心象は淀んだ赤に沈んでいた。
枷は────解かれてしまったのだ。
「■■■■■■■■────!!!」
夜空に咆哮が響く。
流星は叫喚に掻き消されたように止まってしまった。
慟哭か、怒りか、嘆きか。
どれともつかぬ叫びと共に、獣に堕ちたガングニールがネフシュタンに肉薄した。
『悪魔』のアルカナは獣性の暗示、はっきりわかんだね。
約束を守れなかったり、交友が疎かになってたり、自分なんかのために頑張ってくれている人がいるのに(外部からの影響とはいえ)結局それをおじゃんにしてしまったりと色々抱え込んだ末暴走してしまったわけデス。
────ここから嘘予告────
頑張って!キネクリ先輩!
あんたが今ここで倒れたら、パパやママとの約束はどうなっちゃうの?
ライフは満タンで残ってる。ここを耐えれば、響に勝てるんだから!
次回「キネクリ墜つ」デュエルスタンバイ!