仮面に縁を、歌に血を   作:星鱈

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だいぶ前に注文していたP5サントラが届いたので初投稿です。

P4GのSteam版出ましたね。でもSteam導入方法全くわからんから手を出せないゾ……。

今回も解釈違いあるかも……。

あなたの解釈違いセンサーが反応したら、そっとブラウザバックボタンを押してください。



Happy end protocol ①

「ほんとに何度心配させれば気が済むんですか?」

 

 

『申し訳ない』

『今回は全面的に自分が悪い』

 

 

「また心配かけちゃったね、未来」

「今回は誰も大きな怪我してないみたいだったので不問としますけど。あ、おかわりください」

 

 

薬品工場での一件から数日が経過した。

カウンターで響と未来がカレーを食しながら話をしている。

窓の雨音がリズムを刻み、既にとっぷりと日も暮れた。

結は外の看板を【CLOSE】に変えた後、皿洗いを始めた。

 

 

ざっくり『デュランダル護送』任務の概要について耳にしていた未来は『薬品工場爆発!パイプラインの不整備が原因か』と声高に告げるニュースに嫌な汗をかいたらしい。

 

すぐさま二課からの彼らは五体満足だと伝えられ胸を撫で下ろした彼女だが、爆発事故が起こった理由を当人たちから聞くために響と共にルブランを訪れていた。

 

事のあらましを聞き二人に怒りこそしたものの、誰も大きな怪我をしてないこともあり、今回はお咎めなしとなった。

 

「ところで結さんのアレ、本当にただの暴走だったんですか?」

 

お冷を喉に流し込んだ響はふと思いついたように結の暴走についてクエスチョンを浮かべた。

 

「どういうこと?」

「ノイズみたいな変なやついっぱい出したり、骨を生やしたりってさっき言ったでしょ。私の暴走はただ真っ黒になっただけなのに……」

 

異形の召喚、空間位相のブレ、鉄パイプにシンフォギアと打ち合えるほどの硬度を持たせたり、『デュランダル』を別な形状に変形させたりと……暴走の一言では片付けられないほどその時の彼は多芸だった。

 

 

『それは……』

『説明しよう!(ラヴェンツァが)』

 

 

二課では結が発生させた超常の力についてまだ完全に結論が出ていない。

ペルソナの有識者であるラヴェンツァも詳細な調査が必要とのことでベルベットルームに籠りきりだ。

 

結は調査の進捗を聞きたいのもあり、傍らに置いていたペルソナ全書を開いてラヴェンツァを呼び出そうとするが──その前に【CLOSE】の看板にしていたはずのドアが開く。

 

「ビーコン反応はここからでありますか」

「降ろせこのポンコツッ!……へっくち!」

「当機はポンコツではなく『アイギス』という識別コードが……」

 

ビショビショに濡れた鋼の乙女、そして彼女に米俵のように抱えられた雪音クリスの姿がそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テメェ……クソッ!何でか妙に力が強いッ!」

「ダメだよクリスちゃん。ちゃんとぬぎぬぎしないと」

「そうだよ。風引いちゃうから」

「よいではないか〜よいではないか〜」

「や、やめッ……ウワァ────────ッ!!!

 

 

屋根裏部屋から響くクリスの悲鳴。

結はできるだけ二階から聞こえる猫のような声に意識を向けないよう心がけながら、一階にてアイギスの身体を拭いていく。

 

白磁のように滑らかなボディは生きたものとは思えない。しかし結を不思議そうに見つめる瞳……いや、カメラアイだろうか。その奥には確かに個としての意思が宿っているように思われた。

 

「感謝であります。私の名前はアイギス。対ノイズ特別制圧兵装七型として天才考古学者の櫻井了子に造られた、所謂アンドロイドであります」

 

 

『アンドロイド?』

『了子が?』

『櫻井女史は漢の浪漫がわかるのか……』

 

 

「はい。私はあることを皆様に伝えるため、了子女史によって派遣されました。内容はここにいる全員が揃い次第、開示する予定であります」

 

 

程なくして二階からツヤツヤな響と未来、ハイライトが消えたクリスがそれぞれ降りてきた。

クリスが着ているのは部屋干ししていたはずの結のワイシャツだ。

 

もう一度言おう。

 

 

結 の ワ イ シ ャ ツ だ 。

 

 

「すみません。拭いたのは良かったんですけど着せる服がなくて」

「でもさ〜未来。男の人ってこういうスケベな格好好きなんじゃない?」

 

 

『私はいいと思う』

『俺は好みだ』

『(無言のグッチョブサイン)』

 

 

「こっち見んな変態!」

 

声高に宣言した結のセリフにクリスは背中を猫のように丸めてそっぽを向いた。

しかし朱が入った耳を隠せてはいない。

 

「変態……別称・メタモルフォーゼ。動物が通常通りに成長する場合に起こる外的変化のこと。昆虫類に比較的多く見られる傾向があるであります」

「違うそうじゃねぇ!」

 

同音異義語の解説を始めるアイギスにすぐさまクリスが突っ込んだ。

不思議そうに首を傾げるアイギスに勢いを削がれたクリスはかなり不満げだ。

 

その後どうにか状況に収拾をつけたところでアイギスが結に向き直る。

 

「先に結の方から以前了子女史より聞いたことについてお願いするであります」

 

 

『自分からか?』

『話していいのか?』

 

 

「……『デュランダル』の起動により、私たちに残された時間は一刻の猶予もありません。言わずとも構いませんが、情報のすり合わせは大切だと進言するであります」

 

 

そこまで言うなら……と結はゴホンと喉を鳴らす。

 

 

話をしよう。

あれは今から数ヶ月……いや、数週間前だったか。

 

まぁそこは重要じゃない。

 

結にとってはつい昨日の出来事のように感じられる。

しかし響たちにとっては多分想像の埒外の出来事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────あなた、人を殺める覚悟ってあるかしら?

 

 

 

紫電のバリアに閉ざされた病室で、結は了子に問われる。

 

 

『ない』

『ない』

『ありません』

 

 

「そこはもうちょっと私の意図を汲んでくれたり……いや、わかっていたとしても絶対ないわね。君に限ってそんなことは」

 

予想通りと思っていたのか、ままならないものねと了子は苦笑する。

誰を殺すつもりなのかと尋ねれば、了子はスっと指差した。

了子が指しているのは、了子自身。

つまり彼女は自分を殺せと言っている。

 

 

『……正気か?』

『考え直せ』

 

 

「もちろん正気よ。それを説明するために、なけなしの力を振り絞ってきたんだから」

 

12年前、偶然風鳴翼が聖遺物 『天羽々斬』を起動した時のことだ。

 

天羽々斬から発せられるアウフヴァッヘン波形に呼応して櫻井了子の中に『フィーネ』という人格が現れた。

 

『フィーネ』とは先史文明に生きた巫女の名である。彼女は自分の遺伝子を持つ人間にかつての人格と知識を再現する輪廻転生システム 『リィンカーネーション』を使い、幾度となく現世に復活してはパラダイムシフトの一端を担ってきたという。

 

どれだけ自分の遺伝子を持つものがいたとしても、その時代でフィーネとして覚醒するのはただ一人だけ。

今回白羽の矢が立ったのがたまたま櫻井了子だったということだ。

 

『フィーネ』として覚醒した了子は上っ面は了子として振る舞いつつ、水面下でとある計画を進めつつ暗躍を開始。

 

聖遺物の密売やアメリカとの取引、イチイバルの奪取など何千年も生きている上に今生でも上げればキリがないほどに『フィーネ』は罪を重ねてきた。

 

「……とりあえず一端ここまで。何か質問はあるかしら?」

 

 

『了子ではなくフィーネ?』

『フィーネと呼んだ方がいいか?』

『了子はもういないのか?』

 

 

「まだ私は『櫻井了子』よ。でも、いい質問ね」

 

とある計画のためにフィーネはかなりの資金確保をする必要があった。シンフォギアもフィーネにとっては執政者たちの玩具にすぎない代物だった。

 

次なる金策としてフィーネはあるものに目をつけた。

まだ了子がフィーネでなかった頃に制作していた兵器────対ノイズ特別制圧兵装たちだ。

 

試作素体を除けば完成品は全部で七体。

彼らを兵器として流せばかなりの資金がゲットできるとフィーネはほくそ笑み、早速保管してある倉庫にて彼らの仕様がどんなものだったかと確認していた。

 

そしてフィーネが彼らに搭載されているある物質に触れた時────不思議なことが起こった。

 

「で、ある物質っていうのがコレ」

 

了子は胸ポケットから黄昏色をした鳥の羽根のようなモノを見せた。

 

「これ、『黄昏の羽根』っていうんだけどね?細かい作用は割愛するけど……これの力で『了子』としての意識が蘇ったわけ」

 

当初意識が復活した了子はただの傍観者のような存在であり、自分の身体が勝手に使われているのを見ていることしかできなかった。

 

しかし月日を経たことで段々と慣れてきたのか、それとも元々そんな才が彼女にあったのか、フィーネが見聞きした記憶の一部の封印やすり替え、最近では体の主導権を奪い返したりすることに成功。

 

「でも、私がこの身体の主導権を握り続けられる時間はもう長くないのよ」

 

そのうち知能中枢にアクセスする方法を確立した了子はフィーネの得た膨大な記憶や知識を長い時間をかけて紐解き、つい最近に彼女が今から成そうとしていることにアタリをつけた。

 

「フィーネは月を破壊しようとしている」

 

 

『月……!?』

 

 

「そう、月。やり方は……この際はそれはいいわ。

話の初めに戻るけど、未曾有の大災害を起こす前、フィーネが最も油断するタイミングで────私を殺して欲しい。自殺も考えたけど、そこはフィーネに強く抵抗されてできなかった」

 

じゃあ他殺ならいけるんじゃない?って思ったのよ、と了子はあっけらかんと言った。

 

「もちろん偽装工作はするし、君の身の安全も保証する。だから────」

 

 

『何故、自分を選んだ?』

 

 

ひゅっと、了子が息を飲む音が聞こえた。

 

「……私がメディカルチェックをしていたのは何も装者たちだけじゃないわ。私は二課の全員を診断してた」

 

了子の目が右往左往と揺れ動く。

普段の溌剌とした彼女とは真逆の印象を受ける。

 

「探してたのよ。殺したことをズルズル引きずるんじゃなくて、受け止めた上で前を向ける……そんな人を。結局、君しかいなかったけど」

 

ホントはここまで話すつもりなかったんだけどね、と言って了子は口を閉ざした。

 

答えを待っているのだろうと結は察して、自分の中で既決されたアンサーを口にする。

 

 

『救う。了子も含めて』

『誰一人、死なせやしない』

『だが断る』

 

 

「クサいセリフ……けど嫌いじゃないわ。でもね、世の中にはどうにもできないことなんて沢山あるの。例え君がどんなに足掻いたとしたって────」

『お言葉ですが……そんなことはありませんよ』

 

了子の発言を遮るように結の内側から声が響く。

結の胸から蒼い炎が立ち上がりペルソナ全書が形成される。

その中から現れたのは青いワンピースを纏った少女、ラヴェンツァだ。

 

 

『久々だな』

『元気か?』

 

 

「ええ、ご覧の通り」

 

結に微笑んだ彼女はゆっくりと了子へ身体を向けた。

気まずそうな、バツの悪そうな表情をしているが、了子はそんな顔をされる心当たりが全くなかったので思わず首を傾げる。

 

「そして……了子。私はあなたを誤解していたようです。謹んでお詫び申し上げます」

「えーと、ラヴェンツァちゃんでいいのよね?私と貴女、あんまり関わりなかったはずだけど」

「はい。私は意図的に了子との接触を避けていましたから」

 

ラヴェンツァ曰く出会ったばかりの了子から既に天命を全うしたはずの意識の気配を感じ取ったらしい。

しかし今の話を聞いたところ『櫻井了子』は極めて善良であると判断。

 

了子に頭を下げるために、そしてまだ彼女に生きる道があることを伝えるためにここに現れたという。

 

「あなたが生を諦めるのは早計です。打てる手立ては、まだあるのですから」

 

ラヴェンツァはどこからかペルソナ全書と似た配色のスマホを取り出してその画面を2人に見せた。

 

初期設定のようなホーム画面の左端、星の瞳をもった眼のようなアイコンのアプリが目を引く。

 

 

 

 

「『イセカイナビ』────これは下手を踏めば深淵へと転がり落ちるような危険な賭け、勝機はないに等しいかもしれません。……それでもあなたに、人の心を盗む覚悟はおありですか?」

 

 

 

たおやかな笑みを浮かべてラヴェンツァは結にそう問いかけた。

 

 




合流回……と見せかけた過去回想話。『Maybe foreigner』の続きとも言えますね。

了子が自身の殺害を依頼したのはフィーネの計画を止める以外に、『自分』ではないとはいえ葬ってきた人々への贖罪する意味もあります。

了子はフィーネの中で彼女のやることなすことを全て認識しています。無辜の人々が自分の放ったノイズによって死に絶える様子も鮮明に見てしまっているわけです。
途方もない罪悪感が了子の中で膨れ上がっていたとしても無理はありません……。




やっと『イセカイナビ』の登場にまで漕ぎ着けましたァ!
長かった、長かったゾ……。


以下、当SSにおける『アイギス』と『黄昏の羽根』の一部設定資料であります。


アイギス
→まだ『了子』が『フィーネ』でなかった頃に作成した対ノイズ特別制圧兵装。そのラストナンバー。七式・アイギス。

世界各地で発見される聖遺物の破片『黄昏の羽根』――その最大サイズである『パピヨンハート』と呼ばれるものが彼女の炉心として組み込まれている。

『黄昏の羽根』は今も各地で発見報告があるが、他の聖遺物の破片のような超常の力は存在しないとされたため、各国では羽の研究は打ち切られていた。

しかし若気の至りと言うべきか、了子はそんなはずはないだろうと試行錯誤を繰り返してその羽の性質――――無機物に自意識を持たせる力を発見した。

世紀の大発見に舞い上がった了子は黄昏の羽根と聖遺物の破片で自立稼働するシンフォギアを作成できないだろうかと当時作っていた天羽々斬と同時並行で制作を開始。

しかし条件が足りなかったのか、七度試行を重ねても対ノイズ用の武装として完成することは叶わず、泣く泣く彼らと試作素体を倉庫へとしまい込んだ。


『黄昏の羽根』
→世界各地で今も発見報告が多発する謎の聖遺物の破片。
了子によれば物質と情報の狭間の性質を持ち、『生』を司る力を持つとされるが未だその全貌は明らかにされていない。

今回は羽根の『生』を司る力によりフィーネによって上書きされたはずの了子の意識を再び復活させた。
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