仮面に縁を、歌に血を   作:星鱈

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主は薔薇の眠りより醒め、其は窮極の果てへ至れり



推奨脳内BGM︰『支配者のキャロル』


Close Encounters Of The Outer Gods(未知との遭遇)

ぽつぽつと隆起した、もしくは巨大な根っこに食い破られた地面を眺めながら閑散とした街を探索する。

 

宙を覆う巨大な枝葉のせいで太陽が顔を覗かせることはない。月並みな言葉だが夜の帳が下ったような、そんな印象を受ける街並みだ。

 

 

「誰もいないですね、ここ」

 

きょろきょろと辺りを見回しながら響が呟く。

ノイズさえいなければ伽藍堂にならないはずの商店街。

 

「あっ、誰かいる!」

「ちょ、バカ!一人で行くな!」

 

奇妙なことに店のシャッターは閉まっていないし、灯りもついている。しかし人が、人だけが見当たらない。

 

未だ彼女が月を撃つ動機はわからずじまいだが、この世界になら何かヒントがあるのではないか。

 

「あのー!待ってくださーい!」

「やめとけってば!おい!」

 

────そう考えた矢先である。

 

 

「わーーーーーーーッ!!!!!!」

「ほぎゃーーーーーーッ!!!!!」

 

 

「雨城!」

 

「阻め、『ギャラハッド』!」ブチッ

 

 

およそ乙女というものをかなぐり捨てた叫び声にギャラハッドと翼は即座に飛び出し、いままでの諍いも忘れて2人で寄り添い震える響とクリスを守るように立ち塞がった。

 

しかし彼らの目の前にシャドウはおろかノイズすらない。

その変わりに前方に人影のようなものが見受けられるが、暗がり故にしっかりと視認することが難しい。

確かによくわからない人影が暗がりで動いていれば不気味ではあるが……。

 

ギャラハッドは腕部に搭載されたライトで辺りを照らす。

朧気だった像ははっきりとその形を顕にさせた。

 

 

趣味の悪い……と声を落とした翼にギャラハッドは首肯する。

 

照らされた光の中央には人型の影が立っていた。

光に晒されてなおその深淵は翳ることを知らず、不気味に蠢いている。

 

それだけならばまだ良いほうだ。

真に恐怖を煽るのは、『影』に無造作に貼り付けられた無数の紙片。

 

顔にあたる部分にはリディアンの制服を着た女子生徒のポロライド写真。

身体にはその子の名前、身長、体重、血液型、生年月日……いわゆるパーソナルデータと呼ぶべき無数の個人情報の走り書きがベタベタと惜しげも無さそうに貼られていた。

 

影は時折呻き声を上げるだけであり、此方への敵意はなさそうに見える。

翼もそれを感じとったのか、手に取ったアームドギアを霧散させた。

 

「人を人として見ていない、情報の塊としか認知していないということか」

 

彼女の裏にそんなものがあるとは思いもしなかったよ、と苦笑する翼。

彼女の計画はともかくとして、その精神性すら見抜けなかった自分を自嘲しているのかもしれないが、数千年を生きた心の怪物とも呼べるフィーネの老獪さは想像を絶するものだ。

弦十郎のように異常を見抜ける方がよっぽどおかしい。

 

 

『年季が違う』

『わからなくて当然』

『気に病むな』

 

 

「……それもそうか。すまない、私らしくもなかった」

 

再び絶刀を顕現させ、迷いを振りほどくようにそれを二、三と振るう。

 

「行こう。あまり奏たちに負担はかけたくないからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結たちが認知世界へ消えたのを見送ったラヴェンツァは現実世界のリディアン音楽院、その中のとある部屋へ足を運んでいた。

実際に足を運んだわけではなくベルベットルームを経由して移動したのだが、まあその程度の差は彼女にとって瑣末事である。

 

コツコツとノック。

ドタバタと部屋の中から音がして少し、ドアが開いてどうぞと声がした。

 

入室したラヴェンツァは手頃なソファに腰掛ける。

目的の人物は羊羹の乗った菓子受けと湯呑みをテーブルに置き、彼女の対面に座った。

 

「それで、どんな御用かな?」

「……白々しいですね」

「ハハ、これは手厳しい。でも大切なことなんだ。できれば君の口から聞かせてくれると、僕は嬉しいかな」

 

羊羹を一口頬張り、湯呑みを啜る。そんなラヴェンツァを親戚のおじさんのように眺める『彼』はあくまで彼女自身に用件を口にしてくれと促す。

既に大よその検討は付いているはずでしょうとラヴェンツァはため息をついた。

 

「……あなたは()()()()()()()()()()()マルキ

 

ラヴェンツァの冷めた目にもまるで動じる様子すら見せない『彼』────喜拓人はふっと微笑んで、そうだねと告げた。

 

「ラヴェンツァちゃん、だったかな。少し僕の話を聞いてもらえるかい?あぁ!あまり心配しなくて大丈夫。長話にはならないからさ」

「……いいでしょう。私も答え合わせをしたいところでした」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕はとある施設で研究員として働いていた。機密情報の類がかなり多い職場だったけど、それなりに実入りは良かったし、特段普段の業務についての不満もなかった。

ついでに言うなら、所長は僕が大学時代に没頭していたテーマの『認知訶学』についての理解を示してくれたことが、この職場での何よりの収穫だと僕は思っていた。

 

ある日僕は所長の研究している『グリモワール』なる聖遺物に触れてしまった。

わざとじゃない。偶然、そう、たまたまだ。

 

その瞬間、僕の意識は暗闇の中へと放り込まれた。

 

地面を踏み締めている感覚はなく、視界は闇に飲まれ、落ちているのか浮かんでいるのかすら分からずに、暗く深い深淵の、そのまた奥に座する混沌の渦に足を踏み入れるおぞましい感覚を、ただただ餌を与えられる雛鳥のように享受することしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無明の房室

 

 

渾沌の中核

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ窮極の終点

 

虚無の地平

暗愚の実体

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ乾坤の咎戒

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ暗澹たる螺旋

 

ㅤㅤㅤマグヌムの落し子

 

 

 

 

白痴盲目の魔王

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Ia! Ia!ㅤAzathoth!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我 は

 

は 我

 

 

 

 

 

 

 

 

知性今再

 

■■にすらたない

 

なれど、矮小なるでよくぞしえた

 

大義である。に、祝福けん

 

■■為使わん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()




空高く 今宵 星戻ったり戻らなかったりしろ

かなり人を選ぶような展開ばっかり出してるけど許してつかぁさい。




脳内を蹂躙する冒涜的な囁きにより宇宙の神秘と醜悪さを同時に理解してしまった丸喜先生はSANチェックです(1D10/1D100)

……今回の内容がよく分からない?そのうちちゃんと解説するので深く考えなくてもよろしくってよ!


前半はフィーネが認知する『人間』について。
彼女は人間(一部)を認知はしていますが、翼が本文で語ったように情報の塊としてしか認識していません。もちろん例外はありますが。

後半部分で把握して頂きたいのは丸喜先生がペルソナ全書に触れ合った結果、別次元のヤバげな存在と間接的に接続してしまっていたことくらいです。
『ア』から始まって真ん中に『ト』が入って最後に『ス』で終わる存在ですね。
さて、丸喜先生のペルソナの名前はなんだったかな(すっとぼけ)


31話で募集中のアンケは100票まで到達したら締め切ります。
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