仮面に縁を、歌に血を 作:星鱈
シンフォギアで新情報出てくると早くGX編辺りまで書きたいな〜俺もな〜と思うんですがやはり遅筆であります。
「うわあああああッ!!!?」
僕は恐怖のあまり布団を跳ね除けた。目の前には見慣れた壁と家具、それと記念写真。
どうやら自室で悪夢にうなされていたようだった。
先ほどまで僕は深淵の底に囚われ、大いなる何かに呪詛を耳元で囁かれていた気がしたのだが……。
ズレたメガネを定位置に戻し、ベッドから降りようとしたところで違和感を感じる。
「あれ、僕は研究所にいたんじゃ……?」
『上出来だ』
誰だ、口からその音が出る前に僕は口をつぐむ。
聞き覚えのある声。しかしありえない。ありえるわけがない。
なぜなら僕は、ここにいる。
ガチャリと寝室のドアが開く。
白衣にメガネ、水色のシャツにチェックのネクタイ。
見紛うはずもない。僕の目の前にいるのは紛れもなく──『僕』
ただ一つ違うところを挙げるとすれば、その瞳が金色に染まっていることだろうか。
『まずは感謝を。内なるヒトの子よ』
目の前にしてわかる。紛うことなき自分の声。しかしそれが有する言葉の重みが深くのしかかる。
『お前が意図したものではなかった。瞬きにすら満たない時間であった。だがお前は私に再び知性を蘇らせた。故に、我はお前に祝福を与える』
ゆっくりとこちらに近づいた『僕』はそっと僕の額に手をのせた。
『まずは理解すべきだな。お前が辿ったその道を』
額を小突かれ、僕の身体は布団へと落ちる。だけど僕が感じたのは柔らかな布団の感触ではなく空気を切る音。
叫ぼうとした口は背後から伸びた触手のようなものに遮られ、僕はまた深淵の中へと誘われていった。
⚫
「さっき集会でも言ったけど、君たちカウンセリングに興味あったりするかな?」
どこかの学校。3人の生徒に僕が告げる。
「けど外の現実は、理想通りにいかないこともある。多くの人はその内と外のギャップに苦しむんだ」
どこかの保健室。学生服の結くんに僕は話す。
「犯人が逮捕されたよ。もう大丈夫だ」
どこかの病室。寝たきりの留美に僕は喋る。
「人間にはね、自分に暗示をかけてその通りに自分を変えていく力があるんだ」
どこかの診察室。対面に座る沈んだ表情の少女に僕はおまじないをかけた。
「最後の確認がしたいんだ。僕たちは、本当に戦うしかないのか?」
見覚えのある喫茶店。結くんと……確か明智くんへ、僕の最後通告。
「たとえ僕自身がどうなろうと、僕のやり方で不甲斐ない現実を変える!……それが、僕の反逆だ!」
幻想的で、不気味な景色の中で僕は自らの理想を高らかに掲げる。
「いこうか、アザトース」
最後の決着をつけるため、躊躇いからの決別のため、僕は彼らに背を向けて『僕』に歩み寄った。
「全てを捨てて……全てをぶつけた……それなのに、どうして……」
崩落する異世界の中で僕は叫ぶ。身につけた金色の仮面は欠け、純白のマントは煤にまみれ、救世主然とした姿は今や見る影もない。
「頑張ったって、努力したって、少しの理不尽で全てが無駄になる事だってある!」
発した言葉を呼び水に記憶の底から引き上げられたのは『打ち切り』の四文字。僕の研究は実証性の不足を根拠として出資はおろか、研究そのものすら破棄された。
論文を見てもらった時、出資者や教授はとても前向きに僕の研究を見てくれた。
悔しかった、苦しかった。とはいえその頃一介の学生だった僕に抗うすべは皆無。僕は逃げるように大学を辞めた。あそこにもう僕の居場所はなかった。
「君たちだって、わかるだろう!?」
蓋をしていたはずの感情が溢れ出す。今まで自分がひた隠してきたものを余さずさらけ出した。
それでも『彼』はその醜態を笑いもせず、蔑みもせず、ただ告げる。
ㅤ────それでも、進まなきゃいけない
その言葉に、久しく忘れていたものを、自分の原点を僕は取り戻せたような気がした。
誰かに舗装された完璧な道を悠々と歩むのではなく、自分の選んだ道をひた走りたいと。
たとえそれが平坦でない道のりだとしても。
道半ばで躓き転び心折れそうになったとしても。
何度だって立ち上がって抗い続けようと、彼らは心に決めたのだ。
「手荒に呼び止めて、ごめんね」
崩れ去る世界から脱出しようとするネコヘリを触手で掴み僕は『彼』を呼んだ。
「ここで君に勝負を挑んでも、きっとまた僕は負けるんだろう」
分かってはいる。だけどこのままで終わるのは僕の矜恃が許さなかった。
「分かってるさ……バカげてるのは」
「……未練を、断ち切らせてくれ」
僕の姿は白衣に戻り、『彼』の仮面は宙に溶けた。異世界──パレスの崩壊はすぐそこまで迫っている。
お互い、ペルソナは使えない。
「全てを捧げたんだ……全てを……!」
勢いに任せた大振りのテレフォンパンチを『彼』はノーガードで受け、『彼』もまた不格好なパンチを僕にくらわせた。
「僕だってなぁ……!」
⚫
「こうして僕は別世界、君が元いた世界の記憶とその他諸々を転写された。かなりの情報量に頭が破裂しそうになったけどね」
「あなたが目覚めた経緯は把握しました。縁を辿ったとはいえ末恐ろしいものですね……」
「ラヴェンツァちゃん。僕は一時的とはいえ……その、繋がっちゃったわけなんだけど大丈夫なのかな?」
「大丈夫でしょう。今は、まだ。知性が復活したのがコンマ1秒にも満たない時間で助かりましたね」
ラヴェンツァの不穏な一言に小さく身震いする丸喜。しかし起こしてしまったことは仕方ない。今は目先に危機が迫ってきている状態だ。
今どうしようもないことは棚の上に置くことにして彼らは話を続ける。
「君がここに来たのは僕に助力を頼みたいから、だよね」
「ええ。あとは貴方が想定通りの力を手に入れていたかどうかの確認のためですね」
渋々ですが、と言外にラヴェンツァは顔に表した。以前は敵対していた関係なのでそれも仕方ないだろう。ずいぶん嫌われちゃったなと丸喜は頭をかいた。
「わかった。ここで世界が未曾有の危機に陥るのをただ眺めていられるほど僕は達観してないからね」
椅子を立ち丸喜は扉に向かい、ラヴェンツァはため息を一つ着いてベルベットルームの扉を顕現させた。
丸喜はドアノブに手をかけたところで動きを止める。
「『僕』がやろうとしていたことはある人にとっては救済で、またある人────少なくとも彼らのように諦めない人たちには余計なお節介だった」
「あれは彼らが必死に生き抜いた時を否定することに他ならない。なにより彼らへの最大限の侮辱に等しい。少なくとも、この僕はそう思う」
「僕は『僕』じゃないし、彼は『彼』じゃない。そんなこと知ったこっちゃないって言い切ることもできる」
「そもそも僕は『僕』ほどみんなの幸せを願っているわけじゃないし、どちらかと言えば慎ましく生きていたいんだ。力を使えば逃げ出すこともわけない。でもね」
一呼吸おいて丸喜はドアを開けた。
「『僕』のように諦めたくないんだ。彼らみたいに、とはいかないと思うけど精一杯足掻いてみせるよ」
多分シャドウ丸喜はアインズみたいな声してる。
丸喜回想回でした。全然話が進まねぇなオイ!だって現実生活が辛いから……筆が進まんorz
この世界の丸喜は祝福その①としてアザトース(真)に別世界(P5R)の丸喜を追体験させられました(その他に何もされてないとは言ってない)。
この世界の丸喜は留美(恋人)を失っていません。なのでP5Rの丸喜のようなみんなを幸せにするぜ!というような熱意に燃えていることもないです。
しかし不幸にもP5R丸喜を追体験してしまった彼は心境に変化が生じます。具体的にはP5R真ENDのタクシーの運転手のような感じになりますね。
次回は結くんのシーンへ戻ります。誰かの仮面がはがれたりするので見とけよ見とけよ〜