仮面に縁を、歌に血を   作:星鱈

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ラヴェンツァちゃんルートがP5Rでもなかったので初投稿です。


世界は一つしかありませんよ……ファンタジーやメルヘン、アニメじゃあないんですから


ようこそ、ベルベットルームへ

>ここは……寝台列車か?

 

座っている椅子から伝わるガタンゴトンという振動は、ここが列車の中だと把握するのに十分な要素だった。

 

青を基調とした車内の調度品や装飾は非常にシンプル、しかし職人の情熱を感じさせる匠の技が光る出来栄えだ。

窓外の景色は湾岸近くを走っているのか、車内よりも深い青を湛えた海が横たわり、その上に座する満月がやわらかなひかりで灯りの少ない車内を照らしている。

 

ここを寝台列車とするならば、この部屋はミニラウンジといったところだろうか。

 

「お久しぶり、というのは些か語弊がありますかな?」

 

 

『お久しぶり?』

『何の話だ』

 

 

「別の世界の貴方と我々には深い縁があったのでございます。『貴方』とはお久しぶり、といったところでございましょう」

 

そう言われても……と首を傾げる結。ふと、気配を感じ部屋の主に失礼を承知で目線だけを後ろに投げかけた。

 

「あら、このために主も言い包めておきましたのに」

 

金色の瞳と自分の視線が交差する。固まった彼女の身体の体勢を見るにわっ!と驚かすつもりだったようだ。

プラチナブロンドの髪に青いワンピースを着た人形と見紛う程の精巧な顔つきをした少女が、たおやかな仕草で礼をした。

 

「バレてしまっては仕方ありませんね。お初にお目にかかります、マイトリックスター。私はベルベットルームの住人、ラヴェンツァと申します」

「フフ……目論見が外れた気分はどうかな、ラヴェンツァ?」

「残念ではありますが、不思議と嫌な気はいたしません。こうしてまたトリックスターに──まだ純粋なトリックスターに『ラヴェンツァ』として会うことができたのですから」

 

ラヴェンツァは机の傍らに置いていた『V』の刻印がされた青い本をちょっと背伸びして手に取るとゆっくりとイゴールの側へと歩み寄った。

 

「本来この部屋は資格を持ち、なおかつ何らかの形で契約を交わした者しか訪れることができません。

しかしマイトリックスター、貴方は資格はお持ちのようですが、契約を交わしていないにも関わらずこの部屋に足を踏み入れた。いえ、侵入した?」

 

「この彼は『賊』ではない。貴方は意図せず踏み込んだ、ということにいたしましょう。よろしいですな?」

 

 

『わかった』

『何が何だか分からない……』

 

 

彼らが何を話しているか一言も理解できそうで、理解できない。

渋い顔をしてこめかみを押さえる結だったが「そうご心配めさるな」とイゴールは話す。

 

「近く──そう、もう間もなく貴方は『内なる貴方』と契約を結ばれるでしょう」

「マイトリックスター、今全てを理解しろとは言いません。でもこれだけは覚えておいてください」

 

ラベェンツァが何かを口にしようとしたところで電車のベルがけたましくなり始める。

刻限ということだろうか……。

 

「貴方は近い将来、決断を迫られる時がやってくるでしょう。その時は────」

 

 

 

────ぜひ、後悔のない選択を

 

 

 

ラヴェンツァの笑顔を最後にベルベットルームでの結の意識はテレビの画面を消すように切れた。

 

 

 

 

 

「おい、どうした」

 

目が覚めるとそこは元のルブランだった。

あの青い車内や足を伝ってくる振動は、影も形もない。

惣治郎が心配して結を覗き込んでいる。

 

「疲れてんのか?」

 

 

『そうらしい』

『列車の中にいた』

『長鼻と少女が……』

 

 

「ま、あの客で最後にしようとは思ってたし休むにはちょうどいいんじゃねぇか?明日のバイトは休んどけ」

 

 

『気遣いはありがたいが……』

『まだやれる』

 

 

「マスター権限を以て命ずる。雨城 結、お前は明日、全休だ」

 

>……!?不思議な強制力のような、想像の埒外に位置する力が働いているような「今日はもう寝ようぜ」ウッ!視界に黄色鼠と黒い猫が……。マスターの背中には何やらゴツイ神父と魔術師然とした灰髪の男が見える……!

 

マスターの手の甲に何やら紅い光が見えた気がした結は先ほどまでの意気はどこへやら、すごすごと屋根裏部屋に引き下がっていった。

それを最後まで見送った惣治郎は頭をかきながらボソリと呟いた。

 

「……ったく。面倒事が増えちまった」

 

惣治郎の視線はカウンターに置かれた寂しげな青い本に向けられていた。

 

 

 

 

 

朝にも関わらず遠くで響くカラスの鳴き声に結はまどろみから目を覚ます。

 

>……今日は惣治郎から全休が言い渡された。大学の授業もちょうどない。もう少しだけ寝てしまおうか。

 

寝覚めも好調とは言えない結はマスターに厳命されたわけではないが、とりあえずまだ横になることにした。

 

「あら、マイトリックスターはまだお眠なのかしら?」

 

 

『君は……』

『ラヴェンツァ?』

『これが噂の朝チュン……?』

 

 

「このようなことを朝チュンと称するのですか?また一つ詳しくなりました。貴方には様々なことを教えてもらってばかりですね」

 

1.5サイズのベットでゴロリと寝返りを打つと薄手のワンピースを身に纏うラヴェンツァの顔が見えた。もちろん服の色は青色である。

 

いくら少女とはいえこんな服装で、なおかつこんなにも愛らしい顔つきで布団に潜り込んでくるのは……結でなくとも心に、ついでにそれ以外の一部該当箇所にもクるものがある。

 

このままでは自分がムショ行きであることを予見した結はすぐさま飛び起きトイレへと駆け込もうとする。

 

しかし人間ランクMAX、スキル厳選を済ませ合体警報で作成したペルソナを多数所持する『彼』であっても、ラヴェンツァに勝利するのは骨が折れるどころか滅却されそうなレベルの相手だ。

 

今目の前で逃げ果せようとしている結の人間ランクは初期値、そしてペルソナはおろか異世界にも入ったことのない無垢なヒト。

 

端的に言えば結が逃れられる道理は万に一つもなかったのである。

 

 

「ブラックライダー!」ブチッ

 

 

ラヴェンツァが傍らに持った本を開けば背後に黒馬に乗った黙示録の死神が顕現する。

逃げ出そうと必死な結は気づかなかったが窓外の空模様はざあざあと雨が地上に降っていたりした。

 

「マリンカリン!」

 

華奢な腕から放たれた桃色の波動が階段に差し掛かった結に直撃。駆け降りようとした結の身体を強く拘束する。

自分の脳が下す指令が身体に拒否される不思議体験に困惑していると彼の耳にギシ、ギシ、と死神のような足音が聞こえてくる。

 

 

『捕らわれる謂れはない』

『最初からやりなおそう』

 

 

「いえ、こうでもしないと……というよりかは私がそうしたいのです。『おい囚人!』なんて……ふふ、懐かしい響きではありませんか?」

 

やはり分かりそうで分からない。

魚の小骨が喉に引っかかったような、もどかしい違和感を感じる。あと一つ、ピースが抜け落ちたかのような違和感が。

 

>自分は彼女と何をしていたのだろう……

 

ラヴェンツァに導かれるままに、結はいつの間にか部屋の中に現れた青いオーラを纏った列車のドアの中へと入っていった。

 

 

 

 

 

彼女に案内されたのは前回訪れた車両の一つ奥、ちょうどラヴェンツァがいたであろう場所だ。

ちなみにドアをくぐった瞬間にラヴェンツァの服装は前回見たそれに変わっていた。

 

大画面テレビが車室の中央に置かれ、それを囲むようにイスが配置されている。ここは映画か何かを見る場所なのだろうか。

いや、本棚やレトロなブラウン管テレビ、日記らしきものが置かれた机などを見る限りでは『ラヴェンツァの私室』が適当な解答か。

 

「私は主に頼んで色々と勉強をさせて頂きました。テレビゲームや小説、パソコンのソフト……とにかく私たちは時間だけはありますので」

 

やや寂しげな顔つきでテレビの近くに据え付けられたパソコンのキーを叩きマウスを弄るラヴェンツァ。ほどなくして大画面に光が灯る。テレビには『我々と貴方の関係性』と題されたスライドが表示されている。

 

「では、僭越ながら『我々と貴方の関係性』について講義を始めていきます」

 

いつの間にかハイカラなメガネをかけたラヴェンツァが次のスライドを表示する。

 

「まずはおさらいからです。この『ベルベットルーム』は主が仰っていた通り、夢と現実、精神と物質の狭間……要は様々な『境界』を揺蕩う部屋、とでもお考えいただければ」

 

 

『ラヴェンツァ先生、噛み砕いて教えてくれ』

『ぜんぜんわからん』

 

 

完全に現状を理解できていない、もしくは自分からしようとしていない結はとりあえず生徒役に徹することにした。

またあの不思議体験をしたいとも思わないし、自分の中に存在する違和感を取り払ういい機会だと感じたからだ。

 

「……そうですね。用途もあり方も完全に違うものではありますが、精神と時の部屋とでも形容した方がよろしいでしょうか。つまりは貴方を鍛え、その旅路の後押しをする場所とも言えます」

 

ラヴェンツァがキーを叩く。やっと本題に入るようだ。

 

「ここはあらゆる境界にまたがる空間……いわゆる平行世界といったような場所にもこの部屋は門を開くこともあるのです。その平行世界の中で、我々は『貴方』と出会いました」

 

 

『自分とは別の自分?』

『正直ピンときませんね』

『我は汝……汝は我……』

 

 

「ええ、その認識で大丈夫です。その世界の『貴方』は運命の囚われ────勝率はゼロにも等しい理不尽なゲームに参加し、見事真なる更生を果たされた……言い換えればチート紛いな手段を使った敵相手にレベルとコープを上げて殴ればいいを敢行し、見事勝利なされたのです」

 

 

『わかりやすい』

『俗世に染まった?』

 

 

「ええ、それはもうたっぷりと」

 

ラヴェンツァはクスクスと笑いながら口許を抑えた。

 

「そして『彼』は今も美学を結んだ仲間たちと共に平穏無事な日々を過ごしていることでしょう。故に、あちらの『貴方』は我々の支えがなくとも、もう大丈夫」

「次なる役目を果たすために主は新たな扉を開こうとしました。すると────」

 

 

『ここに繋がった、と』

『また自分に会えた、と』

 

 

「Exactly!上出来です。この部屋に訪れる者ないしは招かれる者がいる、それ即ちこの世界も我々の助力を必要とする客人がいらっしゃることに他なりません。そして客人──貴方にはこれを……」

 

パソコンから手を離したラヴェンツァは結に鍵のようなものを手渡した。白黒の仮面の装飾が施された、不思議な鍵だ。

 

「まだほんの少しだけ早いかもしれませんが、渡しておきます。たった今から、貴方はベルベットルームの正式なお客人です。この世界の貴方も『力』を磨くべき運命にあり、必ず我々の助けが必要になることと思います」

「貴方が支払う対価はたった一つだけ。貴方の選ぶ選択に相応の責任をもっていただくこと。

ふふ、難しく考える必要はありませんよ。貴方の心の赴くがままでいいのです。それをほんの少し後押しするのが私たちの役目……」

 

>電車のベルが鳴り響いている……。どうやら刻限のようだ。

 

「むう、もう少しお話をしていたかったのですけど。ですが、貴方はまだ内なる貴方と契約を果たされていない……」

 

>……瞼が重い。気を抜けば眠ってしまいそうだ。

 

「貴方──いえ、結。また再び見える時まで、息災なく。その時には結のお話も、いっぱい聞かせてくださいね」

 

 

【ラヴェンツァの確かな意志を感じる……】

 

 

 

 

 

…………

たなる(よすが)ばれたり

 

(よすが)ち、

困難打倒する一条なり

 

、『剛毅』のペルソナの祝福たり

みへとける、なるとならん……

 

 

 

COOPERATION【ラヴェンツァ】

 

『剛毅』

【■□□□□□□□□□】 RANK1

 

 

 

 

【ペルソナの力を育てる人間関係

『剛毅』のコープが解禁した!】

 

 

 

 

 

結はまた彼女の笑顔を最後にその意識を手放した。

 




まあ同一世界線なら有り得たかもしれない未来なんて沢山あるし、多少はね?

プロットいくつかあったんですがベルベットルームだけは流用ができたんで早めに投稿。

牢獄じゃなく、列車。多分イゴールは車掌。
結は『彼』と違って運命の囚われじゃないし無理ゲーの駒でもないからね、仕方ないね。

やっぱりぺ5主くんに一番心酔してたのラヴェンツァちゃんじゃないかなぁと思いながらやってたら……なんてこった!初対面の同一人物に想い出を語るヤベー奴になってしまった。だが私は謝らない。

多分Rank上がんの一番早いよ彼女。というか実質Rank二周目じゃないか(憤怒)

すみません許してください!双子の看守も出しますから!
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