仮面に縁を、歌に血を 作:星鱈
覚醒の時きたれり、其は命を守護する者①
「あー、結。新しい豆を試そうかと思って注文入れたからこの日にここの配達所に取りに行ってもらえないか?」
今日も今日とてルブランにてバイトに勤しむ結。
大学の秋学期の課題も全て終了し、今は二年生が始まるまでの準備期間である。
ということはバイトに勤しんだ後夜に必死こいてレジュメ作成をするのではなく、気の向くままに懸垂したりするくらいの時間的余裕はあるのだ。つまるところ暇なのである。
もちろん惣治郎からの頼み事も二つ返事で了解した。
その後予定がないことを確認するためカレンダーを見たところ『ツヴァイウィング』と走り書きがあった。
はてこれは何だったろうかと検索をかけてみるとその日は超人気ボーカルユニットの『ツヴァイウィング』のライブの日だったらしい。
そういえば大学の知人が鼻息を荒くしてそのユニットについて語っていた気がする。彼がライブの抽選結果で落ち込んでいなければいいのだが……。
>そういえば惣治郎に言われた配達所はライブ会場とほど近いようだ。時間に余裕があれば受け取った後かその前に外から歌声を聞いてみよう。
そんなこんなでライブ当日。
知人から『今日はライブで優勝してくるよ!』とのメッセージが届いたので、無事当選したらしい。結が行くわけではないが少し安心した。
>……豆を受け取る時間まではかなり余裕がある。ライブ会場の方に行ってみようか。
ㅤ『行く』
ㅤ『まだ待つ』
結は大きめのバックの中にサイフや袋を突っ込んでそのジッパーを閉めようとした。
ふと、結の視線の端に最近は内容があまり変化しなくなった【グリモワール】が映る。
肌身離さず持っておけ、と言われたわけではないが今まで大学や休日に出かける時もずっと持ち歩いていた。
今回はそこまで遅くなる用事ではないが……。
【……ここは慎重に考えた方が良さそうだ】
ㅤ『持っていく』
ㅤ『置いていく』
ルーティンを崩すと何とやら、古事記にもそう書いてある。結は【グリモワール】もバックの中に詰め込むことにした。
「何だ、まだ受け取りまでは時間あるだろ。それともついでに済ます用事でもあるのか?」
予定よりも早めの時間にルブランを出発しようとした結に惣治郎が声をかける。
ㅤ『ライブを少し』
ㅤ『音漏れ参戦だ』
ㅤ『盗み聞きを』
「音漏れ……ああ、ワイドショーだか何かでやってたな。ツヴァイウィング、だっけ?」
「迷惑かけねぇようにな」と言うと惣治郎は厨房の奥に消えていく。
ほんの少し通りすがりに聴くだけの予定なのでそこまで迷惑はかからない……はずだ。
一応怪しまれないように気をつけようと結は心の片隅にメモを残すのだった。
>豆を受け取る前にツヴァイウィングの歌を聴いていこう
キコキコとおニューの自転車をこぎながらライブ会場へ近づいていく結。
海沿いに建てられた会場の天蓋が展開し、巨大な照明設備へとその姿を変えている。
今なら水平線に沈む夕日が最高の角度で会場内を照らしているだろう。ここまで計算し尽くされて設計したのだとしたら脱帽モノである。
ちょうど今は間奏の時間らしい。声の聴こえる位置までやってきた結は今か今かと歌姫達の声を待ち、耳を澄ます。
しかし結の耳に入ってきたのは────人々の悲痛な叫びとライブ会場の一部が爆散した音だった。
バッと空を仰げば槍のようにその身をしならせ会場へ突貫していく認定特異災害──ノイズの姿が見えた。
想定した音と明らかに隔離が生じるソレ、まさに『ノイズ』に結は頭を叩き割られたような感覚に陥る。
そして普通に生きている限りでは無縁の存在のはずであるノイズが何故こうも局所的に発生しているのかと首を傾げた。
現状では分からないことだらけだ。しかし──
ㅤ『……放っておけないな』
ㅤ『助けに行こう』
選択の余地はない。
ライブ会場に行った知人のことも気がかりだ。
結は煙が立ち上り阿鼻叫喚の坩堝と化したライブ会場の中へと走って行った。
会場の正面出入口は既に将棋倒し等の人災が発生しておりとても外から入れそうにない。
舌打ちをしながら正面から離れた場所にある2〜3mはあろう柵を鍛え抜かれた膂力で登攀。
パニックになった人々や右往左往する方々にできるだけ人の少ない脱出経路を教えながら結は会場の中心へとひた走る。
死地に自ら飛び込んでいる自覚はある。だが自分がいることで少しでも助かる命があるのなら────その気持ちが彼の身体を叱咤し、かつ激励する。
しかしそんな結を快く思わない天の思し召しか、ノイズの何体かが結に反応し彼に向かって進撃を開始した。
ㅤ『チッ!』
ㅤ『クソっ!』
結は逃がした人々とは逆の方向に自分を急がせる。
瓦礫や倒壊した照明設備はノイズの侵攻の妨げにはならない。
位相差障壁と呼ばれる、ざっくり説明するなら相手の攻撃全透かしという『世の中クソだな!』レベルの特性を保持しているおかげで、一般人がノイズを撃退することはまず不可能である。
無駄に鍛えていたおかげでノイズと結のカーチェイスは順調だった。かなりの頭数を引き受けながら、人がいない方へとひたすらに足を駆動させる。
その途中、見覚えのある顔が目の前に現れる。
「雨城!?」
ㅤ『三島!?』
ㅤ『お前ッ!!』
顔を見せたのは結の大学の知人である三島由輝だった。
まだ逃げてなかったのか、逃げ遅れてしまったのか、それとも隠れていたのか。何れにせよ、結が今最悪の状況なのは間違いない。
そしてこちらはほぼ全速力に近い速度で走っている。
三島が結の後ろにいるノイズに引き潰され炭素と化すのは時間の──刹那の問題だ。
迫り来るノイズに頭がフリーズして動かない三島を結は────押しのけるようにして庇った。
「あっ、雨城ォっっっ!!?」
もう結の視界には追走してきたノイズしか見えない。
叫ぶ元気のある三島は今のところは安全だろう。
ああもう、死んでしまうというのに。
一瞬先には炭素になった自分がいるのに。
結の口許は妖しく、この時を待っていたとばかりに──
ここからの逆転を魅せてやるとでも言いたげに──
どうしようもなく歪んでいた──
ドクリ、と消えたハズの自分の身体に心臓の音が木霊する。
>自分の声のようだが、何か違う気がする。
だが、お前が力をくれると言うのなら────
ㅤ『ふざけるな』
ㅤ『ここからだ』
時が止まったかのようにノイズの動きが停止する。
彼らが警戒するのはその中心──蒼き焔をその身から放出する結だ。
結のバックの中から【グリモワール】が一人でに飛び出し、結の眼前へと飛来する。
【グリモワール】が結と同じくその身を蒼炎に焦がした。
すると本の面影は何処へやら、【グリモワール】は黒き仮面へと自らを転身させた。
ㅤ『力を……寄越せッ!!』
ㅤ『反撃開始だ』
仮面を掴み、装着。
焔が勢いよくうねりだし、とぐろを巻くように結の全身を包み込む。
蒼炎は紫焔へとその色を変化させ、中で揺れる人影が焔を喰い破るようにして姿を顕にした。
時代錯誤も甚だしい暗紫色の甲冑。
鎧の隙間から明滅する紫光と機関車の如くけたたましい音を立て排出される蒸気。
結の心の海より出でし騎士──ギャラハッドの推参である。
拡大打ちすぎて指が痛いでござる……。でも満足(うっとり)
アルセーヌじゃないよ!ギャラハッド君でした!
オリ主モチーフはペ5主君だけど似て非なる存在だからね、仕方ないね。
よくある後方背後霊型ペルソナではなく本人が身に纏うタイプのペルソナです。……何気に初めてのタイプだったりするかな?
機械鎧って浪漫ありますよね……。ところでそれなんてバベッジ?
当SSでのライブ会場は海沿いの地上に建設されたものとします。異論は認める。
だってぇ!!何か書いてて違和感あったからアニメ確認してきたら超高層タワーみたいな場所に鎮座してたやんけライブ会場君さぁ!サラッと確認はしてたけどビックリしちゃったよ!
あんな場所じゃ音漏れ参戦出来るわけないお……。
ちなみに最初の選択で早めにライブ会場に行かないことを選択すると三島死亡√です。
二番目の選択でペルソナ全書を持っていかないことを選択すると主人公死亡√です。
運命は些細なことで大きくその道を変えるって、はっきりわかんだね。
ヨシ!とりあえずはそこそこ書いたのでしばらく休憩入れるお……。