「なぁ、昨日更新されたチューベローズ先生の小説、読んだ??」
「チューベローズ先生??………あぁ、確かヤンデレ系の小説を投稿している今、人気急上昇中の作家さんだっけ」
「そうそう!!いやぁ、昨日更新された話も面白かったんだよなぁ」
「へぇ………。名前は知ってるけど、小説自体は読んだことないかなぁ」
「マジかよ!?めちゃくちゃ面白いから読んでみてよ。」
「お前がそこまで言うなら…………。試しに読んでみようかな…………。」
「そうこなくっちゃ!!じゃあ………これがいいかな??はい!」
「ん?それは?」
「チューベローズ先生の小説!!あの先生の小説は軽めの内容のやつからガッツリ鬱展開満載な話とかもあるからさ!!読み始めるなら、まずはこれからの方がいいと思って」
「あ、そうなんだ。じゃあ、有難く貸してもらうよ。ありがとう。」
「えへへ。読み終わったら感想聞かせてよ」
「おー」
"キーンコーンカーンコーン"
「あ、やべ。予鈴なっちゃってる!?急がなきゃ!!」
「あ、ちょ!?ま、待ってよー!!」
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ーーーコンコン
とある部屋の中で、白衣を着た1人の男性がパソコンのキーボードをカタカタと叩いていると、扉からノック音が響き渡る。男性は手を一旦止め、扉の方に顔を向けて言葉を出す。
「はい、どうぞ〜。」
「失礼………します」
扉がガラガラと開き、中から1人の女性が俯きながら部屋の中へと入っていく。セーラー服を来ているため、学生だと思われる。
「やぁ、山田さん。1ヶ月ぶりぐらいだね」
男性は山田と呼んだ女性を自分のすぐ目の前に置かれている椅子に座るように促す。
「すみません………。何度もここに来ちゃって………。」
すんなりと椅子に座った彼女はとても悲しそうな表情を浮かべ、恥ずかしそうにモジモジとさせながら男性に言葉を出す。
「とんでもない。僕はカウンセラーだからね。悩みのある生徒の話を親身に聞いてカウセリングするのが僕の仕事さ。」
男性は山田を安心させるように胸を張ってそう口にした。この男性はどうやらカウンセラーのようだった。
補足として一応、説明しておくがカウセリングとは、依頼者の抱える問題・悩みなどに対し、専門的な知識や技術を用いて行われる相談援助のことである。カウンセリングを行う者をカウンセラー、相談員などと呼ぶと言われている。
きっと、山田は何か悩みがあってカウンセラーである男性の元に尋ねたと思われる。『何度も』と口にしていたため、常連のようだ。
「先生…………私………やっぱりダメみたいです。」
山田は身体を震わせながら顔に手を当てて男性に言葉を投げかける。
「ダメ………………とは?まさか、いつもの件についてかい?」
男性が山田に質問すると、彼女は「はい」と頷いたあと、さらに言葉を発した。
それは、我々が思っているものとは予想を遥かに超える言葉であった。
「佐藤くんの事が………………好きで好きで好きで堪らないんです!!!!!!!」
彼女は男性が耳に手を当てたいと思うぐらいまでに大声で言葉を口にした。恐らくだが、廊下の方まで彼女の声は聞こえていることだろう。とは言っても、もう時間は遅いので残っている生徒はいないが……………。
「佐藤くん………ここ最近、更にカッコよくなってきてるんです。多分………、野球部のレギュラーに選ばれたからかなぁ………。そんな彼の姿を見ると、その…………私だけのものにしたいって思うんです!!そうですね………、私の家の地下室に閉じ込めてずっとずっとずっと、私の近くにいさせたい!!とは言っても、私なんか地味だし可愛くないし、部活が園芸部でサボテンを育てるのが趣味だからそんなの不可能に近いですけど………。それでも、諦めきれないんです!!毎日毎日、彼のことを目で追ってしまいます。気がついたら佐藤くんの私物を盗んでいる自分がいます。悪いことだって分かってるんですけど………やめられないんです。だって、彼の匂いが堪らないんですよ♡知ってますか?佐藤くんの匂い………とても良い香りがするんです♡彼の匂いを嗅いでいるととてもとてもとても幸せな気持ちになるんです♡あぁ………、あの匂いを思い出したら、ますます地下室に閉じ込めたくなっちゃいました♡彼の四肢を縄でガッチガチに固定して一生逃げられないようにして、そのまま一生に暮らすんです♡子供は3人で女の子2人に男の子1人がいいなぁ♡そして、家族みんなで幸せな日々を過ごすんです♡」ハァハァハァ
先程まで内気な感じだった雰囲気が嘘みたいに、頬を紅く染まらせ、口をニタァと三日月のような形をさせながら次から次へと言葉を出していく。この時の彼女の目は光が灯っておらず、第三者が見たら真っ先に恐怖に包まれるであろう酷く濁った瞳をしていた。
本来なら彼女の言った言葉を聞いて、気分が悪くなるはずなのだが、男性は「ふむ……」と呟きながら手元にあった手帳を開いて、まるでこのような状況を慣れているかのようにボールペンで何かを書いていく。
「けど…………そんな素敵な佐藤くんを狙う雌共が多くいるんです。佐藤くんは私のモノなのに!!アイツらが彼に話しているのを見ると虫唾が走って、心の底から不愉快になる!!!ふざけやがって!!許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない殺してやりたい許せない許せない許せない殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい殺して「山田さん。」…………ハッ!!」
気づいたら山田の腕はひっかき傷で酷い有様へとなっていた。どうやら、言葉を出しているうちに無意識に爪を立てて力強く引き裂いてしまっていたようだ。所々に血も流れている。
男性は立ち上がり、隣にある棚から治療箱を取り出して、机の上に置く。箱を開けて、消毒と包帯を手にして山田の方へと向かう。
「ごめんなさい………先生。私………」
「彼について熱くなると我を忘れて自虐行為をしてしまうのは君の悪い癖だよ。ほら、手を出して」
目にハイライトを取り戻した山田は傷ついた腕を男性の方に差し出す。男性はそんな彼女の腕に消毒液を的確にかけたあと、包帯を綺麗に、そして丁寧に巻いていく。当然だが、真っ白だった包帯から血が薄らと染まっていく。
「帰る時はできるだけ他の人に見られないようにするんだよ。じゃなきゃ、誤解されて僕がやったと思われてしまう。」
「はい…………。ありがとうございます………。」
そう言って、彼女は男性に頭を下げたあと、包帯を巻かれた腕を隠すようにセーラー服の裾を伸ばした。
「先生…………、私、どうしたら良いでしょうか??佐藤くんのことになると、どうしてもおかしくなってしまうんです。このままじゃ………本当に手を出してしまいそうになります。」
「…………………」
これが、恐らく山田が彼の元に来た本当の目的だろう。彼女は彼女で、自分が狂気へと陥ってしまっていることに対して自覚はあるそうだ。今はまだ、抑えきれているが、それは時間の問題だと思われる。
そんな涙を浮かばせ震えながら口にした彼女の悩みに対して、カウンセラーである男性は言った言葉は……………
「別に……………、いいじゃないか」
「………………え?」
男性の予想外の言葉に思わず、山田はポカンとした表情を浮かべる。なにせ、彼女は佐藤に対する狂気的な愛と独占欲について悩みがあり、それを解決するためにカウンセラーである彼の元へと足を運んだのにも関わらず、男性はそんな彼女の気持ちを肯定したのだ。唖然とさせてしまうのも無理はない。
「君は言ったね?『このままじゃ、おかしくなりそうだ』と。そもそも、その考え方自体が間違ってる。」
「間違って…………る??」
「そう。好きな男の子を自分のモノにしたい。もう1回言うけど、別にいいじゃないか。自分のモノにしても。今時の君ぐらいの年齢の子のほとんどが思っている事だよ。」
「そう………なんですか?」
「あぁ。少し専門的なことを言うなれば、青年期の特徴の1つでね。異性と関わりたいと願う気持ちが1番に強くなる時期なんだ。だから、君が『おかしい』と悩むそれは大人である僕からしたら普通のことなんだよ。むしろ、そう思わないやつが君が言う『おかしい』奴らだ。」
「普通の………こと…………」
山田は男性の言葉を真剣に聞く。そして、言葉を聞いていくうちに徐々にまたしても彼女の目の光がどんよりとした闇に包まれていく。
「こんなことを言いたくないけど、想像してごらん。君が大好きな佐藤くんが君以外の女性と………一緒にいる姿を。」
「私以外の女と一緒にいる………??」
「隣同士並んで仲良く歩いている姿を」
「……………嫌だ」
「手を繋いでいる姿を」
「………………嫌だ………嫌だ………」
「抱き合っている姿を」
「許せない…………」
「キスをしている姿を」
「そんなの………許せない」
「性行為している姿を」
「許せるはずがない」
そして……………2人が結婚した姿を」
「絶対に許さない!!」
「……………何が許せないんだい?」
「佐藤くんは私のモノなの!!他の誰でもない、私の…………この山田のモノなの!!そういう運命なの、私達は!!他の女が佐藤くんを奪う??冗談じゃない!!もし、佐藤くんを狙う雌共が居たら真っ先に排除する!!例え、どんな手を使ったとしても!!誰にも邪魔させないんだから!!!」
「………………それでいい」ニタァ
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「先生…………、ありがとう。何だか、気持ちが楽になったよ………」アハハ
山田はニッコリと微笑んで男性に感謝の言葉を述べた。重荷が外れたのか、表情はとても幸せそうなのに…………………
もう彼女の瞳には光はない。
「そっか。なら、良かったよ」
ずっと、何か書いていた手帳を胸ポケットにしまいながら男性は彼女に言葉を投げかける。
「普通なんだよね………。私のこの気持ち。別に無理して抑える必要ないんだよね??」
「あぁ。その通りだよ。」
「ふふ…………。それを聞けて安心した♡あーあ、明日がとても楽しみだなぁ………♡」
山田は椅子から立ち上がり、扉の方へと向かう。どうやら、もうここに居る必要はないみたいだった。
「もう行くのかい?」
「うん♡先生………本当にありがとね♡」
「生徒の悩みを聞くのが、僕の仕事だからね。……………あ、そうそう、山田さん」
「…………はい??」
「もし良かったら…………最終的にどんな結果になったか、またここに来て僕に教えてくれなかな??」
「勿論♡先生は私の恩人みたいなものだもん!!楽しみに待っててね♡」
「ありがとう。健闘を祈ってるよ」
「失礼しましたー♡」
彼女はぺこりと頭を下げ、部屋から出ていった。
再び、1人になってしまった男性は「うぅうー」と大きく伸びを行ったあと、目の前に置いてあるパソコンを起動させる。
そして、とあるサイトをクリックし開いたあと、自分の登録してあるアカウントにログインした。
カタカタカタカタ……………カタン
ーーーピコン♪
『チューベローズさん。ログイン完了しました。』
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「なぁ、昨日更新されたチューベローズ先生の小説、読んだ??」
「読んだ読んだ。いやぁ………、昨日の話はなかなか凄かったなぁ。」
「だよな!!園芸部の女の子が好きな野球部の男子部員を拉致して地下室に閉じ込めて、そのまま無理やりの性行為からの妊娠ENDだったもんな。」
「あの先生の小説。妙に話がどれもリアルなんだよなぁ。まるで実際に起きてるみたいだ。」
「そんなわけないだろ。馬鹿か、お前は」
「……………だよな」
「そういえば、今日、チューベローズ先生の新作が発売するんだよ。放課後、一緒に買いに行かね??」
「おう!!」
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ーーーコンコン
「どうぞ」
「失礼します。………先生、私どうしたらいいんだろう………」
「やぁ、鈴木さん。また愛しい愛しい齋藤くんについてかい??」
「……………………♡」
チューベローズの花言葉
「危険な快楽」