明日の蒼空   作:pilot

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終わりなき周回

探す。

探求。

発掘、収集。

人類の基本的な動作だ。どれだけ文明が発達しても、続いていく。

 

それはとても尊く、そして

 

「チッ......おい、あっちに行け。ローブを引っ張るな!おい!貴様ぁっ!」

 

大抵、苦労が付き物である。

 

「......」

 

ベルゼバブは、ウェイとロドスが協定を結ぶ話が進んでいる最中、外に追いやられた。

そしてそのとき任された仕事というのが、つまるところ協定して直ぐウェイに「龍門のため」必要だと説明された人探しであった。

ベルゼバブはこの見た目で、意外とそれの経験はある。

が、しかしだ。

時代が時代で、しかも不馴れな土地である。

 

ベルゼバブのようなローブは最早着ているものなど王族にすらおらず、それでも一目で高級そうな雰囲気を醸し出すその装飾はつまり、このぼろぼろのスラム街の住人には非常に魅力的。

普段排他的な彼らに、恵みをもたらしてくれるのではないか、という幻想をすら抱かせるのだ。

 

「おい。小僧。何か言ったらどうだ。あと早くローブを離せ。」

 

「......」

そしてついに、埃っぽい細道で、少年にローブの裾をつままれ立ち往生している。

 

しかも質が悪いのは、親らしき人物がこちらを伺っているということ。

つまりこの子供はけしかけられたのだ。

何も持たずに帰らされれば、きっとまた酷い目に合わされるのだろう。

それがわからぬベルゼバブではなかった。

しかし、わかったとて、普段ならば助ける男でもなかった。

 

「どけ。邪魔だ。」

 

ならば出るのは拒絶の意思。

有象無象の要求など、承る必要もないのだ。

 

「......」

 

しかし、引かない。

失うものがなにもないから、である。

 

ギロリ、と瞳が、真紅に輝く。

いっそ、殺してしまうか。楽なことだ、弱った感染者相手なのだ。

まさに赤子の手を捻るように、息を吸って吐くように、殺せるだろう。

それもぐちゃぐちゃに、残酷に、見せしめのように。

そう羽が、翼が、延びかけて。

そして、引っ込んだ。

思い出したからだ。この世界では、まだ好きに人を殺せるほど勝手を知らないということを。

 

「ぐ、ぬ、ぬぅぅぅぅぅ......何が望みだ、言ってみろッ!!!」

 

「......ご飯。」

 

「......ロドスの携帯食料、今ある分全てをくれてやるッ!!!だから早くその手を離せッ!!!」

 

叩きつけるように......としようとして、またもや手が止まる。

ゆっくり少年の手に、ネイルが引っ掛からないよう食料を与える。

何をしても死にそうで、そして実際どうあれ当たり屋のようなことをする感染者も多いらしい。

こちらの非を、絶対に作ってはいけない。

ということで、慎重に、慎重に。

 

目一杯の食料を、分け与えた。

 

「......貴様の家族、そして仲間にも分けてやるといい。余が慈悲深いからこそ、今この瞬間、貴様の首は繋がっているのだ。

......図に乗るなよ。」

 

「......ありがとう。」

 

さっさと去ね、というように。

黙って顎で指示すれば、子供は暗い路地へとかけていった。

 

「まったく......何故余がこのようなところへ......」

 

苛立ちを隠さず、彼は空を見上げた。

むちゃくちゃに積み上げられた建設物のあまりどもは、ぼろぼろの天蓋のようにも見える。

木漏れ日のよう、と形容すれば美しいが、その実ただ日当たりが悪いだけであった。

 

「ミーシャ............な。この矮小な掃き溜めで、更に小さき小蝿を探し出すのは骨が折れる。が......

余にできぬことがあってはならないのだ。」

 

落ちかけた気分に無理矢理発破をかけて、彼はまた、入り組み、とぎれとぎれになったスラムを進んでいく。

 

 

 

 

___________

 

「........................」

 

歩く子供。それをつける、大柄な男。

先程、ベルゼバブが施しを与えた少年を、彼はつけていた。

 

スラムというものは、弱者の滑稽な共助組織だ。

すくなくともベルゼバブはそう思い込んでいた。

 

だからわざわざ、「仲間」にも分けてやれと教えてやった。

 

龍門中のスラムを一々まともに探し回るのは阿呆のやることだ。

ならば、賢く、纏めて行うべきだ。

その知恵を、彼は持っているのだ。

 

いつか、どこかにたどり着く。

人の集まる、広場と言うものに。

 

なるほどな、と。

顔を見回して、確認する。

 

さまざまな顔ぶれがいる。

種族のサラダボウル。

成熟しかかったもの、まだまだ幼いもの。

男も、女も。

共通点はほとんどない。

唯一、似かよってみるものがある。

それは皆、暗い表情を浮かべていると言うことだ。

 

スラムと同じ、光のない。

埃を被った、生気のない。

仮面を身につけた_______

 

「!?彼奴め、レユニオンではないかっ!!!」

 

いくらスラムと言えど、あの独特の装備、仮面を身につけた奴がそう言う住人です、で通るわけがない。

 

「貴様はッ!!!ここまでだッ!!!」

 

「お前ッ!!!チェルノボーグの......」

 

仮面の奥の目が確かに驚きの感情を浮かべ、見開いた。

しかし、遅すぎる。

 

「捕まえたぞッ!!!全て情報を洗いざらい吐け!!!侵入口、作戦、部隊編成をッ!!!言わねば殺すッ!!!」

 

その鋭い羽を剥き出しにし、瞬く間にマウントポジションを奪取、流れるように首もとに刃を当てる。

 

そこに拒否権は無かった。

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