明日の蒼空   作:pilot

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2000年レベリングカリスマ黒ギャルベルゼバブ

最近の悪役にしては非常に分かりやすい目的と、そしてそれと裏腹に結構気遣いもできるもう一人の主人公と言っても過言ではない属性の盛りかたでとても好き。


陽炎と混沌、そしてあるべきではないもう一つの混沌

灼熱、赤く染め上がった破滅しきった大地と大都市、狂乱怒濤のレユニオンの隊列。

 

そのなかを必死に蠢く、ロドスの戦士たち。

 

「ふん。馬鹿馬鹿しい。なにやら隕石相手に祈りを捧げていた羽虫も居たな。反逆者の分際で殊勝なことをする。」

 

崩壊寸前で持ちこたえた、強固だった筈のビルから外へと出るベルゼバブ、そしてドーベルマン。

 

「死は誰もが恐れるべき存在だ。奴等とて、皆死を覚悟しているわけでないのだろう。」

 

「哀れなことだ。貴様もそう思わないか?ドーベルマン。」

 

心底軽蔑し、あらゆる見下しのニュアンスを含んだ赤い瞳で、さっきまで生きていた感染者の死体を睨み付けながら彼はそう言った。

 

絶対的強者であり、そして更なる高み、究極の存在を目指す彼にとって、コロコロと移り変わる弱者の気持ちなど到底理解できないのだ。

 

「......そうか?私には到底侮蔑できんな。

死を恐れぬ存在の方が、私はよっぽど哀れで気持ちの悪いものだと思うよ。」

 

けれども問いかけられたドーベルマンは、元拷問官である故か、あるいはその気質によるものか、それに対して確かなる拒絶の意思を示す。

 

弱味に付け込む役職であったからこそ、その弱味というものの尊さと重要性、そして縁にする人々の人間性を知っているのだ。

 

教官となった今でも、他人の気持ちを汲むというその技術心意気は、ドーベルマンという人間の評価を高める大事な要因となっていた。

 

「中々言うではないか、貴様。クク、鬼教官と聞くからにはどれほど冷血で()()()()の意見を言うのかと思えば、実のところ全く甘い人間ではないか。」

 

そんな答えが、彼は気に入らない。

雑な言い方をすればただただいい子ちゃんなだけの、つまらぬ弱者の意見だと、そう捉えたのだ。

何故ならば、今の今まで強者の自らがそれらに無縁だったからだ。

強者の自らに縁がないのならば、必然的にそれは弱者の理屈となる。

そういう考え方しかできぬ男だった。

 

「厳しさと寛容さのバランスが重要なんだ。完璧な人間などいない、それを如何に補うかが重要____」

 

だが、そんな弱者の意見だとしても。

ドーベルマンには拘りがあった。

清く、真っ直ぐなこだわり、執着、矜持が。

それを口に出した直後、

 

「完璧な人間が存在しない、だと?貴様に何がわかるッ!!」

 

それに対するベルゼバブの歪んだプライドに触れてしまった。

ドーベルマンが少しだけ怯んだ隙に、彼は捲し立てた。

 

「いいか、貴様の獣畜生水準の脳にもよくよくわかるように、簡潔に教えてやろう!

負ければ弱者だ、弱者だからこそ負けると言ってもいい。完璧な人間など存在しないという言い訳をする羽虫どもはただただ探究から目を背けた有象無象でしかないッ!

先程生き残る道を全て絶たれ祈った羽虫どももそうッ!

そもそも完璧を「目指した」ことすらない無能どもに、完璧たる存在を語る資格など無いのだッ!」

 

瞳の面積がキュッと縮み、誰がどう見ても怒り心頭の様子を示す。

今にもつかみかかりそうな程、怒気を孕んだその表情はドーベルマンすらも気圧される程であった。

 

「......そうか。」

 

しかし同時に、彼女はあわれみの念も抱いた。

苦痛に満ち、かけらも安息のないような、茨の道を突き進む姿勢を初めて会ったときから全く崩すことのないベルゼバブは、どこか傷だらけで、彼の拘る美しさでは到底隠しきれない負担を抱えているようにも見えるのだ。

 

彼はドーベルマンを一瞥すると、不機嫌そうに歩き出すのだった。

 

 

「全員、無事に生き残ることが出来たんですね......!」

 

天候、嵐。

時刻、不明。

集合地点。

 

「第一波は潜り抜けれたようだな、しかし油断は出来ない。この機を逃さず、早く撤退せねば。」

 

天災の中にいて、それでも生き残るなどと、偉業と言っても過言ではない結果を残したのにも関わらず、ロドスは未だ窮地に居た。

至るところからのぼるうめき声を背景に、ひたすら外に向かって逃げ帰るしかないのだ。

 

「死に損ないどもがいるようだな。」

 

「死んでいい命なんてそうそうありませんよ、ベルゼバブさん。」

 

瓦礫の中から顔だけだしたレユニオン兵士を、見つけ次第もぐら叩きの如く踏み潰していくベルゼバブ。

天災を生き延びたのはロドスだけではなかった。

夥しい量のレユニオンは死んだが、かろうじて命を繋いだものも居た。

元から天災がこの時間に顕現することをわかっていて退避していた上級兵士はどこか安全な所に固まっているのだろうが、散開していた下級の人間は自営するしかなかったのだろう。

 

そんな必死に繋がれた命のバトンを踏みにじっていくのだ。

それもしかたない。

何故なら放っておけば背後を突かれるだろうし、なんなら見かけたらすぐにでもアーツをぶっぱなしてくる生き残りも居た。

 

ならば先に殺しておくのが定石だろう。

 

「ふん、どうだろうな。

いくら潰しても湧いてくるというのは、正に羽虫よ。」

 

忌々しげに吐き捨てるのは、一々自らが叩き潰さなければならない面倒故か、あるいは既に見飽きたのか。

疲弊しきったロドスの各員をこれ以上こんな些事で動員すれば、今後訪れるかもしれない苦境で更なる犠牲者が出るのは火を見るよりも明らかである。

そんなことをわからぬベルゼバブではない。

自らの目的のために利用すると決めた相手であるならば、万全の状態にしておいた方がその利用価値は上昇する。

 

変わったところで面倒見がよいのだ。

 

「まだ向かってくるか......いい加減自らの脆弱さを理解したらどうだ。」

 

そんな生きるために仕方のない虐殺の風向きが変わったのは、唐突に現れた一人のレユニオンが、こちらに真っ直ぐ歩いてきたからだ。

 

それを認めたベルゼバブは、そうしてまたつまらぬ蹂躙をすることになると、たかをくくっていた。

どうせ、レユニオンどもは皆力量差をわきまえていない阿呆だと、そう思っていたのだ。

事実ほとんどは純真すぎる阿呆だったが、例外というものはあるものだ。

 

「同胞を殺戮して満足したか?ロドス。」

 

不意に気温が上がった気がした。

陽炎のように向こうが見えない。

その近付き、語りかけてくるレユニオンの人間を境にして、彼岸と此岸が分けられたようにすら感じる。

異常な熱量だった。

 

「おい、あれって......」

 

どよめくロドス各員。

何故ならば、そのような存在に覚えがあるからだ。

レユニオンを肥大化させ、反逆者へと仕立てあげた立役者たる存在。

 

「貴様らなどいくらあの世に送ったところで満足などできぬわ。吹けば消し飛ぶような羽虫など、余の道筋にあろうがなかろうが何も変わらぬ。」

 

「そうか。最早何も語らん。」

 

静かな語り口は、その中に爆発寸前の怒りが籠っていた。

そいつは表情一つ変えないが、瞳がまっすぐベルゼバブを見据えている。

 

「ならば、黙って死ねッ!」

 

「報いを受けるのは貴様だ。同胞の怒りを身をもって食らえ!」

 

その名も暴君、タルラ。

 

ある種似た者同士かもしれない二人が今、激突する。

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