青鯖は空に浮く   作:しちご

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#01 或る肉奴隷の交渉

まじかる黄色は悪堕ち魔法少女である。

 

宿敵でびでびるん魔法帝国との戦闘に於いて、四天王の一角である竜人公に捕縛され、

心が折れるまで子宮のあたりに愛を注がれた結果、ついうっかりと寝返ってしまった。

 

今ではすっかり愛玩肉奴隷たる地位を確固としている。

 

そんな彼女が姿見に向かい、何やらと思い悩む姿。

 

未成熟な細い身体に、明るい栗色の髪を後ろに括っている。

 

鏡面に写る、黄を基調として制服的な意匠をハイネックで構成するまじかるどれす。

軽く腰を振れば、短めのスカートとニーソックスの間の絶対領域が強調される。

 

そこに、悪堕ちしたのにドレスの色も変わらず露出が増えたりもしなかったので、

せめてもの主張として頼み込み製作してもらった、首周りに装着する大き目の首輪。

 

一通りの衣装を確認して軽く頷いた後、軽く腰を落とし、腕を振って見得を切った。

 

「ご主人様の忠実なる下僕、まじかる黄色ブラック!」

 

どこから突っ込んで良いのかわからない名乗り口上である。

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

#01 或る肉奴隷の交渉

 

 

 

でびでびるん魔法帝国が居城の一角、竜人公の私室。

 

それなりに値段が高そうな調度品で揃えられているが、必要な設備を揃えている

だけと言う感じの置き方であり、どことなく質素な印象を醸し出している。

 

「ご主人様、ボクは怒っています」

 

良い言い方をすれば趣味の良い部屋の中、寝台の上に腰掛けた少女が口を開いた。

 

細い身体で頬を少し膨らませ、不機嫌を伝えようと必死な小動物の有様。

 

上目遣いに見上げる相手は竜人公、名は伏せる。

 

邪竜の末裔とか何とかよくわからないが凄そうな経歴の怪人であり、

竜の外殻の如くに鋭角の目立つ、漆黒の鎧兜に身を包む偉丈夫の姿。

 

「尻にアクメカウンターを彫り込んだ件か」

「何それボク知らないッ!?」

 

軽く首を捻り思考を散策させた主の言葉に、衝撃を受けた奴隷が叫びをあげた。

 

「何で勝手にそんな事するんですかーッ」

「いや、昨晩に彫り込む事は承諾させたはずだが」

 

「禁止ーッ、最中のどさくさに通しがたい要求を持ちかけるの禁止ーッ」

 

赤面のまま錯乱した瞳で両手をぐるぐると回し始めた肉壺少女と、

その額を片手で抑えて振り回される拳が当たらないようにする調教主。

 

どうでも良い話だが、まじかる黄色は打撃系魔法少女である。

 

「水着とか着たら見えちゃうかもしれないじゃないですかッ」

 

そして息も荒く、涙目で訴える黄色の叫び。

 

心の籠った言の葉の羅列に、胸を突かれ思わずと頷く黒い竜。

 

何の躊躇いも無く、尻が見えるレベルで露出する水着を選ぶ前提で話す奴隷に、

主人は仄かに優し気な空気を纏ったまま、そっと30cmほど距離をとった。

 

微妙に心の離れた距離である。

 

それを、追う。

 

逃げる。

 

追う、逃げる。

 

追う、逃げる、掴む。

 

さりげなく目を逸らそうとする竜人公にしがみ付き、全力で覗き込む黄色。

 

「ちゃんと、近くに居て、所有者だってアピールしてくださいよ」

 

涙目の上目遣いで、念を押すように言葉を積んだ。

何か既に、夏の浜辺で衆人環視の露出調教な予定が確定している。

 

可愛く言ってはいるが、ご主人様に対する羞恥プレイ以外の何物でもない。

 

「ではなくですね、今日パンパン北京さんに教えてもらったのです」

「……ああ、魔人公のとこのパンダか」

 

抱き着いたまま、どこかいじけた様な空気を滲ませながら、肉壺が話を戻す。

 

「闘人さんとこのヒンジャ君が肉体改造手術を受けたと」

 

目を輝かせ、そんな事を言った。

 

貧弱な坊やな事に定評の在ったバイト戦闘員ヒンジャ君18歳であったが、

新開発の牛鬼怪人理論型低効率労働階級暫定強化系改造手術第67号丙式、

 

通称ブルワーカー式改造手術を受け、

 

見事なシックスバックの褐色マッチョへと変貌を果たしたと言う。

 

そんなまったく、簡、単な肉体改造の話の流れで、

その薄い胸板を叩きながら、決然とした口調で言葉を繋いだ。

 

「ボクも肉体改造されるべきだと思うのですが、貴方の愛玩奴隷としてッ」

 

迷い無き瞳が輝く。

 

「腹筋か」

「違います」

 

まじかるどれすの、何となくぷにぷにとしたお腹周りを押しながら

困惑の気配のままに口を開いた主の指。

 

その上を、再度自らの手で叩きながら奴隷が口を開く。

 

「こう、搾乳奴隷さんの様な感じでッ」

 

搾乳奴隷と違って、揺れない。

 

奴隷乳はデビデビ乳業の人気商品であり、その製作者たる搾乳奴隷は、

意外と福利厚生のしっかりとした、人気の奴隷職種なのは余談になる。

 

「もしくは乳牛怪人ホルスさんの様な感じでッ」

 

愛称はホルスたん、乳が体積の半分を占めている怪人だ。

 

そんな言葉と共に、強調するような感じでさらに叩いた。

 

揺れない。

 

しつこくさらにもう一度叩く。

 

揺れようはずが無い。

 

それは、胸と言うにはあまりにも小さすぎた。

 

小さく、薄く、軽く、そして平坦すぎた。

 

それは正に、絶壁であった。

 

鬼気迫る気迫が、空気に独特の緊張を与え、

見つめ合う二人の瞳が、言葉に成らない思いを伝え合う。

 

「…………」

「…………」

 

室内に、しばし天使が通り過ぎた様な静寂が満ちた。

 

「少し遠回しな言い方になるが」

 

ややあって、涙目に成っている愛玩小動物の肩に手を置いて、

飼い主が優しさの滲む穏やかな口調で言葉を掛ける。

 

「ゼロには何を掛けてもゼロにしかならないんだ」

「火の玉ストレートッ」

 

微塵も容赦が無いあたりは、流石に悪の四天王の一角である。

 

もはや言葉も無く、両手をぐるぐると回してポカポカ叩いてくる貧乳の、

顔を鷲掴みにして身体から引きはがす黒の偉丈夫。

 

「自分の身体は大切にしなさい」

 

そして口を開けば、毎晩凄い事をしている調教主にあるまじき一言である。

 

 

 

《ワールドネットワークニュース》

 

 

 

―― 魔法戦隊まじかる七色、またもや敗北!

 

昨日未明、鰻の脂を抜いて穴子にしてしまうテロを実行していた

でびでびるん魔法帝国との戦闘に於いて、我らがまじかる七色は

前回に引き続き手痛い敗北を喫した。

 

戦闘終了と共にまじかる桃色が拉致され、一時その安否が気遣わ

れたが、本日未明に救出が成功、その姿を報道陣に見せる。

 

だが、先だっての敗北より行方不明と成っている、まじかる黄色

の消息は杳として知れず、その生死が危ぶまれている。

 

今回の件について関係諸氏は「てっきり穴子だと思った」「鰻と

穴子ってここまで同じ味だったのか」と、驚きの声を寄せている。

 

また、今回の被害を受け、政府は復興に携わるデビデビ建設に ――

 

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