八千字超えた・・・
無理だ、まとめらんねぇ・・・
というわけで、二話目をどうぞ。都合上、原作の二話目はカット。
走る、走る。
雨に打たれ、凍え、足が棒になっても、走る。
あと少し。あと少しで、目の前の、命が助けられる。
---はずだったのに。
目の前に、突如として、あらわれた、
血まみれの、死体。地へと徐々に広がる血だまりが、殺されて間もないことを示していた。
守れなかった。自分のせいで、慢心したせいで。
「うぁぁぁぁぁ!!」
ガバッと跳ね起き、拍子に冷たい空気が体全体を撫でる。朝日も出ておらず、暗い、いつもの自分の部屋。
もう、死体の姿は、どこにもなかった。
「はぁ・・・夢、でしたか」
最近はもう見なくなっていた、あの夢。まだ自分が今よりも未熟だったころの、過ち。
(やっぱり、昨日のことでしょうか・・・)
幸い、昨日は助けられたからこそよかったものの、一歩遅ければ、取り返しのつかないことになっていた。いつまでたっても、自分は、半人前。
今更嘆いたところで仕方がないのだが。やはり、一刻も早く修練を重ね、師匠に近づかなければ。
「ま、虚狩りは止めるつもりは、ありませんがね」
確か今朝は自分が食事当番だったことを思い出し、慌てて制服に着替える妖夢だった。
ちょうどその頃、空座町上空では。
真っ白な円形の西洋風なテーブルに、パラソル。その椅子に腰かけた、小学生程に見える少女は、優雅にティーカップを持ち上げ、啜る。熱かったのか、少しばかり顔をしかめるも、すぐに満足した表情に変わる。
「うん・・・流石ね、美鈴。今日もいい出来だわ」
「おほめいただき。恐縮です・・・お嬢様」
そういってうやうやしく頭を下げたのは、緑のチャイナドレスに身を包む赤毛の女性・・・紅美鈴。おおよそ使用人らしからぬ格好の彼女は、しかし挙措はまさに完璧であった。いっそメイド服を着ていると錯覚するほどに。
ポットを持ち上げた彼女は、代わりの紅茶を注ぎながら、主人に問いかける。
「しかしお嬢様・・・、空座町に何の御用で?」
「気にしなくていいわ、ただの気まぐれよ。あなたはいつも通り、メイド長と護衛の責務を果たせばいいのよ」
「はぁ、分かりました」
なかなか大変ですけどね、と呟く美鈴の顔は、屈託なく笑っていた。
どうにも不思議な方だ、と思う。まるで意図が読めない。彼女の能力を持ってしても。
だからこそ、彼女に使えたくなるのだが。
「パチュリー様も後々いらっしゃるようですし、後のことは任せて、お楽しみください」
「ええ、そうするわ」
では、と言い、煙のように消える美鈴。
ふぅ、と早くも二杯目を空にした彼女は、カップを遠ざけるように置き、ため息を吐く。
「そうよ、知らなくていいわ・・・今の《・・》美鈴は・・・」
その呟きは、だれの耳にも届かない。
バサリ、と徐々に赤らめ始める空に広げた、一対の蝙蝠の翼。
ざわざわとその身が数多くの蝙蝠へと分かれ、何処へと消えた。
夜の帝王の真意を知るは、ただただ紅き月のみ。
***
「妖夢、分かっておるな?自分から首を突っ込んだのだ、後始末は・・・」
「はい。十分承知しています、師匠」
「うむ・・・精進しているようだな。だが、気を緩めるな。魂魄流の名を背負う者なら・・な」
「はいっ!!」
朝の高校生と保護者の会話にしては、些か重い内容だが・・・何というか、妖忌のピンクのエプロンが、色々台無しにしている。
妖夢も突っ込まないあたり、見慣れてしまって、麻痺しているのだろう。
凛々しく出立の辞を述べ、公道に出る妖夢。どうやらあたりに霊も虚もいないらしく、気配が感じられない。
「ではいきましょう、半霊!」
ふよ、と肩から離れ、準備はバッチリだぜ、とでも言いたげにこちらに気配を向ける。
ニコリ、と微笑み、軽く駆けだす妖夢。
腕時計を見れば、7時前。徒歩での通いにしては早いほうであろう。おまけに彼女、家の庭で稽古を終えていると来る。
(これでも、彼女の方が早いんですけどね・・)
ほら、いつもの公園の入り口で、親友が手を振っている。
「あ、妖夢さーん!!こっちですよーっ!」
朝っぱらからハイテンションだなぁ、とお決まりの感想を抱き、手を振り返す。
ロングの髪に、カエルとヘビの髪飾り。髪の色は、緑。他人からすれば非行少女のように見えても、根は誰よりも真面目な彼女。
東風矢早苗。中学からの、腐れ縁ともいうべき友人だ。
「いやー、今日はなぜだか目覚めが良くてですね、思わず町を一周しちゃいましたよ!」
「それはそれは・・・私も見習わなければ」
「いやいや、十分妖夢さんも早いですよ?」
口調こそ性というのか丁寧なままだが、その頬は嬉しそうに緩んでいる。
早苗のほうも、少しこちらが疲れそうなほどハイテンションだった。
「一人暮らしともなると大変ですよー。おまけに安普請のマンションですから騒音もそりゃあ酷くて酷くて・・・」
「確かに、うちは師匠がいますからいくらか楽ですが・・・」
「むー・・そうだ、今度お邪魔していいですか!?」
「えっ!?ま、まあいいですが・・・これまた唐突な」
「思い立ったが吉、ですよっ!常識に囚われてはいけないのですっ!」
大げさなフリでそうのたまう彼女だが、早苗が言うと、なぜだか妙な説得感がある。
(私も、常識外の存在ですしね・・・)
死神だって、虚だって。半人半霊だってスキマ妖怪だって、早苗からしたら神秘の存在であることだろう。
眼の色変えて、『むはーっ!!マジですか!?え、ちょ、是非お目にかかりたい』とかいうのが目に見えている。現に幻想探求部なんていう部活に入っているし。
ちなみに部員は、妖夢と友達若干名、そして部長の早苗のみである。
「妖夢さん?学校着きましたよ?」
「・・・はっ、あ、そうですね」
思考に没頭しすぎて、つい視覚とのリンクを切っていたらしい。瞬間移動など会得していないのに、教室の前についていた。そこ、ご都合主義とか言わない。
ともあれ、早苗先導で教室に入る。
「グッモーニンッ!!おはようございます、みなさん!!」
羞恥のかけらもなく言い放った早苗の言葉に反応する、先述の数名の友。
「あ、おはよー早苗ちゃん、妖夢ちゃん!」
「よ、二人ともおはよ」
「おおお、今日も二人で仲良くラブラブデートっ!!ねぇお二人さん、今日はどこまで・・・」
「あらあらはしたないですわよ、千鶴さん」
順に井上織姫、有沢竜貴、本匠千鶴、そして・・・え?
あ、あれ~・・・?
「紹介するね、今日から転校してきた朽木ルキアさんだって!」
「織姫、今日から通う、な」
「朽木ルキアです、よろしく」
「ルキアさん、ですねっ!!ではでは、ぜひ幻想探求部に・・・」
「いきなり勧誘かいっ!!」
「いいねぇ、ルキさなもあり?そうして一人残されたヒメを…ジュルリ」
「・・・」
確か死神は、常駐のものであっても、任務が終了するたびに戸魂界に帰還するはずだ。ということは・・・。
妖夢の思いをくみ取ったかのように、ルキアと名乗る少女から差し出された手には。
”あとで屋上に来い”と、書かれていた。
妄想で鼻血トリップした千鶴を解放した後、妖夢はこっそり屋上に来ていた。
大抵の学校がそうであるはずだが、基本、屋上への立ち入りは禁止だ。
しかし、実際には生徒の出入りは無視できないほどに頻繁であり、いや確かに無視はできないが、もう暗黙の了解と化していた。
無論、妖夢が規則破りをするはずもなく、しかし今回訪れたのは、ひとえにそれより大事な用があるからに他ならない。
「さて・・・何から聞きたい?」
あたりに人がいないことを確認した彼女の口調は、昨日のそれに戻っていた。
「そうですね・・・、なぜ、私が所属する高校にいるのですか?」
「ふむ、やはりそう来たか」
予想していたらしく、特に表情も変化せず応えるルキア。
「簡単にいおう未だ任務が達成されていないからだ・・・虚の反応が、多数消えていることへの、な」
やはり、と妖夢はゴクリと唾を呑んだ。
以前に出会った死神も、そのようなことを言っていた。詳細は伏せるが・・・その死神が帰還していない以上、戸魂界がこの件をスルーするはずもない。
正直に、応えるべきだろう。
「・・・それは、私です」
「だろうな。でなければ、なにも義骸に入ってまで現世に留まりはしない」
「・・・?儀骸、とは?」
「ふむ、知らぬか・・・」
少々意外だったらしく、懐からスケッチブックを取り出し、めくる。
いわく、義骸とは死神が激しく損傷した際に使う物で、人間に限りなく近い肉体になれるので、今回のような潜入にも役立つとのこと。
「・・・どうでもいいですけど、絵、下手ですね・・・」
「なっ、そんなことはないっ!ほらみよ、こんなに可愛い肉体美を!」
「”可愛い”のに”美”、とは・・・」
まあ、それはさておき。
その後のルキアの説明によれば、昨日の所業から判断した結果、しばらくは観察を続けるとのこと。
そもそも空座町担とのこともあり、問題はない。もし昨日のあの時、一護に力を譲渡していれば、法に抵触していたが・・・。そうなれば、帰還は難しい。
どちらにしろ現世に残ることになっていたのだから、気にしていないそうだ。
「で、だ。貴様のことについて知りたいのだが・・・」
「・・・半人半霊という以外に、ありませんよ?」
「その半人半霊というのが初耳なのだが・・・っと、確かチャイム、だったか?」
「ああ、そうですね・・・戻らねば」
出口へと向かう途中、ルキアが不意に話しかける。
「そうだ、一護のことだが、既に記憶置換を施している。下手に口をだすなよ?」
「・・・はい」
師匠との約束は果たせなさそうだな、と、ため息をつく。無論、これでよかったのであろうが。
依然彼への火の粉は完全に消えたわけではないが、その都度、自分が切ればいいだけのこと。
無理にこちら側に引き込むこともない。
「虚の討伐に関しては、お互いに協力する、ということでよいか?何か不穏な動きをすれば、即座に断罪するが・・・?」
「は、はは・・・分かりました」
どうやら昨日の警戒心は少しは減ったらしい。それだけでも儲けものか。
一時間目の教科を急いで思い出しながら、そう感じた妖夢だった。
***
案外、授業が終わるのも、あっという間のことである。担任の「では、今日は解散」との声で、一斉に騒がしくなる教室。
「はぁ〜、やっとおわったぁ〜」
早苗が机に突っ伏し、疲れをすべて込めたような、深いため息をつく。
「あー織姫?今日さ、遊びに行ってもいい?」
「うん、いいよ竜貴ちゃん!」
「竜貴ぃ…織姫穢したら、ブッコロス」
「何を想像してんだ万年発情猫!!」
向こう三人も、なにやら楽しく(?)話しているらしい。
対する妖夢は、稽古の時間とか場所とか内容とか、あーでもないこーでもない、と考えていた。
そんな妖夢に、なんか気取った感じで近づく、ルキア。
「魂魄さん?今日の帰り、ご一緒によろしいですか?なにぶん、この辺りの地理にまだ疎いもので…」「…妖夢でいいですよ」
どこでそんな言葉使いを覚えてきたのか疑問が尽きないが、大体予想がつく。
早苗は…まあ、今日ぐらいは、仕方ないか。
「じゃあ、私もご一緒にっ」
「いえ、一人で十分ですわ」
何気に辛辣である。
「ま、まあ、多分緊張しているんですよ、きっと」
「ぐすん…まあ、いいです。早苗は一人淋しく帰りますから」
フォローになってないフォローをいれる妖夢、わざとらしく、よよ、と浮世絵の悲嘆の女のようなポーズまでやってのける早苗。しかし、千鶴に誘われ、ぴょーんと元気になる。
「…なんなのだ、あいつは…」
「ルキアさん、素がでてますよ」
思わず突っ込む妖夢。
だが、次の瞬間には。一点に目が注視した。
織姫の、右のふくらはぎ。そこに広がった、黒い痣。
「お、織姫さん」
「ん、なあに?」
焦って舌を噛みそうになったが。
「その足、どうしたんですか?」
やや直球なその問いに、織姫は気にすることもなく答える。
「あーこれ?なんか昨日からいつの間にかできていて・・・。あ、右腕のは車にひかれて」
「うっそヒメ大丈夫!?よっしゃ、私がやさしくなめて」
ゴツン、と竜貴が殴り、退場させられる千鶴を追いかける織姫。
妖夢の胸に、一抹の不安。
「おそらく、その見た手で間違っていないぞ」
「・・・ルキアさんも、ですか」
「もちろんだ」
この二人にしか分からぬ、危険。
「あの痣は・・・”虚”に掴まれた跡だ」
***
と、言うわけで、黒崎宅。
「・・・なんでですか、ルキアさん」
「たわけ、虚の襲撃に備えるためだ」
「・・・なんでココなんです?」
あれから、二人のあとをこっそり追ったルキアと妖夢。幸い二人とも気配を隠すのは得意だったので、何事もなく家に入るまで護衛完了。
で、黒埼宅玄関前。
「だからなんでココなんですか!?」
妖夢としては、つい昨日、ここでドンチャンやらかしたばかり。若干、気まずい。
家自体の補修は完了しているし、ルキアによれば、鬼道で家族全員治療したとのこと。
でも。気まずい。妖夢の背後にズーンと暗い何かが降りていた。
「本人の家では怪しまれる。井上にも、虚にもな」
「・・・とかいって、黒崎さんの漫画が目当てでは?」
「なっ!?ま、まさか、そそそ、そんなわけはっ!?」
ここまでカマかけが成功するとは。妖夢としては冗談のつもりだったが。
とにかく、ルキアの言い分も一応正しい。ため息をつき、呼び鈴を鳴らす。
しばらくして、ひげ面のおっさん・・・一護の父親が出てきた。
「ん?見ない顔だな。一護の友達か?」
グルンと大げさなまでに首をかしげるおっさん。
「ええ、私たち、黒崎さんの友達ですわ」
おそらく漫画由来の、胡散臭い口調でルキアが答える。妙に様になっているから、恐ろしい。
対する一護の父親は、
「お・・・おおお!!ついに!!一護にも!!彼女か!!」
「いや、友達です」
盛大に勘違いしだしたおっさんに突っ込む妖夢。二人も彼女がいてたまるか。
「んぁ?そうか・・・まあ、あがって行きなさい。一護のやつはまだだが・・・」
そのまま家に案内するおっさん。
一護がいない、といっても、昨日のように徐霊か喧嘩でもしているのだろう、さして深く考えず、家に入る。
「そういや自己紹介しないとな・・・俺は父親の黒崎一心だ」
そう言うが早いが、ソファに座っている二人の少女を抱え、風のように舞い戻る。
「で!!こちらが娘の遊子!!夏梨!!二人合わせて~!!」
「やめろバカオヤジ」
夏梨と呼ばれた少女がゴツン、と殴る。その勢いのまま、一心は床へとめり込んだ。
「うわぁ・・・」
「で、お姉さんたちは?」
「あ、ああ・・・朽木ルキアだ」
「魂魄妖夢、です・・・」
ペコリ、とお互いにお辞儀する。それにしても・・・なんという、威厳のなさ。
一護が一心を足蹴にしているところが、容易に想像できた。
***
「ぶぇくしっ!!・・・誰か噂してんのか・・?」
盛大にくしゃみした、件の黒崎一護。
時は夕暮れ、日も落ちたころ。
彼はいま昨日の、交通事故の跡地に来ていた。
(・・・いねぇ)
確かに自分が話していた、少女の霊がどこにもいない。何の霊感も感じない。
昨日の今日で成仏するほど、不安定では無かったような気がしたのだが・・・。
そういえば、と。昨日、魂魄妖夢とかいう、幽霊の見える少女にあったことを思い出す。
(なんだっけ、え~と・・・人間じゃなくて半人前、だっけ?それ普通に人間じゃねぇか)
記憶置換でめちゃくちゃになった記憶の中、よく彼女の名前が残っていたものだと思う。
とにかく、自分が去った時には、彼女はまだそこにいた。
「何かしたのか?妖夢・・・」
考えても仕方ない。そう区切りをつけ、歩き出す。成仏したのなら、何も不都合はないのだから。
歩き出そうとした途端、何故だか、足が前に進まない。
不思議に思い、ググ、と力を入れてもびくともしない。
不意に、女性の、力強い声が響く。
「申し訳ありませんが、此処は通行止めです」
緑のチャイナドレスに、”龍”と刻まれた帽子。一瞬コスプレかと思うが、そんなこと抜きに。
「き、きれいだ・・・」
整った顔立ちであった。大人の雰囲気が感じられ、普段そういう方に疎い彼でも思わず、呟いてしまった。
「フフ、ありがとうございます」
にっこり笑ったその顔とは対照的に、彼女の構えは殺気に満ちていた。
今までのチンピラとは違う、本物の。人殺しが持っているようなそれを、彼女は笑みとともに放っていた。
ゾワリ、と背筋に悪寒がはしる。危険を知らせる信号が走る。
曰く、戦うな、と。
「・・・悪いが、こちらも門限までに帰らなければならないんでね・・・!」
口に出たのは、なけなしの虚勢だった。
「・・・なかなか挑戦的ですね。最近じゃめっきり見ない、良い眼をしている」
そう呟く彼女。そんなものじゃない、ただ目の前の敵に無謀にも立ち向かう、蛮勇。一護は自嘲するように笑う。
「そいつは、どうも」
「・・・紅魔館メイド長兼護衛役、紅美鈴。貴方の名は?」
「・・・黒崎一護。よろしく」
じり、と足が地を摩る。
どちらともなく、両者同時に飛び出す。
「おらっ!!」
まずは、右ストレート。案の定、彼女はヒラリとよけ、一護に向かって拳を振り上げる。
(やべぇ!!)
勘のおかげか、紙一重でよけるも、よけ方が悪かったのか、グラリと体勢を崩す。
「そこっ!!」
反応もできず、腕を掴まれ、ビタンッ!と地に叩きつけられた。
「ぐっ・・・」
「反応は上々。ですが、女だと舐めてましたね?」
興醒めしたように、そう告げる美鈴。いまだにその手には、抗えぬほどの、どこにあろうかという力が込められている。
「ちげぇ・・・女性に対して、本気で殴れるかってんだよ」
「・・・そうですか」
一護の呟きに、短く答える美鈴。パッと手を離し、立ち上がる。
「まあ、良いでしょう・・・貴方の気、確かに感じ取りました」
パンパンと手をはたき、そう告げる。ゴホッとせき込む一護の眼には。
再び闘志の宿る、美鈴の目が映りこんでいた。
「次回は本気で掛かってくれることを期待していますよ・・・と。あちゃあ~、お嬢様が来ちゃったか」
一転、気の抜けたように頭をかく美鈴。何事かと、お嬢様と呼ばれた人物を見やる。
「あらぁ・・・随分と、美味しそうな人間ね」
ズルリ、と引きずるその物は。
一護の知っている、それではなかった。
「な・・・なんだよ、お前・・・」
霊に恐怖を抱いたことのない一護でさえも。
年端もいかぬ幼女が、血まみれの肉塊と化した人間を引きずるさまは、シュールを通り越して、理解不能だった。
「お嬢様、こんなに汚して・・・」
「ん・・・ありがと、美鈴。流石に成人の人間は血の量が多くて困るわ・・・美味だけどね」
血が滴る口元を美鈴が拭う。幼女の服は、血なのか染料か、とかく真っ赤に染まっていた。
・・・あり得ない。人殺しはあっても、まさか、血を吸うなんて。
それこそ。
吸血鬼でもなければ・・・。
「あの人間、随分と霊力が多いみたいだけど・・・霊夢に匹敵するかしら?」
「お嬢様、霊夢という方は?」
「ああ、なんでもないわ・・・そこの人間、名は?」
なんでもないように一護に問いかける幼女が、悪魔にしか思えない。
キチガイじゃない。そうだったら、あんな凶暴な、強烈な目つきなどできるわけがない。何より、優雅。お嬢様と呼ばれるほどに。
名前?答えれると思っているのか?
恐怖に、幼女の威圧に、胃がぐちゃぐちゃにまわる。
「あぁ・・・うぇ・・・」
「お嬢様、この方は黒崎一護というそうです」
「そう・・・」
美鈴が代わりに答えた後、バサリ、と翼を広げ、飛翔する。
その身から、数多の蝙蝠が出でる。
「よく聞け。我が名はレミリア・スカーレット。いつか宴に貴様の血を食糧とすること、感謝するがいい・・・この、紅き悪魔がな・・・」
闇夜に消える。その光景に何か感想を抱ける状態ではなかった。
口から吐き出て、脈は唸り、脳は嵐のように荒れ狂う。
彼の背中に手を当てる美鈴。その手から黄色く、淡い光が、一護の全身に伝わる。
「私の気を渡しました・・・これでいくらか気分はよくなるはずです」
そういって、ふわりと飛翔する。
「だから、言ったでしょう?通さない、と」
「お嬢様は見ての通り、アレですが・・・機会があれば、再戦しましょう。では、今宵は失礼しました」
どこかへ、消える。
いくらか正気の戻った頭が、一つだけ感情を浮かべる。
悔しい、と。
空を飛び、気だか何だかをつかい、血を吸う。化け物。
打ち勝てなかった、自分が・・・
「ちくしょう・・・」
血まみれのまま動くことのない肉塊を前に、一護の嗚咽は、誰に聞かれることもなく闇夜に響き渡った。
***
「で、黒崎さんの部屋にあがりこんだのはいいのですが・・・」
男子の部屋ゆえか、とんと殺風景である。たんこぶをさすりながら一心が案内してくれたのだが。よくあれで済んだな、と。逆に感心した妖夢。
「何か問題でもあるのか、妖夢?」
漫画片手に妖夢に向き直るルキア。
どうも昨日の晩、黒崎一家が記憶置換のあと寝静まった後、一護や夏梨の部屋に侵入して漫画をあさったらしく、
「あさったのではない、現代語の勉強のために借りたのだ!」
あなた、普通に通じてたでしょうが。
とにかく、あの口調の由来はこうだったらしい。
「指令はまだなんですか?」
「それが・・・」
手に取る、一昔前のケータイっぽい通信機。ここに戸魂界の指令が来るらしいのだが・・・
夜七時を回っても、来ない。
「来ないことは、まあいいのですが・・・」
ビビッ!との警告音と同時に。
床から、異形の手が飛び出した。
ここで終了。
さて、今回の戦闘シーンについて・・
短く、拙い。スンマセン!!ちゃんと次は一護輝くから!!
一護のシーンが色濃く残った今回ですが、次回は織姫中心です。
いやぁ、死神じゃない一護って、弱いなぁ、と思ったそこのあなた!!
美鈴、ひいては妖怪が強すぎるんです。
では、次回お楽しみに!!戦闘シーンあるよ!!