君は君だよ。『君らしく』なんて曖昧なものじゃない。何やったって変わったってカンケーない。君はどうせ君だよ。
四月は君の嘘 宮園かをり
……なんでこんな学校に
と足取りが重い気持ちでその少年はため息を吐く。
この少年大江奈緒。女性の名前っぽいがちゃんとした男性として籍を持っている少年は今年から入る東京都高度育成高等学校に向かうバスに揺られながら気分がうんざりしていた
実はこの少年はこの学校に行きたくて行ったわけではない。
……両親に決められて奈緒はこの学校に行ったのだ
一応両親は有名企業のいいとこの重要職でありかなり地位も高い。
なので両親がそれが苦痛だったのだ
それが奈緒にとっては苦痛しかなかった。
中学生のころから英才教育があり、面倒臭いの一言でサボることが多くクラスメイトと野球やサッカーなどで遊ぶことが多かった。
しかし奈緒はいたって真面目な生徒だった
ほとんどの授業をまともに受けており、口であぁこう言っておきながらも実際は予習復習を欠かさない。だから成績もすでに上位を保っていた。
至って普通の真面目な生徒でいながら自由を欲しているのだ。
ガタガタとバスに揺られながら俺は学校へ向かう。
今日も面白そうなことがなさそうだな
学校に着くと俺はDクラスと書かれておりただ一人のんびり天井を見ていた。
クラスがギャーギャーと話しているが俺はある一点を見つめていた。
……多いなやっぱり。
それは巧妙に隠してあるカメラの数だ。明らかに防犯対策とはいえ多すぎる
元々俺の部屋のカメラも監視目的で入っていたし施設に入れられた時も元々電子工学を得意にしているので全部隠蔽をして脱出した経緯をもっている。
だから親も何も言わなくなった
言わなくなったのだが才能をどうしても使いたかったらしい
だからこの学園に入れたのだ。
俺自身監視もされるってことにかなり臆病になっている。
「……」
怪しいな。どう考えても怪しい。
「へぇ〜君も気づいたんだ?」
「ん?」
「本当にバカバカしいわね。この学校。……本当に面白いっていうからこの学校を選んだっていうのに。あんなにわかりやすかったらね。」
そういうとツインテールの女子が明らかにため息を吐いたようにこちらを見る
「監視カメラのことか?」
「えぇ当然よ。隠されているやつ含め10個ほどじゃない?」
「まぁ発動していない監視カメラを抜いたらそれくらいか。」
すると頷く少女に俺はため息を吐く。
「んで?お前は何で俺に声をかけたんだ?」
「えっ?面白そうだったからかな?」
「面白い?俺がか?」
「えぇ。全てを分かったようにしている。まるでこの学校にいたかのように。」
「……いやそんなつもりはないんだけどな。ただ多少他のクラスよりもこのクラスはレベルが低いように感じたからな。」
さっき他のクラスの少女がほほうと感心を向ける。
「やっぱりそうなのかな?」
「あぁ。入学式始まる前に他のクラスの前を通ったからな。まぁいうとすれば極端すぎるかな?」
「……続けて?」
「簡単にいうならば後方の席に座っているあいつとか誰とも話していない。逆にあの金髪ポニーテールは発言の内容に少し間違いが含んでいるし。いうなれば明らかに才能が一つに傾いている、もしくは何か一つが明らかに欠陥している。」
するとその少女は驚きに満ちた表情になる。
「……何でそこまで分かるの?」
「さぁな。自然と目につくんだよ。本能的に意味のないことをしている連中は。」
俺はそんな面白みのないようなつまらないような顔になってしまう。
本当につまんない。
「……ふふ。やっぱり君は面白い。」
「…面白いってひどいやつだな。俺は普通の人間だぞ。」
「奈緒って女の名前みたいな名前なのにかい?どこぞのアニメ好きのアイドルみたいじゃないか?」
「…いや。確かに奈緒っていえば神谷奈緒を思い出すけどさ。てか名前どこから知ったんだよ?」
「クラスわけの時に視線でね。バスのときから一人だけ何か考え込んでいたからつけていたんだ。」
「ストーカー宣言するなよ。……てか元々俺は進路はここの希望じゃなかったんだからな。」
「どこ?」
「大北沢高校。」
知らないと首をかしげると俺は苦笑する
「そりゃ知らないはずだ。家の近くの偏差値も50ちょっとの学校なんだから。」
「……成績普通くらいなの?」
「いや。自分でいうのもなんだけど成績はそれなりにいいと思っているぞ。器用貧乏なだけだけどな。」
「器用貧乏って。自分でいうのかい?」
「生憎な。苦手な教科も得意な教科もない。ただの成績がいいだけ。成績だけよくても社会にでたら通用しない。」
「えぇ。同感だね。恐らくこのクラスの基準は。」
「中学校時にどれだけ爪痕を残したか。もしくは何か一つに優れたやつか?特に最初の方は悪い方で。」
とここで気づく
「てかお前誰だよ。俺の名前知っているのにお前の名前は知らないってよく考えたら変じゃねーか。」
「僕?僕の名前は岸田美帆。小学校のときからみんなからミホって呼ばれていたから君も名前呼びでいいよ。長い付き合いになると思うし。」
「……まぁどっちにしろ長い付き合いにはなるだろうな。」
と俺はため息をつき天井を見る
監視カメラのレンズの無機質な丸みがこの教室のとても印象に残ったものであった