掴め、アイドルスター!   作:アイドルって、楽しい!

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恐ろしいくらいに面白くないのどうしたら良い?(殴

追記
2020/04/22 23:20
アー君→アーくんに変更


☆第2話★

 私達は取り敢えず場所を移すということで、私に宛てがわれた控え室に来ていた。

 対面する形となったが、それにしても彼の黒子は面白い。

 そんなことなどおくびにも出さず、私は切り出した。

 

「それで? 貴方が私の新しいプロデューサーになる、という話で間違いないですかぁ?」

「はい。単刀直入に言えば、貴方をより売れる商品にする為、私が貴女のプロデューサーとなりました」

「なるほど⋯⋯」

 

 私をより売れる商品にする、ねえ。

 確かに、今の私は売れ筋も低迷していて、前からの根強いファンのお陰で持っているような状態だ。

『今一つ推せないシンデレラ』。私に付いたこの仇名は、正しく私を的確に指していると言っても過言ではない。

 何せ、私にはアイドルスターに必要な特徴が無いのだから。

 “特徴が無いが特長だ”と言われたこともあるが、そんなもの、嬉しくもなんともない。

 

「貴女には才能がある。貴女の商品価値はまだまだこんなものでは無い」

「⋯⋯」

 

 そんなことを言われても、今の有様が全てを物語っているのだから、この新プロデューサー(仮)がどれだけ優れたプロデューサーなのかもわからない今、そんな上辺の言葉で喜ぶのは研究生の子くらいだろう。

 しかし、私の商品価値の話で言えば、このままアイドルをしていても一年と持たないだろうことは分かっている。消費期限(・・・・)、というものがあるのだ、私達芸能人には。

 

「その商品価値を伸ばす為に、貴女にはアイドルを辞め「辞めません」どうしても、ですか?」

 

 少し困った雰囲気を演出する目の前の男の言葉に、厳かに頷いてみせる。

 私から、アイドルを取ったら、それは私じゃない。

 

「⋯⋯その答えは予想していましたので、この際良いでしょう」

「⋯⋯」

「貴女に呑んで欲しいお話は二つ」

 

 男は指を二本立てると続ける。

 ひとつは予想がつく。

 

「まずひとつは、私の取ってきた仕事は何よりも優先して引き受け、完璧にこなすこと」

 

 まあ、それはそうだろう。

 中指を折り曲げて一つ目について語る彼の要望に、私は頷く。

 私の商品価値を高める為には、プロデューサーの手腕と、私の努力が必要不可欠だ。そして、私はそれに全くもって異論がない。仕事はプロデューサーが取ってくるものだしね。

 これは予想出来たこと。だが、もうひとつは何だろうか。

 彼は、折り曲げていた中指を戻し二つ目について口を開く。

 

 

女優になって頂きます(・・・・・・・・・・)

「⋯⋯女優?」

 

 

 女優か。

 ⋯⋯女優?

 どうして、女優なのだろうか。私はアイドルであるし、アイドルとしての側面を損なわなければ仕事には拘らないタイプだから、芝居や映画にも脇役やエキストラとして出たことくらいならある。ママからも、女優になる為に鍛えられた。

 しかし、今更どうして女優なのだろう。

 

「私に、何をして欲しいんですかあ?」

「ふふ。それはまだ秘密です」

「秘密?」

 

 秘密、なるほど。秘密か。

 ビジネスライクな関係に秘密があるのはどうかと思うが。

 

「⋯⋯正確には、私にも若干予想がつきかねているところがありまして」

「そんな中で、私に女優をしろと言うんですかあ?」

「はい。しかし、私の目に狂いは無い、ということは保証しますよ」

 

 ⋯⋯嘘は言ってなさそうだ。古巣で培われた眼が衰えてなければ、だけど。

 でも、人並みに申し訳ないという思いもあるのだ。今更戻って、ママは私をどう思うだろう。元の名前を捨てて、想辺万希為となった私を、ママは許すだろうか。

 いや、きっと、許してくれない。私は、ママを裏切ったんだから。許されるはずもない。アーくんだって、私みたいな身勝手な妹に好い思いを抱いているはずがないんだ。

 

 辞退しよう。女優は、駄目だ。それならまだバラエティ番組に出て弄られた方がマシだ。弄られたことは無いが。

 

「私は、やっぱり「良いんですか? トップアイドルになりたいのでしょう?」⋯⋯それは、そうですけど⋯⋯」

 

 トップアイドルになりたい、この想いは嘘じゃない。嘘なもんか。

 私には、私という存在の全てをアイドルであるために使い潰す覚悟がある。

 

「ならば、貴女に選択の余地はない。私は、そう確信しています」

「⋯⋯それなら、一つだけ聞かせてもらえます?」

「ええ、なんなりと」

 

 私は、ひとつ間を置いてから目の前の男を見据えた。

 

 

「私は、アイドルスターになれますか?」

「ええ、勿論」

 

 

 彼の即答に私は頷く。

 彼は、胡散臭いし信頼出来ないけど、嘘はつかないだろう。信用も出来る。彼ならきっと、私をアイドルスターにしてくれる。

 もうこれ以上の話はないと判断したのか、プロデューサーはファイルをカバンから取り出して資料を机の上に広げる。

 

「それなら早速、話を詰めて行きましょう」

「そうですね」

 

 こういうところは凄いできる人感がする。

 後はお手並み拝見、かな?

 

「名前は、今の想辺万希為のままで行きますか? それとも⋯⋯」

 

 ああ、そうだな。

 私としてはアイドル想辺万希為の名前はいつだって変えたくない。

 だけど、女優となるのならばしばらくは万希為は封印するべきなのかもしれない。私は、全部を出来るほど器用じゃないから。

 

 ⋯⋯うん。決めた。

 

 

「―――名前は、星アリス(・・・・)で行くね」

 

「⋯⋯それは結構」

 

 

 ニヤリと笑ったプロデューサーの顔がやけに印象的だった。でもきっと、これも予想通りだったに違いない。

 ママ、アーくん、今だけこの名前を名乗ることを許してね。

 

 きっと、私はアイドルスターになってみせるから。

 

 

 

 

 

 

 その日、芸能業界に激震が走った。

 

『人気アイドル想辺万希為、アイドル休業!? 女優という新たな方向性』

『星アリサに隠し子か!? アイドル女優星アリスとは!?』

 

 

 

 

 ―――これは、主人公でも天使でもない、非凡な凡人の物語である。




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ルート。

  • 理想の体現者√
  • 引き返せない夢√
  • 『家族』√
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