掴め、アイドルスター!   作:アイドルって、楽しい!

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おっと、そろそろグダグダしてきたぞお?
そういえば、前話で原作キャラクターの名前を誤った上一話まるまるそれで通していたという凄まじいミスをやらかしていて死にたくなりました。頭の中では城だったのに⋯⋯どうして⋯⋯。
誤字報告してくださった方、本当にありがとうございます。
後、今話にはオリキャラの名前が出ますが、このオリキャラが実際に登場することはございません。多分。回想では出てきちゃうかも。


☆第4話★

「ん〜⋯⋯!」

 

 若干椅子を傾かせながら背伸びをする。

 自慢じゃないけど勉強は出来るし、生まれつき見たものは忘れられないから学校での成績なんて言うまでもないのだけれども、結局、作業的にでも宿題をこなすことは変わらないので、疲れるものは疲れるのだ。

 

「ふぅ⋯⋯疲れたぁ」

 

 ここのところ、学校に行く機会も減ってきているので、芸能活動を容認する代わりに出されている課題が尋常な量では無い。

 あの女優デビューの日からはや二日。何か仕事でも回ってくるかなと思っていたのに今日は丸一日オフということで、こうして溜まりに溜まった課題と格闘していたのだ。

 体を伸ばすついでになんとなしに視線を私の部屋に向ければ、至るところに配置されたポスターやグッズ(私の宝物)が目に入った。

 

「⋯⋯輪廻ちゃん⋯⋯」

 

 無意識にその名を口にしていた。

 榊原(さかきばら)輪廻(りんね)。私の夢の全て。憧憬。

 

 

 ―――そして、超えるべき栄光。

 

 

 私は、アイドルスターである彼女の栄光を喰らい、彼女の光が霞むようなアイドルスターになるのだ。

 

「アリスちゃん、ご飯だよー」

「あ、はいっ、今行きますねえ!」

 

 下からの呼び掛けに意識が戻ってくる。

 私は居候。無論、居候させてもらう分、生活費も食費も払っている。

 貸してもらっている部屋を出て、リビングへ行くと、そこにはエプロンを着けた丸型のサングラスのおじさんの姿。

 

手塚(てづか)さん、ありがとうございますっ」

「いやいや、これくらい君のお母さんに良くしてもらっている分に比べたら全然だよ」

 

 彼の名前は手塚(てづか)由紀治(ゆきじ)さん。

 ママから離れてアイドルスターを目指すことを決めた時、ママが提示した条件のうちひとつが、手塚さんのお家にお邪魔すること。明らかに怪しい人だが、言葉も伝わるし、見かけによらず良い人なのでプロデューサーよりよっぽど好感を持てる。

 居候するにあたってこの人と会わされた時は、『私はママに捨てられるのかな⋯⋯まあ、仕方ないか』なんて思いもしたが、何だかんだでママは優しい。私のことを大切に思ってくれているのは、簡単に分かった。

 

「今日は新しい映画の件で忙しかったからぱぱっと作っちゃったけど、味は大丈夫だと思うから安心してね。見た目は寂しいけど」

「そんなことないですよぉ。忙しいのにありがとうございます!」

 

 テーブルの上に広げられた料理を指して卑下するが、手塚さんのお料理は普通に美味しいので私としては大して心配なんてしていない。

 スターズの有能なイエスマンとして業界に重宝されている彼だが、お家は結構普通だ。普通の二階建て一軒家。一人暮らしなのに、どうして一軒家なのかは聞きたかったが未だに聞けていない。

 ともかく、そんな彼は実は結構家庭的なのだ。

 

「それじゃあ、食べようか」

「はいっ!」

「「いただきます」」

 

 手を合わせて手塚さんに感謝。

 お箸を手に取り早速料理に手をつける。

 うん、今日も美味しい。

 

「美味しいですっ」

「それは良かった」

 

 にっこりと微笑む手塚さんはやっぱり良い人だ。映画監督としての側面を除けば、だけれども。

 私を見つめていた手塚さんが、唐突に口を開いた。

 

「君は、凄い子だよ」

「はえ? 何がですか?」

 

 私が凄い?いったい何の話だろうか?

 手塚さんは苦笑いすると先まで手を付けていなかった自分の分の料理に箸を伸ばした。

 

「いや、分からないならそれで良いんだ」

「そうなんですかぁ? それなら、聞かないでおきますっ」

 

 こういうことには首を突っ込もうとするだけ無駄だ。

 人間、隠したいことの一つや二つ、百くらいあっても然るべき。私だって、隠してばかりだし。

 しばらく黙々とご飯を食べる。普段から私達の間に、所謂途切れることの無い雑談という物は存在しない。基本的に、伝えることを伝えたらそれで終わりだし、居心地が悪くなる、ということも無い。

 

「ふぅ、美味しかったー」

「それは良かった」

 

 皿をまとめてシンクに持って行き、手早く洗い物を済ませる。料理のできない私は、手塚さんの代わりにお皿洗いをこなす。ご飯時の我が家の役割分担である。

 テレビを見始めた手塚さんを他所に、一度部屋に戻ってタンスを漁り替えのお洋服を見繕う。一応、パジャマとして使えるものだ。

 

「それじゃあ、私はお風呂に行ってきます」

「うん、わかった。いつもごめんね」

「いえいえ、それこそお気遣いなく、ですよお」

 

 向かうは銭湯、『黒の湯』だ。

 

 

 ☆

 

 

 そもそも、男の人とひとつ屋根の下でアイドルが暮らしていること自体がどう考えてもアウト。しかし、ママとの約束は破れないので、手塚さんと一緒に暮らしている。

 手塚さんは、そういうコトをしない人だからママに選ばれたのだろうけど、はたから見たら怪しいおじさんと少女、それもアイドルだ。ファンに何かの間違いで知られてしまったら不味い。

 とはいえ、もし知られてしまったとしても、線引きが確かであることを証明したら多少は緩和されるだろう。

 そういう考えの下、私はこうして銭湯に通っているのだ。

 

「こんばんはぁ」

『あら。真希為ちゃん、こんばんは』

 

 引き戸を開けて、黒の湯と書かれた暖簾を潜り、おばあちゃんに挨拶する。

 会計を済ませて、さっさと女湯に向かった私は、見知った顔と鉢合わせた。

 

「あれ? 真希為ちゃん、奇遇だね〜」

(ひいらぎ)さん、こんばんはぁ」

 

 声を掛けてきたのはアホ毛が可愛らしい女性、(ひいらぎ)(ゆき)さん。

 この黒の湯の上に居を構える、『スタジオ大黒天』の制作担当だ。ちなみに監督の黒山(くろやま)さんとも面識がある。

 早速服を脱いで浴場へ、手短に身体を洗って待ちに待った湯船にエントリー。

 

 ⋯⋯幸せぇ。

 

「はぁぁぁぁぁぁ⋯⋯好い⋯⋯」

「ふふ、真希為ちゃんは相変わらずだね」

 

 同じように湯船に浸かる柊さんが微笑む。

 ちょっとどころかかなり若々しい柊さんでも、時折見せる大人らしさがズルい。私もいつかはこんな大人らしさを手に入れたい。

 

「それとも、今はアリスちゃんの方が良いかな?」

「呼びたい方で良いですよぉ。本名か偽名かの違いですし」

「じゃあ、これからしばらくはアリスちゃんって呼ぶよ。なんか新鮮だしね」

「分かりましたぁ」

 

 まあ、アイドル想辺真希為の名が広まるのは嬉しいが、しばらくは星アリスで通すのだから、そちらで呼んでくれた方が良いのかもしれない。少し考えておこう。

 とりあえず、今はこの至福のひとときを最大限味わいたい。

 私は、ファンには見せられないようなだらけ方で浴槽に身を溶かした。

 

 ⋯⋯幸せ。




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ルート。

  • 理想の体現者√
  • 引き返せない夢√
  • 『家族』√
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