掴め、アイドルスター!   作:アイドルって、楽しい!

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もう、私のコントロールを離れつつある。それにしても、星になった双子効果凄いですね。

あ、そう言えば、いきなりお気に入りとかが増えたので何事かと思ったら日間ランキングに載せてもらっていました。
こんなズブの素人が書いた小説もどきをたくさんの方に読んでいただけて、誠恐悦至極。
これからも、応援よろしくお願いします!


☆第7話★

「⋯⋯ただいまぁ」

 

 ドアを開けてすぐ、倒れ込むようにして玄関に腰を下ろした。

 もう動けない。いや、動けないわけじゃないけど動きたくない。

 ⋯⋯疲れた。肉体ではなく、精神が。

 

「アリスちゃん、おかえり⋯⋯って、すごい疲れてるけどどうしたの?」

「手塚さん、聞いてくださいっ」

 

 私は、今日学校であったことを手塚さんに話す。

 高校では、私はアイドルとしてそれなりに名を知られている。クラスの中での立ち位置は、一歩引かれているけど疎外感を味わうほどではないような絶妙な感じ。私はみんなの理想の体現者だから、遠巻きにされるようなことはない。誰も、自分の理想がすぐ側に在るのに距離を置こうとはしないだろう。

 ⋯⋯アイドルスターの輪廻ちゃんと違って、とてつもなく姑息で小物のようなやり方だけど、私にはこうするしかないのだ。星に憧れる矮小な存在は、星を掴むためにその身を賭さねばならないり

 

 閑話休題。

 そんなアイドルを休業して、女優になったと聞いて、クラスメイトからの質問攻めにあったのだ。

 特にアーくんと関係性について、迂闊にも?兄妹の関係であると答えてしまったあたりから酷くなった。

 

「なるほどね。それは大変だ」

「アーくんの人気の凄さを知ったよお」

 

 私がそこまで言うと、手塚さんはサングラスを照明で光らせてニヤリと微笑む。

 

「そんな君に朗報だ。今日のご飯は僕特製のカレー! ささ、早く上がって着替えておいで」

「やったー!!」

 

 先までの疲れなんて吹き飛んで、私はカバンを引っ掴んで自室へと向かった。

 

 カレーは大好物なのだ。

 

 

 ☆

 

 

「おじさん、ちょっと一月くらい撮影で家に帰ってこれないんだ」

 

 ご飯も食べ終わり、腹休めにテレビのチャンネルを回していると唐突に手塚さんが私に告げた。

 こうして映画で帰ってこなくなるのは今までにもしばしばあったので、特に動揺したりとかはない。その間、私はご飯を作れないので外食とか出前になってしまうが。

 それにしても、撮影か。

 

「新しい映画決まったんですかぁ?」

「うん、今は役者をスターズから12名、オーディションで11人決める段階だ。ちなみに、デス・アイランドって言う集A社の人気コミックが原作の実写映画だよ」

「あ、私、作者さんとお知り合いですよぉ」

 

 デス・アイランドの作者さんは私のファンの一人で、それなりの頻度で私のイベントにも顔を出してくれる。話の種にはなるのでデス・アイランドも既読だ。

 しかし、なるほど⋯⋯そうか。

 

「もしも枠が空いたらで良いんですけどお⋯⋯」

「ああ、うん。それも考えてるよ。さっきも言ったけどオーディションでの一般選考もあるし、めぼしい子がいなかったらお願いするつもりだから、よろしくね」

「はいっ!」

 

 手塚さんには、感謝してもしきれない。

 

 先日、夜凪さんと出会ってからここ何日か彼女に私の技術を教え、彼女の異能をどうにかモノに出来ないかと四苦八苦してきた。

 

 結論から言えば、私は役者というものにかなり興味を惹かれるようになった。夜凪さんのアレは、未だに取っ掛りすら得られていないけども。

 

 だから、というわけではないが、私は当初、プロデューサーに女優の道を示された時の数倍、熱意に溢れている。

 自分のことは自分が一番知っているから間違いない。

 手塚さんが、サングラスの奥の眼を優しげに歪めて微笑んだ。私も、嬉しい。

 

「⋯⋯アリスちゃん、良かったね」

「はい。とっても良かったですっ!」

 

 

 だって、

 

 

 

「―――きっと、この世界の皆さん(役者)を喰らえば、私の輝きは増すと思うから」

「⋯⋯っ」

 

 一度捨てたはずのこの道が、停滞する私に光をもたらすかも知れないなんて、皮肉も良いところだ。

 でも。

 夜凪さんも、百城さんも、みんなみんな凄い。

 

 ―――そんな、凄い人達を喰らって成長出来たら、私は輪廻ちゃんに届くかもしれない。

 超えられるかは分からないけど、最低でも届いて欲しい。

 

 

「空で輝く一等星。誰よりも光を放ち、誰よりも人々を釘付けにする理想の存在」

 

 

 まるで、熱に浮かされているかのように言葉が私の口から紡がれゆく。一度始まれば、燎原の火のように止まることを知らない。

 手塚さんは、呆然として私の言の葉を聞くだけだ。

 

 

「より高く、より高く。誰も届かない場所へ、私は上り詰めるの」

 

 誰一人とて、届かないところに在れば、私はずっとアイドルスターで居られる。

 

「星は、一つだけで良い。輝ける存在は、ただ一人だけなんだから」

 

 アイドルスターはふたつも要らない。

 たったひとつ、何よりも輝く星だけが、理想の到達点。

 

「私は、私の憧れすら超克する」

 

 輪廻ちゃんですら届かないところじゃなきゃ、意味が無い。

 

「誰も私を目指そうとしないくらい、それくらい高いところから全てを照らしてあげる」

 

 輪廻ちゃんは、私というアイドルスターに焦がれ渇く存在を生み出してしまったけれども、私はそんな中途半端なことはしない。

 

 ―――私が、最終到達点にして限界点、そして誰も見失わないような完成した理想(アイドルスター)となるのだ。

 

 ⋯⋯凄い。

 凄い凄い。

 こんなに、私って臭かったんだ!私って、こんなにも醜いんだ!私って、こんなにも美しいんだ!

 

 

「―――私は、誰よりも輝いてみせるよ、手塚さんっ!」

「アリスちゃん⋯⋯君は⋯⋯」

 

 手塚さんが何かを言いたげにしているけど、私はもうこの冷めやらない興奮に支配されてしまってとどまっていられない。

 

「おやすみ、手塚さんっ! カレー、美味しかったよ!」

 

 私は、手塚さんにひらひらと手を振ってリビングを後にした。

 




まあ、やっと臭いのついた人間が阿良也くんとかリッキーに勝てるわけないんですけどね。
感想、誤字脱字報告、よろしければよろしくお願いします。

ルート。

  • 理想の体現者√
  • 引き返せない夢√
  • 『家族』√
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