掴め、アイドルスター!   作:アイドルって、楽しい!

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皆のママ、ウルトラの母こと星アリサの二次創作を書く上での使い勝手の良さと不憫さに心が締め付けられる今日この頃。
アンケート、終了しましたので、これからは理想の体現者√、『家族』√、時間があれば引き返せない夢√の順番で執筆します。


☆第8話★

「アリスちゃん、デス・アイランドに出てくれるかな?」

「本当ですかぁ!?」

 

 朝一番、開口一番の手塚さんの一言に私は驚く。

 何せ昨日の今日だ。いったい、どんな考えがあったのだろう。

 

「あれ? でも、他の人に話通さなくて良いんですかぁ?」

「問題ないさ。僕は監督だよ? この僕を無視出来る人間はほとんどいない」

「なるほどです」

 

 ママがあんまり好きじゃないって言うだけあるな。とてもじゃないが、御することなんて出来そうにない。

 監督、求めるもののためならどこまでも非情になれる者達。

 

「オーディション枠の一枠をもらっておく。役はあまり意に添えないかも知れないけど、君にとって何らかの力にはなるはずだ」

「⋯⋯はいっ!」

 

 そこまで言うと、手塚さんは一度天井を仰いでから私を見つめ直した。

 

「君の行先を確かめたくなった。これは、僕の剥き出しの欲望だ」

「⋯⋯」

「僕は、僕の見たい物のためなら、どんなことだってできる。じゃなきゃ、監督なんてやってられないからね」

 

 まあ、元々手塚さんがそういう人間だってことは知ってる。

 だけど、意外だ。

 

 なんで、そんな悔しそうな顔をしているんだろう?

 

「⋯⋯だけど僕は、君を扱える自信が無いんだ」

「⋯⋯?」

「初めてだったんだ。昨日の君みたいな役者は」

 

 ああ、これは、そうか。

 私が怖い(・・)のか。

 

「私、手塚さんの指示ならなんでも聞きますよぉ?」

「⋯⋯あはは。気を遣わせちゃってごめんね」

「いえいえ」

「だけど、もう大丈夫だ」

 

 パチン、自分の頬を両の手のひらで叩いて、手塚さんは立ち上がった。

 その顔に先までの恐怖に類する感情はもう無い。

 

 

「僕は、君たち役者を全力で使う。君達も、全力でついてこい」

「⋯⋯はいっ!」

 

 ふふ。なるほど。手塚さんは、本当はこうなのか。

 役者にならなかったら、こんな手塚さんを見ることは出来なかったな。

 

 なんか、アイドルじゃなくて女優の私だからこそ彼の新しい面を見れたみたいで腹立たしいけど、考えても仕方ないな。

 女優星アリスも、アイドル想辺真希為の養分にしてしまえば一緒だしね。

 

 取り敢えず、さっさと成長しよう。私は立ち止まってられないから。

 

 

 ☆

 

 

「それで、私のところに来た、というわけかしら? アリス」

「うん」

 

 プロデューサーは他の子のプロデュースで忙しいらしく、もう少しだけ暇な日が続くとのこと。

 夜凪さんの教師として教導しつつ自らの実力の程度を確認し、自らもまた夜凪さんを教師として新しい力の獲得を目指せ。言外にプロデューサーはそう言っているのだろう。

 

 だけど、それだけじゃ足りない。

 私は、夜凪さんの力を得る為に頑張りつつも、そこで足踏みしている暇はないのだから。

 

「⋯⋯最近、例のあの子と交流しているそうね」

「夜凪さんのこと?」

「あの子の言葉は届いたの?」

 

 ママにはママなりの優しさ、気の遣い方がある。不器用だけど、誰よりも暖かな愛情と思いやりがあるのだ。

 母と娘の仲だし、それくらい熟知していて当然のこと。

 だから、オーディションで見ただけらしい夜凪さんのこともここまで気にかけている。

 

「うん、しっかりと届いたよ」

「そう⋯⋯それなら、あの子の言葉は「届かないよ。多分、一生ね」⋯⋯アリス」

 

 だって、アーくんは努力を出来るけど、致命的に強みが無い。

 強いて言えばルックスだけど、それだって、それに特化した人間には劣ってしまう。女性や子供から人気はあっても、純然な人気が無いのだ。

 

「アリス、あの子のことがそんなに気に食わない?」

「違うよ、ママ。私はアーくんのこと、大好きだよ」

「だったら「でも、好きなのと言葉が届くことは違う。決定的に違うよ」⋯⋯!」

 

 私だって、嫌だ。

 アーくんの言葉を聞きたいし、ママにそんな悲しい顔させたくない。普通の兄妹みたいになりたい。

 

 でも仕方が無いんだ。これは、仕方が無い。

 

「⋯⋯ごめんなさい、アリス。貴女のお願いを聞くことは出来ない」

「うん、分かった。無理言ってごめんね、ママ」

 

 ダメ、か。なら仕方がない。

 今は夜凪さんとの練習に専念しよう。

 踵を返して立ち去ろうとしたその時、バンっと扉が開いた。⋯⋯デジャヴ。

 

「おいおい、帰るつもりかよアリス?」

竜吾(りゅうご)さん、ノックぐらいして下さい!」

 

 そこに居たのは見知った軽そうな兄貴肌っぽい青年堂上(どのうえ)さんと、見たことのない長身のポニーテール少女。顔立ちは並以上、絶世未満。スタイルはかなり良い。何かスポーツでもしているのだろうか。

 ⋯⋯いけない。分析するのは悪い癖だ。時間と体力が勿体ない。

 

「堂上さんと⋯⋯」

和歌月(わかづき)(せん)です!」

 

 和歌月さんか。

 多分、新しい子だな。堂上さんが教育係をしている、といった感じだろうか。

 

「それで、お二人は何の用事があってこちらに来たんですかぁ?」

 

 堂上さんは堂上さんらしい不敵な笑みを浮かべると、ズカズカと無遠慮な足取りでママの方に向かう。

 

 

「―――俺とコイツの(よしみ)だ。俺が、コイツに稽古をつけてやっても良いか?」

「⋯⋯好きになさい」

 

 堂上さんが私に?好って言うほど親しい仲じゃないと思うけど⋯⋯。

 ⋯⋯ああ、和歌月さんの経験値にしたいのか。なるほど。

 つくづく兄貴肌な人だ。

 

「お前も異論ないか?」

「ええ、大丈夫ですよぉ」

 

 まあ、それならそれで良い。

 ママや、百城さんには劣るけど、この二人だってスターズの役者だ。後輩として、二人から学べることもあるだろう。

 

「それじゃ、決まりだな」

「し、失礼しましたっ!」

「また来るね、ママ」

 

 疲れたように目元を抑えながら私達に手をヒラヒラと振るママを気の毒に思いながらも、内心、飛び抜けていない優秀な役者との関わりが持てることに気を良くして、私は知らず知らずの内に頬笑みを浮かべるのであった。




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それと、一瞬だけ本業に戻るので毎日更新途切れます。また再会した時は毎日更新頑張ります。

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