Fate/Ground Order 極統夢幻戦記ナウ・アム・イン   作:筆折ルマンド

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第一章 空堕ちる異聞帯

 遠くに聴こえる鐘の音。

 今はお昼時なのでしょうか? 

 

 シャドウボーダーは24時間稼働していて、時間の概念が薄いので、お昼という言葉は縁遠くなって久しいです。

 

 そう思いながら私たちが農地に踏み込むと遠くの方から一人の女の人が走ってきました。

 恰幅が良い……いえ、たしかアレはムキムキな。

 

 がっしりとした体躯の女の人が走り込み、私たちが挨拶するよりも早く地面に頭を擦り付けさせられました。

 

 これには先輩も私もシャドウボーダーの皆様も仰天。

 

 私は立とうとしたのですが、先輩が私を止めました。

 

 女の人は私たちを叱りつけてました。

「鐘の音が聴こえただろう!! すぐに伏せないで何やってるんだい!!」

 

 私たちはその時知りませんでしたが、さっき聴こえた鐘の音は、()がやってくるという警報だったのです。

 

 それを聞いた人たちは、原則としてすぐに頭を伏せなければなりません。

 それが、私たちが自分の身を守るためにできる唯一の手段であり、例外は仕事を監督する一部の人たちだけなのでした。

 

 ──

 

 私たちが伏せて数分。

 空は映画が始まるように急激に暗くなりました。

 

 シャドウボーダーとの通信回線からダヴィンチちゃんが悲鳴を上げました。

 

『なんだいコレは!? この反応! 一つ一つが主神クラスのフォーリナーだって言うのかい!!』

 

『これはまずいな。2人とも、絶対に上を向かないこと、万一に備えて、目を固くつむって、耳も手で覆うんだ』

 

「でもフォーリナーって、それって異聞帯の──」

「君たち2人どころか、今の僕たちが全力を出したって敵のまつげ一本分の戦力にならない。その女性が言うには、この場所には状況を打開する何かがあるはずだ。今はそれにかけるしかない」

 

 ホームズさんの言葉を聞いて、私と先輩はさっきよりもさらにぎゅっと縮こまります。

 

 直後

 私たちの頭上で何か強力な力が姿を見せて、その威圧感が私たちにのしかかりました。

 

 重力が10倍も20倍も重くなったと錯覚してしまうほどの威圧感。

 

 本当に打開策なんてあるのか。

 そう疑い、先輩だけでもシャドウボーダーに運ぶ算段を考えていた私の上に、さきほどまでの不快な圧迫感とは違う、焚き火のような燃える熱さが一瞬私たちの頭上を横切ったのを肌で感じました。

 

 その熱が過ぎ去ると、身体にかかっていた重さが軽くなった気がしました。

 

『この反応』

 

『この世界の守護者。というべきか』

 

 塞いだ耳を突き抜けて、爆音が鳴り響きました。

 

 ドーンドーンと私たちの頭上で花火のように音の津波が私たちを打ち据えます。

 

 5分、10分でしょうか? 

 

 しばらくすると、誰かに肩を叩かれました。

 

 私がゆっくり上を見ないように膝立ちになると

 

「アンタ鐘の音を聞いてないのかい。ノブナガ様はもう帰ったよ」

 

「信長?」

 

「そりゃアンタ……」

 先輩がそう聞きかえした瞬間、女の人の目が変わりました。

 私たちを見る目が、子供を見る目から化け物を見る目に変わっていました。

 

 女の人は何も言わず腰につけた銃を空に掲げて打ち上げました。

 

 ボっ、ジュー

 

 赤い狼煙が打ち上がります。

 

 

 ホームズさんの声

『すぐにそこから離れるんだ。どうやら僕たちはファーストコンタクトに失敗したらしい』

 

『2人の所に魔術師と魔法生物を乗せた物体が高速で迫っているのが確認できた。そこからは離れた方が良い』

 

 ダヴィンチちゃんの声を聞いて、私は先輩の手を掴みます。

 

 先輩は動揺している様子でした。

 

「ごめんなさい」

 

「人間のフリしたって無駄だよ。アンタらの正体はあたしゃ知ってるんだからね」

 とっとと捕まっちまえと吐き捨てる女の人。

 

 追うつもりは無いのか、私たちを睨みつけたまま微動だにしない女の人を尻目に私は先輩の手を引っ張ります。

 

 未練があるのでしょう。先輩の足取りは重いです。

 

『君たちは今敵対者と思われているのだ! 我々がどういう存在で君がどう思っていたとしても、伝わらなければ意味がない!』

 ゴルドルフ所長の言葉の通りです。

 今はとにかくこちらに向かう、おそらくは戦闘能力を持った人たちがやってくるより先にここを離れないと。

 

 そう私が思ってたのですが、

 

「ぎゃっ」

 悲鳴

 

「マシュ!」

 先輩が女の人を指差しました。

 そこには女の人に絡みつく、触手のようなものの姿」

 

 先輩が指した指に手を添えました。

「ガンド!」

 

 先輩の指先が呪詛の弾丸が飛び出して、女の人に絡んでいた触手がビクビクと痙攣しました。

 

「マシュぅ!」

 先輩の考えは手に取るように分かります。

 あの女の人を助けてほしいんですね。

 

 敵か味方か分からない。8:2ぐらいの割合で敵であろう人たちがもうすぐ来てしまうというのに、先輩は後先考えないんですね。

 

 そう思いながらも、私はすでに盾を名状し難きモノにぶつけて女の人からソレを引き離した。

 

 分かってますから、先輩はそういう人だって、私がそれなりに力を込めて殴り抜けたはずなのに、名状し難きモノはぬるりと立ち上がりました。

 しかも、今の音を聞いたのか、畑の泥の中からもう一体名状し難きモノが現れました。

 

 たかが二体されど二体。

 

 有効打を持たない私たちは名状し難きモノのそのぐねぐねと曲がる身体を前に苦戦を強いられました。

 

 戦闘は持久戦にもつれこみ、結局女の人が読んだ一団が到着するまでに、ソレらを倒すことは叶いませんでした。

 

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