ソードアート・オンライン プレシャスプロミス 作:猫猫猫の助
初めて里香と会ったのはたぶん4歳の時だったと思う。真冬の昼間、隣に引っ越して来た里香の家族が挨拶に来た時だ。歳は同じのくせに誕生日が里香のが早かったからかお姉さんぶってくる生意気なやつ。それが初対面の印象だった。
それからは家族ぐるのみ付き合いが続き、同じ幼稚園、小学校、中学校に通い、一緒に過ごすことが多かった。幼馴染の女の子。好きになるのは必然だった。
小学校に通ってた頃は仲が良かったと思う。毎日のように一緒に遊んでいたし、一緒に登校していた。それでも高学年になってくるとそういうことは周りの子達の中で噂になるものだ。男女で一緒に行動することは恥ずかしいことらしい。最初のうちはそんな事気にしてなかったのに、いつの間にか俺たちは一緒に登校することも、遊ぶことも無くなっていた。
それでも家族ぐるみの付き合いは続いていたが小っ恥ずかしさから中学校ではつい態度が悪くなってしまいまともに話すこともなくなっている。
中学3年の秋。いまだに続くその現状に、俺は焦っていた。このままでは別の高校になってしまう可能性が高い。それとなく友達伝いで聞いてみたが分からない。このままではマズイ。どうしようかと悩みながら帰宅していたところ後ろから声をかけられた。
「何がマズイのよ」
里香だ。どうやら先程までの考えが声に出てしまっていたらしい。悩みの問題の人物を前にして焦りながらも何と答えようか返答に迷っていると
「あんたって確かソードアート・オンラインのベータテスターだったよね?」
里香から聞いた事のあるゲームの名前が聞こえてきた。
ソードアート・オンライン通称SAO。俺が夏休みの間、受験勉強そっちのけで耽溺したゲームの名前である。
俺の母親は薙刀の師範だ。それ関係でアーガス社から槍関係のソードスキルについてオファーかあった。槍と薙刀は同じように見えて戦い方は全然違う。それでもオファーがあったということは薙刀に似た武器が登録されているということだろう。
俺はそれまで特にゲームをやったことはなかったが、仮想世界、フルダイブという言葉に惹かれ母親に着いていき見学させてもらっていた。詳しいことは企業秘密だったが、それでも珍しい場所だったので見ているだけでも楽しかった。
俺も母親に教えてもらい薙刀をやっていることは伝えていたので、中級者の意見も欲しかったのか、社員の方から「君もやってみないか?」と誘われた。
初めてのフルダイブ、感動した。アニメや漫画でしか見たことがない異世界がそこにあった。厳密に言うと、もちろん違和感はあったがそんなことは気にならないくらいその世界に本物を感じた。
データ収集もそこそこに終わり、ログアウトした後も感動から興奮が止まらなった。気づけば俺の横にどこか機械的で、無機質な瞳をもつ白衣の男性が立っていた。
「どうだい?この世界は」
見知らぬ大人の男性に突然そんなことを聞かれ、焦りながらも答えた。
「えっと、なんていうか、異世界に行ったような気分でした。ゲームとかあんまりやった事ないし、身体を動かす事のが好きだったけど、これはなんていうか、本当に、その世界に生きてるみたいで楽しかったです。」
そんな馬鹿げたことを顔を見て話すのは恥ずかしくて、視線を胸の当たりにうろうろさせながら話した。
数秒たっても返答がないので恐る恐る顔を見上げてみると、相手は驚いたような、それでいてどこか嬉しそうな顔をしていた。
「そうか…君はこの世界を異世界だと感じたのか」
「すみません、変なこといって」
「いや、謝る必要なんてないさ。私はね、現実世界のあらゆる枠や法則を超越した世界を作りたかった。君の言葉で言えば異世界を作りたかったんだ。だから君の言葉は凄く嬉しかったんだ。」
異世界を作りたい。今よりもまだ小さい頃想像した世界。そんな世界を望み作り上げるのはどれほど大変だったのか分からない。それでも自分では一生作り上げることができないことは想像できた。
「君はベータテストに応募したのかい?」
「えっと…してないです」
今までゲームには興味がなかった。だから応募する気はなかったし、発売されても自分はやることはないと思っていた。それを今はとても後悔している。こんなに綺麗で美しい世界なら応募すればよかった。
暗い顔をしていた俺にその男性はとても魅力的な提案をしてきた。
「君さえ良ければベータテストをプレイしてみないかい?私としては君みたいな人にこの世界を体験して欲しいんだ。」
もちろんやりたい。でも、こんなことを普通の社員が提案できるとは思えない。あまり知らないが、ベータテストの当選確率は天文学的確率だと聞いたことがある。ここで初めてしっかりと相手の顔をみた。どこかで見たことがある気がする。
「あの、失礼でなければあなたお名前は?」
「そうか、君はあまりこのゲームについて詳しく無かったんだったね。私はSAOの開発者、茅場晶彦だ。」
とんでもないビックネーム。見たことがあるはずだ。あまりテレビを見ない俺でも聞いたことがある。
「す、すみません!まさか開発者相手にこんなこと言ってたなんて!」
まさか話してた相手が有名な人だとは思わなかった。それでも茅場晶彦本人からベータテストに誘われていたことに気づき嬉しくなった。
彼は首を振り「気にしないでくれ」と言っていた。
帰ったら自慢してやろう、なんて考えてていると
「それでは私は行くとするよ。君とはまたどこかで会いたいね」
そう言って彼は立ち去っていった。
「会いたい」か
そう簡単に会える人では無いと思うがなぜがまた会える気がした。
その後は確か特に何もないままデータの収集が終わり帰宅したと思う。
夏休みはしっかりベータテストにどハマりし、そこで新しい友達もできた。そいつとは始まりの町で出会って意気投合した。ゲームに詳しく上手かった。10層を共にクリアしたところで時間がきて終わってしまった。正式サービスが開始したら一緒にやろうと約束したが元気にしてるだろうか。
「ぽけーっとして何考えてるのよ」
声をかけられ意識を引き戻される。どうやらベータテストと聞いて感慨に耽っていたらしい。
「悪い悪い、ベータテストのこと思い出してたんだ」
「悪いと思っているなら私にSAOについて教えなさい」
「SAO?えっ?やるのか?里香が?受験は大丈夫なのか?」
俺たちは受験生だ。もちろんそれでも俺はやるつもりだが、成績優秀だが俺よりも上位の高校を目指している里香がこの時期にわざわざSAOなんてやっていて大丈夫なのだろうか。
「ネットで知り合った子のお兄さんがSAOを買ったらしいのよ。で、その子が仕事でできないお兄さんの代わりに少しだけやるって言ってたの。うちもお父さんが買ったみたいだから私も息抜き程度でやってみようかなって。」
「男か?」
「女よ!!」
よかった。
「でも珍しいな?それだけだやるなんて」
「えっとね、知り合って結構立つんだけど会ったことなかったし、そこなら会えるかなって」
「なるほどなー」
待てよ?これってチャンスなんじゃないか?このまま何もしなかったら里香と関わることも少ないわけで、あの世界なら俺でもカッコイイとこが見せれるかもしれない!
「SAOのサービス開始は明日の13時からだからさ、基本的な知識は今日やるとして、動きは明日やろうぜ」
「それなら私の家で教えてよ。どうせあんたの部屋ゴチャゴチャしてて入れないだろうし」
まじか、何年ぶりだ?里香の部屋なんて。嬉しいが絶対に顔に出してはいけない。出せばバカにしてくるに決まってる。
「なによ、女の子の部屋に入れることがそんなに嬉しいの?」
「ばっか!女の子の部屋なんて入りまくってるわ!」
テンパって変なこと言った気がする。
「きも…まぁいいわ、早くいこ」
そう言って家の方へと向かっていった。