ソードアート・オンライン プレシャスプロミス 作:猫猫猫の助
ゲーム開始から約1ヶ月。俺たちはようやく第1層を踏破することに成功した。
問題はあった、課題も見つかった。でも今はこの勝利を噛み締めていたい。
「Congratulation!お前さんのおかげで誰も死なずにすんだ。この勝利はアンタのものだ」
そう言ってエギルは倒れたチハヤに手を伸ばす。
「ありがとうエギルさん。でもここに居る誰が居なくてもこの勝利は無かった。やっと第1層クリアだ」
「まだたった1層だけどな。おつかれチハヤ」
「あら、でも大きな一歩じゃない?キリトくん」
キリトとアスナも合流し、声をかけてくる。
たった1層をクリアしただけ、それでもこのゲームは脱出不可能な世界なんかじゃないと証明できた。
それゆえに、死者が0という数字は大きな一歩と言えるだろう。
「チハヤ!キリト!アスナ!良かった!無事で!みんなごめん、あたしだけ何の役にも立てなかった....」
「そんな事ないよリズ!誰かが動けないディアベルさんを守らないといけなかった!」
「そうだよ、リズだからこそ俺はディアベルを任せられたんだ」
リズベットはボスとの戦いを見ていることしか出来なかった。本音を言えばディアベルを置いてでも参戦したかった。
それでも、自分が参加してしまえば、絶妙なバランスで保たれた均衡が悪い方に傾くことがわかっていた。
友達と一緒に戦えない自分の実力がもどかしい。
「ねえ、チハヤ。アタシもっと強くなりたい。みんなと一緒に戦いたい」
「私も、2人みたいに強くなりたい」
「任せろ、明日からは2人がかりで特訓するよ」
「そうだな、とりあえず今日は早く帰って寝たいや」
「キリト!雰囲気ぶち壊すなよ!」
俺たちだけでなく、エギル達や周りで勝利を祝ってくれた人達にも笑がこ溢れる。
でも、確かに今日は疲れた。いつもは入らないけど、今日だけは風呂に入って寝たいな。
なんて考えてながら次の階層に続く階段へ向かっていた。
「ちょっと待てや!!」
その声は、勝利ムードで賑わう空間に静寂をもたらした。
「なんでや!なんでディアベルはんに攻撃したんや!」
「なっ....!」
「わいは知っとんのや!あんたらが昔、汚い立ち回りでボスのLAを取りまくっとったことをな!」
「そうだよ!こいつらきっとLAを取るためにディアベルさんを攻撃したんだ!見ろ!カーソルもオレンジだ!」
意味がわからなかった。言っている事は分かる。でも何故あの戦いを見ていてそんなことを考えられるのかがわからない。
SAOはフレンドリーファイアONのゲームだ。味方への誤爆程度ではカーソルはオレンジにはならない。
だがあの時は意図的にディアベルを攻撃したため、オレンジになってしまったようだ。
「ま、待てよ!俺はディアベルを助けるために!」
「それだけじゃない、こいつらボスの使う技をしってた!きっと鼠と結託して俺たちにウソを教えたんだ!」
畳み掛けるような糾弾に流れが変わっていく。「そういえば...」「確かに....」という声が、徐々に広がっていく。
まずい、この流れはまずい。攻略会議でなんとかテスターと新規の間を取り持った〈情報〉という武器が、今度はこちらに牙を剥く。
「情報屋のアルゴもテスターなんだ!テスターなんかがタダで俺たちに情報をくれるわけなかったんだ!!」
俺だけが糾弾されるならまだいい。でもこの流れはテスター全体に対する恨みに繋がりかねない。
俺はもともと口が回るわけじゃない。それに加え先程までの戦闘で疲れきった頭では言い返す言葉が浮かばない。
それでも何とかしないと、と前へ出ようとする体をキリトが制す。
「キリト....?」
「....ごめん....これしか思い浮かばなかったんだ」
キリトには何か考えがあるのだろうか。でも表情を見る限り、それはいい事ではだろう。何かを覚悟した顔をし、1歩前へ出る。その時だった。
「待ってくれ!」
後ろの方からキリトを止める声が聴こえた。
「ディアベルはん!大丈夫や、ワイがコイツらに灸を据えたる!」
「違うんだ!彼らは悪くない!」
ディアベルは俺たちの前に出てレイド全体に頭を下げる。
「聞いてくれ、みんな。オレも元ベータテスターなんだ!」
「なっ...!?」「ディアベルさん!?」
「すまない!騙していたわけじゃないんだ!怖かったんだ、ベータテスターだと名乗ってしまえば、みんなの心が離れていくんじゃないかって...」
「そんな...」「ディアベルさんまで...」
信じていたディアベルまでもが元ベータテスターだと聞き、殆どのものが動揺し、キバオウまでもが何も言えずにいた。
静寂を破り、最初に口を開いたのはアスナだった。
「みんな、聞いて。みんなこの世界に閉じ込められて、わけも分からず1人で戦わされるなんてとても心細いと思うの。私もリズがいなかったらずっと1人で戦ってたかもしれない。だからディアベルさんを責めないで欲しいの...!」
誰だって1人は怖い。ディアベルもそうなのだろう。
「ワイは...ディアベルはんを信じる。ディアベルはんは始まりの町で燻っとったワイらをここまでずっと率いてくれたんや。そんな人をワイは裏切れん!」
「俺も!」「ディアベルさんだもんな!」
「みんな....。こんなオレでもついて来てくれるのか....。ありがとう...!」
本当に嬉しいのだろう。ディアベルの目には涙が溜まっていた。
「アスナさん、キバオウさんも本当にありがとう...!」
「で、でもな!ワイが信じるんはディアベルはんだけやで!あんたらはまだ信じることはできん!これからも行動で示してもらうで!」
キバオウなりの照れ隠しなのだろうか?キバオウは最後までキバオウしてたが、よかった。ディアベルが死んでしまっていたらここまで上手く話はまとまらなかっただろう。
リズがいなければあのとき助けることを諦めていた。
アスナも、ディアベルもリズがいたから助けられた。リズには本当に感謝しかない。
「チハヤくん!2層の転倒門はオレたちがアクティベートしておく!君たちはゆっくり休むといい!助けてくれてありがとう!!」
「ああ!そうするよ」
そう言って2層へと昇っていくディアベルを見送った。
俺は何かを感じとって後ろを振り返り、逃げようとしているキリトの肩を掴む。
「で、何を言おうとしてたのかな??キリトくん」
「え、えっと....ご、ゴメンなさい」
「はぁ、いいよ。俺を助けてくれようとしたんだろ?〈俺は〉許すよ」
「お、俺は?」
横にズレ、後ろに控えていた2人が笑顔で詰め寄る
「キーリートーくーん?自分を犠牲にしようとしてたよね?嫌だよ、君が1人になるのは。私達だってパーティーメンバーなんだから。もうあんなことはしようとしないで」
「そうよ!それにキリトにはあたしたちを強くしてもらうんだから!約束破ったりしたら許さないわよ?」
「ご、ごめんって...」
「それじゃ、早く2層にいこ!2層の主街区ってどんなところなの?」
「えーっと、確かテーブルマウンテンの外周部だけ残して、くりぬいて作られたような街。だったかな?」
「景色が良さそうだね!」
「その事なんだけどさ、悪い、俺は今主街区には入れないんだ」
俺はディアベルを攻撃し、犯罪を犯した証であるオレンジカーソルになっていた。
オレンジプレイヤーは衛兵に止められ、主街区には入ることが出来ない。
「俺はカルマ回復クエストをやってくるから、主街区には先に入っててくれ。そのうち合流するから」
「分かった。先に入ってるね」
「ああ。キリトその間2人のことを頼む」
「任せろ!」
2層の入口まで行き3人と別れることになった。
カルマ回復クエストは衛兵からのお使いクエストだ。それぞれの層の主街区に存在する衛兵に話しかけ、お使いをこなさなければいけない。
めんどくさいことに、転移門が使えないため自分の足で何度も衛兵とクエストのエリアを行き来する必要がある。
簡単にグリーンに戻れてしまうのは、ゲーム的にも好ましくないため、この面倒くささはしょうがないと言える。
ベータテストではお使いは15個ほどと言われていた。現在まる2日かけて14個クリアしていた。
「えっと、最後のクエストは....ペネントの葉を15個納品?まじかよこれ1層まで戻らないとダメじゃん....」
転移門が使えたらこんなクエスト一瞬で終わるのだが、わざわざ1層の迷宮区から下に降りなければいけない。
ここまでクリアしてきて戻らないわけにもいかず、渋々1層まで戻ることにした。
ペネントの葉は《ホルンカの森》に生息する《リトル・ペネント》が主に落とす素材だ。
1層に戻ってすぐ、ホルンカの森へ向かう。
たった2日しかたって無いが、1層の景観が懐かしく感じる。
2層では崖や山が多く、森や草などの緑が少ない。高所からの景色は絶景だが、やはりこの緑で埋め尽くされていた方が見慣れてて落ち着く。
俺たちが1層のボスの討伐に成功したからか、ホルンカの森に到着するまでに、かなりのプレイヤーを見かけた。
これまでは1日戦っていても、多くて1、2パーティーしか見かけなかったのに、今日は3、4パーティーは見た。
俺たちの攻略が確実にいい方向に繋がっているのだと実感できて嬉しかった。
願わくばこのまま全プレイヤーの死亡率が下がって欲しい。
ホルンカの森に着いてすぐに、異変を感じる。リトル・ペネントの数が異様に多いのだ。
通常多く湧いたとしても3体のペネントが、目の前には6体以上。それに、こちらには目もくれずに、一直線にどこかを目指し進んでいる。
これは昔キリトに聞いた実付きを攻撃した時と同じ現象だった。つまり、誰かが実付きを攻撃し、現在もまだ戦っているという事だ。
「きゃああああ!」
その時、ペネントが向かった方向から女の子の叫び声が聞こえてきた。
声からしてかなり危険な状態なのは間違いない。全速力で声のした方へ走る。
そこには、地面にへたり込むツインテールの女の子と、その子を守るように、赤いバンダナを巻いている男と、その仲間達が戦っていた。
かなりギリギリなようで何人かHPがイエロゾーンに突入しており、1人はレッドまで達していた。
「加勢する!スイッチ!」
「?!スイッチ!」
先頭に立つ赤いバンダナの男と入れ替わり、スピン・スラッシュを放つ。
リトル・ペネントとはレベル差があるため威力が低い範囲技でも一撃で倒すことができる。
プレイヤー達を囲んでいた4、5体のペネントを倒し、集団の先頭に立つ。
「す、すっげぇ」
「今のうちに回復を!アイツらは俺が倒す!」
「お、おう!」
槍のソードスキルにはリーチを活かした範囲攻撃が多めに設定されている。味方と密集した中での戦闘には向いてないが、敵に囲まれた時、これ程強い武器はない。
周りに寄ってきていたペネント10体以上を倒し終えた頃には、全員の のHPはほぼ全快近くまで回復していた。
「いやぁー、助かったぜ!おめぇさんほんとに強ぇな!俺はクライン。よろしくな!」
「俺はチハヤ。よろしく、クラインさん」
さん付けに対し、呼び捨てでいいと答えるクラインに手を伸ばし握手を交わそうとする。
「待て!」
「クライン!そいつオレンジプレイヤーだそ!」
「ええッ!?」
「いや、えと!違くて!」
慌てて説明する俺の姿が面白かったのか、座り込んでいた少女は込み上げてくる笑いを堪えることが出来ず、噴き出していた。
「ご、ごめんなさい、つい」
「大丈夫だよ、えーっと君の名前は?」
「シリカっていいます。あの、チハヤさんですよね?よろしくお願いします」
「よろしくな、シリカ」
「俺!俺クラインっていいます!」
「よ、よろしくお願いしますクラインさん」
「おい、クライン!怖がってるだろーが。....えと、シリカはなんでこんな所に?」
「はい、実は...」
シリカから語られた内容は実に胸糞悪いものだった。
始まりの街から出たくないと言うシリカに対し、絶対に守ってあげるから一緒に行こうと、3人組の男が声を掛けてきたらしい。
シリカは嫌々だったが、始まりの街に留まっているのも良くないと説得され、ついて行くことにした。
その道中で、強い武器が貰えるクエストがここにあると聞いたシリカ達は、ここでクエストをやっていたそうだ。
その時、誰かが実付きに攻撃を当ててしまい、ペネントが大量に湧き出し、3人組はシリカを囮にして逃げ出した。
ということらしい。
俺もリズと同じ約束をしただけに、その3人組が許せなかった。自分が命をかけて守ろうと誓った約束が、まるで軽いものだったと言われているようだったから。
許せなかったのはクラインも同様だったらしい。
「ったく許せねぇな!女の子を1人置き去りにするなんて、男の風上にも置けないやつだぜ、そいつはよぉ!」
「シリカちゃん俺達ホルンカの町に戻るんだけど、一緒に来るかい?」
「その、ごめんなさい、今3人がホルンカの町にいるんです....」
シリカの精神状態的に、今そいつらと会わせるのは為にならない。
「なあ、俺と一緒に来るか?今から2層に戻るんだけど、そこには俺の仲間もいるんだ」
「あの、いいんですか?」
「大丈夫だよ。君は死なせないし、それに2層の主街区に着けば始まりの街にも戻れるしね。」
キリト達にメッセージを送り、シリカにパーティー申請をする。
「なぁ、チハヤ。キリトって知ってっか?」
シリカとパーティーを組み、さあ行こうという時、クラインから声をかけられた。
「知ってるけど、そいつがどうかしたのか?」
「俺ァさ、そいつに謝んなきゃなんねぇことがあってよ」
もしかしてキリトが言っていたプレイヤーがクラインなのだろうか。だとしたらお互い自分が悪いと思っているこの状況に笑いが込み上げてるくる。
「キリトも同じこと言ってたよ。俺たちは上で待ってる。クライン達が強くなったら、その時自分口から伝えてあげてくれ」
「そうか!わかったぜ!待ってろよォキリト!」
「ああ、待たな、クライン!」
「おう!じゃあな、チハヤ!シリカちゃんもまた会おうな!」
「はい!助けてくれてありがとうございました!」
クライン達は強くなる。それこそSAOを攻略するのに必須なくらいに。
今前線では、リーダーのディアベル以外に、気持ちを盛り上げてくれるプレイヤーがいない。
SAOを攻略する上でメンタルのケアは必須だ。クライン達のような周りを明るくしてくれるパーティーは是非ともいて欲しい。
「よかったのか?シリカ」
「?何がですか?」
「えと、囮にされたりしたばかりで怖くないのか?」
「もちろんまだ怖いですよ。でも、チハヤさんの横はなんか安心するんです。笑わないでくださいよ?その、あたしお兄ちゃん居ないんですけど、いたらこんな感じだろうなあって」
「たしかにな、俺も妹いないんだけど、シリカ見てたらその気持ちわかる気がする」
いつの間にかシリカに対しては妹のように接していたかもしれない。なんとなくシリカの気持ちが分かった。
2層の主街区に着く頃にはシリカのレベルは2も上がっていた。
俺は衛兵に話しかけ最後のクエストを完了し、3日をかけようやくカーソルをグリーンに戻すことに成功した。
「終わったぁ!!」
「お疲れ様です、チハヤさん」
「ありがとな、それにしてもキリト達遅いな」
「何かあったんですかね?」
キリト達にはメッセージで今日終わりそうだと伝えていたし、この時間にはここにいるはずだと返ってきたが、まだ誰もいなかった。
「そこにいるのはチー坊カ?」
「?アルゴか!久しぶり!」
攻略会議の後にあってからだからほぼ4日しか経ってないが、色々あったせいでたった4日でもとても長く感じる。
「また違う女の子を連れてるのカ。相変わらずダナ」
「そーいうのじゃないって!」
「ところで、お嬢ちゃんの名前ハ?」
「聞けって!」
「は、はい、シリカっていいます」
「シーちゃんカ、よろしくナ。オレっちはアルゴ。情報屋をやってるんダ。ご贔屓にナ」
「わあ!あのガイドブック、すごい助かりました!ありがとうございます!」
「いいんダヨ、情報はみんなから買ったものだしナ」
こちらに目配せしながらアルゴは笑っていた。情報を提供していただけよ身からしても、こうやって感謝されるととても嬉しかった。
「アルゴ、キリト達が今どこにいるか知ってるか?」
「....知ってるヨ」
「知ってるのか!いくらだ?買うよ」
「いいヨ、タダで教えてあげル。でも、約束シロ。どんな結果になっても、オイラを恨まないってナ!」
「タダ!?あ、ああ約束するよ」
あのアルゴがタダで情報を売るなんて怪しさしかないが、今はキリト達の場所が知りたかった。
アルゴについて行き、30分ほど現実では通る気にもならない道を進んだ先。マップでいうと2層の東の端っこにある山の山頂付近にいた。
「なあ、アルゴ。ほんとにこんな所にいるのか?」
「そーだナ、それはあの小屋でクエストを受けて見ればわかるヨ」
小屋の中に入るとそこには、筋骨隆々たる初老の大男のNPCがいた。
「入門希望者か?」
「入門?えっと、はい」
「汝の修行はたった一つ。両の拳のみであの岩を割るのだ。岩を割るまで山を下りることは許さん。汝にはその証を立ててもらうぞ」
俺はその言葉で全てを察した。キリト達もこのクエストを受けたのだと。そしてまだクリア出来ずにここにとどまっているのだと。
「ちょ、タンマ!まって!」
静止のかいなく、懐から取り出した筆によって、俺の顔にラクガキが施された。
「俺の顔アルゴと同じ感じになってるのか?」
「うーん、、チー坊は、チハチュウって感じだナ」
「くっふふ、ち、チハヤさん。かわいいですよ!」
メニューを開き手鏡を取り出し、自分の顔を確認してみる。
そこには、両の頬に大きく赤い丸が描かれ、なんとも間抜けな顔になっている自分が映っていた。
岩を割らなければずっとこのままという現実に軽く絶望していると、限界が来たらしく、アルゴは地面に突っ伏すと、転げ回りながら
「にゃハハハ!にゃーハハハハハ!!」
と大爆笑し続けていた。
そんなアルゴを無視し、奥に進むと人影が見えてきた。
「おーい!キリト!」
「チハヤか!って、お前もこのクエスト受けたのかよ!」
そう言って振り返るキリトの頬にはラクガキがなかった。どうやら、キリトとアスナは少し前に割ったらしく、後はリズだけらしい。
「アルゴに嵌められてな....。この感じだとまた2、3日別行動かな」
「ガンバレ....えと、ところでその子は?」
キリトの問は俺の横に立っているシリカに対してだろう。3日前まではいなかった新たな女の子の出現に、やっと慣れた2人に加え、また増えるのかと焦りがあるように見える。
「シリカっていいます!キリトさん、であってますか?」
「あ、ああ。よろしくシリカ」
「よろしくお願いします!」
よく見ればシリカの頬にもペイントがあった。この苦行を乗り越えたキリトからすると、キツめに設定されているクエストを、この子がクリア出来る心配だった。
チハヤがいれば何とかなるだろうが時間はかかるかもしれない。
「あー!その子誰!かわいい!!」
更に奥の方でリズが岩を割るのを見守っていたアスナがこちらに気づいたようだ。
こちらに寄ってくる途中でシリカの存在に気付いたらしく、リズを呼んでちかづいてきた。
「私アスナ!よろしくね!」
「は、はい!シリカです!」
「シリカちゃんかー!かわいい!」
そう言ってシリカを抱きしめるアスナの図はなんとも目の保養になった。
一発でも多く、と岩を殴っていて遅れたリズともお互いに名乗り合い、すぐさま意気投合したようで、すでに仲良くなっていた。
現状SAOに存在するプレイヤーの男女比率は、おそらく7対3ほどで男性プレイヤーの方が多いだろう。
数少ない女性プレイヤー。それも最前線には女性は2人しかいなかったので、仲良くなれたようで良かった。
俺とシリカは最低3日程は、ここで足止めをくらうだろうから実質俺は6日間も前線から離れる事になってしまう。
仕方の無い事とはいえ、最近ゲーマーになった身としてはそれだけ離れてしまうことにはモヤモヤした気持ちが残るが、その間に少しでもクライン達のようなプレイヤーが2層に上がってきてくれることを祈るばかりだ。