アルフィミィちゃんになってスパロボ時空で暗躍する   作:アルフィミィ好き

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話の関係上。少し時系列が速い部分があります。
大尉の名前、ミスってました。申し訳ございません。


第25話

 

 

 

 

 ヴァース帝国 クルーテオ

 

 

 

 陛下のボソンジャンプにより、我々は地球から揚陸城に乗って火星へと一気に戻った。揚陸城にはチューリップクリスタルが備え付けられており、陛下のお力によってカタフラクトとそのパイロットが揃っておればボソンジャンプが可能である。ただし、カタフラクトとパイロットが揃っていないため、私の城は取り返す事ができなかった。私が乗り込めていれば転移できたのだが、一生の不覚である。

 火星に戻った私達は他の騎士達と同じく陛下の前で跪いて報告する。ハイパーゲート奪還の失敗。更にはギルゼリア様を守れなかった事。私に関して言えば揚陸城を失うという更なる失態がある。

 

「この度は誠に申し訳ございません。陛下から頂いたタルシスを損傷させるばかりか、揚陸城まで奪われるとは……このクルーテオ。腹を切って陛下にお詫び申し上げます」

「良い。地球連邦軍がこちらの想定よりも遥かに強かった。全ては儂の奢りが招いた結果である」

「いえ、陛下の落ち度があろうはずがございません。全ては我等火星騎士の実力不足。故に……」

「ならぬ。勅命を持って命じる。自害は禁止だ。無駄な命を散らすならば精進して鍛えよ。我が子、ギルゼリアの仇を討つ牙を磨け」

「御意」

 

 陛下のご命令通り、タルシスをより使いこなすよう訓練せねば。揚陸城を取り戻しに向かった時に現れた地球人共の兵器はタルシスよりも性能は下であった。それなのに私が揚陸城を取り戻せなかったのは数はもちろんの事、パイロットとしての技量が地球人に劣っていたからだ。

 

「陛下。恐れながら申し上げます」

 

 友であるザーツバルムが陛下の前に歩み出る。

 

「申してみよ」

「はっ。地球と一時休戦を行い、月に残された者達を救助すべきです」

「ザーツバルム卿!」

「貴様っ!」

「火星と地球では距離ができました。我等が敗北した理由はカタフラクトの数が足りず、数で押されたこともあります。地球人と停戦し、その間に戦力を増やすべきかと。それに奪われた揚陸城の返却を求めるのも良いでしょう。一度、クルーテオ伯爵から権限を剥奪すればアルドノアは停止するはずです」

「……確かにその通りだ。停戦などしたくはないが、こちらの戦力を整える時間は稼がねばならぬ。連邦軍のウルブスを甘く見ていた。我等はアインストとも事を構えねばならぬだから、地球人に構ってはおれぬ」

「では、揚陸城の返還と捕虜交換を打診するのはどうでしょうか……」

「捕虜交換はならぬ」

「何故ですか!」

「揚陸城がほぼ無傷で奪われたという事は火星騎士の中に裏切り者が居たという事だ」

「「「っ!?」」」

 

 裏切り者……もしや、ヴラド卿か。私は彼に全権を預けた。で、あるならばあの場から揚陸城を操作できたのは彼しかいない。いや、彼に限って裏切るなどあろうはずがない。なら地球人が何らかの方法で揚陸城を操作したと考えるのが自然である。

 

『いえ、火星騎士の中に裏切り者はおりません』

「どうしてそう言える?」

『タルシスに残されていた映像の解析が終わりました。こちらをご覧ください』

 

 空中にモニターが投影され、そこに私と話していたブラド卿の姿が二つ映し出される。片方は出撃してからの会話であり、互いにタルシスとアルギュレに搭乗している。もう一つは城からの通信だ。アルギュレを失って戻ってきた時のものだ。会話になにもおかしいところはない。

 

「これがなんだというのだ?」

「やはりヴラドが裏切り者なのでは……」

『わかりませんか?』

「まさか、地球人がヴラド卿に成り代わっていたというのか!」

『その通りですクルーテオ伯爵。生体認証を解析したところ、全て本人であると一致しました。ですが、こちらの映像を確認してください。鹵獲された揚陸城から引き抜いた情報を解析し、書き換えられていた映像を修復したものです』

「「「おおぉ」」」

 

 火星に居ながら地球にある揚陸城から情報を引き出すとは、流石奥方様です。

 映し出された映像には揚陸城の中でヴラドが兵達を斬り殺していく姿。そして、小さな少女と共にそのまま進んでいき、管制室に到着して私と話していく。私が権限を与えると同時にオペレーターの者達を並ばせたヴラドはその者らを惨殺した。それも緑の植物みたいな物を使ってだ。姿もヴラドのような屈強な男から可憐な少女の姿へと変化していく。その後も彼女達が行った行動ログが表示される。それはおぞましきものだった。

 

「おのれ地球人めっ!」

「許さぬ!」

「このような虐殺を行うとは……」

「生命維持装置を解除して強制的に窒息させるか。少数の兵で拠点を制圧するには確かに有効な手段ではあるな」

「いや、それよりもこの者は……」

『アインストです。少なくとも身体は人間のようですが、身体の一部は確実にアインストとなっております』

「では、地球連邦はアインストと繋がったということだな」

『アインストは調査する時に対象を模倣し、学習します。その事を考えるとこの者はアインストの端末である可能性が高いと判断します。またあの転移事故はアインストによるものだと判明しました』

 

 我々はアインストの手によって踊らされたという事か。もしや、地球連邦は既にアインストに支配されている可能性もある。

 

『今はまだアインストは地球にしか興味がないようです。ですので今の間に戦力を蓄える必要があります』

「アインストを警戒しつつ、地球連邦とは停戦を行う。その間にアルドノア・ドライブを量産し、開発を行う。捕虜交換はアインストが擬態して送られてくる可能性を考えて行わないこととする」

「しかし!」

「ザーツバルム卿。抑えよ。陛下のご命令だ。卿の気持ちはわかるが、これ以上は不味い。それに彼女はアインストが起こしたであろうハイパーゲートの暴走に巻き込まれたのだ。もはや生きてはいまい」

「く……」

 

 ザーツバルム卿には申し訳ないが、婚約者のオルレイン卿が生きている可能性はほぼない。先にも言った通り、ハイパーゲートを地球人が操れるとは思えない。ましてや既にアインストの浸食を受けていたのだ。その事から考えるにおそらく転移した先はアインストの空間であろう。

 

「だが、戻って来た月は何も無かったのだ。だったらまだ可能性は……」

「戻せるのならば陛下のお力で戻されている! だが、それができぬのだ。ハイパーゲートと共に座標を完全に見失えばもはや……」

「宇宙空間に漂い、窒息するだけだというのか!」

「そうだ。母艦もないディオスクリアだけではもはや助からぬ。この恨みはアインストと地球人共に向ければよい。彼女の弔い合戦だ」

「……わかった。陛下も申し訳ございません」

「よい。其方の気持ちは良くわかる。私も息子の事を思えば腸が煮えくり返るような思いである。改めて命じる。これよりヴァース帝国は戦力を増強する! 皆のより一層の働きを期待する!」

「「「はっ!」」」

 

 御前での会議が終わり、謁見の間から我々はそれぞれ行動する。私は友であるザーツバルム卿と共に訓練に励むとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月面 オルレイン

 

 

 

 

 

 月面で地球連邦軍と戦い、一度敵を退けた時でした。

 

『大規模な空間歪曲反応が起きている! 離脱するぞオルレイン! 月面は危険だ!』

 

 ザーツバルムの言葉にデューカリオンを操作しますが、モニターに表示されるのはエラーのメッセージ。すぐにシステムを確認して原因を探します。

 

『どうしたオルレイン!』

「時空の歪みが反重力デバイスに影響を与えていて飛べません!」

『今助ける!』

「なりません! もはや手遅れ! 私に構わずお早く!」

オルレイィィィィィン!

 

 叫びながら時空転移の衝撃で飛ばされる彼を見送りました。

 

 

 

 目を覚ますと、そこは真っ暗な世界でした。痛む頭を片手で押さえながら制御装置を操作し、アルドノア・ドライブを再起動します。モニターに光が灯り、周りの光景が映し出されます。中は問題ありませんでしたが、どうやら機体は倒れているようで、真っ暗な空間が見えました。

 反重力デバイスを操作し、機体を浮き上がらせて回りを確認しますが、遠くに所々光が見えます。モニターを操作してみると、それは墜落した地球連邦の船だったり、スカイキャリアだったりしたのが燃えているみたいです。更に遠くの方から幾度となく爆音が響き、大きな衝撃が走ってきます。

 

「一体何が……っ!? ザーツバルム! ザーツバルムは無事なの!?」

 

 計器類を使って周りを急いで確認してみますが、ザーツバルムが乗っているディオスクリアの反応はありません。近くに居ないという事は無事に脱出できたみたいです。

 

「良かった。彼が無事ならまだ救われます」

 

 後は私も助かれば最高です。ですが、そうは行かないでしょう。転移反応はおそらくハイパーゲートの暴走だと思います。アインストから攻撃を受けていたので間違いはないでしょう。つまり、ここは何処かわかりません。とりあえず、上に行って確かめてみましょう。

 浮上していきますが、何処まで行っても真っ暗なだけで、先程まで居た地面も見えなくなりました。それでも進み続ける事はできませんでした。方角を見失えばもはや戻る事はかないません。デューカリオンに残された酸素と食料の備蓄を考えると人が居るであろう場所に到達できる保証はありません。そもそも星々の光が一切届いていないという事は地球も火星もコロニーもここにはないのかもしれません。

 

「静寂の世界でございますか……怖いですね」

 

 一度、地面がある場所に戻りましょう。幸い地面の位置はわかりませんが、燃え続けている光は確認できます。それもほとんど消えていっています。備蓄されていた酸素が尽きたのでしょう。

 

「急がねばなりませんね」

 

 地面がある場所に戻り、通信の周波数を色々と試しながら周りを探索していきます。同時に地形データを収集していく事でここが月面である事がわかりました。どうやら、月ごと転移したようでございます。

 このような大規模な転移などアルドノア・ドライブでも可能かどうかわかりませぬ。ですが、アインストならば可能かもしれません。

 

『……い……の……て……奴……ポイント、β……』

 

 どうやら私以外にも生き残りがいるようで、通信に反応がありました。こちらも周波数を合わせて応答します。

 

『生き残っている奴は地球や火星、関係なくポイントβに来い。こちらはシェルターを確保した。食料と酸素がある。目印として定期的に上に光を出す。繰り返す……』

 

 上を確認していると確かにビームの光が放たれました。その発射位置に向かって移動を開始します。できれば火星の皆が無事であればいいのですが……今の所、生体反応はありません。いえ、今反応がありました。

 破壊されている地球連邦軍の軍艦と我々火星の輸送船のようです。その周りにはスカイキャリアとゲシュペンストMk-Ⅱもあります。どちらからも救難信号が発進されています。

 

「こちらデューカリオン。無事でございますか?」

『子爵! ご無事でしたか!』

「はい。そちらは……」

『輸送船は駄目です。あちらの連邦軍も同じです。食料は無事ですが、酸素が……』

「わかりました。酸素がある所へ移動しましょう。地球連邦軍の方々も牽引しますので持ちだせる物は持ちだしてください」

『感謝する』

 

 流石にこの状況で争っている場合ではありません。それに彼等が持つ食料と酸素は私達にとってもありがたいですから。

 

 

 双方の脱出艇を牽引してポイントβへと到着すると、そこは月面に埋め立てられた建物でした。私達が近付くと地面が開くようにして入口が現れました。そこに入っていくと、地球連邦軍の戦艦が一隻だけ止まっていました。それ以外は多数のゲシュペンストMk-Ⅱやスカイキャリアです。火星のカタフラクトの姿はありません。

 誘導に従ってデューカリオンを止めて外に出ます。ここはすでに空気があるようなので問題ありません。どうせデューカリオンを動かす事が出来るのは私だけなので、奪われてもどうにかなるでしょう。それに火星騎士と連邦軍の人が一緒にいるので大丈夫だと思います。

 

「こんな時だからこそ歓迎する。ようこそムーンクレイドルへ」

「ありがとうございます。貴方は?」

「鞠戸孝一郎。地球連邦軍の大尉をしている。そちらは?」

「オルレインと申します。火星の子爵でございます」

「お偉いさんのようで助かる。悪いが火星側を纏めてくれるか? こっちは連邦軍の方を纏めている」

「かしこまりました」

 

 火星の者達が居る場所に移動し、それぞれ話を聞いてきますが私と特に変わらない現状です。一応、ここには酸素と食料が三ヶ月分、備蓄されているようです。ただ、開発中の施設だったようで何れどちらもなくなるらしいです。

 不安はあれど、皆を纏めてとりあえず休みます。先程まで激しい戦闘をしていたのですから、仕方がありません。しばらくすると鞠戸大尉から呼ばれ、現状についての話し合いを行います。互いに情報を提供しました。

 

「ハイパーゲートの暴走がアインストの仕業って事は納得した。あんた等も巻き込まれているしな。それにここが月しかないって情報は助かった。こっちからの情報はハイパーゲート付近にはアインスト共がうようよいやがるって事だけだ」

「なるほど。ハイパーゲートはアインストに支配されましたか」

「ああ、そうだ。ハイパーゲートならこっから出られる可能性がある。なにより、あそこには酸素と食料の生産施設がある」

「それは大きいですね」

「まあ、アインスト共を突破しないといけないがな」

「だからでございますか。火星も地球も関係なく集めているのは……」

「それもある。だが、一番はこんな事になれば協力しないと生きていけないだろう」

「……そうでございますね」

 

 火星の大地では一部の者を除いて皆が協力しながらでないと生きていけません。ですので、彼の言いたい事は理解できます。

 

「それに民間人も居る。彼等はなんとしてでも助けてやりたい」

「私共には関係のない事でございますね」

「そうだな。だが、そちらも現状では打つ手がない。違うか?」

「そちらの戦力次第です」

「こっちはゲシュペンストMk-Ⅱが23機だ。そちらは?」

「デューカリオンとスカイキャリアが四機のみです」

「アンタの機体は強いか?」

「はい。ですが、アインストの力に勝てるかどうかは保証できかねます」

「だろうな」

「とりあえず、数日考えさせてもらいます。もっと戦力を集められるかもしれませんし」

「わかった。部屋は大部屋になるが、男性と女性で別けてある。そこは安心してくれ」

「はい」

 

 案内された女性部屋に行くと、沢山の人が居ました。ほぼ全員が地球人であり、入ってきた私を睨み付けてきます。私は彼女達を無視して壁の方にあるベッドへ移動し、少し仮眠を取ります。拳銃を握りながら寝れば遅れはとりません。そもそもデューカリオンの力をあてにしているので襲われることはないでしょう。本当はデューカリオンの中で寝たいのですが、酸素の関係でそれも無理です。補充には専用の機械が必要ですので、地球とは規格が違うためにできない可能性がありますからね。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 数日。私はハイパーゲートへ向けて何度か単身でアタックしてみましたが、こちらの兵力ではすぐに跳ね返される事がわかりました。

 

「お姉さん。ご飯ですよ」

「ありがとうございます」

 

 食事を持ってきてくれた彼女は栗色の長髪をした可愛らしい幼い少女。何処かの学校であろう制服を着ています。最初は邪険にしていたのですが、諦めずに話しかけてきました。それも他の人に止められたり疎まれたりしながら、私に構う姿に辛くあたることができなくなりました。

 

「あの、オルレインさん。私達は戻れるんでしょうか……?」

「わかりません。現状では難しいとしか言えないでしょうね」

「そうですか。お母さんやお父さん……それにお兄ちゃんも心配しているだろうな……こんな事なら月にこなければ良かったかも……」

「月面に住んでいないのですか?」

「私、社会科見学に来たんです」

「なるほど」

「これがお兄ちゃんです」

 

 二つ折りになったピンク色の携帯電話を開いて見せてくれた画像は黒色の髪の毛をした少年と腕を組んで写っている姿でした。

 

「お姉さんは大切な人はいますか?」

「ええ居ます。彼は私の婚約者です。もうまもなく結婚する予定です」

「それなら絶対に帰らないといけないですね!」

「はい。その為にも頑張ります」

 

 私もザーツバルムの写真が入ったペンダントを見せながら、互いに話していきます。彼女はだんだんと悲しくなってきたのか、涙が流していきます。ですが、それでもなんでもないかのように元気に振る舞って私を元気づけてくれました。

 ああ、子供を持つというのは良い物なのですね。私も彼との子供が欲しいです。この願いは叶わないかもしれませんが、それでも……

 

「お姉さん?」

「マユ。貴女は兄にもう一度逢いたいですか?」

「うん。逢いたい。大好きなお兄ちゃんとまた一緒にお買い物したり、遊んだりしたい……」

「私もです。んっ」

 

 私は決意を込めて頬を両手で叩きます。

 

「ど、どうしたの?」

「なんでもありません。それよりマユ。ちょっとしばらくの間、膝を貸してくれませんか?」

「うん、いいけど……」

「ありがとうございます」

 

 彼女の膝枕で眠らせてもらいます。彼女が悲鳴を上げるまで。でも、私が起きるまで結局悲鳴も何もあげませんでした。私が起きた後はまともに立てなくなっていたので、ツンツンして悲鳴を上げさせました。

 

「ひ、ひどいよ~」

「ふふ、私は満足しました。それじゃあ、さようならです」

「さようなら? 行ってきますじゃないの?」

「そうですね。行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 

 手を振って見送ってくれた彼女と別れ、洗濯させておいた軍服の上着を羽織ってデューカリオンへと向かいます。既に準備は完了しています。後は私が動くだけ。

 

「覚悟は決まったか?」

「鞠戸大尉。決まりました。作戦を決行します。我々の全戦力を持ってハイパーゲートへ向かいます」

「了解した。俺達が必ず送り届ける。だから頼むぞ」

「はい」

 

 互いに帰れない事はわかっていても、やらなければなりません。ここで座して死を待つなどできるはずはないのですから。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 生き残っているスカイキャリアにデューカリオンを乗せ、それに反転させたスカイキャリアを溶接した無茶苦茶な物で出撃する準備を整えます。すでに鞠戸大尉達が出てアインストへ攻勢を仕掛けました。

 

『子爵、準備はよろしいですか?』

「デューカリオンの準備はできてございます」

『生き残ったら、どうか息子達をよろしく頼みます』

『私は祖父母をお願いします』

「わかりました。必ず火星の民に救いをもたらします。ですから、貴方達の命を私にください」

『『この命、姫様のために捧げましょう』』

「私は姫様ではないですよ。不敬です」

『いえいえ、我等にとっては姫様です』

『違いない』

「まったく……聞かなかったことにします。行きますよ」

『「はっ」』

 

 スカイキャリアが発進し、全力で加速します。すぐに鞠戸大尉達が戦っている場所を超え、ハイパーゲートへと突き進みます。そんな中、アインストから砲撃が行われ、機体が崩壊する限界まで加速したスカイキャリアはタイミングを見計らって砲撃の間にデューカリオンを運びます。

 

『それでは良い旅を』

『因果の交叉路でまた会いましょう』

「はい」

 

 デューカリオンを発進させて少しした直後。スカイキャリア二機が爆発して更に私を加速させます。同時にゲシュペンストMk-Ⅱ達も無茶な突撃をしながらこちらへと援護射撃をしてくれます。

 

「デューカリオン!」

 

 反重力デバイスを操作し、移動しながらアインスト達を浮遊させて弾き飛ばしていきます。これで後続への道もできるので一石二鳥です。そのまま進むと巨大なアインストが現れました。ソイツはハイパーゲートの前に陣取っております。人型の上半身と巨大な爪状の下半身を持ち、体の各所に骨や植物の蔦や血管が絡まったような物が鎧を着ています。

 ソイツに近付くにつれて恐怖が湧き上がり、首に掛けたペンダントを掴みながらザーツバルムやマユの事を思いだして心を奮い立たせます。

 次の瞬間。頭部から光線が放たれました。それを反重力デバイスを操作して作ったバリアで下に下がりながら受けることで軌道を逸らします。更に腹部からも光線が放たれますが、こちらは機体を回転させることでバリア自体を回転させて流してあげます。

 すると光線が効かないと判断したのか、蔦が伸びてきます。それを回避しながら、相手を弾き飛ばします。ですが、巨体である相手にそんな物はできませんでした。また無数の蔦が地面を貫いて根を張っているのでどうしようもありません。ですが、問題はありません。

 

『全機、投擲後攻撃開始!』

 

 鞠戸大尉の声と同時にゲシュペンストMk-Ⅱの破損した機体が投擲され、そこに攻撃がされると大爆発を起こします。これによってアインストの身体に穴ができます。ですが、すぐに再生を始めるのでそこに私が入り、反重力デバイスを操作して押し広げます。

 

『全機、突撃! 体内からぶっ壊せ! 既にベーオウルフが実際に試して成功してやがる! いざとなったら自爆しろ! この一戦に命を燃やせ! 俺達の後ろには守るべき民間人が居るんだ! ひよってんじゃねえぞ!』

『『『おう!』』』

 

 反重力デバイスを操作して彼等が突撃してくると同時に解除。私は離れて彼等を排除しようとする蔦や光線の相手をします。ですが、全てを防げるわけではありません。

 アインストの右腕から巨大な光の球が発生し、それを私に放ってきました。光は重力フィールドごとデューカリオンを拘束し、そのまま握り潰してきます。機体が軋み、足や端っこの部分から崩壊していきます。

 

「こんなところで死んでやるつもりはありません! デューカリオン! 貴方の力を私にください! アルドノァァァァァッ! 

 

 リミッターを解除し、壊す勢いで重力を崩壊させるほど重ねていきます。それでもアインストの押し潰す力はどんどん増えてきます。

 

「まだです。まだでございます! 私はザーツバルムにもう一度っ!」

『だったらここで死ぬな』

「なっ!?」

 

 デューカリオンがゲシュペンストMk-Ⅱに蹴り飛ばされ、私が居た場所にゲシュペンストMk-Ⅱが入りました。潰される直前に自爆装置を発動させたのか、アインストの両手が弾き飛ばされました。更にアインストの体内からも複数の爆発が起きて周りに肉片が撒き散らかされて最後には顔だけになります。

 周りを確認するとゲシュペンストMk-Ⅱのコクピットが近くに転がっているのが見えました。そこからは鞠戸大尉の姿が確認でき、私はすこしホッとしました。

 何故、地球人の心配など……そう思っているとアインストの残った頭部から光線が放たれます。狙いはゲシュペンストMk-Ⅱのコクピットのようだったので、普通なら放置します。ですが、身体が勝手に動いてデューカリオンを射線に移動させていました。光線を受けたデューカリオンは限界を超えて行使していた反重力デバイスとアルドノア・ドライブが限界がきて爆発します。私も脱出装置を使うと爆発と合わせてハイパーゲートへと激突。その衝撃でコクピットが壊れて破片が脇腹へと突き刺さりました。

 ですが、生きているので救急セットで破片を周りごと固めて止血をして、外に出ます。そこはすでにハイパーゲートの中でした。

 そのまま身体中から止めきれない血を流しながら管制室へと進んでいきます。視界が霞んで、どんどん寒くなっていきますが、ここで止まるわけにはいきません。それでも限界がきて床へと倒れ──

 

「まだ死ぬな。俺はこの施設を操作できないからな。お前が頼みなんだ」

「まだ、死ねないのでございます……」

「そうだ。まだだ。俺達はまだ任務を完遂していねえ! だから死ぬな!」

「……地球人に言われるとは……ですが、その通りでございますね。諦めてなるものですか!」

「その意気だ」

 

 ──地球人の同じく傷だらけで血を流している鞠戸大尉に肩を支えられて進んでいきます。管制室に到着すると、モニターの前に座りながら機械を操作している少女の姿が見えました。その少女はこちらに気付いたのか、くるりと座っている椅子を回転させて振り返ります。

 

「おや、まさかレジセイアを超えてくるとは素晴らしい」

 

 その少女は地球の民族衣装に身を包んだ小麦色の肌をした黒い髪の十代の少女は金色の瞳で私達を見詰めながら、手に持ったりんご飴をしゃくりと食べます。

 

「アインスト・ネメシス……」

「なんでこんなところにいやがる!」

「なんでも何も、君達が私の領域に乗り込んできたのではないか」

「なに?」

「この亜空間は私による、私の為だけの空間だ。まあ、地面がないのは流石に困ったので月を頂いた。ああ、安心してくれ。別の月を用意してちゃんと入れ替えておいた。だから地球にはなんの影響もない」

「ここがアインストの本拠地ですか?」

「違う。ここは私がお母様から頂いた場所だ。君達が倒してきたレジセイアだったか、アレがダース単位でうようよしている場所が本拠地だね」

「マジかよ……」

 

 自爆すら厭わず、アルドノア・ドライブを使い潰してようやく倒せたあのアインストがダース単位でうようよいるとか、どんな地獄でございますか! 

 

「ところで君達はそんな重症を負ってまで何をしにきたんだ?」

「何をって決まってるだろう!」

「私達は自分達の星に帰るために……」

「ああ、それならもう少しで演算が終了する。後、五時間くらいか。生きている人間を地球に転移させられるよ」

 

 いま、コイツはなんて言いました? 

 

「おい、待て! 俺達を地球に転移させると言ったのか?」

「ああ、そうだ。この空間は先にも言った通り、私の空間だ。私は自分のパーソナルスペースに有象無象が居るのは嫌だ。これからここを開発していく予定なんだ。予定外の客にはお帰り願うのが当然だろう?」

「……それってつまり、私達がここに来たのは……」

「ああ、全くの無意味だね。だからこそ、わざわざアインスト達に全力でここを警備させて近づけさせないようにしていたのだが、なんできたんだ」

「聞いてねえからだよぉぉぉぉぉぉっ!」

「いやいや、普通に考えて突破できる特級の戦力などないだろう。君達は奇跡でも起こさない限り、ここには……待て。おい、貴様はオルレインだよな? デューカリオンのパイロットの」

「……そう、ですが……」

「デューカリオンはどうした? まさか壊したなんて……」

「残骸になって転がっております」

なんてことしてくれてんだ!

「お前のせいだよ!」

「ええ、ええ。そもそもデューカリオンは私の物でございます」

「クソっ。まあいい。アルドノア・ドライブさえ無事ならシステムの構築ぐらいどうとでも……」

「それは……」

「待て。黙っておけ。これ以上機嫌を損ねたらまずい」

「確かにそうでございますね」

 

 アインスト・ネメシスはりんご飴をガリガリと食べながら片手でキーボードを操作していきます。もう片方の手で髪の毛を掻きむしりながら聞き捨てならない言葉を吐きました。

 

「揚陸城の確保は成功したのに自分達は失敗した。アルギュレ、ニロケラス、ヘラスも奪われた。クソっ、デューカリオンが狙い目だったんだが……他のアルドノア・ドライブ、落ちてないか? 後で調べないといけないな。ああ、もう面倒だし、アインストの補充も考えないと……お母様から貰うのは流石に不味い。どうすれば……」

 

 そうして、俯いた彼女はこちらを見詰めてニヤリとしました。いえ、そんなことよりもアルギュレ、ニロケラス、ヘラスが奪われた? 揚陸城の確保が成功した? あり得ません。そんな事……いえ、アルギュレ、ニロケラス、ヘラスはまだ可能性がありますが、揚陸城は脱出装置まであるはず……いえ、ヘラスはフェミーアン伯爵が乗っていたはず。そうなると彼女が乗ってきた揚陸城は月面に放置されたままになるはずです。もしやそれですか? 

 

「よっと」

 

 ネメシスが私達の方へやってきて、周りをくるくると移動します。私達は彼女が死角にならないように見るしかありません。

 

「ふむ。お前、オルレインだったか」

「なん、ですか?」

「もうすぐ死ぬな。その出血量では持たん。痛み無く殺してやろうか?」

「結構、です」

「そうか。まあ、好きに過ごすがいい。私は生きた人間を返すための演算に戻る。邪魔をしないでいるなら、好きに過ごせ」

「聞きたい事があるが、いいか?」

「ん? まあ、別に作業の邪魔さえしなければいい」

「何故俺達を返してくれるんだ?」

「言っただろう。私は人類が生み出す文化が、アニメや漫画、ゲーム、食べ物が好きだ。だから出来る限り人類を生かす。今回の月はペナルティだとでも思え。それにこのまま戦っていればハイパーゲートは確実に暴走し、月を破壊した。そうなれば地球に居る生命体の半数は絶滅する事が確実だ。そうならないためにハイパーゲートごと月を私が管理し、代わりの月を用意した。お前達が戦争を始めなければそのままだったのだが、わざわざ警告までしてやったのに愚か者が多いようだ」

 

 人類の味方ではあるようですが、全てのというわけではないのですね。おそらく気に入った者は助ける。そういった類の存在でしょう。民にとっては危険極まりないようでございます。

 

「火星もまあ、人類だ。まだ私が守るべき範囲に収まってはいる。だが、異星人共は違う。数年もしない内に襲い掛かってくるぞ。しっかりと戻ったら伝えておくんだな。お前達は気付いていないようだが、この世界は間違いなく地獄だぞ」

「そうか。伝えておくよ」

「うむ」

 

 彼女はキーボードの操作に集中しだしたので、私は鞠戸大尉に向かってお願いをする。

 

「鞠戸大尉。もしもザーツバルムに遭う機会があればこれを渡してください」

「縁起でもない……いや、そうだな。わかった。だが、信じてもらえるか……」

「それなら、これを使え。ビデオメッセージという奴だ。これなら遺言を残せるだろう。後悔をしないようにな」

「ありがとうございます」

「なに代金はデューカリオンを貰う事で相殺する。気にするな」

 

 私は受け取った機材を使ってザーツバルムに最後の言葉を残します。

 

「貴女と結婚し、幸せな家庭を築きたかったですが、それはもう無理なようです。ですから、どうか私の事は忘れて幸せになってください。私は貴方の事をずっと……見守って……」

 

 だんだんと身体から力が抜け落ちていき、目がもう見えなくなっていきます。それでも、最後に一言だけ──

 

「愛しています……ザーツバルム……や……ぱり……最後……もう一度……あい……それ、に……こ……」

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

「クソったれが!」

「死んだか」

「っ!?」

「どうした? 火星騎士が、憎い怨敵が死んだだけであろう。それよりもほれ。お前はこの機材を持ち帰って皆に説明してこい。それとこやつのようにビデオメッセージを撮って間に合わぬ者達の遺言を残してやるがよい。私が返すのはあくまでも生きている者だけだ。死んだ者はここに残る」

「わかった」

「それとお前はしばし軍から離れて教官などをするのもいいかもしれんな。優しすぎるぞ」

「忠告感謝する」

「うむ」

 

 さて、行ったか。ああ、それにしても本当に余計な事をしてくれた。レジセイアまで殺してくれよってからに。これで残るは一体のみ。せめてデューカリオンを壊して欲しくなかった。大人しくしておれば無事に帰れたものを……まあ良い。損失は貴様自身で埋めてもらうぞ、オルレイン。

 

「なに、お前の願いも叶えてやる。その為に貴様がやることは一つ。我が敵を全身全霊で撃て。そしてザーツバルムを殺せ。さすれば貴様等は永遠に共に居られるだろう」

 

 生み出した種子をペロリと舐めてから服を破き捨てて胸に種子を刺し込む。とりあえず、ナノマシンとゼロシステム。他に何を入れようか。

 

「ん? これは……アハハハハハ! そうか、そうか! ああ、そうなのか! ああ、ああ、確かに可能性はある。あるとも! いいさ、いいぞ! 見つからぬはずだ。うむうむ。ああ、これは最高だ。リンさんを殺した貴様等火星人共の罪を許そう。主人公には主人公で相殺するのが普通だな。楽しい改造タイムとまいろうか。ベースは人のままでとりあえず、アイオーンの瞳でも作って叩き込もう。後は腕や足は戦闘用を考えて仕込み刀や銃器を内蔵させるべきか。いや、トランス兵器で問題ない」

 

 ハイパーゲートに培養槽はないが、機材は持ち込んでいる。早速作り出そう。脳が壊死するまでなら間に合うのだから。楽しい楽しい始まりだ。ああ、アルドノア・ドライブを小型化して入れるのもいいかもしれない。デューカリオンのがここにあるのだし……って、ぶっ壊れてやがる! まあ、いいか。これなら丁度いいのでなんとできるはず……ですの。

 

 

 

 

 

 

 




全ては無駄足だった。アインストが完全な敵であるのならば意味がある戦いではありましたが、アルフィミィは味方ですから、普通に帰してあげます。でも、レジセイアやられたのでちょっと怒(おこ)。デューカリオンをぶっ壊れているので更に怒(おこ)。別の発見で機嫌回復。

次は時系列を戻してアルフィミィが最初から機嫌が悪い理由です。まあ、簡単な事ですけどね。


素体・オルレインを入手しました。魔改造を開始します。オルレインは……
デューカリオンは破壊されました。アルドノア・ドライブも破損しており、再起不能です。
鞠戸大尉がオルレイン達よりビデオメッセージを託されました。
レジセイアが撃破されました。残り一体です。
アルフィミィが???と???を見つけました。暗躍を開始します。
月の開発計画が発動しました。レジセイアが撃破されたため、遅延します。

後書きの設定を使うか使わないか。使わないならアルフィミィの部分を普通のアインストに差し替え

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