ただひたすらにデュエる!   作:タカアシガニ

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二話

「起立。気をつけ、礼」

 

 日直の挨拶に従い、挨拶。それが終わって担任教師が教室を出て行った瞬間、シュートは鞄を担いでマモルの席へ向かった。

 

「ショップ行こうぜ、マモル!」

 

「落ち着いて。カードは逃げないから」

 

 昼休みに負けたシュートは新しいカードを求めてカードショップに行くことにしたのだ。無論マモルと一緒に、である。

 

「今月、お小遣い厳しいんじゃなかったの?」

 

「いんや、ばーちゃんからの臨時収入があった」

 

「いくら?」

 

「5000円」

 

 ドヤ顔で『5』と指を広げて見せる。マモルは苦虫を噛み潰したような顔だ。

 

「くっ、またか! シュートのばーちゃん甘やかしすぎじゃない!?」

 

「可愛い孫なんでね。あっははは!」

 

 マモルのお小遣いの金額は毎月固定、臨時収入などない。しかしシュートは祖母などからたまにもらえるので互いの軍資金に差が出ていた。

 顔も知らない人物に向かって嘆くマモルをゲラゲラ笑うシュート。いつも通りである。

 

「ひぃー、苦しい。ほら、さっさと行こうぜ」

 

「わかったって」

 

 シュートに急かされながら、マモルは鞄に荷物を詰めていく。デッキの入ったストレージ、サイドデッキ用のケース、丸められたプレイマット、カウンターとして使っているバトスピのコアを入れた箱。デュエリストの荷物は多いのだ。

 ちなみに、教科書などは全て机とロッカーに収納されている。こういうところは二人共通だ。

 

「よし、準備できた」

 

「よっしゃ行くぞ!」

 

 マモルの呟きにノータイムで走り出すシュート。予備動作が一切なかったのはデュエルマッスル故か。

 

「あっ、コラ! 廊下を走るなー!」

 

「へーい!」

 

 すれ違った教師に注意を受けながらも、二人は足を緩めなかった。

 

 

 彼らが向かったのは駅前にあるカードショップ。中古本やゲーム、プラモデルなども扱っているチェーン店だ。

 

「じゃ、三十分くらい見るか?」

 

「そうだね」

 

 二人は分かれ、シュートはショーケースの、マモルはストレージのカードを見る。マモルは手持ち金額が少ないため普段からこうだ。お互い、相手に合うカードがあれば声はかけるが。

 

「えーっと、よし、あるな」

 

 シュートはまず目的のカードがあることを確かめ、店員を呼んで購入。それから、またショーケースに戻ってカードを眺める。まず買うのは、他の客が来て取られたらヤだからだ。

 

 マモルは一枚百円の高いストレージを確認し、それからもっと安いカードを漁る。最新段のカードは値段が定まらずストレージに落ちていることがあるため、要チェックだ。

 

 十分も経たずにショーケースをあらかた見てしまったシュートは、マモルがカードを探している間暇になる。そして残った金額を確認し、一箱十五パックのカードパックを箱買い、開封。発想が金持ちのソレである。

 

 それから、二十分後。

 

「よーしデッキ完成だ。いや、デッキた! とか言った方がいいのか?」

 

「なにそれ。別に面白くないよ?」

 

 漫画や雑誌はカード目当てで読まないマモルである。これがネタの壁か、とシュートはorzした。

 

「まあいいや。リベンジしたいし、カジュアル・シングルな」

 

「じゃあ僕は【蟲惑魔】以外を使おうっと」

 

「なんだよ、つまんねぇな」

 

 人のいないデュエルスペースの椅子に腰掛け、プレイマットを敷く。シュートは白いスリーブのデッキ、マモルはFateのジャンヌ・ダルクのスリーブだ。

 

「うお、分厚っ! 60枚かよ」

 

 三重スリーブということもあって手に収まらないそれを、二つに分けてシャッフルする。マモルは素知らぬ顔だ。

 

「太陽か月か?」

 

「太陽に決まってんだろ」

 

 スマホ画面のコインが示したのは太陽(オモテ)。シュートは迷わず後攻を選ぶと、口元に笑みを作った。

 

「いくぜ、「デュエル!」」

 

 マモルは昼休み同様、手札を見るなり不敵な笑みを浮かべる。

 

「完璧な手札だ」

 

 そして一枚を手に取り、魔法・罠ゾーンに置く。

 

「【隣の芝刈り】発動! シュート、デッキ枚数は?」

 

「うっわ後攻でよかったー! 40枚だから残り35だ」

 

 よって20枚のカードが墓地へ送られる。こんな時アニメキャラ達ならば一度に20枚引けるのだろうが、現実ではそうはいかない。一枚ずつ、カウントしながら墓地へ送っていく。

 

「・・・・・・18、19、20! 墓地での誘発効果はないよ」

 

「あ~、【クリボー】デッキかよ面倒くせぇ」

 

 墓地に置かれたのは【クリボー】や【クリアクリボー】【クリボーン】といった【クリボー】の名称を持つモンスター達。他にも墓地発動の魔法・罠があった。【クリボン】や【クリボルト】もいたのはマモルの好みによるところだろう。

 

「じゃ【クリバンデット】を召喚、カードを二枚伏せてターンエンドかな。

 エンドフェイズに【クリバンデット】の効果が発動して、デッキの上から五枚を墓地に。その中から【ジェネレーション・ネクスト】を手札に加えるよ」

 

 

マモル

LP8000 手札2

■□□□■

□□□□□

 □ □

□□□□□

□□□□□

シュート

LP8000 手札5

 

「んじゃオレのターン、っと」

 

 引いたカードを見るなり彼は口をひん曲げて笑う。彼の強運はまたしても発揮されたらしい。

 

「【ライトニング・ストーム】! 伏せカードを破壊だぜ」

 

「チェーンして【リビングデットの呼び声】発動! 【ハネクリボー】を特殊召喚するよ」

 

 裁定の変更により特殊召喚された際の効果は発動できなくなったが、【ハネクリボー】や【グレイドル】のように破壊された時の効果であれば問題なく発動できる。

 

「これで僕はこのターン無敵!」

 

「んじゃあ【エクゾディア】揃えるか!」

 

「YA☆ME☆TE!?」

 

 ドヤ顔で眼鏡クイッしたマモルの余裕は、シュートの冗談一つで悲鳴と共に瓦解した。なまじ運の良い彼ならば本当にやりかねない。マモルは過去に【封印されしエクゾディア】によるスタートキルを味わっているので、過剰反応してしまうのも仕方ないだろう。

 

「あっははは! 【エクゾディア】なんざ入ってねぇよ、アレで勝ってもつまんねぇし」

 

 彼はいつもの甲高い笑いをしてから、残った手札でどう展開するかを考える。

 

「つっても、ダメージ入らねンだよなぁ。取り敢えず【Sin(シン) Territory(テリトリー)】発動! 発動時の効果処理としてデッキから【Sin(シン) World(ワールド)】を発動するぜ」

 

「出たよインチキ永続魔法・・・・・・」

 

 シュートが使ったカードに、マモルは眉間に皺を寄せて軽く嫌悪を示す。【Sin】モンスターのデメリットをほとんど『なかったことに(我が書き換えたのだ)する』最近のカードらしいテーマ強化だ。それもシュートは高確率で初手に握っているのである。

 

「んじゃ、デッキの【青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)】を除外して【Sin(シン)青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)】を特殊召喚するぜ。

 それと【エフェクト・ヴェーラー】を通常召喚してシンクロ、【青眼の精霊龍(ブルーアイズ・スピリット・ドラゴン)】をシンクロ召喚だ」

 

 墓地効果ばかりのデッキにはあまり刺さらないだろう、と【エフェクト・ヴェーラー】をシンクロ素材に白い龍がフィールド中央の守備表示で置かれる。真ん中に置くのはシュートのこだわりだ。

 

「また【青眼】? 好きなの、ソイツら」

 

「いんや別に。ただコイツ、【Sinパラドクス・ドラゴン】で蘇生しやすいんだよ。後【青眼】ってテーマ自体使いやすいからな」

 

 自らをリリースする効果を持つ【青眼の精霊龍】は、能動的に墓地に行けるシンクロモンスターとして重宝しているのだ。効果も十分強いのでシュートはデッキに入れている。

 

「じゃ、カード伏せてターンエンドだ」

 

 

マモル

LP8000 手札2

□□□□□

□□□□□

 □ □

□□精□□W

□□□T■

シュート

LP8000 手札2

精:青眼の精霊龍

W:Sin World

T:Sin Territory

 

 

 英語だらけのシュートのフィールドに『海外版でもバレないのでは』といらないことを考えながらマモルはカードを引く。悪くないが、良くもない。簡単に言うとこの状況では使えないカードだった。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

 シュートと比べて短いな、とマモルは心の中で呟く。

 

「おっ、もう終わりか? カウンターデッキか、ソレ。

 オレのターン、ドローの代わりに【Sin World】の効果でデッキから【Sin】カードを三枚選択、相手にランダムに選ばせて、そのカードを手札に加えるぜ」

 

 選ばれたのは三枚に【Sinパラドクスギア】。遊戯王ではよくあることだ。

 謎のカードを手札に加えたシュートは少しでも墓地発動効果を使わせるべく、シュートは展開することにした。

 

「まず精霊龍(スピリット)の効果でリリース、エクストラから【閃珖竜スターダスト】を特殊召喚するぜ」

 

「漫画版まで入ってんの・・・・・・」

 

 これが資金力の差か、とマモルは顔をしかめた。今に始まったことでもないのでそれも一瞬だったが。

 

「ま、相性いいからな。【Sinパラドクスギア】を通常召喚、効果でリリースしてデッキから【Sinパラレルギア】を特殊召喚して【Sinスターダスト・ドラゴン】を手札に加えるぜ。

 パラレルギアの効果で手札のSinスターダストとシンクロ召喚、【Sinパラドクス・ドラゴン】!」

 

「『Sin』だの『シン』クロだの、『シン』多いなぁ!」

 

 右のエクストラモンスターゾーンの下にいる閃珖竜の隣にパラドクス・ドラゴンが召喚される。夢の共演だ。

 

「パラドクスの効果で墓地の【青眼の精霊竜】を特殊召喚。ま、こんなもんだろ。バトルに入るぜ」

 

「バトルフェイズ開始時まで何もないよ」

 

 何かあるか、とシュートが視線で訊くよりも早くマモルが答える。アイコンタクトもせず意思疎通とは、もしやニュータイプかとシュートは疑ったが、単純に重ねた年月が長いだけだ。

 

「ゴーズ警戒よって精霊龍から攻撃ィ!」

 

「直接攻撃宣言時、【クリアクリボー】の効果発動。自身を除外して一枚ドロー、それがモンスターなら特殊召喚してバトルさせる」

 

 さてどんなモンスターかな、とマモルはデッキからカードを引く。

 

「・・・・・・【絶望神アンチホープ】」

 

 『少年よ、これが絶望だ』。そんな声が聞こえた気がした。無論幻聴である。

 

「あっははは! ならそのままバトル続行になるな!」

 

「えぇい、ライフで受ける!」

 

マモル LP8000→5500

 

 本来ならば堅牢な守りからの迎撃で戦うはずのデッキなのだが、まさかのダメージを受けてしまった。これが運の差か、とマモルは再び肩を落とす。

 

「次、【閃珖竜スターダスト】!」

 

「それには【バトルフェーダー】と墓地の【クリボーン】の効果をチェーンして発動するよ。【クリボーン】の効果で墓地の【クリボー】【サクリボー】【ジャンクリボー】【ハネクリボー】を特殊召喚する。

 それと【バトルフェーダー】の効果で自身を特殊召喚してバトルフェイズを強制終了!」

 

 これでマモルのフィールドにはモンスターが五体並んだ。よしここから反撃だ、と意気込むが、シュートはいやいやと手を振って否定する。

 

「精霊龍の効果で同時に特殊召喚できねぇから。その【クリボー】ズも一体しか出せないぜ」

 

「うっそん!? じゃ、じゃあ【クリボー】で・・・・・・」

 

「あっはは! スターダストの効果で自身を守って、ターンエンドだぜ」

 

 チーン、と一人お通夜ムードに浸りながら机に顔を伏せるマモル。シュートはその様子を見て笑いながらターンを終えた。うっかり精霊龍の効果を二つとも忘れていたのも、この状態なら悟られなさそうだ。

 

「僕のターン・・・・・・あラッキー【ミニマムガッツ】。【バトルフェーダー】をリリースして、そこの(にっく)き精霊龍の攻撃力を0にする!」

 

「憎しみは何も生まないぜマモル内君!?」

 

 シュート渾身のギャグは原作を読んでいないマモルには通じず、ただ首を傾げられた。ネタの壁は深いようだ。

 

「【増殖】を発動! 【クリボー】をコストに【クリボートークン】を可能な限り特殊召喚するよ」

 

 デッキケースから別のデッキのカードを取り出し、トークン代わりに使うマモル。これもまた、遊戯王ではよくあることだ。トークンカードも高価なのである。

 

「何匹集まろうと、所詮クリボーはクリボー!」

 

「うん、まあリンク素材にするから問題ないよ」

 

 髪を頑張って逆立てながら再び発したシュートのギャグは、デュエルに集中しているマモルに流される。相手ターンは暇なのだ。

 

「トークン一体で【リンクリボー】をリンク召喚。更にトークンとリンクリボーで【クロシープ】をリンク。続けてトークン二体で【リンクスパイダー】と二体目の【リンクリボー】。三体で【ヴァレルロード・ドラゴン】!」

 

 連続して行われるリンク召喚。とてもインフレを感じる光景だ。こうしてみると最初期のカードである【増殖】も中々バカにならない。

 

「バトル、ヴァレルロードでパラドクスに攻撃、効果発動!」

 

「甘いぜマモル、トラップ発動【スキルドレイン】だ。それと一応スターダストの効果を【Sin Territory】に使っとくぜ」

 

シュート LP8000→7000

 

マモル LP5500→4500

 

 これによりフィールド全てのモンスター効果が無効となり、ヴァレルロードはただ自爆特攻しただけのアホドラゴンになってしまった。

 

「クッソどうしてコイツはいつもこう運がいいんだ・・・・・・」

 

「運も実力の内って言うだろ? あっははは!」

 

 ぐぬぬと歯噛みしながら最後のトークンを【リンクリボー】の効果のコストにし、自身を特殊召喚する。

 

「リンクリボーで精霊龍を攻撃!」

 

「クッソやられるぜ・・・・・・」

 

シュート LP7000→6700

 

 【青眼の精霊龍】のリリースして発動する効果はシンクロ召喚した状態でないと発動できない。そのため、この攻撃は甘んじて受けるしかなかった。

 

「ぃよっしゃ【ミニマムガッツ】の効果発動! 2500ポイントのダメージを受けな!」

 

「おぉ痛い痛い」

 

 シュートはギャグが駄目ならと顔芸と共に液晶を操作しライフを減らす。そこは青眼的に社長のモノマネの方がよかったのでは。

 

シュート LP6700→4200

 

「これでターンエンドかな」

 

 

マモル

LP4500 手札1

■□□□□

□□リ□□

 □ □

□□パ閃□W

□□□Tス

シュート

LP4200 手札2

パ:Sinパラドクス・ドラゴン

閃:閃珖竜スターダスト

リ:リンクリボー

W:Sin World

T:Sin Territory

ス:スキルドレイン

 

 

「あの手札アンチホープだろ? なら問題ねぇな、【Sin World】の効果でまた三枚選ぶぜ」

 

 【Sin(シン) Selector(セレクター)】【Sin Selector】【Sin Selector】の三枚が提示され、マモルは「う~んどれがいいかな~」と乾いた声で言った。どれも同じである。

 

「んじゃあ【Sin Selector】発動。墓地の【Sinパラレルギア】【Sinスターダスト・ドラゴン】を除外して、デッキから【Sinレインボー・ドラゴン】と【Sinパラドクスギア】を手札に加えるぜ」

 

「インチキ効果も大概にしろ!]

 

 サーチカードをサーチし、一枚が二枚に。現代遊戯王である。

 

「パラドクスギアを召喚、効果でリリースしてデッキからパラレルギアを特殊召喚して【Sin青眼の白龍】を手札に加える。

 パラレルギアの効果で手札のSin青眼とシンクロ、二体目の【Sinパラドクス・ドラゴン】!」

 

 【スキルドレイン】適用下なので効果はないが、攻撃力4000は強力である。

 

「んで、デッキの【究極宝玉神レインボー・ドラゴン】を除外して【Sinレインボー・ドラゴン】を特殊召喚するぜ」

 

 盤面を埋め尽くさんとばかりに並べられるモンスター達。三体は攻撃力4000である。戦いは数、とはこういうことか。

 

「バトル、いっけースターダスト!」

 

「【リンクリボー】の効果で自身をリリース、攻撃力を0にするよ」

 

 【Sinパラドクスギア】やこのカードのように自身をリリースして発動する効果は墓地で適用されるため、【スキルドレイン】の影響を受けないのだ。コンマイ語って難しい。

 

「なら次、パラドクスでダイレクトアタック!」

 

「墓地の【クリボーン】の効果発動! 今度こそ五体特殊召喚させてもらうよ」

 

 マモルの【クリボー】【サクリボー】【ジャンクリボー】【ハネクリボー】【リンクリボー】が特殊召喚される。【リンクリボー】のみ縦向き、他は守備表示だ。

 

「ならリンクリボーに攻撃対象を変更するぜ」

 

「当然リンクリボーの効果発動。攻撃力を0にする!」

 

「ゼロゼロゼロゼロ、テメェは赤羽社長か!」

 

 シュートは漫画版のことを言ったのだが、アニメしか見ていない、しかも途中で視聴をやめたマモルは首を傾げた。使うネタを間違えた、とシュートはガックリ肩を落とす。

 

「まあいいや、二体目のパラドクスでハネクリボーを攻撃。Sinレインボーでサクリボーを攻撃だ」

 

「受けるしかないね」

 

 手札のカードが【絶望神アンチホープ】であることはわかっているのだ。モンスターを減らしておくに超したことはない。

 

「このままターンエンドだな」

 

 

マモル

LP4500 手札1

■□□□□

□ジク□□

 □ □

□パパ閃レW

□□□Tス

シュート

LP4200 手札2

ク:クリボー

ジ:ジャンクリボー

パ:Sinパラドクス・ドラゴン

閃:閃珖竜スターダスト

レ:Sinレインボー・ドラゴン

■:伏せカード

W:Sin World

T:Sin Territory

ス:スキルドレイン

 

 

 マモルのターン。もう墓地効果はほぼ使い切ったため、このターンで出来れば反撃したいのだが。

 

「ドロー、よっしゃ【クリボール】を通常召喚! 伏せてあった【ジェネレーション・ネクスト】の効果発動、お互いのライフ差以下の攻撃力の【クリボー】、つまり300である【EMクリボーダー】を特殊召喚!」

 

「別に【クリボー】限定じゃねぇよな? 【HERO】と【(ネオスペーシアン)】もだよな?」

 

 完全にのけ者にされた2テーマを憂うシュート。しかしそんなことはどうでもよく、フィールドにレベル1モンスターが四体並んだことの方が重要だ。

 

「モンスター四体をリリース、カモン【絶望神アンチホープ】!」

 

 フィールド中央に現れるは対戦相手どころかプレイヤーを絶望に陥れた神、アンチホープ。Vジャンプの付録になった時の全国のデュエリストの顔芸(絶望)は記憶に古い。だって五年前だもの。

 

「バトル! アンチホープでパラドクスに攻撃! ゴットハンド・クラッシャー!」

 

「オベリスクに謝れお前!?」

 

 ノリノリで両腕を振り下ろすマモルにシュートはツッコミを入れてからパラドクス・ドラゴンを墓地へ。ついれにスマホをいじりライフ計算。

 

シュート LP4200→3200

 

 効果が無効になっても攻撃力は5000。十分デカい。

 

「ふっふーん、ターンエンド」

 

 有利になったマモルは鼻を鳴らしながらターンを終えた。

 

 

マモル

LP4500 手札0

□□□□□

□□絶□□

 □ □

□パ□閃レW

□□□Tス

シュート

LP3200 手札2

絶:絶望神アンチホープ

パ:Sinパラドクス・ドラゴン

閃:閃珖竜スターダスト

レ:Sinレインボー・ドラゴン

W:Sin World

T:Sin Territory

ス:スキルドレイン

 

 

(うっわアンチホープ打点(攻撃力)5000もあったのかよ。4000だと思ってたわ・・・・・・)

 

 ネタカードだと若干舐めていたシュート。今明かされる驚愕の真実に顔芸(驚愕)を隠せない。言い表すならば、右目を見開き左目を細める夜行スタイルだ。

 

「オレのターン、【Sin World】の効果は使わずにドロー、ってよっしゃ【サンダーボルト】!」

 

「お前、くっそお前ェ!」

 

 しかし、またここでシュートの強運が発動してしまった。確定でドローするよりも普通に引いた方が強いのである。どういうことだ、まるで意味がわからんぞ。

 

「あっははははははは! バトル、全員でダイレクトアタック!」

 

「ぐっ、防ぎきれないし!?」

 

 マモルの墓地には【ブレイクスルー・スキル】や【幻影騎士団(ファントムナイツ)シャドー・ベイル】などがあったが、前者は使う機会がなく、後者は一枚のみ。そのままアボンである。

 

マモル LP4500→500→0

 

「いよっしゃ勝ちぃ!」

 

「あぁーもぅヤダコイツ! どんだけ運良いのさ!」

 

 机を叩き(台パンし)ながらわめくマモルに、シュートはカラカラと笑う。ようやく勝てて上機嫌だ。

 

「もう一回、今度はマッチで!」

 

「えぇー、次は『04(ゼロヨン)』とか『ガチ』とかにしようぜ? カジュアルばっかじゃつまんねぇよ」

 

 言いながらシュートは別のデッキを取り出す。2004年の環境デッキを再現した、【04環境】と呼ばれるアレだ。このデッキでのミラーマッチも、彼らは何度かやっている。

 

「それじゃあ『禁止なし』は? さっきストレージに【天使の施し】があったんだよね」

 

「うおマジか! いやでも駄目だ、【エクゾディア】でじゃんけんゲー(先攻とったら勝ち)になる」

 

 人の増え始めた店内で、やいのやいのと騒がしくしながら次の対戦方式を決める。そして勝ったり負けたり引き分けたりを繰り返しながら、彼らは日が暮れるまで遊ぶのだった。

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