ただひたすらにデュエる!   作:タカアシガニ

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三話

 休日。それは学生や社会人達にとっての安息の日である。心身を休め、休み明けの平日に備えるための休息日。

 

「というワケで、デュエルだマモル」

 

「何が『というワケ』なのかはわからないけど、デュエルなら受けて立つよ」

 

 デッキをシャッフルしながらのシュートの発言に、マモルは内心で嘆息しながら答えた。

 この日、マモルはシュートの家に来ていた。折角の休みの日なのだ、デュエルしなくては勿体ない。平日でも散々デュエっている気がするが、そこは別腹というヤツだ。

 

「アンタねぇ、そんなカードゲームばっかで、宿題は進んでるの?」

 

「この後やるから大丈夫だぜ母ちゃん!」

 

 息子と同じく金に染めた髪の母に、シュートは親指を上げてニカッと笑う。どうせ僕の写すんだろうな、とマモルは予感した。

 

「で、ルールはどうするの? 久しぶりに【04(ゼロヨン)】でもやる?」

 

 【04】とは、2004年環境のカード、テキストで行うミラーマッチルールのことだ。今では禁止となっているカードが使えたり、先攻ドローがあったりと、このルールならではの面白さがある。

 

「いんや、今日はちょっと面白いモノを用意してきたぜ」

 

 と、シュートが取り出したのはシャッフルしていたものとは別の二つのデッキ。じゃあ何でシャッフルしていたんだとなるが、単に手持ち無沙汰だったのだろう。筐体を使ったオンラインカードゲームの大会で、カードを持ち込んでシャッフルする人がいるのと同じ理屈だ。

 

 シュートは二つのうち片方のデッキをマモルへ渡し、軽く説明する。

 

「コイツは2017年のストラクチャーデッキを再現したデッキだ。

 今日はコレを使ってミラーマッチでもやろうと思ってな」

 

 渡されたデッキの中身は、確かにSTARTER(スターター) DECK(デッキ)の2017年版だ。【リンクスレイヤー】や【ドラコネット】といったサイバース族モンスターと、汎用性の高いカードを使った、かなり完成度の高いデッキ。中身を軽く確認していると、一枚だけカードの入っていないスリーブがある。

 

「でもま、それだけじゃ普通だしな。お互い、一枚だけ自分のカードを入れられるってルールだ。

 メインでもエクストラでも、好きなカードを入れて良い」

 

 あ、禁止カードとか二枚目の【死者蘇生】とかは無しな、と告げるシュートに、マモルは頷いた。

 

「ルールは? 最新のでいいの?」

 

「おう、エクストラにエクシーズモンスター入れた場合は、メインモンスターゾーンにそのまま出してOK(オーケー)だぜ」

 

 なるほど、とマモルは頷いて、口端(くちは)を上げる。シュートにしては面白いルールだ。前に「オブライエンの真似!」とか言いながらデュエルディスクを改造してカードを射出できるようにしたり、「クロウの真似!」とか言って高所から【BF(ブラックフェザー)-疾風のゲイル】を投擲していた男と同一人物とは思えない。何をやってるんだろうかこの男は。

 

「良いけど、五分くらい時間をくれない? どのカード入れるか考えるから」

 

「いいぜ。その間オレは今月のVジャンプでも読んでるから」

 

 シュートは棚に置かれていた雑誌を手に取り、読み始める。同じ物があと二つ置いてあるが、付録カード目当てで買ったのだろう。金持ちめ、とマモルは口の中でごちた。

 

 五分ほど経って、マモルは41枚になったデッキをシャッフルし出す。

 

「シュート、こっちは用意出来たよ」

 

「ちょい待ち、今良いところなんだ」

 

 シュートの返答に軽く嘆息し、マモルは手持ち無沙汰にシャッフルする。それから更に三分後、シュートは己のデッキを手に取った。

 

「待たせたな! ふぅん、このオレが相手をしてやろう」

 

「社長の真似? そういえば、お前最新のデュエルディスク買ったんだっけ・・・・・・金持ちめ」

 

 マモルが毒づいたのを気にもせず「フハハハハハハハ!」とシュートは笑う。この程度、いつもの軽口だ。

 

「それじゃ、太陽(オモテ)(ウラ)か?」

 

「当然正位置ぃ!」

 

 例の顔真似をしながらシュートがスマホの液晶を押すと、コインの結果は(ウラ)。「なにぃぃ! 逆位置だとぉぉ!?」というセリフを軽く流して、マモルは先攻を宣言する。

 

「いくよ、「デュエル!」」

 

 マモルは引いた五枚の手札に、薄く笑ってみせる。

 

「完璧な手札だ」

 

「・・・・・・このデッキでの『完璧な手札』って何だろうな?」

 

「・・・・・・さぁ?」

 

 完璧じゃねぇじゃねぇか、というセリフを無視し、マモルはカードを一枚手に取る。

 

「モンスターをセット、カードをセット。これでターン終了」

 

 

マモル

LP8000 手札3

□□□■□

□□□■□

 □ □

□□□□□

□□□□□

シュート

LP8000 手札5

■:伏せカード

 

 

 伏せられた二枚のカードに、シュートは軽く笑う。ミラーマッチなので、【機界戦士(ジャックナイツ)】や【サクリファイス・アニマ】を警戒する必要がないためこの伏せ方なのだろう。

 【爆導索】でも入れれば良かったな、と思いつつ、カードを引く。

 

「お、ラッキー【イグザリオン・ユニバース】召喚!

 そのままバットルフェーイズ! ユニバースの効果を発動して、セットモンスターに攻撃だぜ」

 

 攻撃され表側になったのは【マシュマロン】。効果によってシュートに1000ダメージが入るが、マモルも貫通ダメージを受ける。

 

シュート LP8000→7000

 

マモル LP8000→7100

 

「えぇい、運の良い奴め・・・・・・」

 

「あっははは! 完全に悪役のセリフだな!」

 

 スマホで互いのライフを変動させ、マモルが苦虫を噛み潰したような顔をすると、シュートが軽快に笑ってメインフェイズに入った。

 

 マモルの伏せカードにチラリと視線を送り、これまで発動されていないことから【魔宮の賄賂】【リビングデットの呼び声】辺りだろうと予想する。もしくはブラフか。

 

「カードを伏せて、ターンエンドだ」

 

 

マモル

LP7100 手札3

□□□■□

□□□マ□

 □ □

□□イ□□

□■□□□

シュート

LP7000 手札4

マ:マシュマロン

イ:イグザリオン・ユニバース

■:伏せカード

 

 

 マモルは険しい表情のままカードをドロー、そして自分の引き運の無さを呪った。

 

「・・・・・・【ドラコネット】を召喚、効果でデッキから【ギャラクシーサーペント】を特殊召喚」

 

 元から手札にあったカードを場に出し、展開を開始する。

 

「チューナーとそれ以外のモンスター、来るぞ遊馬!」

 

「来ないよアシュトラル(シュート)! サーペント一体で【リンクスパイダー】をリンク召喚!」

 

 シュートの茶々にツッコミを入れつつ、効果モンスターを三体並べる。

 

「そして【マシュマロン】【ドラコネット】【リンクスパイダー】をリンクマーカーにセット!

 リンク召喚! 【デコード・トーカー】!」

 

「召喚口上は?」

 

「存在しないッ!」

 

 シュートの反応からするに、彼の伏せカードは【激流葬】では無いようだ。まだ【聖なるバリア-ミラーフォース】の可能性もあるが、臆していては仕方ない。

 

「永続魔法、【強者の苦痛】を発動するよ。

 バトル、【デコード・トーカー】でユニバースを攻撃」

 

 すると、シュートは伏せていたカードに指をかけ、

 

「フッ、底知れぬ絶望の闇に沈め──」

 

「なっ、まさか!?」

 

 そのまま手のひらを相手側に返した。「何もないです」という意思表示だ。

 

「なんだよ、ミラフォじゃないのかよ!」

 

「ぷっ、『なっ、まさか!?』だってよ! アニメみてぇな反応!」

 

 破壊された【イグザリオン・ユニバース】を墓地に送りながら、シュートはゲラゲラと腹を抱えて笑う。その姿にマモルは羞恥と怒りを覚えながらスマホを操作した。

 

シュート LP7000→6100

 

「・・・・・・ターンエンド」

 

 マモルは半眼で正面の彼を睨みながら、ターンを終えた。

 

 

マモル

LP7100 手札2

□□強■□

□□□□□

 デ □

□□□□□

□■□□□

シュート

LP6100 手札4

デ:デコード・トーカー

強:強者の苦痛

■:伏せカード

 

 

 シュートはカードを引きながら、盤面を見る。先程マモルが発動した【強者の苦痛】だが、恐らく伏せモンスターが【マシュマロン】であったため、戦闘破壊されることは無いと判断して温存していたのだろう。彼が【イグザリオン・ユニバース】を引いたことで、結果的にそれは裏目に出たが。

 そして、中央に居座る【デコード・トーカー】。攻撃力は2300のままだが、このデッキでは突破は難しい部類だ。さてどうしたものかと思考を巡らせる。

 

「お、いいカード。【リンクスレイヤー】を特殊召喚」

 

 引いたカードをそのままフィールド中央へ。マモルが顔を歪ませたのを見て、シュートは笑みを濃くする。

 

「効果で手札を一枚捨てて、伏せカードと【強者の苦痛】を対象に、破壊するぜ」

 

「・・・・・・【魔宮の賄賂】」

 

 よっしゃ、とガッツポーズし、シュートは自分の伏せカードを発動させる。

 

「【リビングデットの呼び声】! 対象は【神獣王バルバロス】!」

 

「なっ!?」

 

 【リンクスレイヤー】のコストとして墓地に送っておいたのだ。軽くドヤ顔をして、バトルフェイズに入る。

 

「バルバロスでデコード・トーカーにアタック! えーと、朽ち果ての槍!」

 

「なにその攻撃名!?」

 

 そういえば、マモルはTwitterやっていないんだっけ、とシュートは若干テンションを下げた。ネタの溝はこんなところにも現れてくる。

 

マモル LP7100→6400

 

 これで場はガラ空きだ。液晶をいじってから、次の攻撃を宣言する。

 

「リンクスレイヤーでダイレクトアタック!」

 

「くっ、ライフで受ける!」

 

マモル LP6400→4400

 

 ほぼ半分のライフとなったマモルに、シュートはフッフッフと含み笑う。

 

「フィールドにカードは無く、ライフも半分! さあ、足掻いて見せろ!」

 

「今度はそっちが悪役じゃんか!」

 

 その返しにあっははは、と笑って、シュートはターンを終える。

 

 

マモル

LP4400 手札2

□□□□□

□□□□□

 □ □

□バリ□□

□呼□□□

シュート

LP6100 手札2

リ:リンクスレイヤー

バ:神獣王バルバロス

呼:リビングデットの呼び声

 

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 これで手札は三枚。盤面は(から)だが、そこまで追い詰められている訳ではない。あまり良い状況でないのも確かだが。

 

「【強欲で謙虚な壺】を使うよ。デッキから三枚めくって、一枚を手札に加える」

 

 二ターン目に引いてしまい、これまで使う機会の無かったカードだ。公開されたのは【団結の力】【補給部隊】【ブラックホール】と、魔法カードだらけだった。

 

「【ブラックホール】を手札に加えて、そのまま発動! フィールドのモンスターを全て破壊する!」

 

「全てを壊すんDA! ってか」

 

 言いながら、シュートはバルバロス、リンクスレイヤー、リビングデットの三枚を墓地へ置く。これで互いに更地のフィールドとなった。

 攻め時だ。

 

「僕の引き運もまだまだ捨てたもんじゃないね、【幻殻竜】を召喚!」

 

 このターンに引いたカードで、その攻撃力は2000とレベル4通常モンスターではトップだ。

 

「うお、マジか!? マモル、今日帰り大丈夫か? 槍が振ったりするかもしれないぜ!?」

 

「僕の幸運はそこまでしないと掴み取れないものなの!?」

 

 という冗談はさておき、バトルフェイズに入る。

 

「【幻殻竜】でダイレクトアタック!」

 

「クッソ、食らうぜ・・・・・・」

 

シュート LP6100→4100

 

 予想外の引き運によりライフが逆転する。否、【強欲で謙虚な壺】を使ってようやく引けたと考えれば、マモルらしいとも言えるだろう。

 通常ドローで【ブラック・ホール】を引けていれば、最後の手札である【RAN(ラン)フォリンクス】で墓地の【デコード・トーカー】を特殊召喚できたのだから。

 

「これでターン終了」

 

 

マモル

LP4400 手札1

□□□□□

□□幻□□

 □ □

□□□□□

□□□□□

シュート

LP4100 手札2

幻:幻殻竜

 

 

 シュートにターンが回る。彼はカードを引くと、ニンマリと笑顔を作った。

 

「行くぞマモルメーカー! これこそ、我々の因縁に決着をつけるトドメの剣! 【カオス・ソルジャー-開闢の使者-】を特殊召喚!」

 

 アニメ『VRAINS』のセリフを改変したシュートは、墓地の【イグザリオン・ユニバース】と【リンクスレイヤー】のコストにしていた【ギャラクシーサーペント】を除外しフィールド中央へとそのカードを出す。

 

「なっ、嘘でしょ!?」

 

「あっははは! これが運だけで今まで人生歩んできた者の実力よ!」

 

 マモルがメガネ越しに目を見開いて驚き、シュートは上機嫌に笑う。

 『一枚だけ好きなカードを入れて良い』というルールに則り、彼はこのカードをデッキに投入していたのだ。それをこうもタイミング良くドローしたのは、やはり彼の豪運によるのだろうか。

 

「ついでに【カードカー・D】を通常召喚だぜ!」

 

 次いで召喚したのは、手札でずっと腐っていたモンスター。攻撃力は800だが、トドメを刺すには十分だ。

 

「バトル! カオス・ソルジャーで二回攻撃! そして【カードカー・D】でダイレクトアタック!」

 

マモル LP4400→3400→400→0

 

「・・・・・・まさかの車に轢かれて死んだんだけど」

 

 キチンと段階を踏んでライフを減らしてから、マモルは驚き混じりの呟きを零す。本来、ドロー加速のためのモンスターである【カードカー・D】で負けるとは、彼のデュエル人生でも初だとう。

 

「いやー、まさかオレもこのカードでトドメを刺す日が来るとは想わなかったぜ」

 

 ケラケラと笑っているシュートを余所に、マモルは無駄だと知りつつも次のターン引いたであろうデッキトップを確認する。

 

「くっそ【天声の服従】! もっと早くに引きたかった!」

 

「お前そんなカード入れてたのかよ」

 

 普通のデッキならまず使われる事は無いが、ミラーマッチならばその効果は最大限に発揮される。何せ、お互いデッキの内容が筒抜けなのだ。

 そこに着目してこのカードを入れたのだが、ドローできなければ意味は無い。マモルはガックリと項垂れた。

 

「つーか、そのカード(【天声の服従】)でナニ指名するつもりだったんだ?」

 

「・・・・・・【神獣王バルバロス】、とか?」

 

 言われてみれば、そうまでして相手から奪いたいカードなどあまり無い。【サイバー・ドラゴン】や【フォトン・スラッシャー】など、手札に加わってもすぐ場に出せるカードを指名すれば便利だろうが、ライフコスト2000に釣り合うかと言われればそうでもない。

 

「あっははは、ダメじゃねぇか!」

 

「くっ、もう一回勝負だ! 今度は別のカードでやる!」

 

 狭い部屋の中に、快活な笑いと悔しそうな声とが響く。

 

 シュートは【神獣王バルバロス】を、マモルは【キメラテック・メガフリート・ドラゴン】をデッキに入れ、それぞれデッキを構えた。

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