カーマさんとイチャコラしながら人理修復する話     作:桜ナメコ

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5話 さよならするにはまだ早い

 

 

 

「……頭痛い、吐きそう」

「吐くならエチケット袋、使ってくださいね?」

「ねぇ?それ、ちょっと前の仕返し?」

「何のことでしょうか?」

 

 姿を少し成長させ、高校生ぐらい?

 とにかく……俺より少し年下ぐらいの見た目になったアサシンに肩を貸してもらいながら、大空洞に繋がる洞窟を歩いていく。

 

 藤丸達には、少しだけ先に行っていて貰った。

 ロマンに体調不良を見抜かれることを恐れての、判断だった。

 所長から何度も『絶対に後から来るのよ!』と言われているので、サボるわけにもいかないため、少しペースを落としながらも移動を続けている。

 

「……にしても、マスター」

「どうした?」

「……少し弱体化しすぎではないですか?」

「うぐっ……やっぱ、そう思う?」

「もちろん」

 

 そろそろ咎められるかなぁ、なんて思っていたが、予感は的中した。

 

「そもそも、礼装はどうしたんですか?アレ無しだと、戦闘能力は半減どころじゃ済まないですよね?」

 

 彼女は一番避けたかった話題を、ピンポイントで聞いてきた。

 彼女に嘘はつけないので、渋々自白する。

 

 

「……無くした」

「……は?」

 

 絶句する女神様に、ニッコリと笑いかけながら復唱するのだった。

 

「……無くしたんだって、礼装」

 

「何やってるんですか、あなた!?バカなんじゃないですか!?」

 

 

 久しぶりに素で怒られた。

 

 

 とりあえず、十分ほどは真面目に怒られておく。

 そして、その後は怒っているアサシンも可愛いなぁ、と思い弄ってみることにした。

 

「……普段と違うこの感じも、新鮮でいいね?」

 

「茶化さないでください、マスター」

 

「いやいや、本当だって。怒ってるアサシンも可愛いと思うよ?」

 

「……っ、そ、そんな簡単に怒りを収めるほど、私はーー」

 

「ほれほれ、甘いものでも食べて落ち着きなさい」

 

「あ、ありがとうございます……って、またボンタンアメですか!?……どれだけ、これに拘ってるんですか」

 

「そこは話すと長いぞ?」

 

「手短にどうぞ」

 

「甘くて美味しい」

 

「わかりやすくていいですね……ん?って違います!礼装のことですよ!れ、い、そ、う!」

 

「惜しかったな……おっと、石を拾ったと思ったら、キャラメルだった」

 

「もう、釣られませんから!……って、錬金術!?」

 

「手品だ、手品……現実主義者っぽいのに、こういうの好きだよなぁ、お前」

 

「悪いですか……もう一回お願いします」

 

「いや、全然。可愛くていいじゃん……それっ!」

 

「……ちょっ、どっから出てきたんですか、この鳩!?」

 

 長くなりすぎたので、以後省略

 

◇◆◇

 

 

 やらかした。

 アサシンとイチャイチャし、時間を忘れていたら……少し離れた場所から、かなり大きな魔力反応を感じ取った。

 それこそ……アサシンの第二宝具レベルである。

 

 恥を捨て、最速の移動方法……つまり、アサシンにお姫様抱っこしてもらいながら、大空洞への道を駆け抜ける。

 する方もされる方も顔が真っ赤になる、という貴重な光景だったのだが……記録として残されなかったのが、彼らにとっては救いだろう。

 

 ともかく、最速で辿り着き、地面に降り立った後、俺が見たのは……一人の戦士の姿だった。

 振り下ろされた剣を受け止めているのは、マシュ・キリエライトの掲げた大楯に他ならない。

 

「防ぐか……我が、聖剣を」

 

 そう言葉を発したのは、剣を振り下ろした相手……黒き鎧を纏った金髪の女性サーヴァントだ。

 

 ねぇ?何も言ってないから、足踏むのやめて。

 それと君、いつもより身体大きくしてるんだから……踏むならせめて戻ってからにして?

 

 どうやら、シリアス場面にかち合っているらしく……ロマンも所長に黙らされている。

 ロマンよ、お前それでいいのか?

 人のこと言えないぐらい尻に敷かれてる自覚はあるけど。

 

 ……戦いも終わり頃らしく、魔力を使い果たしたと思われるセイバーに、キャスターが杖を向けていた。

 どうやら、マシュは未完成ながらも宝具の発動を成功させたらしい。

 所長が、苦笑しながらも『擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)』という名前をその守りに授けると、マシュが所長に抱きついていく……あ、藤丸も行った。

 

 ゆる百合した空気は、良いもんだなぁ。

 なんて、思っている間にキャスターが決着をつけたようだ。

 

 捻れ拗れた聖杯戦争も終わりを告げ、キャスターも『次呼ぶなら、ランサーで頼む』なんてことを言いながら、強制送還されていく。

 

 残されたのは、黒いセイバーが持っていた聖杯のみ。

 アレを回収すれば、この時代の歪みが修正される。

 

 

 ……だから、彼女と最後に少しだけ話をしておこう。

 

 

◇◆◇

 

 

「終わったな……」

 

「ええ、終わったわね……見てた?あのマシュが、英雄みたいに宝具なんて発動させちゃってさ……立香も、自分の危険なんて考えないで、マシュを支えに行っちゃって……」

 

 眩しそうなものを見るように……いや、実際そうなのだろう。

 眩しくて、輝いていて……どれだけ手を伸ばそうとしても届かない……星に手を伸ばし続けてる。

 きっとそんな気持ちなのだろう。

 

「…………大丈夫って聞くのも……おかしな話か?」

 

「ふふっ……そうね。あの子達は強かった……きっと、この先も大丈夫」

 

 その目は、彼女らを見ているようだが、恐らく違う。

 彼女らの行く末を見つめているのだろう。

 

「ロマンから聞いたか……」

「ええ、シバの観測するカルデアスが真っ赤に染まった……ってね。ふふっ、すごい焦りっぷりだったわ」

「ここで笑えるなんて……随分、変わったな」

 

 ヒステリック全開の彼女は、落ち着きのある存在へと姿を変えていた。

 

「だって、私。もう死んでいるんでしょう?怖いものなんて、あるわけないじゃない?」

 

 本当に変わったな……いや、違うか。

 本来の彼女に戻ったのだろう。

 

「……ねぇ、最後に名前教えなさいよ。所長命令兼、友達命令!」

 

 ああ、本当に……胸の痛みが引いてくれない。

 

「……(むすび)朱雀井(すざくい) (むすび)。今まで、ありがとうございました。所長……いや、()()()

 

「……!ふふっ、ええ。こちらこそ」

 

 この人もこの人で、初対面の印象と今の印象が大分違うんだよな……きっと、良い友達になれた筈だったのに。

 

 

 不貞腐れているアサシン。

 

 イチャイチャしている藤丸とマシュ。

 

 区切りをつけた、俺とオルガ。

 

 そんな、俺達の前に……最後の客が現れた。

 

「やあやあ……まさか、ここまでしぶとかったとは……折角、見逃してあげていたというのに」

 

「……はぁ……オルガ、考えを止めるなよ」

 

 そう言ってから、こちらへ歩いてくる悪趣味な緑のコートを羽織った、悍しき"何か"の前に立ち塞がって、声をかける。

 

 

「こんな所でお散歩ですか?レフ・ライノール」

 

 その悪意(化物)がニヤリと口を歪ませた。

 

◇◆◇

 

 

「ああ、本当に……貴方だけは、ここで仕留めたいんですよ」

「……アサシン、頼んだ」

 

 瞬間、こちらに大量の魔力弾が飛ばされてくる。

 その全ては、彼女の矢により撃ち落とされる。

 彼女が少女スタイルで事足りる、と判断した相手だ……そこまでの強敵ではないだろう。

 

「……レフ!レフ……いえ、違う。貴方は、誰!?」

 

 一瞬、依存対象を見つけた所長が、レフへと近づきそうになったが、俺の忠告が効いたらしい。

 やはり、オルガは聡明な人だ。

 

 その様子をみたレフは何やら楽しげな笑みを浮かべる。

 その手には……

 

「やられた……!」

「マスター、流石に不注意ですよ!」

 

 先程セイバーが残した聖杯が握られていた。

 しかし、仕方がなかったのだ。

 回収をすれば、オルガと話す時間が潰れていた。

 

「オルガ……君はーーー」

「私をオルガと呼ばないで!」

 

 レフの言葉を遮って彼女は、完全な敵意をレフに向けた。

 彼女は分かったのだろう……カルデアで、最も破壊工作を実行した疑いの強い人物は、誰なのかということを。

 

「レフ・ライノール……貴方は!」

「……もう良いよ、君。死人はさっさと消滅してくれ」

 

 所長が思い通りに動かなかったことに苛立ったのか、レフは態度を急変させた。

 突然、放たれた殺気により、傍観するしかなかった藤丸とマシュが座り込んでしまう。

 

 

 聖杯が輝く。

 

 光が収まった先には、カルデアスの姿。

 レフは聖杯に込められた魔力を使用して、時空をカルデアと繋げたのだ。

 

 オルガはレフが何をしようとしているのか、一瞬で理解したらしく、こちらへと駆け寄ってきた。

 左腕にしがみついた彼女を物凄い目でアサシンが見ているのだが、緊急事態のため黙認して貰いたい。

 

「逃げられないよ、オルガマリー。君の()()()()()に触れてくるが良い」

 

 宝物……高密度の情報体であるカルデアスに触れれば、分子レベルで分解されてしまう。

 

「オルガ、絶対離ーーーーえ」

 

 離さないで、そう発音することなく、あまりの驚きに絶句した。

 彼女は助けを求めて、こちらに来たのだと思った……だけど、違ったのだ。

 

「ーーーーーーーー」

 

「詠……唱……?」

 

 隣にいるアサシンすらもが、有り得ないその光景に呆然としている。

 

「ーーーーーーーー、ーーーーーーーー」

 

 長い長い詠唱を彼女は、カルデアスに引き寄せられるのに耐えながら、行い続ける。

 

「何を、今更!」

 

 苛立ったレフが腕を振ると、彼女の姿は俺から徐々に離れていく。

 

「ーーーーーーーーーーーー、ーーー!」

 

 そして、完全に彼女の手がこちらから離れる直前に……彼女から受け取った魔術刻印が光り輝いた。

 そして、彼女の体が宙を舞う。

 

「ははははは、君は何がしたかったんだい?最後の足掻きも、醜い抵抗も、意味を為さずに……君は死ぬ。今の君はどんな気持ちだ?」

 

 嘲り笑うレフに対して、久々に殺意を覚えた。

 拳を握りしめて無理矢理、魔術回路に魔力を流そうとした直前に……彼女が笑った。

 

「ええ……初めて出来た三人の友達に、一人の神様。一度死んだ人間が、そんな豪華なメンバーに死を見送ってもらえて、最高の気分よ!」

 

 それは皮肉か本心か。

 どちらにせよ、レフを最高に苛立たせて……彼女はあっさり消滅していった。

 

「……いい、死に様じゃないですか」

 

 珍しく、隣の彼女も笑っている。

 

「自分の思い通りに殺して、絶望させて、泣き喚く姿が見たかったんですよねぇ?どうですか?格下だと思っていた相手に、それらの期待を全部裏切られ、挙げ句の果てに笑顔なんて見せつけられた気分は?……その顔、最高です。知ってます?私、人が不幸に陥る瞬間が大好きなんですよ」

 

 あ、この子煽ってるだけだ。

 ごめんね?拗らせてるけど、良い子なんだよ?

 

「……チッ、怪物が」

 

 レフはアサシンを見て、一言つぶやいた後に、咳払いをしてから再び紳士のような態度を取り始める。

 あ゛?

 喧嘩なら買うぞ?

 

「まあ、いい……良いことを教えてやろう、Dr.ロマ二。君たちは既に詰んでいるんだ……カルデアは磁場が特殊だから影響を受けていないのだろうが、その他は違う。恐らくこの冬木のように、全世界中が焼却されているだろうな」

 

『外部との連絡がつかなかったのは、そのためか……』

 

「やはり賢しい男だ。最初に殺すべきだったな……しかし、それももう良い」

 

「どういうことだ?」

 

「教えてやる義理もないが……まあ、いいか。お前たちカルデアも、2016年を過ぎた瞬間消え去るのだから、抵抗など無駄だということだ」

 

 簡単に言ってくれるな……

 

「アサシン……仕留めれるか?」

 

 彼女にそう聞くと、少し悔しそうにしながら返答してくる。

 

「すいません、マスター……多分、間に合わないです」

 

 そして……

 

 空間が揺らいだ。

 

「おっと、ここももう限界か……それでは、諸君。私は、次の仕事があるので」

 

 レフはそう言い残し、姿を消していく。

 

「……チッ、最後まで気に食わない奴だ……アサシン、マシュと藤丸を頼む!」

 

 本能が告げていた。

 ここに留まれば命は残らない、ということを。

 

「ドクター、レイシフトで帰らせろ!早くしないと……全滅する!」

 

『分かった。こっちも賭けだが……意地でも帰ってきてくれよ!緊急退避用レイシフトを行う。立香ちゃん、マシュ……意識を強く保ってくれ!』

 

 そして、光と共に行きにも通った穴のようなモノを認識したと思えば……

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 目を開く。

 そして……

 

「知らない天井だ……うん、間違いない」

 

 そう独り言をこぼす。

 

『また、言ってるわね……』

 

 頭の中に響く声。

 

「もう……そんなやりとりも出来ないんだよな」

 

 今は亡き所長に祈りを捧げる。

 

『……?何言ってるの、結』

 

「は?そっちこそ何言ってんだ……あっさり死んでった癖に……ん?」

 

『ええ、死んだらしいわね』

 

 沈黙。

 

 頬を抓った……とても痛い。

 

 そして、

 

「はぁぁぁあああ!?」

 

 絶叫が響き渡る。

 

 そんな彼の左腕……刻まれた魔術刻印が、彼の言葉に呼応するように光り輝いていた。

 

 




ようやく、主人公の名前が出せた。
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