マシュの盾を召喚サークルの土台とし、そのサークルの前に藤丸……いや、立香(名前で呼んでとうるさかった)が立っている。
「……人や物との縁を辿り、相応の魔力を消費することで起動……アサシンみたいに、向こうから勝手に来ることもある、か」
守護英霊召喚システム・フェイト
ロマンが言うには、特異点F……俺たちがレイシフトした冬木での戦いの結果、数名のサーヴァントと縁が結ばれてるらしい。
話を聞いてる最中に、アサシンが無言で腰に抱きついてきたので、契約は立香に任せることを伝えたのだが……
なんか嫌な予感がしてるんだよなぁ。
藤丸が召喚を始める。
それを横目に、オルガに対して質問をした。
「そういや、オルガ……お前の視界って俺と共有状態にあるのか?」
『いえ……結の頭上30cmぐらいに視点を飛ばしてるわ……千里眼も使えるから、全方位警戒できる……安心していいわよ?』
「何そのチート、怖い」
コイツ、本当にやりたい放題だな。
呆れていると、クイクイとアサシンに腕を引っ張られる。
「……マスター、一緒に逃げませんか?私、凄く嫌な予感がしてきたんですけど」
『それで?どうしてそんなことを?』
二人から同時に質問を喰らう。
奇跡的に、それらに対する答えは一言で返すことができた。
「……嫌な予感がしすぎて気絶しそう」
光り輝く召喚サークル。
その先に……
見覚えのある紫の髪が見えた気がして……
◇◆◇
目が覚める。
自室のベッドだ……隣には、白髪の相棒の寝顔がある。
ああ、よかった。
「……夢か」
『どうして貴方たち二人は、同じタイミングで失神してくれてるのよ……無駄に人員は裂けないというのに』
目が覚めると、速攻でオルガからのツッコミが入った。
……失神、失神?
夢じゃ……なかった?
「な、なぁ……しょ、召喚はどうなったんだ?」
恐る恐る質問を口にする。
オルガはアッサリとその質問に答えていった。
『三人のサーヴァントが来てくれたわ……やっぱり、人理焼却の影響は大きいわね……本来なら、そんな簡単に召喚に応じてくれはしないのよ?』
「ど、どちら様がお見えで?」
『何でさっきからオドオドしてるのよ……まあ、いいけど……私も真名を知らなかった、冬木のアーチャー、エミヤ。そして、キャスターのクーフーリン』
アサシンが蹂躙した相手と、キャスター……ここは素直に戦力として歓迎しておこう。
『後、一人は……多分ーーー』
その時、何かを言いかけたオルガを遮るように、バッとアサシンが身を起こした。
どうやら俺と違い、記憶がしっかり残っているようで……目覚めると同時に、彼女はこちらの手を取って移動を試みる。
「……っ、マスター、急いで移動しましょう!考えたくもない最悪の事態ですよ、恐らくアイツは……」
アサシンに手を引かれるようにして、自室から出ようとする俺たちの前で、そのドアは開かれた。
「……はぁ、やっぱり、逃げようとしていたんですね、貴方は……間に合ってよかったです!」
紫色の髪に、青の衣。
ピンクの花飾り、そして金の髪飾りをつけた女性がにこやかに笑う。
「う、煩いですね。早く、消えてくれませんか?私、貴方のことがこの世でーー」
珍しく気が動転しているアサシンが、毒舌も回せず、らしくない文句をつけようとするが、彼女は笑顔でそれを遮る。
「
「
かつて殺し合った、女神。
パールヴァティーがそこに居た。
◇◆◇
結局自室にUターンして、話をすることに。
「……むうぅぅ……大体、来るのが、早過ぎるんですよ……この女!」
「……荒れてるなぁ、落ち着けって」
「無・理・で・すぅぅ!」
「うん、知ってた」
今にも宝具を撃ちたそうにしているアサシンを
「う〜ん、やっぱり嫌われてますね……」
『慣れすぎじゃない?』
目を瞑り、どうしたものかと首を傾げる彼女の様子に、冷静さ0のアサシンが食ってかかる。お顔真っ赤で可愛い。
「そういう、動きが!あざといんですよ、この色ボケ女神!」
「『色ボケ女神』」
あまりのパワーワードに、オルガと二人して復唱してしまった。
「第一です!貴方とそのバカ夫のせいで、私は焼き殺されてるんですよ!?わかります?あの理不尽三つ目ゴリラのあっつい炎!宇宙燃やす炎ってなんですか、本当!」
「『理不尽三つ目ゴリラ』」
「いやぁ……夫が褒められてるみたいで、照れちゃいますね」
「褒めてないですし、惚気ないでくれます!?」
ここまで元気がいい彼女を見ると、逆に仲が良いのでは、と勘繰りそうになる。
……絶対にあり得ないのだが。
そして、事件は起きた。
「それで……契約なんですけど」
パールヴァティーがそう口にした瞬間、空気が凍った。
オルガも、俺も……呼吸さえ出来ないレベルの殺気が俺の腕の中から溢れ出す。
「……契約が、何ですか?」
返答を間違えれば即死亡案件状態のアサシンを前にして、流石のパールヴァティーの笑顔も凍りついた。
沈黙が場を支配する中
コンコンとノックの音がして……
「結く〜ん!カルデア男職員、愚痴の会っていうお茶会にーーーーへ?」
緊張感0の呼び声高きロマンが来襲。
「煩い」
「……ひっ」
一言で黙らされ、退室していったロマンに、今度何かしてやろうと心にメモしつつ、アサシンの気を落ち着かせようとする、
「あ、アサシーー」
「マスターは黙っていてください」
「……あぅ」
『む、結……気を確かにしなさい』
個人用念話でオルガに話しかけられるも、正直何を言ってきているのか理解できなかった。
怖い、アサシン怖い。
定位置からスッと抜け出したアサシンが、パールヴァティーの元へ歩いて行き、首元を掴む。
顔を近づけて、その目を真っ直ぐに見る。
そして、
「マスターは……私のマスターですから」
そう断言した。
数秒間、その状態が続いてから……パールヴァティーがキョトンとした表情を見せる。
「え、ええと……立香さんと契約したと、伝えたかったのですが……」
「…………へ?」
ボフッと効果音がつきそうな勢いで、アサシンの顔が真っ赤に染まる。
それを見たパールヴァティーは楽しげな表情を浮かべて、追撃するように、アサシンの耳元で言うのだった、
「へぇ、これは…………
「………………!?!!?」
それがトドメとなり、容量オーバーしたアサシンが再び気絶していく。
正面に倒れたアサシンは、パールヴァティーの胸元へと顔面から落下し、安全に受け止められた。
「う〜ん、いつもこうして近付いて来てくれれば、可愛いと思うんですけどね〜」
そんな恐ろしいことを言いながら、パールヴァティーは俺へと気絶したアサシンを運んでくる。
「それでは私は、マスターの元に行ってくるので……暇な時にお茶でもしようと言っておいてください!」
「断られるに決まってるだろ……」
最後にそう言い残していったパールヴァティーを見送ると、オルガに質問を喰らった。
『そういえば、どうして結は彼女を見て気絶したんですか?』
「……健康に気を遣えって説教されたことがあるんだよ」
あれは、怖かった。
目からハイライトが消えていたもの。
『保護者なのかしら……?』
深く語らない俺に対して、困惑したようにオルガは疑問を浮かべるのだった。
◇◆◇
「起きた?」
「……はい」
目を覚ますと、私はいつものようにマスターの膝の上にいた。
段々と記憶が戻ってくると、それに伴い羞恥感が増幅してくる。
「……うぅ、その、お恥ずかしいところを、お見せしました」
半分泣き目でそう言った私に、マスターは笑いかけてくる。
「大丈夫、大丈夫。オルガには意識封鎖してもらってるよ……それにしても、愛の神様は、随分と独占欲が強いんじゃないですか?」
ニヤニヤしながらそう言うマスターに、ふと純粋な疑問をぶつけてみる。
「独占欲……仮にそうだとしたら、どうします?」
嫌われることはないだろうけど、そう思いながら彼の反応を待つ。
マスターはポツリと呟いた私を見て、キョトンとした顔をした。
ああ、もう。そういうところですよ。
なんで無駄に可愛いんですかね……
「そうだなぁ……アサシンだったらどうされたい?」
「質問に質問で返さないでくださいよ……私もやりましたけどーーーん?」
そこまでいつも通り反射で会話を進めた時に思った。
これ、やって欲しいことを言えば……大抵何でもしてもらえるのでは?ということである。
いや、でも……そんな筈はーー
「ほれほれ、なんでも言ってみるさ?」
「な、なんでも……!?」
「うん、なんでも」
完全に、マスターはこちらの反応を楽しんでいる。わかっている、わかってはいるのだが……"何でも"という言葉に、私は顔を赤くしてしまう。
らしくない、折角貞操を狙えるチャンスなのに……
『貴方が恋を楽しめているようで、私は嬉しいですよ?』
その言葉を思い出し、顔が熱くなっていった。
この後、茹で蛸のように真っ赤な顔の私がヘタれて、五分間のハグを要望するのだが……ハグしている様子を『夕食の用意ができました〜』と伝えに来たパールヴァティーに見られることになる。
その騒動により、結のマイルームが滅茶苦茶になるのだが……それは、また別の話。