※ 史上から理由もなく性別変化させることもあると思います。
(沖田さん等の例もあるのでいいかと)
アサシンが実に嫌そうな顔を浮かべて、ジャンヌについての話を聞き終える頃のことだった。
「……来たぞ、奴らだ!総員武器を持て!」
負傷したフランス兵が、怪我など知らないと言わんばかりに立ち上がり、出陣していく。
向かう先には……大量のスケルトンが迫っていた。
「マシュ!」
「はい、先輩!マシュ・キリエライト、フランス兵に加勢します!」
迷う余地なく即断で出陣して行く彼女らの姿を心底綺麗だと感じた。
同時に、一瞬でも戦力差を考えてから行動しようとした自分に嫌気が差す。
パンッと両手で顔を張ってから、俺たちも移動を開始する。
「……行くぞ〜、アサシン?」
「わかってますよ……はぁ、本当に」
しょうがないですね。
そう呟いて、アサシンは戦場へと向かっていった。
『結、アサシンの良さって……クセになる感じね』
「……流石オルガ、見る目ある」
段々とオルガの趣味趣向が結に侵略され始めていたのは、きっと気のせいだろう。
「お疲れ様、アサシン。異常はある?」
アサシンを労いながら、答えのわかり切っている質問をした。
立香のように、強化などでサポートしてあげれれば良いのだが、それもオルガに任せきりであるので、本当に働いていない。
強いて言えばスケルトンが放ってきた矢から、怪我をしているフランス兵を守っていた(物理)ぐらいである。
というのもあり、若干の罪悪感があるのは否めない。
ダ・ヴィンチちゃんから補助装備は受け取ってきているのだが、オルガに協力して貰わなければロクに使えないこともあり、使い所はここではないだろうと判断したのだ。
「スケルトン相手に遅れを取るわけないですよ……それより、少し甘味が欲しいです」
「ほれ、カリカリ梅」
「だから、何で態々そんな渋ーーって、ボンタンアメじゃないんですか!?」
渡された物へ視線を送ることなく、警戒心ゼロでそれを口にしたアサシンが、驚愕の表情を浮かべる。
本当にいちいち可愛い奴だ。
ボンタンアメを渡した後も、不機嫌継続中である彼女の頭に手を乗せたまま、オルガへ言葉を飛ばす。
『相手がスケルトンだけにしては、フランス兵の負傷者が多い。周囲の警戒頼めるか?割と連続で魔術行使してるけど』
『問題ないわよ……段々と結の身体に適応してきてるしね。遠視なんて簡単な術、苦にもならない』
言葉通りなのだろう、彼女の言葉から疲労は感じられない。
流石、名門アニムスフィアの血統……才能だけではなく、死に物狂いの努力もしてきた彼女は魔術師として、俺とは格が違う存在だった。
『俺、遠視の魔術はギリギリ使えるレベルなんだけどな……何、お前優秀?』
『ええ、勿論……って、何よ、アレ』
段々と不機嫌な様子を見せているのに、構ってもらえない、という状態に我慢できなくなってきたアサシンが俺の足に体重をかけ始めてくる。
体が小さいため、ダメージはまだない。
彼女の様子を微笑ましく思っていると、オルガから鋭い指示が飛んできた。
『……っ、今すぐフランス兵を撤退させて!あんなのが、中世ヨーロッパにいて良いはずがない!』
「あんなの……?いや、今はいいか。立香、マシュ!フランス兵に避難指示を出してくれ!……アサシン、悪かったから拗ねてないで、働いてくれよ?」
「…………後で膝枕を所望します」
「了解」
俺のような男性より、美人な女性から誘導を受けた方が心地いいだろう、そう思っての立香達の指示だったのだが……って、脇腹抓らないで!?
頬を膨らませているアサシンと共に、"あんなの"とやらが来る方向へ移動していく。
そして、その姿を肉眼で捉えた瞬間、ロマンからの伝令が入った。
『……結くん、前方に大型の魔力反応を多数感知した。怪我なく、無茶せず殲滅を頼めるかい?』
「わかってる。アサシンに全部任せるつもりだから、安心しろ。それよりロマン、聞きたいことがあるんだが……多数のワイバーンが目の前を飛んでるって言ったら信じる?」
視界に入ったのは、ドラゴンの亜種であるワイバーンという翼竜。
『アハハハ、そんな冗談が言えるならだいじーーーえぇぇ!?』
「「『うるさい』」」
『君達三人仲良いね!?』
俺達全員の罵倒に、ロマンが騒いでいるとそろそろ戦闘開始可能な距離にワイバーン達は近づいて来ていた。
……オルガのツッコミを感じ取ったのは、凄いと思うぞ、ロマン。
そんな時、視界の端で金色の何かが前に出ていくのを捉えた。
思わずそちらに目を向けると、そこには鎧に身を包み、金色の髪を持つ女性らしき後ろ姿がある。
最も特徴的なのは、彼女が左手に持つ大きな白い旗。
女性がこちらに顔を向けて、口を開いた。
「どなたか存じませんが、すいません。この砦の防衛に手を貸して頂けないでしょうか?」
◇◆◇
「やっちゃえ、アサシン!」
「なんか、その言い方……気に触るのでやめて下さい!」
そう言いながら、アサシンはワイバーンの群れの中で蹂躙を続ける。
本来、アサシンクラスは真正面から戦うようなクラスではない筈なのだが、そもそもアサシンらしさとは?といった逸話を持つ彼女には関係のないことだ。
気配遮断持ってないの、彼女。
「……彼女は、一体」
その様子を見て、旗を持っているサーヴァント(多分)が呆然とした表情で呟く。
彼女の持つアサシンの常識が崩れていってているのだろう。
『アサシン……カーマってこんなに戦闘できる神様だったの?』
「いや、多分そういう神様じゃない……ただ、もう片方は別」
『もう片方…………!"
「大正解」
愛の神 カーマ
その別名はマーラとも言われ、同一視されることがある。
マーラ、掘り下げると長いが仏教において煩悩の化身とされ魔神やら魔王やらと物騒な呼ばれ方をされる悪魔みたいなお方。
能力は違うが、共通していることが『修行を邪魔する者』という位置づけだ。
カーマは最高神シヴァの修行、そしてマーラは釈迦が悟りを開こうとした所を邪魔したことになっている。
そうした逸話や、見方を利用することにより、カーマは自身に含まれるマーラという、ある意味での属性のような物を強めることで、その権能を使用できるようになる。
難点といえば……
『あははは、良いですよ。それで良いんです。堕落して、快楽に溺れて……』
『良いですねぇ、その絶望し切った表情……癖になりそうです。嬉しかったですか?楽しかったですか?勝てると確信した勝負で、苦戦して、ねぇ?』
『大丈夫……どれだけ悍しくても、どれだけ醜くても、私はちゃんとすべての人間を愛して、満たして……理性なんて惚かしつくしてあげますから……』
行き過ぎると、歯止めが効かなくなることだろう。
「うぐ、頭が痛む……
『ちょっと、結?急にどうしたのよ』
「いや、何でもない。ともかく、色々あって今のアサシンは上手く"マーラ"としての側面を
見れば、マシュ達の援護もあって戦いは終盤へと近づいていた。
旗を持ったサーヴァントも戦いに参加しているのだが、どうも動きは芳しくない。
『……あのサーヴァント、弱っている……のかしら?印象はかなり高位のサーヴァントだったけど』
「訳ありだろ……多分。戦闘時の指揮は、確実に上手い」
撤退遅れの兵士や戦闘を続けるマシュへの指示や、アサシンの動きを阻害しないよう位置取りを心がけている動き……間違いなく戦場経験のあるサーヴァントの筈だ。
しばらく考察を続けていると、アサシンが帰ってくる。
殆ど殲滅し終わったので、後は任せます。といった所だろう。
「飲まれてないか?」
「まあ、問題ないです……本当の、本当に癪ですし、一切感謝するつもりも、赦すつもりも何もかも有りませんが……あの時にコツは掴みましたので」
遠い目をしてボヤき続けるアサシン。
頭の中には輝きを放つセイバーの剣が延々とリピートされているのだろう。
確かにアレは彼女の天敵だった。
二人して、昔を思い出して精神疲労を蓄積し続けていると、フランス兵達の叫び声が聞こえてきた。
「おい、魔女が出たぞ!?焼かれて死にたくない奴は、全員逃げろおぉぉ!」
彼らの視線の先に、旗を持った女性の姿があった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おい、セイバー……いや、◽️◽️◽️◽️!どういうつもりだ」
一人、彼女はそこに佇んでいた。
「アサシン……いや、神霊カーマのマスターか。名乗るといい。お前の目は、私にとって心地良い」
目の前の女性は、そう言って俺の首元に剣を向けてくる。
「……たー、…めです!」
女性が放った投げ縄に身を拘束されたアサシンが、息も絶え絶えにこちらの身を案じてくる。
「安心しろ、我がマスターは、この戦争の正体を知っていてな……抵抗した私は、無様にも令呪によって縛られている。そう簡単に全力は出せないさ」
一画は耐えたんだけどなぁ、なんて溢した目の前の女性は笑顔を向けてくる。
「軽く……手合わせをしよう」
◇◆◇
その女性は、いつもふらっと現れた。
そんな彼女が、真剣な目をして問いかけてきたことがあった。
「私は、俗世の煩悩……それに飲まれた全てをものを救うという
そんな奇跡すら起こせないのなら
宇宙丸ごと
燃え尽きるぞ?
にっこりと表情を崩さずに彼女は言った。
伝承とは違い、怒りの形相を常に浮かべているわけではない。
ただ、厳しく。
そして、人々の世を案じている。
それだけはよく理解できた。
今思えば、それは彼女なりの優しさだったのかもしれない。
パールヴァティーいやランサーも"アサシン"を任せた、そう俺に言って死んでいった。
彼女達は、かの存在に傷をつけたことのあるカーマという神を認めていたのだ。
精神をマーラに飲まれたアサシンは、セイバーが剣を振ることで意識を取り返す。
霊基が壊れそうになる程の痛みを感じながら、アサシンは何度も力を引き出そうとしては、マーラに飲まれていく。
その繰り返し。
幾度となく繰り返したその先に……
「及第点か……それでは、頼んだぞ」
サーヴァントとして現界した後に、スパルタ特訓で強化されるという特異な経験をした、アサシンの姿があった。
「向こうの権能は、私がしっかり封じておく……だから、キチンと……向こうの私を殺しておくれ」
立ち去るセイバーの後ろ姿を見送って、アサシンは倒れ込む。
慌てて彼女を受け止めて、視線を先程までセイバーがいた場所へ向けるが、そこにはもうその後ろ姿はない。
俺たちがセイバーの姿を見たのは、これが最後だった。
◇◆◇
やっぱりそうだ。
あの戦いを、聖杯戦争だとは言えない。
いつか過去編だけをまとめた物を作るかも。
物語の補完になると思いますけど……欲しいですかね?