カーマさんとイチャコラしながら人理修復する話     作:桜ナメコ

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13話 シリアスばっかじゃ、息が詰まると思います。

 

 目の前に立つ黒聖女は、俺の質問を聞き、嘲笑うような表情を浮かべた。

 不機嫌になるアサシンを止めるのが大変なので、挑発はやめて頂きたいです。

 ……この子、意外と直ぐにムキになるからなぁ。

 

「……私が誰か、ですか。そんな事も知らずにーーー」

「因みに、ジャンヌ・ダルクにはもう会ったから、お前の姿がアイツと同じってのはわかってるよ」

 

 話に割って入った俺の言葉を聞いて、彼女はこちらに訝しむような視線を向ける。

 それと同時に、ちらほら見えていた隙が消えた。

 こちらを警戒対象と認識したらしい。

 

「……ならば、先ほどの質問は?」

 

 予想よりも話が通じる相手だ。

 黒聖女が攻撃の指令を出さない限り、周りのサーヴァントも戦闘を行わないようなので、一先ずは安全だろう。

 ロマンに怒られるのも面倒だから、藤丸達の到着を待つことにするか。

 そう考えて、話を長引かせようとした俺の隣に……

 

「貴方とあの聖女は、どう見たって、別物。貴方なんて、贋作にしか見えない……そう言ってるんですよ、マスターは」

 

 子供の喧嘩のように挑発をかます、女神様が立っていた。

 ……お前、最近人間味増しすぎてない?

 胸張ってのドヤ顔、可愛いから許すけどさ。

 

 

◇◆◇

 

 

 side 立香

 

 立ち込める血の匂いに、鼻が曲がりそうだが、それにも段々と慣れてきた。

 あまり慣れたくもない匂いなのだが……人間の体って凄いと思う。

 

 私達は結達と別れ、少し休んだ後、彼らの後を追うようにして街の探索を開始した。

 これから先、何度も悲惨な光景を目にすることになる……それに立ち向かうための覚悟を固めて進んでいく。

 

 ワイバーンだけでなく、生ける屍にも遭遇した時には、隠すことなく表情を歪ませた自信があったが……

 

 しかし、それでも……マシュが頑張っているのである。マスターの私が頑張らなくてどうするというのだ。

 パンッと頬を張ることで、気合いを入れ直した。

 

 私の奇行にマシュとモニター越しのドクターがギョッと目を見開くが、ジャンヌさんだけは、私の表情を見て嬉しそうに微笑んでいる。

 なんだか心の内を覗かれているようで、少し恥ずかしくなった。

 

 

 ジャンヌの案内で少し進んでいくと、大勢の人が居たであろう大通りに出た。

 予想では、何度か人を喰らっている姿を見せていたワイバーン達が多数存在しているのでは、とのことだったが……その予想はあっさりと裏切られる。

 

「……思ったよりも、数が少ないですね」

『きっと、先行組が蹴散らしてくれたんだね……結くんは意外と優しいから』

 

 目の前には、数体のワイバーンがのそのそと歩いているのみだったのだ。

 その様子を見たマシュの呟きにドクターが答えたが、"意外と"は余計だと思う。

 

「……流石、というべきなのですかね?」

「そうかも……所長もついてるし」

 

 ジャンヌの言葉にも肯ける。

 よくわからないが、アサシンと結の連携は、私とマシュのそれと明らかに格が違う。

 素人の私がそう思うのだから、よっぽどだろう。

 

 これなら、向こうは心配することなど、何一つないのかもしれない。

 そんなことを私が考えた瞬間だった。

 

 モニターの向こう側が、ざわざわと騒がしくなる。

 なんだかフラグを立ててしまった気がするので、急いでどうしたのか聞いてみることにする。

 

「ドクター?……ドクター!どうかしたの!?」

『……すまない、立香ちゃん。今、手が離せなくて!』

『というわけで、私の出番だね?』

 

 モニター越しに慌ただしく機械を操作しているロマンと、悠々と紅茶を片手にこちらに話しかけてくるダ・ヴィンチちゃんの姿という対照的な二人の様子が見られた。

 

『ちょ、レオナルド!そんな余裕ぶっこいてる場合じゃーー』

『天才たるもの、常に落ち着いていないとね……それに、救援は今直ぐにでも必要だろう?』

『……うぐ、まぁ……そうだけど!』

 

 何か問題が起きたのはわかるのだが、核心に関する話が出てこない。

 痺れを切らしたマシュが聞く。

 

「ドクター!問題とは?」

『……ああ、もう。どうせ、逃げろと言っても聞かないんだろ!結くん達が、黒ジャンヌを含む、サーヴァント五騎と戦闘を開始した!』

「……っ!」

 

 その言葉を聞いて、ジャンヌが全速力で結さん達の向かった方向へと駆けていく。

 慌てて彼女の姿を追うように、私とマシュも移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな彼らの様子を見ながら、ロマニ・アーキマンは呟くのだった。

 

『本当に……君たちは……』

 

 溜息を吐きながらも、どこか、嬉しそうな様子で。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 side 結

 

 可愛いから許すと言ったな。

 バカめ、あれは嘘だ。

 ちょっと恨むぞ、この野郎!

 

 黒聖女の一声により、向かってきたセイバーの姿を見て、俺はそんなことを心の中で喚き叫んでいた。

 

 仕方なく、振り下ろされた細身の剣を警棒で受け流す。

 相手が人間ならば、一瞬で決まるとでも考えていたのか、攻撃を無効化された彼?は驚愕の表情を浮かべる。

 攻撃を受け流したと同時に前へ出た。

 掌底を彼女?の腹部へと叩き込み、弾き飛ばす。

 

 一連のカウンターを決めるが、悦に浸る間も無く後方へと宙返りをする。

 そして、先程まで俺がいた空間に光が放たれ爆発した。

 それを行ったのは、先程まで俺が交戦していたライダー……後衛に徹されると本当に厄介極まりない相手だな。

 

 今のはセイバーが俺を侮っていたからどうにかなった。要するに、次はない。

 身体強化の魔術もなしに、セイバーなんかと接近戦をやれば、待ち受けるのは死という運命だけである。

 

 正直、ライダーの攻撃を回避できたのも運任せである。

 行動を読まれれば、それで終わりだ。

 

 

 結論

 どちらか一騎に集中できるなら、時間稼ぎぐらい出来るかもしれないが……同時戦闘など不可能。

 

 うん、逃げよう。

 

「……っ。アサシン、撤退するぞ!」

「っ、もう少し待って下さい。意外と、忙しくて……ですね!」

 

 視線を向けた先には、ランサーとアサシン、そして黒聖女の猛攻を回避しながらも、金剛杵や蒼炎を操り、攻撃を行なっている相棒の姿。

 その姿は少女スタイルから、痴……扇状的なお姉さんスタイルへと変化しており、その真剣な表情を見る限り、今の彼女はかなり全力に近いと思われる。

 

 …………何、あれ凄い。

 

 オルガがこちらの礼装に全力を尽くしているので、アサシンは支援ゼロで戦闘を行なっているのだ。

 にも、関わらず、彼女は現在無傷。

 

 少し表情を歪ませた理由は、マーラとしての面を、飲まれる寸前まで引っ張り出しているからだろう。

 

 

 思わず戦闘に見惚れていたが、我に返って思うのだった。

 そっちが無傷でも、こっちは大丈夫じゃないのですよ……と。

 

 

「……それじゃあ、今度こそ……仕留めさせて貰うよ!」

 

 セイバーがそう宣言して、接近してくる。

 声質で性別がわかるかもしれない……と実は期待していたのだが、その期待は裏切られた。

 

 セイバーが振りかざす剣を弾くこと。

 生存を勝ち取るため、ただその一点へと、集中を最高まで高めていく。

 

 一瞬、俺とセイバーの動きが完全に止まった。

 互いの視線が交差する。

 その瞬間……残像が見えるような速度で、セイバーの剣が振り下ろされる。

 警棒はその一撃を捉える……しかし、先程までとは違い、セイバーの攻撃はまだ始まったに過ぎない。

 弾かれた剣は、息つく間もなく二撃目、三撃目と振り下ろされる。

 

 余りの衝撃に、天才と森の賢者お手製である警棒が悲鳴を上げるようにミシミシと音を立てるが、打てる手などない。

 オルガは、根性のある奴だから大丈夫だろう。

 

「……見事だね。もっと、しっかりと手合わせしたかったけど……残念だよ」

「……?」

 

 数合打ちあった後、セイバーがそう口にする。

 その意味が頭で理解される前に、体が横へと吹き飛んだ。

 ライダーの放った遠距離攻撃は、致命的なダメージとまでは行かないが、それなりに威力は高い。

 

「……ぐっ……!らい、だー、か……」

 

「ええ。決闘に水を刺すようで悪いのだけど……マスターに凶化をかけられていてね。許して、とは言わないわ」

 

「わってるよ……死なねえから、安心、しろ」

 

 この()()()()()()()()()()、セイバーとドンパチやり始めたのだ。

 ライダーの危険性などに脳内のキャパを使っている余裕はなかったので、仕方ない。

 

 

「それは、無理だよ。貴方は、ここで終わりだ……何か言い残すことは、あるかい?」

 

 

 膝立ちになった俺の前で、セイバーが剣を片手にそう言う。

 

 ……絶体絶命。

 そう考えるべき状態だが、アイツが……アサシンが、今の俺の状況を何の理由もなく見過ごしている、何てことは天地がひっくり返ってもあり得ない。

 

 戦闘中のアサシンが、こちらを援護しようとする様子が見られない以上、考えられる可能性はただ一つ。

 

 

「……俺は、正直者なんだ」

「……っ!?」

 

 不敵な笑みを浮かべた俺から、何を感じ取ったのかは知らないが、セイバーが後ずさるようにして俺から一歩離れた。

 

 そして次の瞬間、セイバーが弾き飛ばされる。

 俺は、その後ろ姿を見て安堵の息を吐いた。

 左手に持つは白の大旗。

 銀の鎧に身を包む彼女の持つ金の長髪に目を奪われる。

 

「間に合い、ましたか」

「ん、お疲れ様」

 

 全力疾走したのか、何やら肩で息をしているジャンヌ・ダルクがそこにいた。

 

 

◇◆◇

 

 

「……遅かったですね、じゃ……ルーラー」

 

「名前呼びまで、もうちょっとだな。頑張れ」

 

「アサシン……ゆっくりで、構いませんからね?」

 

「あなたまで、ボケに回るとは思わなかったですよ、このバカ聖女!」

 

「なんか友達みたいですね……えへへ」

「笑うな!」

 

 ジャンヌ様のご到着により、黒ジャンヌは戦闘を中断させた。

 

 戦闘を切り上げてこちらへと帰ってきたアサシンに、俺とジャンヌが可愛いなぁ、と和んでいると彼女は少し嬉しそうに、不機嫌になった。

 ……器用なことをするものである。

 

「……アサシン弄りはここら辺にしといて……怪我とかは大丈夫か、アサシン?」

「勿論ですよ、私を誰だと思ってるんですか」

「コミュ障拗らせた可愛い女神様」

「ま、間違ってませんけど……そ、そういうのは、二人の時に」

 

 真正面から不意打ちで可愛いと言われ、照れたアサシンを指差して、俺はジャンヌに言うのだった。

 

「な?可愛いだろ?」

 

 黒ジャンヌ達が見守る中、俺がアサシンに腹パンを喰らうことになったのは、多分想像に難くないと思う。

 

 

 

 

 結局、一撃も貰わなかった彼女曰く……皆、天敵の理不尽セイバーより遅い、とのことだ。

 化け物レベルの回避能力は、英霊になった後に身についたものだったらしい。

 

 

「……そうだ。オルガ、取り敢えず休んでいいよ。お疲れ様、ありがとう」

『…………ん。そっちこそ、ライダーから貰った一撃は大丈夫?』

「……脇腹に響いただけ……折れてはない、はず」

 

 ジャンヌが来たということは、立香達もこちらに向かっているだろう。

 彼女らが来れば、アサシンへの指示に徹しても問題ない。

 そう思って、オルガに頼んでいた魔術使用を止めて貰う。

 

 ……正直、ライダーから一撃貰ったことは、忘れかけていたので、思い出させて欲しくなかった。

 

 

 

 

「……貴方達、いつまでのんびりしているつもりなのですか?」

「おお、常識枠」

「ちょっと、黙れ」

「熱い!?」

 

 黒ジャンヌの会話にヤジを入れたら、目の前で炎が立ち上った。

 アサシン達に加えて、凶化しているはずのサーヴァント達までこちらに呆れた目を向けている気がするのだが、気のせいだと信じよう。

 

「……コホン、たかだか残り滓みたいに矮小な存在が助けに来ただけで、勢力が優勢になったとでも?」

「思うわけないだろ、何言ってんの?」

「『ちょっと、黙れ』」

「ごめんなさい」

 

 黒ジャンヌに加えて、オルガもツッコミ入れてきやがった。

 ……疑問符つけられたら、返答したくなるのが人間でしょうが。

 

「……貴方は……貴方は、何故こんなことを?」

 

 アサシンにも「空気は読めるのに、なんで態々ボケに持ち込まないと気が済まないのですか!」と説教されていると、隣にいたジャンヌが黒ジャンヌにそう呼びかけていた。

 

「貴方に、それがわからないはずがないでしょう?たとえ属性が違えど、貴方は……私なのだから」

「…………それは、どういう」

「わからない?へぇ、そう……鈍いわね」

 

 黒ジャンヌは嘲笑を浮かべて、ジャンヌを見下した。

 そして話し始める。

 自らの行う残虐の理由を……

 

「なら、教えてあげるわよ、醜い善性(わたし)……私は、この国を恨んでる……国を救った私を裏切った。名誉を汚し、誇りを奪い、心も体も凌辱し尽くしたこの国を……私は憎み、そして恨んでいる。貴方も火刑に処された憎しみを、覚えているはずでしょうに」

 

 その様子を見ながら、俺は頭の中でその言葉を否定していった。

 その内に、思わず苦笑いを浮かべてしまった。

 ……アサシンも()()()()()()()()()()()()()、同じタイミングで目が合う。

 

 

「わた、しは……そんなことは!」

「だから、壊すのです。殺すのです。貴方(わたし)が救ったフランスは、私によって壊される。何、滅ぶまでの時間が変わっただけでしょう?」

「バカな、ことを!」

 

 ついに聖女様の怒りは沸点に達したようだ。

 黒聖女の真意など、確かめるに値しない。

 そう感じたのか、それとも分かり合えないと結論づけたのかはわからないが……ジャンヌは旗を持ち、戦闘態勢に移行する。

 

 その直後のことだった。

 

「あら、少し間が悪かったかしら?なら、ごめんなさい。こういう場面に遭遇したのは、初めてなのよ私!」

 

 俺たちの前に……一人の女性が現れたのは。

 

 

 

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