カーマさんとイチャコラしながら人理修復する話     作:桜ナメコ

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カーマさん無双の時間です。
王妃様含む慣れてないキャラが、難しい……
毎度、プロの方々を尊敬し直す毎日です。


14話 別にここで終わらせてしまっても以下略

 カツリ、カツリと彼女の靴音だけが、その場に響き渡る。

 そして、彼女は黒ジャンヌの目の前で立ち止まった。

 

「……貴方は?」

「……これは失礼。挨拶もせずに私ったら……今、ちょっと頭の中に沢山の感情が一杯で、緊張してるみたい」

 

 黒ジャンヌは、明らかに殺意を飛ばしながら質問したのだが、対する彼女は堂々と、そして優雅な仕草でそう受け答えする。

 

 その様子を見ていた全員の内、一人を除いた誰もが、呆気に取られていた。

 黒聖女も、白聖女も、いつも小うるさいアサシンでさえ、ポカンとした表情で彼女へと視線を向けている。

 

 しかし、除かれたその一人は女性サーヴァントの顔を見て、あからさまに挙動不審になっていた。

 

「…………セイバー、知っていることを全部吐きなさい」

「………………」

 

 黒聖女の問いかけから逃げるように、その一人……セイバーは称賛に値するスムーズさで目を逸らした。

 アサシンに時々問い詰められる俺としては、指南してもらいたいレベルである。

 

「答えなさい、セイバー」

「…………はぁ」

 

 もう一度、黒聖女が先程よりも強い口調で問い詰めると、ため息を吐いてからセイバーは語り始めた。

 ……渋々感凄いな、この人。

 

「彼女の美しさを、私が見間違えることなどありません……誰よりも民に愛され、そして民によって殺された王妃……ヴェルサイユの華とまで謳われた少女ーーー」

 

 そこまでセイバーが語った所で、オルガは驚きに満ちた声音で辿り着いた事実を口にする。

 

『っ!……彼女はマリー・アントワネット……そしてセイバー、貴方の真名は……シュヴァリエ・デオン!』

 

 その言葉に対して、彼女……マリー・アントワネットは微笑みを浮かべ、対照的にシュヴァリエ・デオンは渋面を浮かべた。

 

 少し間が空いた後、一人の少女の声が沈黙を破る。

 

「ええ、ええ。誰かはわからないけど、私の名前を呼んでくれて、とっても嬉しいわ!」

 

 王妃様はそう言いながら、満面の笑みを浮かべたままこちらに近付いて来た。

 キラキラの擬人化のような明るさの笑顔に、元々超ダウナー系女神なアサシンは不機嫌そうに舌打ちをしている。

 機嫌を損ねられてもなんなので、ポンポンとその頭に手を置いて宥めておくことにした。

 おい、オルガ。

 緊張感ないわね、みたいなため息を吐くんじゃない。

 

 俺の目の前へやってきた彼女は、最後にもう一度ニコリと笑った後、その表情を凛々しいものへと変化させると

 

「その名がある限り、その名を呼んでもらえる限り、私は私の役割を果たします。この愛しい国のため、そして民のためならば、何度でも私は立ち上がりましょう」

 

 そう宣言するのだった。

 

 

 

 思わず、息を呑んだ。

 彼女の小さいはずの後ろ姿が、大きく迫力のあるものに見える。

 

「格好いいよな……ほんと、英霊って」

「……そんなことに、今更気付いたんですか、マスター?」

 

 思わず溢れた本音に、アサシンは少し苦笑しながらそう返した。

 なんだかこちらが子供扱いされているようで癪だったらので、反撃しておく。

 

「お前がカッコいいのは、ずっと前から知ってるけどな?」

「な!?……っ!……あんまり、揶揄わないでくださいよ」

 

 うん。

 本当に、ウチの赤面アサシンは可愛い。

 

 そんな緩々な雰囲気の俺たちと、指示を出されないため居心地の悪そうなサーヴァント達、何やら考え込んでいるジャンヌを置いてきぼりに、黒聖女と王妃様の論争は加速して行く。

 

「……黙りなさい。貴方に、この戦いに口を出す権利はありません。蝶よ花よと愛でられ、命を終えた貴方には、私達の憎しみは理解(わから)ない」

 

「ええ、わからないわ。でも、わからないことはわかるようにする……それが私の流儀なのです」

 

「………………」

 

「だから、今の貴方は見過ごせない。竜の魔女、ジャンヌ・ダルク……貴方はただ、八つ当たりをしているだけ」

 

「……黙りなさい」

 

「理由は不明。真意も不透明。何もかもが消息不明なんて、日曜日に出かける少女のようでしてよ?」

 

「……黙れと言っている!」

 

「ですから私は……そこの何もかもが分かり易いジャンヌ・ダルクと共に、意味不明な貴方の心を、体ごと手に入れます」

 

「「「「『…………は?』」」」」

 

 

 少し聞き流してたから、詳細は知らないけどね、うん。

 こんなシリアス全開な場面で、百合展開は予想外だったかなぁって、俺は思うよ。

 

 

◇◆◇

 

 

 誤解でした。

 貴方を手に入れる=『王妃として私の足元に跪かせてやる』と訳すなんて、学校で教わらなかったので仕方ない。

 

『……時折、発言が物騒になるわね、あの王妃様』

「「……同意」」

 

 その発言にアサシンでさえもが、苦笑いを浮かべる始末である。

 しかし、黒聖女が彼女を完全に敵認定するにあたっては充分すぎる言葉だったようで、こちらを囲んでいたサーヴァント達が、武器を構え直した。

 

「……マリー……王妃、様?でいいのか、わからんが……戦えますか?」

「王妃様だなんて!?なんて、可愛くない呼び方……何か他の呼び方はなくって?」

「………………ああ、もう!めんどくさい!渾名なんて思いつくかっての……呼び捨てでいい?敬語も外すよ?」

 

 ちょっと真面目に考えてみたのだが、さして友達が多いわけでもない俺が、簡単にセンスの有る渾名など思いつくはずがなかった。

 そのため、礼儀も何も無視してそう聞く。

 話した感じ、多分そこまで礼儀に厳しそうには見えなかった、という理由もあるが……

 

「呼び捨て、呼び捨てと言いましたか?それは、素晴らしい!いいわ、とても気に入りました……敬語もなしで構いませんとも!」

 

「……ちっ」

 

「『アサシン!』」

 

「ちょ、お、オルガまで怒らなくてもいいじゃないですかぁ!?」

 

 簡潔に言えばカオスである。

 

 戦闘再開にも関わらず、呼び方やら初名前呼びやら何やらで、感動してたり、喜んでいたり、嫉妬していたりと戦闘態勢に移行しているのは、ジャンヌただ一人という状態。

 

「み、皆さん!今は、そんなことをしてーーーっ!」

 

 注意を呼びかけようとしたジャンヌを黙らせるように、向こう側のアサシンが襲いかかる。

 拷問具を操るそのサーヴァントから、ジャンヌは身を守り続けるも、周りに気を回す余裕は残っていない。

 ただでさえ絶不調なジャンヌは先程、精神的な悩みが生まれたこともあって、その動きは芳しくなかった。

 

「……純粋な少女の血、聖処女とも言われたあなたなら、きっと最高のーー」

 

 狂気に満ちたその赤い瞳に見つめられ、一瞬だけジャンヌの体が硬直する。

 そのサーヴァントの鋭利な爪が伸び、ジャンヌの白雪のような柔肌へと傷をつける……その直前にーー

 

「ちょっと、結……何やってるの!?」

「マシュ・キリエライト、これより……対サーヴァント戦に入ります!」

 

 カオス発生の中心部で、アサシンの成長に涙していた俺へとツッコミを入れながら、真面目な彼女らが突撃してきた。

 

 

◇◆◇

 

 

「やっと来たな……グロ酔い立香」

「その呼び方はやめて!?」

 

 立香達がジャンヌの危機に"間に合う"ことは、オルガによって知らされていた。

 茶番のような泣き真似(泣きたいぐらい嬉しかったのは本当だが)をやめて、俺とアサシンも戦闘に参加することにする。

 

 彼女達が来るまで、戦闘を開始しなかった理由は、こちらが戦闘で優勢になり、黒聖女が逃げる……なんてことが無いようにするためだ。

 つまり、手数を揃えてから各々が局地戦に持ち込むことが目的だった。

 黒聖女の護衛が0になる所にアサシンをぶつければ、逃げられることもなく終わらせられる。

 ……勿論、アサシンが負ける心配など、一切していない。

 

「……マシュと立香はそのまま、拷問姫を抑えてくれ。ジャンヌにはライダーを任せる。ちょっと悪趣味だが、マリーはセイバーを……仕方ねぇから、ランサーは俺が相手する」

『……はぁ……反省しないわね、あなた』

 

 全体に指示を送ってから、警棒を取り出した。

 オルガもため息を吐きながらも、術式の起動に移ってくれる。

 

『ちょっと待て!君は万全な状態じゃないだろう!?』

 

 俺の言葉を聞いたロマンが、俺の安全面について聞いてくるが……これでも悩んで決めたのだ。

 ジャンヌが何かに迷っていたり、黒ジャンヌに少し思う所があったりすることも事実だが、何を置いても優先すべきは特異点の修復と立香の安全だ。

 そう文句を言い返そうとした時、マリーが口を開いた。

 

「一人で相手をする必要はありませんわ……アマデウス、いい加減に働きなさい」

 

「『……アマデウス?』」

 

 俺とロマンの声が重なる。

 アマデウス、有名な方だとモーツァルト。

 マリー・アントワネットとは、ある意味有名な逸話を残した人物なのだが……

 

「仕方ないなぁ……まあ、そろそろ言われると思っていたんだけど……でもね、マリー?僕、戦闘とかからっきしだよ?生憎と、ただの音楽家なんだ」

「それを言ったら、私はただの王妃じゃない。ほら、逃げないの!」

 

 やれやれ、といった風にため息を吐きながらその男性は姿を現した。

 指揮棒を、片手に気怠そうにこちらへ歩いてくる様子は……なるほど、確かにロクでなしと呼び声高いだけある。

 

「まぁ、マリーの命令なら……仕方ないか」

 

 ロクでなしが指揮棒を振った。

 ただ、それだけなのに……体が軽く、そして脳がクリアになっていく。

 さらに、地味に痛みが残っていた脇腹の痺れが治まっていく。

 

「……どこが、ただの音楽家だよ」

 

 常人なら聞こえない音量で呟いたのだが、アマデウスはニヤリと笑ってこちらに手を振ってきた。アイツ、耳良すぎだろ。

 

『と、とりあえず……無茶だけはやめておくれよ?』

「わってるよ!」

 

 予想外のビッグネームにワタワタしていたロマンへ、そう言い返しながら、暇を持て余していたランサーへと歩いていく。

 

「よっ、ランサー……お手合わせ願いたいんだが?」

「……ふっ、よかろう。丁度、血に飢えていた所だったのだ」

 

 声をかけられたランサーは、少し嬉しそうにこちらへ槍を向けて来た……もしかしたら、自分だけ相手がいなくて悲しんでいたのかもしれない。

 ……もしそうなら、孫に構ってもらえない爺さんみたいだな……なんか怖く無くなってきたぞ。

 

 ランサーの構えに隙はない。

 どこかの色ボケ女神のように、武術はからっきしなランサー……なんてことはないだろう。

 正直、アマデウスからのサポート有りでも、勝てるとは思えなかった。

 しかし、俺の役目は時間稼ぎだ。

 勝てなくとも、負けなければ問題ない。

 

「……さっさと頼むぞ……アサシン」

「では……行くぞ!」

 

 出来ることなら、長時間は戦いたくないものだ……そんなことを考えながら、俺はランサーの槍へと警棒を叩きつけた。

 

 

◇◆◇

 

 

 

「さて……そろそろ、幕引きと行きますか」

 

 

 なんなのだ、コイツは。

 

 

「今のマスターは、弱っちいですから……あんまり、オルガに無理もさせたくないですし……巻きでいきましょう」

 

 

 本当に、なんなのだ。

 この化け物は……

 

 

 竜の魔女、ジャンヌ・ダルクはこのフランスで二度目の生誕を迎えてから、初めて感じる感情に戸惑いを隠せなかった。

 

 たった一人のサーヴァントを相手に、何度も何度も叫び散らし、攻撃を行なっていく。

 

「燃えろ……燃え尽きろ!」

 

 私は聖杯を持っているのだ。

 私の憎しみが、憎悪が……そんな簡単に、打ち砕かれて良いはずがない。

 

 悲鳴を上げるように、そう叫び続け攻撃を行い続ける。

 

 しかし、それでも……

 

 放たれた怨嗟の炎は、より高熱の蒼き炎に掻き消される。

 旗や腰に差した黒剣により、繰り出される攻撃は、弓という近接戦闘には不向きな武器によって、受け流される。

 時々、こちらへ笑みを浮かべてくること……それにより、どうしようもなく己の実力が相手の下であることを実感させられた。

 

「……覚悟は、よろしいですか?」

 

 ついに、アサシンが初めて己の武器に手をかけた。

 先程感じた感情……怒りや憎しみとは違う。

 もっと生物の本能的なものに近い……その感情の名は恐怖。

 

 アサシンの目を見て、その理由が掴めた。

 

 このサーヴァントは、私に対して()()()()()()()()()()()のだ。

 強いて言えば、煩い……程度のことだけなのではないだろうか。

 

 フランスを助けるためではなく。

 私を止めるためではなく。

 この時代の狂いを修正するためですらなく。

 

 ただ、マスターの頼みだから……そんな理由で、私の報復(全て)を止めようとしている。

 

 竜の魔女は、その瞬間……自らの敗北を認めた。

 私だけではなかった。

 相手も、既に狂っていたのだ。

 

「……撃ちます。愛もてかれるは(カーマ・)ーーー」

 

 アサシンが目の前で、宝具を開放する。

 その直前に、黒き聖女は叫ぶのだった。

 

 

 

「来なさい……ファヴニール」

 

 

 

 たとえ試合に負けようと、勝負では勝つ。

 

 こんなところで、私の夢は終わらせない。

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