皆さんがアサシン様を手に入れられるよう祈ってます。
大奥カーマさんと比べると、今作カーマさんのチョロイン感が倍増しますね……
いつもより短めで、中々話が進みませんがゆっくり付き合ってくれるとありがたいです。
圧倒的なまでのステータス差に加え、擦り傷だらけの身体、既に息が上がっている様子を見るに、体力もかなり消耗しているだろうということは容易に想像できた。
しかし、それでも
「……さてと、どうしたもんか。この●っくろくろすけ」
悠々と、飄々と、私とランスロットの間に割って入った青年は余裕ぶった普段の調子でニヤッと笑う。
『伏字にする意味あるのかしら、それ……気を取り直して、手筈通り行くわよ?』
「アイアイ
『一応、女性として扱ってもらえない!?』
「Arrr!!」
余りにも普段通りの彼らの姿に、どこか安心する私が居た。
彼らなら、きっと……
円卓最強と謳われたランスロットが相手であろうと、きっと勝利を……
そんな希望を抱いた私に、彼らは言ったのです。
「んじゃ、早速……」
「『撤収!!!』」
「へ?」
その瞬間、信じられないぐらい間の抜けた声が、私の口からこぼれ落ちた。
………………数分程前
「……ジャンヌが正面から勝てない相手が居たのは、完全に誤算だったな……さて、どうしたもんか」
『現場に急行したところで、勝機はあると思う?』
「……完全に回復した状態ならともかく……既に【
オルレアンの街中を疾走しながら、オルガとの状況確認を行う。
ジャンヌの危機を知ったのが、五分ほど前……手遅れになる前に間に合わせることが絶対条件であるのは変わりないのだが、このまま無策で突っ込んでいったところで、犠牲者が増えるだけである。
「罠か、奇襲か……アサシンになすりつけるのも一つの手だな……」
『いくらアサシンの戦闘経験が通常のサーヴァントより豊富だといっても、ファヴニールとジャンヌ以上の戦闘能力を持つサーヴァントを同時に相手取るのは厳しいと思うわよ……一撃で仕留められるなら、奇襲が最も現実的じゃないかしら?』
オルガの下した判断が、本当に最適解なのだろうか?
考える。
思考は力だ。
戦力差、全体の状況、これまでの策。
様々な要素を頭の中で転がし続け、そして深く何度も考える。
状況を打破するために必要な情報を脳内の記憶を探り続けていき……
「そうか……サーヴァント、か」
『結?』
「……うん、思いついた。オルガ、アサシンに念話繋げるのと、最大範囲でサーヴァント探知を頼んでもいいか?」
『ええ、了解よ……どういうつもり?』
俺の意図が読めないのか訝しむような声音でオルガはそう問いかけてくる。
走るの疲れてきたなぁ、なんて考えながら彼女に対して一言呟いた。
「ちょいと小旅行と洒落込むとするか」
『……はぁ?』
「わお、久しぶりにガチ不機嫌っぽいため息」
『そこまでキレてないわよ!?……まあ、いいでしょう、信じます……ほら、アサシンとリンクを繋ぎ直したわよ』
「絶対、今ジト目でこっち見てるだろ、お前」
『気のせいよ』
◇◆◇
「よっ、と……はぁ!」
目の前の邪竜が放つブレスを後方に宙返りすることで避け、一発だけ矢を放って反撃しておく。
しかし、喉元へと直行していったその一撃は、邪竜に衝撃を与える直前に霧散しているようにも見える。
「……なんというか、根本的にダメージが通ってる気がしないんですよねぇ……どうしましょうか」
幼女姿のまま戦闘を行なっている女神様ことアサシン、カーマは目の前のファヴニールに対して頬を引きつらせながら、そうボヤいた。
戦闘を始めて十数分。
この様子なら、負けることはなさそうですね……なんて思っていたアサシンは、それと同時に一人では簡単には勝てそうでもないことに薄々気がついていた。
「私一人なら、前回見せた超強ブレスも避けることができますし……それにしても、本当に……どう倒しましょうか?」
金剛杵による乱打、弓の連射、蒼炎を使った爆撃……最も効果が高かったのは蒼炎を用いた攻撃であり、外皮が硬すぎるのか金剛杵ではダメージを与えられそうにないことはデータとして得ることができている。
「……魅了、できれば……支配権を奪い取れますかね……?」
宝具を打ち込みたい気持ちもあるのだが、現在進行形でマスターの残存魔力量は減少しつづけているので、大技を避けておきたいというのも事実。
むむむ、と悩みながら鬱陶しい邪竜のブレスを
誠に心外なんですけど。
『……あー、テステス、アサシンさん聞こえます?』
「……っ!?!?ひゃい、聞こえてましゅ」
『めっちゃ噛むじゃん、どしたよ?』
そりゃ、耳元でいきなり声をかけられたら驚くに決まってるじゃないですか!?
ばかですか、ばかですね。知ってますし、全然嫌じゃないですけど、やる前に声かけてくれません?
オルガが話すと思って油断してましたよ、こんちくしょう。
「……コホン、いえ、なんでもないですよ。それより、どうかしたんですか?頼み事なら大体何でも引き受けますけど」
顔が熱くなるのを自覚しながら、平常心を心がけてマスターにそう言い返す。
…………我ながらちょっと甘過ぎますかね。
『せめて内容聞いてから引き受けなさいよ……無茶振りが来ても知らないわよ?』
「マスターが、私を無駄に困らせるわけないじゃないですか……というかオルガも聞いていたんですね」
『むすっとするのやめなさい。無駄に可愛いわね、ほんと……って、違う、さっさと本題に移りなさい、結』
最近、オルガまでもがマスターのように私を愛でてくるのはどうしてなのでしょうか?
……まあ、深くは考えなくてもいいことですね。
『そうだな、んじゃ簡潔に言うわ』
「……?」
『ちょっくら隣街まで散歩してくる』
◇◆◇
そして今。
「『撤収!!!』」
二人してそう叫ぶと同時に、恐らく本日最後であろう【代償強化】を使用する。
効果 瞬発力・脚力 強化
代償 残存魔力 七割
激痛に歯を食い縛って耐える。
強化完了と同時に、行動を開始する。
『路地に入るわよ、案内するからしっかりついてきて!』
「おう」
傷だらけのジャンヌを素早く横抱きに抱え上げ、黒騎士へ背を向けてオルガの指示通りに通りを走りはじめた。
「む、結さん!?わ、私は……」
「うっせぇ、格好つけてんだから黙って抱えられとけ!」
途中ジャンヌが自分で走れます、と強がりにも程がある発言をしたので、ピシャリと叱り付けてそのまま走り続ける。
それに……彼女の出番はまだ先だ。
ぶっちゃけてしまえば、別にここで俺が力を使い果たそうとも、そこから先のプランに支障はないのである。
暫く走り続け、息も絶え絶えになってきた頃。
チラッと背後を確認すると、10メートルほど離れた距離に黒騎士の姿があった。
全部出し切るつもりで使った【代償強化】による速度上昇の効果は高く、ジャンヌを抱えた状態でも、追いつかれることはなさそうだ。
「Arrrrr!!!」
殺気がすげぇ。
怖いんだけど、何あいつ。
俺が視線を向けていることに気がついたのか、憎悪の念を際限なく雄叫びと共に伝えてくるその様子は鬼か何かか。
距離はあるが、体の底から湧き上がってきた嫌な予感を信じて回避行動を取った。
……と、同時に視界の隅を弾丸めいた速度で瓦礫がすっ飛んでいった。
「……っ、投擲!?……オルガ!」
『わかってる!その路地抜けたら、目的地まで一直線だから、そのまま走り続けて!左手だけ、後ろに向けてくれれば投擲は私が押さえるから』
想定外の荒技に対し、オルガがナビゲートを中断して放たれる瓦礫を【ガンド】を使い叩き落とす。
……こいつ高性能すぎて時々怖い。
そのとき、お姫さま抱っこから右手一本を支えてする俵運びのような担ぎ方に持ち方を変えられていたジャンヌが、肩にしがみつきながら疑問の声を上げた。
「……目的地、ですか?」
「もう着くぞ、残念ながらここからはお前が頼りだからな」
そこにあったのは……
「馬、小屋……ですか?」
ジャンヌがなんとも言えなさそうな顔を浮かべるのを見て、ほんの少し笑ってしまったのはしょうがないことだと思う。
◇◆◇
「…………ワイバーンの勢いが弱まりましたか。心なしか個体数も減少している気もしますね……」
鎧を纏った長髪の騎士がそこには居た。
マスターもなく、理由もわからず召喚されたその男は、自分の良識に従って行動し、現在では街を大量の飛龍から守る守護者となっていた。
聖人と名高く、ありとあらゆる存在を守り、そして罪なきものに向けられる暴力に対して躊躇いなく剣を抜く高潔なる騎士。
その名はゲオルギウス。
ガチャリ、ガチャリ、と鎧の音を立てながら冷静に周囲の警戒を行う彼の元へ……
「……よっしゃ、逃げ切ったぁあ!!」
『もう、しばらく馬には乗りたくないわね』
「私も、ここまで速度を上げたのは、久しぶりです……」
「Arrr……!!」
賑やかな逃走劇を繰り広げる青年と聖女が現れるまで、あと十数分。