なるべく各章ごと、オリジナル展開は入れていきたいと考えているので、その点はご了承下さい。ただ辿るだけでは、飽きてしまうと思うので。
……私が目覚めたとき、その声は聞こえなくなっていた。
私を導く神の声。
啓示、これまで私を聖女たらしめてきたその声が聞こえなくなっていた。
さて、神が与えたのは束縛からの解放か。
否、恐ろしい程に否である。
神の声など聞こえない。
神に見捨てられたこの国など、救う価値もない。
熱を覚えていた。
痛みを覚えていた。
つい先程、本当に火刑を受けたかのような……そんな苦痛も屈辱も何もかもを覚えていた。
ならば、どうする?
壊してしまいましょう。
燃やしてしまいましょう。
全ては、自分の思うがままに。
全ては、私の復讐のために。
そうでなくては報われない。
フランスを救った私は、報われ
燃やせ、壊せ、と令を与える。
覚悟も力も、何もかもを伴った復讐の凱旋を今、ここに。
壊れてしまえばいい。
燃え尽きてしまえばいい。
塵、芥を握り潰すかのように、消し去ってしまえばいい。
間違いなく、それが私の意思であり、それが私の存在理由だ。
神の声など聞こえない。
フランスを滅ぼすことだけが、今の私の全てである。
わかっている、理解している。
ああ、なのに。
そうだというのに。
『本当にそれは、貴方の意志なのですか?』
煩い
『貴方が選び、貴方が掴みたい未来なのですか?』
黙れ
『貴女の望みは、本当に復讐なのですか?』
覚悟は決めたはずなのに……
どうして、声は聞こえるのだろう。
◇◆◇
「だ か ら!相手方のアサシンだけは、私に任せておけばいいのよ!この小ジカ!」
「え、えぇ……?」
「あらあら、これだから野蛮な蜥蜴は……それよりも、ますたぁ?わたくしとデートでも」
「え、えぇ……?」
「な、なっ、で、デート!?清姫さん、それはダメです!先輩は、先輩は……」
新入りのサーヴァント、ピンク髪のアイドル系(ただし尻尾つき)とお淑やかな雰囲気な着物の少女(ただし角つき)の真名がそれぞれ、エリザベート=バートリー、清姫だったことが判明し、クラスもランサーとバーサーカーだと教えてもらった。
ジークフリートにかけられていた呪いの解呪のため、洗礼詠唱を行い、戦力が揃ったところで作戦会議を開始したわけだが……
『絶望的なまでに話が進まないわね……』
「……これまた、面倒くさい奴ら拾ってきたなぁ」
「すまない、面倒をかけてすまない」
「お前じゃねぇよ!?いや、確かに面倒な解呪法だったけど!」
「すまない、早とちりしてしまいすまない」
「やっぱ、めんどくせぇ!?」
キャラが濃いのが増えたお陰か、全く話が進まない。
ジークフリートとやらは、クソみたいに強そうな気配を周りに撒き散らしながら、ペコペコと頭を下げてくるし……大丈夫か、色々。
アサシンに至っては、「やることが決まったら起こしてください」と俺の膝で眠り始める始末である……あ、膝枕の約束してたな。
「これは……もう少し時間がかかりそうね?それじゃあジャンヌ、私とガールズトークでもしないかしら?」
「が、ガールズトーク、ですか。話のネタがあればいいのですが……」
「大丈夫よ♪きっと。あ、そうだったわ。アマデウス、こちらの話は聞かないように……」
「なんてことだ!僕から耳の良さを取ったら、性格の悪さと怠け癖ぐらいしか残らないじゃないか?」
「それを、自分で言うのですか……ふむ、暇だと言うのならば、私は近場のワイバーンでも狩ってきましょうか……」
ジャンヌとマリーがイチャコラしているのを、アサシンのサラサラとした髪を撫でながら眺めていると、暇を持て余したゲオルギウスが、物凄い軽いノリでワイバーン狩りに出陣する。
うん、協調性皆無の奴らばっかだね!
『……しりとりでもするかしら?』
「いいね、縛りはどうする?」
『六文字、濁音なしで』
「了解」
後、三十分ぐらいはかかると見ていいかなぁ……アサシンでも愛でて時間潰そう。
で、その後。
「それじゃあ、班分けの確認な……といっても、前回と同じような感じだけど」
正面突破班
メンバー 立香
マシュ
エリちゃん
清姫
ジークフリート
遊撃班
メンバー ゲオルギウス
マリー
アマデウス
特殊班
メンバー アサシン(俺セット)
ジャンヌ
「正面突破班には文字通り、工夫ゼロで特攻してもらう。最重要目的は、ファヴニールの撃破……エリザだけは、向こうのアサシンだけど」
俺の確認に、拳を胸の前でギュッと握ってやる気を表すマシュには、これからも健やかに純粋に育ってもらいたいものである。
サラッと立香の腕に抱きついている清姫をスルーしながら、そんなことを考えた後、立香と目があった。
『任せて』
『頼んだ』
声に出さずとも、何を伝えたいのかは理解できた。
簡単にアイコンタクトを交わした後、次の三人に目を向ける。
「遊撃班はその援護、突破班とフォローし合える一定の距離を保ちつつ、不測の事態に気を遣ってくれ」
「ええ、任されたわ!」
俺の言葉に、ニコリと笑ってウインクを決めるマリー。
ゲオルギウスとアマデウスがSPのように、サイドを固めているため、何処ぞのスターのように見える……いや、間違ってないわ。
可愛いし、眼福だけど、寝起きで少し不機嫌なアサシン様が脇腹を抓ってくるのでやめて欲しい。
「で、だ。特殊班のことなんだが……俺たちの動きは考えなくていい……ぶっちゃけ、向こうの反応を見てからどう動くか考える。それで、いいよな?」
「……ええ、恐らく。考えなしに飛び込むよりは、その方が危険性は少ないと思いますが…………本当に、いいんでしょうか?」
最後に視線をジャンヌに向けると、少し申し訳なさそうな顔をした彼女が、不安げにポツリと呟いた。
『大丈夫よ、ジャンヌ。あなたは私のサーヴァントなんだから、胸張ってついてきなさい!』
「オルガの言う通りですよ……大体、私が負ける訳ないじゃないですか?」
オルガ、アサシンの言葉を聞いてジャンヌの表情が柔らかくなる。
彼女がこちらに遠慮するのも当然かもしれない。
特殊班の目的は、彼女の
…………それにしても、オルガさんとアサシンさん頼もしすぎじゃないですか?
俺よりも主人公してる気がして悲しい。
アホなことを考えながら、一人遠くを眺めていると、カルデア司令部から連絡が入る。
一応、常に通信だけは繋いでいたのだが、存在実証やら何やらでスタッフの人手が足りていないらしく、ロマンもダ・ヴィンチちゃんも働き詰めで動けなかったらしい。
……案外、向こうの方がブラックだったりするんじゃないだろうか。
『話がひと段落ついたところみたいだね?戦力も当初と比べれば、かなり増強できているみたいだし、もちろん作戦に反論はないよ。むしろ、ここまでの状況に持ってこれたことを誇っていいと思う……帰ってきたら、立香ちゃん達には、僕秘蔵の高級和菓子を進呈しよう』
「まだ隠し持ってたのかよ……」
緊張を和らげるように話しかけてきたロマンに対して、俺は思わず苦笑いを浮かべた。
内心では、空気を読めるのに読まないタイプの同類だな、と共感したりなどもしているのだが、ロマンを称賛するのはなんとなく癪なので黙っておく。
「ドクターさん、私の分も確保しといて下さいね」
『君が初めてまともに会話してくれたのが、和菓子絡みの内容で、僕は少しだけ悲しみを覚えているよ……』
『相変わらず、軟弱なメンタルしてるわね』
「お前が言うな……」
『……どうかしたかい?』
「いや、なんでも。お嬢がお前に文句つけてただけだ」
『相変わらず、僕は所長に嫌われているみたいだね……』
和菓子という単語に対するアサシンの食いつきっぷりに、ロマンは複雑そうな声音で返答する。
オルガの発言はブーメラン過ぎるので、流石に見過ごせなかった……いや、今は大分マシになったんだろうけどさ。
『別に嫌ってないわよ!?ただ、その……あれよ、あれ。貴方が私に話しかけてくるタイミングが、尽くイライラしてる時に集中してたから……』
「訳すの面倒だなぁ……ま、よかったな、ロマン。別に嫌われてないとさ」
いつかオルガがモニター越しにでも念話を届けられますように、なんてことを考えながら適当に雑談を続けていると、ロマンの隣から、コホンッとわかりやすく注目を集めるように咳払いする天才の姿が、モニターに表示された。
『あー、ちょっといいかい?ロマニに代わって本題を話そう……皆に、ほんの僅かな可能性だがあり得る最悪の想定外について話をしたくてね……』
「最悪の……?」
ダ・ヴィンチちゃんの物騒な言葉にポツリと立香が一言溢し、恐らく偶然なのだろうが、興味深げにアサシンがその後を続けたのだった。
「想定外……ですか」
◇◆◇
早朝から始まった特攻作戦の疲労を少しでも抜いてから決戦に臨むため、仮眠をとること4時間半ほど。
睡眠は1時間半周期で取る量を調整するのが効率的である、と何処かで聞いた覚えがあったので、その通りにしてみたが、効果があったのかはいまいちわからなかった。
まあ、少なくとも……
『……ん〜、よく寝たわね。お陰様で、絶好調よ』
「4時間半睡眠で、"よく寝た"とは……お前、どんな生活送ってきたんだよ?」
『夢見が悪いのよ……最近は、そうでもないけど』
「オルガにも睡眠は必要なんですね……」
『ギリギリで人間扱いしてもらえるかしら』
脳内万能者さんは、元気充分みたいでなによりである。
今は、時間帯で言えば夕方と言えるだろう。
ワイバーン共に普通の生物の法則が通じるのかはわからないが、夜中頃に相手本陣へ乗り込みたいところであるため、そろそろ俺たち以外の出発時だ。
「……じゃ、行ってくるね」
「マシュ・キリエライト、出陣します!」
『ええ、二人とも……無理はダメよ?必ず、五体満足の状態で帰ってきなさい!』
「「うん!(はい!)」」
オルガが真剣な眼差しで(姿は見えないのだが)彼女らの気を引き締める。
というか五体満足って言い方……それで良いのか?
「それじゃあ、ジャンヌ。今度会うときは、全部が終わった後ね♪」
「マリー……世間一般では、それをフラグと呼ぶそうだよ」
「互いにご武運を」
「ええ、必ず……皆の無事を願っていますよ。それとアマデウス、余り不吉なことは言わないように」
ジャンヌがニコリと微笑んだあと、冗談めかしてアマデウスに説教をする。
「…………」
「ま、そう固くなるなよ、大英雄…………立香を任せた」
「……この命を賭して」
「死んだら、許さん」
「ふっ……了解した」
邪竜への切り札たる最優のセイバーの肩をコツリと叩いて、思いを託した。
彼ら彼女らが出陣していくその背中に……
「……死なない程度に、頑張ればいいんじゃないですか……知りませんけど」
顔を赤に染めながら、彼女がボソッと呟いたのを聞いてしまい思わず頬が緩む。
…………………………
先手を打って、勝負を決める。
今夜、日を跨ぐ頃には決着がつく。
そんな、想定をしていた。
そんな、楽観的な考えを未だに持ち続けていた。
『………魔力反応急増中、これは……!ファヴニールが放ったブレスを格段に上回る数値です!』
『マスター藤丸との通信ロスト、存在実証不可……っ!位置情報、バイタルデータともにロスト……完全にこちらとの繋がりが途絶えました!』
カルデア司令部がざわめき、悲鳴にも似た異常事態報告の伝令があちらこちらへと飛び交う。
その様子を耳で感じ取ると同時に、視覚でも異常事態を確認していた。
立香たちが出陣してから一時間ほど。
外壁は、黒く澱んだ黒曜の砦へと姿を変えた。
門は硬く閉ざされ、街中の道は入り組み、変化し所々に存在する庭園には
それはもはや、オルレアンという都市の原型を留めることのない異形の巨城への変化。
都市全体を一つの建造物として取り込んだ
竜の魔女陣営、その最終兵器が遂にその姿を現したのだ。
邪竜欲望魔境都市 オルレアン
『やはり……持っていたか』
ダ・ヴィンチちゃんが苦々しげにそう口にする。
俺とアサシンは、その圧倒的なまでの世界干渉力を持つ一つの兵器の存在を既に知っていた。
つい先程ダ・ヴィンチちゃんによって、示唆された僅かな可能性。
掠れた声で、その存在を明言する。
「二つ目の聖杯……!」
その最悪が現実へと形をなし、俺たちの前に立ち塞がる。
それでは、やりたい放題行ってみよう!
……加減が難しいんです、すまぬ。
オリジナル展開って、マジで難しい……
矛盾点があったら、早々に教えてくださると嬉しい……というより、本当に助かります。
何気に今回の"しりとり"は鬼難易度だったりするかも。