カーマさんとイチャコラしながら人理修復する話     作:桜ナメコ

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 相変わらず話はスローペースですが、丁寧に行きたいと思います。
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26話 終節 邪竜欲望魔境都市 オルレアン(3)

 

 26話 「突入/激突」

 

 

 

 

 

 

「令呪を以って、汝がマスター、朱雀井結が命じる……全力でぶちかませ、カーマ!」

 

 

 

 

 雰囲気を大切に、久々の切り札使用で少々高揚しながら、俺はそう叫ぶ。

 

 かつて、宝具使用を渋った彼女はもういない。

 ニヤリと片頬を上げ、空へと手を伸ばす彼女の表情に曇りはない。

 

 

 忌むべき過去を払拭し、ボロボロになり、迷い、傷付け合いながらも、振り返ることなく駆け抜けたあの戦いがあったから、今の俺たちがいるのだ、と。

 

 その証明を真正面から叩きつけるように、誇りを持ってこの一撃を撃ち放つ。

 

 

 全て()かしてしまいましょう。

 全て魅了(うば)ってしまいましょう。

 

 それは、愛を与えるもの。

 それは、全てに快楽を与えるもの。

 

 それは、全てを満たす情欲の矢。

 

 

 

 『恋もて焦がすは愛ゆえなり(サンサーラ・カーマ)

 

 

 

 それは、遥か昔のこと。

 

 宇宙を焼く、と言われたシヴァの炎に彼女が焼かれた痛みの果てーーー肢体を失い、身体を持たぬ真の愛情をあらわす存在へと成り代わった彼女の逸話を元にした『第二宝具』。

 

 

 第一宝具『愛もてかれるは恋無きなり(カーマ・サンモーハナ)』とは異なり、この宝具では彼女の代名詞とも言える情欲の矢を放つことがない。

 シヴァの炎によって失われた身体=愛そのもの、といった解釈により、彼女自身を愛の矢として見立て、自身の体の一部である蒼炎を用いて攻撃を行うのである。

 

 故に……

 

 

 その蒼炎は触れるもの全てを魅了し、その身体を容易く消し炭と変貌させるのだ。

 

 

 

「これが、アサシンの第二宝具ですか……」

 

 

『……すごい、綺麗……!』

 

「……子供みたいな歓声を上げないでくださいよ、オルガ…………滅多に撃たないので、しっかり見ていてくださいね」

 

 

 近寄るワイバーンを一掃し、空へと立ち昇った蒼き光は、巨城を覆う結界内部へ激突し、結界を覆う黒の"膜"を剥ぎ取っていく。

 

 その美しい光景に、嘆息するもの、歓声を上げたもの……そして、感慨深さを覚えたもの、三者三様の反応を見せた俺たちに、微笑んだアサシンだったが、時間が経つにつれて彼女の顔は険しいものになってくる。

 

 それも、そのはず、この宝具には二つの問題点があるのだ。

 

 この宝具は、彼女の持つ最大火力の攻撃手段の一つであり、その消費魔力量の多さから、実際に第二宝具を解放したことは、本当に数えるほどしかない。

 令呪を使わなければ、全力での発動は厳しいと、彼女に伝えられたことがあり、問題点の一つはそこである。

 

 

 そして、もう一つ……

 

 

 天を蒼炎で穿ち続けていたアサシンの紅の瞳が、一瞬怪しげな光を灯した。

 それと同時に、彼女は表情を歪めながら、その苦痛の原因を口にする。

 

「……っ、あな、たは……引っ込んでなさい、マーラ!」

 

『……殺す者(マーラ)……ねぇ、結。今のアサシンって……』

 

「お察しの通り……限界まで、マーラとしての権能を引き出してる状態だ……アサシン、無理しなくて良いからな!」

 

「わかってますって…………任せて下さいよ、マスター!」

 

 

 俺の声に、彼女は気丈にも応える。

 ならば、俺はそれを信じるほか無いだろう。

 

 本格的にその膜を削り始めると、先程までとは段違いの量のワイバーン達が(※決して、先程までが少なかったわけでは無い)こちらへと群がってきた。

 

 アサシンの注意が一瞬だけそちらの方へと向くが、彼女も俺を信じている。

 

 当然、これも想定内だ。

 

 

 

「……ジャンヌ、オルガ!仕事の時間だ、蹴散らすぞ!」

 

「はい!」

『了解よ、装填にコンマ二秒。四連射までなら、合わせるわ。合図は任せる』

 

 

 返事とともに、前方より襲来するワイバーンと俺の間へ躍り出たのは救国の聖女ことジャンヌ・ダルク、その人。

 

 傷跡こそ消えたとは言え、ランスロット戦で彼女が受けた霊核へのダメージはそこそこ大きい。

 しかし、それを全くと言って良いほど悟らせない動きで、ジャンヌはワイバーンを食い止め、叩き落としていく。

 

 ……聖剣アロンダイトにザッパリ斬られたはずの彼女が戦線に復帰していること自体が、割とおかしいことなのだが、そこにツッコミは入れないで置いてあげよう。

 決して、流石、脳筋タイプ!……なんて思ってないから安心して欲しい。

 

 

 

 ジャンヌは、薙ぎ払いから振り下ろし、又は突きへと滑らかな動きで連続攻撃を仕掛け続け、大量の翼竜のタゲを取ると……地面に大旗を突き立て、棒高跳びの要領で空中へ身を踊らせた。

 

 キレの鋭い踵落としで地に翼竜を沈めると同時に、更に推進力を得た彼女は、空中で回し蹴りを決め着地……の、間にも最も近い翼竜の首を素手で掴み、そのまま地面へと叩きつけた。

 

 

「……なんか、あいつ強くなってない?」

『……気のせい、よ?多分…………多分』

 

 

 そんな様子を後方から眺めながら、オルガと会話しつつも集中力を高める。

 現在、俺の左手は、子供が遊びで使うように、鉄砲の形に組まれていた。

 

 時折、伸ばされたその指先からはパチパチと赤黒い光が弾けていて、その様子が()()()()()()()と知らさせてくる。

 

 

「んじゃ、まあ適当に……実験がてらに行ってみようか!……Eins(アインス)!」

 

 

 ドイツ語で1を示すその言葉に応じて……

 

 一筋の閃光が駆け抜けた。

 

 

 貫くはワイバーンの頭部、刺し穿ったのは赤黒い光を放つ()

 一撃で翼竜を落とした様子を横目で確認しながらも、動きは止めず、狙いを次の的へと移して……

 

 

Zwei(ツヴァイ)!……Drei(ドライ)!」

 

 

 再び、閃光が空を駆け抜けた。

 

 放たれた二本の槍は、片方は、こちらへ向かってきていた翼竜を撃ち抜いたが、もう一本の方は直前で回避されてしまった。

 

 

「っ、狙いが甘いか……とりま、ラスト!Vier(フィーア)!」

 

 

 撃ち漏らしたワイバーンを今度こそ仕留めた所で、ワイバーン襲来の波が一旦途絶えた。

 ふぅ……と一息つき、集中状態を軽く解く。

 こちらへと近づいて来たジャンヌが、少し引き気味に一つだけ聞いて来たのだった。

 

 

「……結さん、今のは?」

 

 返答は決まっている。

 もとより、俺もなんでそうなったのかは理解できていないのだから、そう言うしかないのだ。

 

 

「……魔改造ガンド、ですが何か?」

「はい?」

 

 

 ……あの槍が、元ガンドとか誰が信じると言うのだろうか。やっぱオルガ様天才だわ。有能すぎて時々怖いまである。

 そんなことを考えながら、俺は小さな声で呟いた。

 

 

「おつかれ、オルガ。次もよろしく」

『…………ええ、任せなさい』

 

 

 

 

 使い慣れない言語で、俺が合図を送った相手は勿論、オルガである。

 これが、俺が【代償強化】の過剰使用により、満足に魔術を使えない状態へ陥った時のために打ち合わせておいた遠距離戦法。

 

 相手の動きを読み、()()()()()()()()、音声を条件とした条件起動式の魔術を利用し、()()()()()()()()()()()穿()()

 

 その高速使用を、俺たちは行っているのだ。

 

 オルガが魔力刻印を通し、俺の体に住み着いたことの利点として大きかったこと。

 その一つが、マルチタスクの常時発動を可能にしたことだ。

 

 ガンドは護身用魔術として、使用されることがあり、比較的発動が容易である魔術の一つだ。(ガンドの原型が残っているか、と問われたならば、間違いなく否であるのだが)

 

 しかし、手間のかかる条件式起動魔術という型に当てはめた場合では、戦闘の片手間に作業を行うことなど不可能に近い。

 

 しかし、今の俺たちならば……

 

 その複雑な作業を、戦闘と魔術……二つのサイドに役割を切り分けて行える。

 

 魔術単体に、天才たる彼女が集中できるのならばどうだろうか。

 肉体を持たず、自身の意識が魔術回路と直接結びついている……その影響か、魔力操作の精度が生前よりも()()()()()()()()()そんな彼女なら、どうだろうか。

 

 

 答えは、今。

 

 俺の目の前に存在している

 

 脳天を穿たれ、地に落ちた翼竜達の姿が告げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 空が晴れる。

 

 

 

 

 

 観測者達は、希望の星をその目に捉えた。

 

 

 

 

 

 観測者達は、悍しい妄執をその目に捉えた。

 

 

 

 

 

 観測者達は、伝説の再来をその目に捉えた。

 

 

 

 

 

 そして、観測者達は……

 

 

 

 

 

 

 一人の少女の夢を、その目に焼き付けるのだ。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「……子ジカ、アンタ先行きなさい」

 

「え……」

 

 

 横から私を突き飛ばし、その右腕に深い切り傷を負った彼女は、迷うことなくそう言った。

 先を見据える眼光は鋭く、傷を負ったことさえもが些事であるかのように、表情も変えず、ある一点を睨み続けていた。

 

 

 

 

 

「…………ああ、本当に……憎たらしい」

 

 

 

「忌々しい」

 

 

 

「悍しい」

 

 

 

「煩わしい」

 

 

 

「汚らわしい」

 

 

 そんな中、庭園に一人の女性の声だけが響いていく。

 

 

 

「貴方もそうでしょう?…………互いが憎くて、絶対にわかり合うことなどできない。互いに忌み嫌い、永遠に認め合うことなどできない…………やっと、殺しあえる。その一点においては、あのいけすかない魔女にも感謝できるかしら……ねぇ、エリザベート=バートリー」

 

 

 

 その爪の先には、エリちゃんから抉り取った血が滴り、もう片方の手には体と変わらないほどの大きさを持つ大鎌が存在していた。

 

 敵方のサーヴァント。

 バーサク・アサシン……反英霊カーミラがゆったりとした歩みで現れたのだ。

 

 

 

「ええ、そうね……私はアンタが大っ嫌い。だから……」

 

 

 彼女はカーミラに対して、そう言うと一度言葉を止めた。

 そして……

 

 

「……死ね!!」

 

 

 次の瞬間、彼女はカーミラの目の前へと接近しており……手に持った槍を躊躇いなく振り下ろした。

 

 

「……っ!エリちゃん!」

「マスター……あまり、前へ出ないで下さい!」

 

 

 衝撃による風圧が、離れていた私達の元まで届き、突撃の瞬間を視認できない。

 思わず、その場へ駆け寄ってしまいそうになったのを、マシュに止められてしまった。

 

 そのとき、一人の大英雄が、ジークフリートがその結果を口にする。

 

 

「今の一撃は、確実にあのサーヴァントへ命中した……ギリギリまで防御行動を取る気配すら見えなかった……」

 

「なら……!」

 

「だからこそ、()()()()()()()

 

 

 それは、彼が私の言葉を遮り、そう告げたのと同時だった。

 二人が激突した方向から、何かがこちらへと吹き飛んできて……

 

 

「……っ、はっ!」

 

 

 私に衝突する直前で、それをジークフリートが受け止める。

 彼の腕の中を覗き込んで、私の呼吸が誇張抜きで一瞬止まった。

 

 額から血を流し、意識を失っている。

 

 そんな彼女の、エリちゃんの姿を見て、動悸が早くなる。

 

 

「おかしい……とは?どういうことでしょうか、ジークフリート殿」

 

 

 何やら、尋常ではない雰囲気を感じ取ったのか、真剣な眼差しの清姫がそう問うと……ジークフリートがその根拠を述べる。

 

 

「防御行動を取らない理由は、そんなものが必要ないから、だろう……さて、マスター……サーヴァントの全力を以て、傷一つすらつけられない防御力………まず、そのカラクリを解かないことには、勝負の舞台にすら上がれなさそうだ」

 

 

 エリちゃんの攻撃は確かに直撃した。

 その上で、カーミラは傷一つ負わなかったというのだ。

 その防御力を持ちながら、一撃でエリちゃんの意識を刈り取ったというのだ。

 

 

「…………ああ、くそぅ……最初っから、ハードモードすぎると思うんだけどな!」

 

 

 足は震える。

 

 声が掠れる。

 

 正直、怖い。

 

 

 それでも…………戦え。

 

 私を守ってくれた、彼女の為にも。

 

 

 

「……行くよ、皆。力を貸して!!!」

 

 

 

 vsカーミラ。

 

 

 巨城オルレアン

 

 その初戦の幕が、今上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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