カーマさんとイチャコラしながら人理修復する話     作:桜ナメコ

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まさかの連投に我ながらビックリ。
褒められついでに感想と評価が欲しいです(←調子乗んな)

冗談はさておき、
感想 評価 誤字脱字報告 助かります。
毎度ながらありがとうございます。


30話 終節 邪竜欲望魔境都市 オルレアン(7)

 

 

 

 

 

 

「あ、私ってば頭いいですね。迎撃しなければ脊髄反射だけでやり過ごせそうなので、攻撃しなければ、マスターの応援に集中できそうです!」

 

「貴方、何言ってるんですかねぇ!?」

 

 

 ギョロ目の大男、ジル・ド・レェもびっくりの暴論を披露したアサシンは体を普段の少女姿から、高校生ほどのものへと変化させて、水晶玉を愛おしそうに抱き上げた。

 因みにジルの私物であり、戦闘風景を映し出しているのはジルの魔術である。

 

 ただし、賢明にも男は理解していた。

 今その魔術を切れば目の前で鼻歌を歌いながら、群がる海魔達の攻撃を全て回避しているこの化け物に秒殺されるだろうと。

 

 しかし、このまま目の前の女を放置するわけにもいかない。

 聖杯の恩恵をバックに受けているとはいえ、宝具を永遠に使用していられるわけではないからだ。

 よって、賢いキャスターことジルくんは、笑顔で彼女に笑いかける。

 

「貴方、私と賭けをしませんか?」

 

 恐怖は表情に出さず、不気味な笑顔で誘いをかける。

 絶対的脅威をこの場で討つために。

 

「貴方のマスターが勝つか、そこのセイバーが勝つか……その貴方の大好きなマスターが、もし仮にそこで負けたら——」

 

 本来なら馬鹿馬鹿しいその挑発に、問答無用でキャスターを滅ぼせばいいだけのアサシンが乗るはずがない。

 そう、本来なら。

 彼女が冷静で、冷酷で、隙のない暗殺者だったのならば。

 

 

「ふっ、私のマスターが負けるわけないじゃないですか!」

 

 

 そんな、馬鹿げた挑発なんかに乗るわけがないのだ。

 

 

「負けたら、なんでも言うことを聞いてやりますよ!」

 

 乗るわけが……ないのだ。

 

 

◇◆◇

 

 

 

 セイバーことシュヴァリエ・デオンは、驚愕に目を開いていた。

 そして、同時に強い感動を覚えていた。

 

 どれだけの修行を積んだのだろう。

 どれだけの死線を超えてきたのだろう。

 

 ああ、この人は……

 

「良いね、久々に……純粋に、滾る!」

「お褒めに預かり恐悦至極……さっさと、逝って貰って構わないんですけどね!」

 

 一体どれほどのものを犠牲にして、これ程の強さを得たのだろう。   

 

 

 

 迷いのない滑らかな剣筋は美しく、鋭い。

 瞬間的な判断力や反応速度は英霊であるセイバーを上回り、素の身体能力の差を埋めていく。

 そして理解した。

 反応速度が、判断力が、最も重要となる戦型は何か。

 決まっている。

 

「だからこその、超接近戦か!」

「わかっても、離されはしねぇよ!意地でも喰らいついてやる!」

 

 超接近戦。

 近接戦闘用の武器であるセイバーのレイピアすら、()()()()()()()()()()()()()()()()。そんな、抱きついているかのような距離感で進行する戦いのことだ。

 

 並大抵の精神力ではない。

 全ての判断が死へと直結するその状況下で行われるその戦闘は、短期決戦を前提としたものである。

 体力はこちらに分があると見込んで、彼の戦型に引き摺り込まれるのを良しとしたセイバーだったが、その想定は大きく外れていた。

 

 結が神業とも言える絶技を披露し、渾身の突きを回避兼懐への侵入を成功させたのが十数分前のこと。

 それからセイバーは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 退けば詰め寄り、押せば往なされ、突き技を効果的に使うには距離感が近すぎる。

 結果的にこちらの強みを全て消されてしまい、そこからは泥試合だ。

 

 斬り返し、打ち合う。

 ときに凶弾を躱して、ときに首を刈り取らんばかりの豪剣を放つ。

 

 ミスった方が先に死ぬ。

 ただし残機はこちらが多い。

 それも、圧倒的にだ。

 

 全くフェアじゃない。騎士道に反するにも程があったが、青年もそれを承知の上なのだろう。

 英霊に挑む。

 それが、そんな理不尽と真正面からぶつかり合うことと同義だと、知っていながら戦っているのだろう。

 

 ならば——

 

「こちらも、全力を以って君を倒そう」

 

  "自己暗示"発動。肉体限界を拡張。

 ()()()A()()()()()

 

 異邦のマスター、君に最大級の敬意を。

 

「君に、私の全てを見せるとしよう」

 

 

 青年の持つ警棒をセイバーの剣が徐々に押し始めた。

 それまでは切り結び、どういう理屈か拮抗していた力の関係が崩れ始める。

 恐らく重心のかけ方やら何だの技術なのだろうが、これも青年の異常さの一つだ。

 ある程度は身体能力を強化しているのかもしれないが、それにしてもおかしい。

 純粋な力比べでサーヴァント相手に拮抗状態を作れる人間など、もはやそれは人をやめているに近しい存在である。

 

 まあ、それは良い。

 肝心なのは今、その何らかによって保たれていた拮抗が、セイバーの全力解放によって崩れ始めたことだった。

 

 

「……くっっそ、まじ、かよ!?」

「これで、君の負けだ!」

 

 馬鹿力。

 

 筋力Aとは、神話上の大英雄が届きうる限界領域。

 決して人が小細工や浅知恵の一つや二つでどうにかできるほどの力じゃない。

 そんなものを真正面から捻じ曲げ、握り潰せるほどの力、それが筋力Aランクというもの。

 

 

 見た目に似合わない暴力的なその筋力に、漸く青年とセイバーの間に距離が開いた。

 

 それは、事実上のチェックメイト。

 致命傷となる一撃が入ったわけではない。

 ただ単に距離が離れてしまっただけだが、青年にとっては絶望的だろう。

 

 元々、鋭く速くリーチの長い突き技を多用するセイバーとの距離をどう縮めるかがポイントであったその戦闘は、終わりを告げた。

 青年はこれから、警戒心の上がったセイバーを相手に、再び接近しなければならない。

 さらに加えて、セイバーの一撃を全て往なすか回避しなければ、そもそもまともに戦えないのである。

 

 しかし、まだだ。

 

「私は、全力で君の相手をする……そう言ったね」

 

 まだまだ、こんなものでは終わらない。

 

 さながら演舞を踊るように、剣を振るう。

 美しく、柔らかく、優しく、華やかに。

 

 その舞に合わせて、白百合の花びらがセイバーの周りへと現れていく。

 

 

「"百合の花散る剣の舞踊(フルール・ド・リス)"」

 

 

 解放された宝具。

 圧倒的な絶望感に打ちひしがれて、心が折れないだろうか?

 

 そんな考えを脳裏に浮かべたそのときに、自らの愚かさをこれでもかと痛感した。

 

 

『……宝具、ね。イケる?』

「愚問だ、ばーか。次で決まるから、関係ない」

 

 

 青年の瞳に迷いなどなく。

 次の瞬間、セイバーの剣と青年の警棒が衝突した。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ずっと、ずぅっと……あの馬鹿みたいな理不尽セイバーと戦い続けてきたんですものね」

 

「何度も何度も死を体感して、何度も何度も苦しくて叫んで泣いて」

 

「それでも、やっぱり立ち上がって力を求めて抗って」

 

 

 海魔が周りを囲っている。

 キャスターが下卑た笑みを携えて、その結末を待っている。

 

 あっさりと賭けに乗ったその少女は、本当に本当に幸せそうな微笑みを見せながら、恍惚と呟いた。

 

「やっぱり貴方は、私の最高のマスターです」

 

 幸せそうに断言するのだ。

 

 

「見て下さいよ、この人……私のために強くなってくれたんです。この人が、私の誇りなんです」

 

 

「だから、やっぱり……私のマスターはダメダメで、それでもやっぱり……誰よりも強くて格好いい、最強のヒーローなんですよ」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 飛び出す。

 

 カンは戻っていた。

 

 振り下ろされた剣を警棒で迎えにいく。

 

 激突の瞬間、いやそのコンマ二秒ほど前に

 

 俺は警棒を持つ右腕から力を抜いた。

 

 セイバーがアホみたいな筋力を得た。

 

 ああ、本当にやってられない。

 

 そんな化け物と真っ向勝負なんてしていられない。

 

 だが、今回だけ

 

 セイバーが筋力を増強した直後だけ

 

 相手の心に隙が生まれる。

 

 普段は連撃を繰り出すところを

 

 重撃一つで留めてしまう。

 

 筋力×速度による突き技の連撃ならば

 

 勝ち目なんて万に一つもなかっただろう。

 

 能力強化に戦闘スタイルを見失った

 

 それがセイバーの致命的なミス。

 

 そして

 

 もう一つ。

 

 セイバーの宝具効果は恐らく魅了が含まれる。

 

 大事なことはただ一つ。

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 多大なる幸運と

 

 少しのミスの果てに

 

 俺はもう一度

 

 相手の懐へと無傷で飛び込んだ。

 

 警棒は囮で弾かれた。

 

 武装はない。

 

 時間もない。

 

 今の俺には何ができる。

 

 残念ながら何にも出来ない。

 

 だから仕方ない。

 

 きっと、どうにかしてくれる。

 

 後のことは

 

 大体全部お前に任せるわ。

 

 絶叫する。

 

 激痛が全身を走り抜ける。

 

 想定内だ、問題はない。

 

 足を踏み込み

 

 左手を前へと突き出した。

 

 セクハラとか言うなよ?

 

 そんなことを呑気に考えてから

 

 呟いた。

 

 

 

 

 

 

「持ってけ、魔力(全部だ)!……代償強化(コストリンク)

 

 

 

「——え?」

 

 

 

 胸に当てた左手。

 

 呟きと共にその左手が輝いて

 

 セイバーの鼓動を

 

 その振動の限界を壊す

 

 華奢で可憐なその身体を

 

 この一撃を以って

 

 破壊する。

 

 

 

 

 

(……殺った)

 

 

 次の瞬間。

 ぐしゃりという嫌な音がして

 目の前の騎士が吐血する。

 手応え有りの一撃に、右手をぎゅっと握りしめた。

 全身が焼けるように痛む。

 今回の旅ではもう使うつもりはなかったし、なんなら使うなと念を押されていたため、仕方がないが些か痛すぎる。

 やばい、泣きそう……そんな弱音を吐きたくなるが我慢した。

 

 せめて倒れるのならばセイバーの後に……そんなことを思って、その相手の顔を見る。

 そして、思わず笑いが溢れた。

 

 

「はは……お前、凄いな」

 

「……ほう、ぐ……かいほう」

 

 もう動けない、お互いに。

 

「王、けの、ゆり……えい、えん、な、れ……」

 

 地面が近づいてくる、その光景で倒れていることを理解する。

 ボロボロのまま、宝具を開帳することなく目の前の騎士が光の粒となり、消えていった。

 その姿を記憶にしっかりと刻みつけながら、ため息と共につぶやくのだ。

 

 

「……やっぱり、英霊はかっこいいよなぁ」

 

 落ちていく。

 意識はゆっくりと、深い深い眠りへと落ちていく。

 

「あと、たのむわ」

 

 最後に一言、そう誰かに未来を託して。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ええ、頼まれました……サーヴァント・アサシン、真名をカーマ。マスターの令ですから、そろそろ全力で行かせてもらいます」

 

 燃やす。

 周りに群がる全ての海魔を、ただの一撃の下に焼き尽くす。

 先の真名披露に意味はない。

 ただ己を鼓舞するための、気合入れ。

 

 ああ、だがその光景はとても美しい。

 蒼の炎をその身に灯し、妖艶に扇情的に、蠱惑的に彼女は笑う。

 

「賭け、私の勝ちですよね?」

 

「ぐ、ぬぬぅぅ……!」

 

「ま、正直どうでもいいですけど……覚悟、してくださいね?」

 

「…………!この、小娘がぁぁああ」

 

 絶叫と共に魔力を高めたジル・ド・レェの宝具を少し興味深そうに見ながらも、アサシンの表情に焦りはない。

 腐っても宝具……いや、腐っているのは使用者の性根だけであるのだが、その性能は折り紙つきだ。

 数秒も経たない内に大量生産されていくヒトデダコに、少しばかり感嘆の念を送りつつ、アサシンはすぐさま殲滅行動に移った。

 

 圧倒的な召喚速度、それすらもを追い越して、蒼炎に金剛杵、正体不明の黒帯、今現在アサシンが持つ全てを総動員して真正面から宝具を迎え撃ち、乗り越える。

 有象無象を消し飛ばしたアサシンが、ふふふ、とやはり表情を崩しながら上機嫌そうに言う。

 

「今の私、ちょっと意味のわからないぐらいに強いと思いますよ?負ける気がしないので」

 

 そして、次の瞬間。

 圧倒的な戦力差を前にして

 

「ぐ、ぬぬぬぅ……ここは、退くとしましょうか。海魔よ、足止めをするのです!」

「え、あっ、ちょっと!?」

 

 大量の海魔を引っ張り出しながら、ジルくんは脱兎の如く逃げ出した。

 

「それでも、男ですかぁ!」

「弱いものいじめをしていたのは、どちらなんですかねぇ……!」

 

 画して、幼気な(?)少女一人に向かって、化け物ダコを大量に差し向けたことを棚に上げ、そのようなことを言ってのけた大男と、マスターがかっこよすぎてテンション爆上がりな元ダウナー少女の、仁義なき追いかけっこが始まった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「…………ねぇ、デカ過ぎじゃない?」

 

「…………大きい、ですね……」

 

「いや、このぐらいだろう。正直言って、俺がこの邪竜を討伐したときの記憶の詳細は残っていないが、サイズ的にはこの程度だった筈だ。間違えていたら、すまない」

 

 

 引き攣った笑顔を浮かべたまま、藤丸立香は()()を目にしていた。

 鱗は漆黒の闇色で、威圧感は冬木で見たバーサーカーにも匹敵する。

 城かと見間違えるほどの巨体に息を飲む。

 

「……ジークフリート、やれる?」

「無論だ」

 

 余りにも巨大なその生命を前にして、ほんの少しだけ不安を覚えた。

 それでも、彼女は教わっていた。

 自信なんてなくてもいい、恐怖を感じても構わない。

 

「……信じてる。セイバー・ジークフリートに命ずる。必ず、勝って!」

「ああ。任せておけ、マスター……」

 

 

 立香の声に応じ、ジークフリートが数歩前に出る。

 相対するは邪竜ファヴニール。

 一度は破ったその余りにも強大な障害を前にして、その剣士は勇猛にも宣告する。

 

「邪竜ファヴニールよ、再びお前が俺の前に立つと言うのならば……」

 

 邪竜が視界にその宿敵の姿を捉えて、咆哮する。

 その勢いに気圧されることなく、張り合うように彼は叫んだ。

 

「その悉くを凌駕して、貴様を討とう……」

 

 一拍置いて

 

「真名:解放」

 

 青色の、真エーテルの輝きを以って放たれる。

 

幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!」

 

 そして、光に包まれた。

 

 

 

 

 

 30話「原点」

 

 

 

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