番外三本目!
最近、戦闘描写ばっかで疲れてきたので甘っ甘な彼らの様子をプレゼント。
ぶっちゃけ構想ゼロから書いた短編なので、続きが出るのが遅くなるかも知れません。
番外 デートinラスベガス!『序』
「マスターちゃん……お金、貸して?……というか、もうぶっちゃけ下さい、多分返せないし……もっと遊びたいのよ、私」
『……ついに開き直ったわね……またおけらになって帰ってきたの、オルタ?』
夜。
特異点と化したラスベガス。
その中に存在する小洒落た小さな酒場にて。
「根本からギャンブルに向いていないのではないかと、バーテンダーなアラフィフは君に助言をプレゼントするネ」
「助言というか、事実だろ……それ」
カウンターに突っ伏して、情けないことを言う水着の黒聖女。
そして、グラスを磨きながらウインクを決めたバーテンダーに、苦笑いを浮かべながらその言葉に同意する青年がそこにいた。
「うっさいわね、あんたら……燃やすわよ?」
「「…………」」
余りにも理不尽すぎる言葉に、青年とバーテンダー……俺とモリアーティー教授はジャンヌ・オルタに対してジト目を向ける。
数秒経ち、責めるような俺たちの視線に耐えきれなくなったオルタちゃんは、バツが悪そうな表情を浮かべ、小さな声で言った。
「その目もやめて、私が悪いのはわかってるから……はぁ……なんで勝てないのかしら」
「……ふっ」
「デュヘイン」
「あっつ、あつ!?ちょ、燃やすな!?」
割と普通に火を飛ばしてくるんじゃない。
痛いじゃん、熱いじゃん!?
……ちょっと笑っただけなのにさぁ?
「キミって割とチャレンジャーだよネ?幾ら彼女がギャンブルに向いていないからといっても……ふっ」
「ぶっころ」
「あっつ、熱い……ちょ、結くんの時より長くないカネ!?」
『まったく……何やってるのよ、貴方達は……はぁ』
反省しない男共の様子を見て、傍観に徹していたオルガはため息を漏らす。
その声は慈愛に満ちていて、彼女が今のような普段通りの空気を大切に思っていることが伺えた。
ふと考える。
オルタちゃんも教授も、もちろん俺も今のやり取りがコミュニケーションの一部であることも理解しているし、楽しんでいる。
他のサーヴァント達と話をする時も同じだ。
元来持っている性質が悪だろうと善であろうと、彼らの根底には僅かなりとも仲間意識と言うものが存在している。それが無ければ、彼らが文句もなしに共闘することなどあり得なかっただろう。
また、その中心となるのがオルガと立香という二人のマスターであることを忘れてはいけない。
……一応俺もこの枠に入れているのかもしれないが。
彼女らは、自らの先駆者である英雄達と意見をぶつけ合い、そして彼らの掲げる信条を尊重することを当然としている。
その先に生まれた信頼関係が、今の状況を生み出していったのだろう。
つまり……オルガがこの状況を大切に思っているのは必然的なものであり、この状況こそが俺の守るべきものであると言える。
なるほど、オルガが嬉しそうにするのも確かに頷ける。
こんな、なんでもない日常こそが、俺が…………
こんな風にセンチメンタルになるのは、らしくないか。
バーテンダーが先程から自分のためだけに用意していたらしい至福の一杯を、奪い取りグイッと一気飲みする。
慣れない苦味と、体が中心から熱くなってくるような感覚が脳内を支配していき、先程までの恥ずかしい思考を消してくれる気がした。
情けないアラフィフの叫び声が聞こえる気もするが、そんなものは気にも留めずにまずは、そのグラスを空にした。
『ちょっと?貴方、まだ未成年じゃない』
「まぁまぁ、お堅いこと言うなって……どうせ、酔わないから安心しろよ」
『普通に体に悪いと思ったから注意したんだけど……まぁ、いいとするわ』
何はともあれ、このゆったりとした時間は結構好ましい……なんて、考えていたそのときだった。
バタンと大きな音を立てて酒場のドアが開かれる。
振り向けば……
「デート、です!」
「ん?」
「で・ぇ・と!ですよ!マスター!」
『あ、あの……アサシン?』
ぜぇ、ぜぇと息を切らせながら酒場に飛び込んできた我が最愛の女神様の姿があった。
「明日、私とデートしましょう!」
「は、はい……?」
全く状況は掴めていないのだが……断る理由も一切ないので、頷きを返しておく。
そして、とりあえず……
「ふむ……青春だネ!」
うるせぇ、アラフィフ。
隠れながら作ってる二杯目も奪うぞ?
◇◆◇
翌日 午前十時
ホテル・ギルダレイ 正面広場
「デート、か……俺として願ったり叶ったりな状況なわけだが……態々待ち合わせにする意味はあんのかねぇ……」
『……そういうものなのよ、アサシンだって女の子なんだから』
そこに欠伸を噛み殺しながら疑問の言葉を浮かべるは、アサシンに呼びつけられた青年こと俺がいた。
普段のカルデア制服やらローブやら何やらは自室の棚にぶち込んできており、現在の俺の姿は、オルガが考えて選んだ服装……要するに、柄にもなくお洒落なんてものをしているのである。
……ま、お洒落と言っても、俺は元々服のストックなどを余り持たない方であるため、そこまで激変するようなものではない。
すこしダボっとするぐらいの白Tシャツに、黒のロングスカート。
こんなものつけて何の意味があるのかは分からないが、首元に銀のチェーンのようなものをかけただけのシンプルな格好である。
オルガ曰く
可もなく不可もなく、みたいな見た目をしている俺では、無駄に凝った服装は逆に見苦しくなるのだとか。
……どちらかと言えば可の方だと思うけど、なんて小さな声で気を使われた時は、すこし悲しくなったが、それはそれである。
余談だが、いつ何処から湧き出てきたのかわからないBusterと書かれた赤色のシャツは見て見ぬふりをして、適当な所へ放り投げておいた。
……いや、ほんと何処から出てきたんだよ、アレ……軽くホラーなんですが。
「アサシンが魅力的な女の子なのは、周知の事実ですけど……って、オルガ?まだ起きてたのか?」
『折角なら、しっかりお洒落したアサシンを一目見てから意識封鎖しようかなって……仲良くやるのよ?』
「言われなくてもわかってるよ……親か?」
『保護者的な立ち位置のつもりですけど?』
「そうでしたね……」
そう。
本日は、アサシンの希望によりオルガには休憩を取って貰うことになっている。
……正真正銘、二人っきりのデートであるということだ。
「……にしても、少し遅くないか?確か、待ち合わせは十時だったろ?」
『……そうね……直ぐに来るとは思うわよ?男の子なんだから、そのぐらい待ってなさい』
「へいへい」
はぁ、とため息を吐きながらそう言ってくるオルガに対して、肩を竦めてやる気なさげに返事をする。
……そのすぐ後のことだった。
「すみません。マスター……お待ちましたよね?」
背後からかけられたのは、聴き慣れている彼女の声。
「……いや、全然……俺も今来たところだから」
態々、待ち合わせをするぐらいだ。
ならば、この返答が正解だろう……そう思いながら振り向いた。
振り向いて、最初に見えたのは麦わら帽子。
「………?」
状況がパッと読み込めなかった俺は、多分キョトンとしたようなそんなしまらない表情をしていたんだと思う。
一秒も経たずに、視界いっぱいに存在していた麦わら帽は姿を消し、代わりに満面の笑みを浮かべる少女が映り込んでくる。
「おはようございます、マスター!」
「…………」
危ない。
余りにも尊いアサシンの笑顔に殺される所だった。
おい、この子可愛いやばい。
死人でるレベルで可愛いとか、反則すぎないマジで。
「ふふっ……緊張してるんですか?マスター」
耳元でそんな風に囁いてくる彼女……そんな一つ一つの動作が小悪魔的すぎて、時々本当に女神様なのか疑いたくなるんですけど。
「…………なわけあるか、おはようアサシン」
「むぅ……あ、そうです!マスター……この服装、どう思いますか?」
ギリギリ平常運転っぽく挨拶を返すと、彼女は、俺の様子に対して不満げに頰を膨らませる……いちいち可愛い行動取らないで、物凄い勢いで理性削られてるから!
そんなアサシンは、何かを思い出したかのようにニヤッと笑いを浮かべると、殆ど抱きついているぐらいである現在の距離から、大きく一歩とほんの少し後ろへ下がり、両手を広げて自らの姿を見せつけた。
そのとき、今日初めて彼女の全身像を確認することができた。
そして、文字通り呼吸を忘れた。
心臓すらもが止まっていると言われても、全く疑うことをしないであろう……そんなレベルで、心底彼女に身惚れていた。
目に入ったのは普段の少女姿ではなく、俺と同じか少し年下ぐらいの年齢……高校生ぐらいの見た目になった彼女の姿。
そんなアサシンは今エメラルドグリーンのビキニと、パレオを身につけており、つばの広い麦わら帽には、白色の花が添えられていた。
メイヴのように自らのプロポーションをこれでもか、とアピールし、見るもの全てを魅了する……そんな美しさとは別ベクトルの魅力が彼女にはあった。
無人島やらルルハワやらの海遊びで、身につけていた蕩けるような魅力を持つ水着姿とは一味違う。
決して露出度が低いわけではない。
フレア・ビキニ……フリル状の布で上半身を覆われているタイプのビキニと腰から足元までを隠すパレオを着ているとはいえ、水着は水着である。
……競泳水着を私服として歩くことのあるお姉ちゃん系サーヴァントも何処かで見かけた気もするが、水着は水着なのである。
露出度の高さ、プロポーションの良さ、そんなものに囚われない美しさを彼女は持っていた。
壊したくない、触れてはいけない、そんな別次元の魅力がそこにあったのだ。
左足がパレオによって隠されていることが、逆に無防備に晒されている右足の魅力を引き立てる。
白い柔肌に、鮮やかな色合いの水着は良く映えていて………………
「あ、あの……マスター?そ、そんなに黙って見られますとね……その、あの……何というか……少しだけ……その、恥ずかしいと言いますか……」
……………………あっぶな、意識飛びかけてたわ。
『ゴホッ…………』
脳内で遂に死人が出たし、もう少し手加減してもらいたいものである。
勢いよく感想を求めていた最初とは別人のように、もじもじと顔を赤らめているアサシンの姿に意識を持ってかれかけたが意地で耐えきった。
なんでも、自信を持ってとっておきの水着姿を見せつけたのに、反応がなくて恥ずかくなってきたのだと……何それ可愛い、アサシンが可愛い過ぎてやばい、話進まない。
◇◆◇
「……さてと、やっと落ち着きましたか、マスター?」
「おう、悪いな、面倒かけて」
「こっち向いて話してくださいよ……」
「無理、可愛過ぎて直視できない……いやほんともう見たい気持ちも山々ですし、なんなら一生見てられる気がするけど、話進まないから、仕方なくこうして顔背けて話をしてるわけですし……」
「こっち向いてくれないのは……少し、寂しいんですけど」
失敗しました。
全く、この人は本当に……
私が可愛すぎて直視できないから、デート中でも顔を背けて話するってバカなんですかね?
…………少し考えてたら、それはそれで……いや、違います。
別に嘘をつけないマスターが、本気で私のことを可愛いって連呼してるのに気がついて、表情が真っ赤になったりしてませんから……ええ、断じてしてませんとも。
……あっ、こら!
今、こっち向くんじゃない!
◇◆◇
なんか、アサシンの顔がめっちゃ赤くなってるんですが……顔見て話さなかったこと、
そんなに怒ってる?
そうだよな。
アサシンがわざわざ誘ってくれたデートなのに、勝手な都合でお洒落した姿を見てくれない……なんて最低な行動だよな。
というか、結局アサシンに水着姿の感想伝えてないし……受けに回るから恥ずかしくなるんだよな。
よし、仕返しとお詫び代わりに……この子を褒め殺しにかかるとしますか。
「……アサシン。そういえば俺、お前に水着の感想言ってなかったよな」
「え、あっ、ちょっとマスター?」
「折角、アサシンがお洒落してくれたのに……感想の一つもないなんて、最低にも程があると思ってな、反省したよ」
「あれ、私まだ褒められてなかったんですかね!?マスター……私のこと可愛いって言ってくれたじゃないですか」
「何言ってんだ、アサシンが可愛いのは常識だろ。当たり前のことを言って褒めたことになるわけないだろ?」
「この人思ってたより、結構重症ですね!?」
アサシンの驚き声を耳に、俺は彼女に水着の感想を伝え始めた。
「……はぁ……はぁ……はぁ、もう、やめて、ください……マスター。その、本当に、お願いですから……マスターが私のこと、その、か、可愛いって言ってくれたのは、わかりましたからぁ……色々許容オーバーで、その、…………爆ぜます」
うちの女神様は、恥ずかしいが頂点に達すると爆発するらしい。
「……仕方ない。まだまだ沢山可愛いとこはあるんだが、全部言ってるとキリがないか……そろそろ、デートに行くとしますか?」
「……私、割ともう幸福度は十分なんですけどね……一時間も無駄に……いえ、無駄にはなってませんけど……ほんとに、マスターが暴走なんてするから」
「お前が可愛いのが悪い」
「私のせいにするんですね……はぁ……息をするように可愛い、なんて言ってると信用無くなりますよ」
「嘘つけないのは知ってるくせに」
「……ほんとにちょっと黙ってて下さい……あんまり煽ると……問答無用で襲っちゃいますからね?」
「きゃー、こわーい」
「それ、私の台詞じゃないんですね……」
茶番を挟んで、頭を冷やす。
うん。
褒め殺しに熱が入り過ぎたな……反省してる。後悔はしてない。
一度伸びをして、脳内をスッキリさせる。
そして……
「それじゃあ、お姫様、お手を拝借……楽しい楽しい街中デートと行こうぜ、アサシン?」
「……やっと、普段の調子に戻りましたね……そっちのマスターの方が話が通じるので、好きですよ」
「…………ナチュラルに、好きとか。お前、本当に変わったなぁ」
「煩いですよ、バカマスター」
漸く二人のデートが始まる。
感想でガチャ結果なんかを送ってくれると、運対の対象になるらしいので気をつけて!