カーマさんとイチャコラしながら人理修復する話     作:桜ナメコ

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41話 強化クエスト 立香(1)

 

 

 

 

 

「…………で、決闘ですか。随分と過激派地味た発想ですね」

「それな、マジそれ。ほんとそれ。ガチヤバでパナイわ」

「……知能指数の低い高校生擬きレベルの発言は慎んでください」

「なんで、そんなイラついてんですかねえ、お前は」

 

 どこをほっつき歩いていたのか知らないが、ダ・ヴィンチちゃんと立香が立ち去った直後に、部屋へと帰ってきたアサシンは、事情を聞くと面倒だなぁという気持ちを隠すことなく表情に示した。

 

『まあ、この結論になるのも仕方ないと言えば、仕方ないとは思うわ。今回の話し合いじゃ、真っ向から意見が食い違い過ぎていて、落とし所も見当たらないのだし、変に迷いを抱えたまま次の特異点攻略へ向かうぐらいなら、白黒ハッキリつけた方が良いに決まってるもの』

「…………そういうものですか」

『そういうものなの』

「まあ、私に実害がなければ、何でもいいんですけど——って、もろに有りますよね? 私とマスターのイチャイチャタイムが潰されたってことですよね? 瞬殺しましょう!」

「お前は、レギュレーション違反に決まってんだろ」

「またハブられるんですか、私!?」

 

 しょうがないじゃん、お前強いもん。

 今のお前、ラノベとか漫画とかで兄貴分の強キャラやお師匠様が、何らかの制約受けて毎回全力出せなかったり、戦場に居なかったりするのと同じ立ち位置なんだから。人類はそろそろあの法則に名前をつけた方がいいと思う…………あ、ご都合主義か。

 

 

 ダ・ヴィンチちゃんが告げたことは、ただ一つ。

 

 戦り合って、決めなさい。どうせ、話し合いじゃ決まらないんだし!(当然だけど、アサシンは禁止ね♪)

 

 とのことだった。

 

 具体的なルールは自分達で決めろとのことだったが、何を企んでいるんだか……天才の行動を凡人が理解しようとすること自体が意味のないことなのかもしれない。

 ダ・ヴィンチちゃんの意図は置いといて、とりま、ルールでも考えようかな。

 

 

◆◇◆

 

 

 

「決闘……結と、私が?」

 

 自分でも驚くぐらいに弱々しい声が、私の口からこぼれた。

 こんな調子じゃダメだと、頭では理解している。けれど、脳裏にチラつく翳りが中々消えてくれない。

 想起するのは、オルレアンでかけられた幾つもの励ましの言葉と、緊張をほぐそうとする気遣いの軽口。

 

 ——勝ち目は、あるのか。

 

 その思考がどうしても、頭の中から追い出せない。

 

 結の意見はわかる。

 人類に残された最後のマスター、その価値は多分、私なんかじゃ理解できない程に大きい。

 そして、私は戦いの心得なんてものを微塵も持っていない素人だ。

 

 他のみんなが傷つく姿を、無傷のまま、守られるがままに見ることしかできない……それが()()()()だと分かっていてもなお、彼のように戦いの場に身を置きたいと願うのは——ただの、逃避だ。

 

 

 

 

 

 けどさ。

 だけど、それでも私は——

 

 

 

 

 

「先輩?」

「……ん、どうかした、マシュ?」

「いえ、表情が少し……なんというか、先輩らしくない、ような気がして」

 

 この子は鋭いなぁ、という苦笑をしてから、不安の色を浮かべていた可愛い後輩の頭を撫でつける。

 ププーッ、という高い機械音が鳴る。

 視線をやれば、手元に浮かべたホログラムに、決闘要項という名がつけられたファイルが映し出されていた。

 

 

 

 決闘要項

 

 

・制限時間は1時間 明日の午前10時に戦闘開始

 

・メンバーは無作為に集めたサーヴァント四騎を順に選んで決める。(ただし、両陣営アサシンとパールヴァティーは選択不可とし、藤丸陣営には初期からマシュ・キリエライトが味方するものとする)

 

・攻撃性の高い宝具は禁止とする。(主に充電的な問題と安全性を考えた結果)

 

・令呪は一画のみ使用可能とする。(これまた充電的問題ね)

 

・マシュを除いた全てのサーヴァントは頭と腰にタオルを身につけ、そのどちらかが外れた時点でリタイアとみなす。(尻尾取りやろーぜー)

 

・マスターが気絶、または降伏宣言をした時点で決着とする。

 

・あとその他各自適宜良識に沿って臨機応変によろ。

 

 

「…………尻尾取り、ですか」

「……まあ、ガチ戦闘になったらジークフリートとか選べちゃった方が有利だもんね」

「確かにそうですね……では、やはり問題になるのは()()でしょうか?」

 

 マシュが指差すその先の一文に書かれた敗北条件。

 

 それは、つまり……

 

「結を倒さなきゃ、私達の勝利はない」

「…………ですね」

 

 彼が、本気だということを示していた。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「やあ、結、こんな時間に珍しいな」

「……エミヤか」

 

 真夜中ちょい前の23時頃。

 

 考え事をしながら、意味もなく食堂に足を運んだところで、食堂の守護者に声をかけられた。

 この時間帯は、既に子供姿のアサシンは眠りについており、オルガも意識を閉じていることが多いため、俺が一人の時間を過ごせる貴重な時間でもあるのだが、目の前のコイツは何をしているのだろうか。

 

「そう訝しむな……ただ、少し明日の料理の仕込みにこだわり過ぎてしまっただけだとも。君の方こそ、何か用事が有ったのかい?」

「別に、何の用事もねぇよ。散歩だ、散歩」

「そうか、散歩か…………君も、あの女神に似て素直ではないな」

「余計なお世話だ……」

 

 揶揄うような含み笑いでこちらを見るエミヤは「ちょっと待ってろ」と言って、台所の奥の方へと引っ込むと、熱湯の入ったポットとカップ麺を持って帰ってきた。

 

「…………らしくねえな」

「自覚はしているとも……まあ、偶に食べるぐらいが丁度いいだろう?」

「全面的に同意だよ」

 

 蓋を開け、かやく、粉末スープを入れてから、熱湯を線まで注ぎ込む。

 さて、五分の待機時間となるわけなのだが、と考えたところで視線を感じた。

 

「……お悩み相談室ってか? お節介にも程があるぞ」

「語るに落ちる、というものだな。私は決して一度も君が悩んでいるだなんて口にしていないぞ」

 

 ニヤニヤすんな、ぶん殴るぞ。

 

「…………はぁ、色々考えてんだよ。こう見えてな」

「そうか……マスターのことかね」

「他に何がある?」

 

 藤丸立香。

 俺と同じ人類最後のマスターとして、特異点攻略に臨む()()()()()()()

 

「……アイツも、わかってるはず、なんだけどなぁ」

「だろうな。彼女は、君が思っているように、若しくはそれ以上に、聡明で勇気のある少女だ……ただ、君もわかっているのだろう? そういう理屈の話では無いのだよ、これは」

 

 ああ、そうだとも。

 それも、わかっているのだ。

 

 だから、決闘という形を取るしかなかった。

 

「なあ、エミヤ……お前だったら、どうしたよ?」

「……………………ああ、そうだな。私だったら、か…………それは……それは、とても悩ましい質問だな」

「そうかい……俺はてっきり、お前は断然こっち側だと思ってたわ」

 

 素直に驚いた。

 目の前の男は、限りないほどの現実主義者だと思っていたからだ。

 

「……では、何故、自分が剣を取ったのか……他でもない、君に問おう。結、始まりの理由はなんだったのだ?」

 

 やっぱり、そういう話になるよな、と思わず苦笑する。

 違う。

 立香と俺じゃ、そこは決定的に違うんだ。

 目を閉じて、思い返す。

 自分が聖杯戦争擬きに巻き込まれた、あの日のことを。

 

「やるしかなかった。願望なんかじゃない、俺が剣を取ったのは、成り行きでしかなかった」

「…………」

「そうじゃなきゃ、守りたいものが守れなかった……」

 

 一拍おいて、淡い水色を思い出した。

 あの人の、小さくて、けれど大きな、そんな背中を思い出した。

 

「……絶対に倒さなきゃいけねえやつがいた。殺さなきゃいけないやつがいた。そのとき、俺の隣にサーヴァントは居なくて、それでもあの戦いへ飛び込まなきゃいけなくて」

 

 綴る。

 言葉を、思いを、長い長い愚痴のように。

 懐郷の思いにも似た少し重たい気持ちを抱いたまま、独り言ちる。

 

「だから、違うんだ。立香と俺じゃ、あまりにも状況が違い過ぎる……俺にはアイツの意図がサッパリわからん」

 

 他人の考えを、意図を、その全てを理解しようとするのは、傲慢な考えなのかもしれない。

 そんなことは、わかっている。

 でも、それでも、知りたいと思うのだ。

 

「お前が、教えてくれんのなら……それはそれで、面白えけど」

 

 彼女が何を思って、死地へと赴かんとするのかを。

 

「麺、伸びるぞ」

「そりゃ、大罪ものだ。急がねば」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 翌日 午前10時

 

 俺の隣には、邪とカメラマン(ゲオルギウス)

 立香の隣には、お母さん(エミヤ)とマシュとすまないさん。

 

「負けたな」

「早いわよ!? というか、今アンタ私のこと『邪』って言った!?」

「邪な考え、の『よこしま』の部分だな」

『今その情報を伝えることには、悪意しか感じられないわね』

 

 悪意しかないもの。

 まあ、相手にとって不足なし、ということにしておこう。

 

「……ジークフリートを取られたのが痛い」

「本音が漏れてますぞ」

『最低ね』

「オルガさん、今日不機嫌? あの日だったりしたらごめ——」

『攝無礙大悲心大陀羅尼経計一法中出無量義南方満願補陀洛海会五部諸尊等弘誓力方位及威儀形色執持三摩耶慓幟曼陀羅儀軌、攝無礙大悲心大陀羅尼経計一法中出無量義南方満願補陀洛海会五部諸尊等弘誓力方位及威儀形色執持三摩耶慓幟曼陀羅儀軌』

「ごめん、なんて?」

『世界で一番長いお経のタイトル、三日間音読の刑に処すわ』

「地獄じゃねえか。鬼だろお前」

 

 頭の片隅で戦いの策を考えつつ、そんな雑談をしていると、審判員兼妹の授業参観感覚のジャンヌがこちらを向いて咳払いをした。

 

「では、シミュレーターの準備が整ったそうなので……お二人方、準備はよろしいでしょうか?」

 

 補足となるが、サーヴァントの皆さん、というかゲオルギウスだけなんだけど、には今だけ、俺との仮サーヴァント契約を交わしてもらっているため、条件的にどちらが不利ということはない。

 

「おう、いつでも」

「……うん。私も」

 

 片頬を上げた。

 余裕を(つく)る。

 彼女の前で、不恰好な姿は見せられない。

 

 覚悟たっぷり、気合十分……見るからに、とてもとても厄介そうな隣の少女に目を向けて。

 

「全力で、行くから」

「……うん、全力でこい」

 

 シミュレーターが、起動した。

 

 

 

 

 

 

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