カーマさんとイチャコラしながら人理修復する話     作:桜ナメコ

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 一人暮らしが、大変すぎで禿げる。
 環境変化が凄いので、生活が落ち着くまでは投稿遅くなりそう。
 あと、純粋にプロットなしで書いてるのが原因。
 更新少なくてごめんよ。

 感想評価誤字脱字 毎度のことですがありがとう。




45話 誓い

 

 

 

 

 

「〜♪ 〜〜♪」

「……上機嫌ですね、カーマ」

「——ん? 何か用ですか、パールヴァティー?」

「いえ、特に用事があるというわけではないのですが……貴女が鼻歌混じりにスキップをしていたら、誰だって違和感を抱くのでは?」

 

 こいつ、私のことをなんだと思っているのだろうか。いえ、確かに私も浮かれている自覚はありましたけど。

 

「用事がないなら、行きますよ? オルガもダウンしていますので、割と忙しいんです」

「……手伝いましょうか?」

「必要ないです。慣れてますから」

 

 あの人、すぐに無茶してダウンするので。

 なんて言葉を頭の中で付け加えてから、私は冷たい水の入ったタライとタオルを両手に抱えて、マスターのいる部屋へと急ぐ。

 

「何かあったら、遠慮せずに言ってくださいね」

「喧しいです」

 

 鬱陶しいぐらいに心配症ですね、こいつ。

 後ろから投げられた言葉に、雑な対応を返してから私はボソリと呟いた。

 

「……なんにもできないマスターさんたちの面倒を見るのは、私の役目なんですから」

 

 

 

◇◆◇

 

 

「ただいま戻りましたよー」

 

 鼓膜が揺れる。

 脳が言葉の意味を理解する前に、視界の中へとアサシンの姿がとびこんできた。

 目一杯に愛でて、撫でて、ストレスの解消へと取り組みたいところなのだが……

 

「ううぇぇ……」

『ぁぁぁ……』

 

「見事なまでのくるくるぱーになってますね……」

 

 俺とオルガの二人は現在、放心状態から自力で抜け出すことのできない身体になっていた。

 

 立香との決闘。

 その戦闘において俺が使った切り札。

 

 代償強化・過剰絶倒

 

 その対価。

 これから三日間の魔術の行使を禁止。そして、一時的な知性、身体能力の低下。

 更に言えば、魔術回路を酷使した反動による筋肉痛もどき。

 

 結果、ベットの上から動けない肉塊に成り下がったのである。

 

「では、マスターさん、お服を脱ぎましょうね」

 

 満面の笑みで、上半身だけを起こした俺へとにじり寄って来るアサシン。

 「お服を脱ぎましょうね」の意味を理解するまでに、かなりの時間を使ってしまい……

 

「ぅぇ、えゃぃ……」(いや、自分でやれますけど?)

「ほら、両手を上げて。バンザイしてください、バンザイ!」

 

 気づけば、逃げ出せないように両足を、彼女の出した黒帯によって縛り付けられてしまっていた。

 

 彼女の言葉の意味を知り、バンザイなんて、しねぇよ、なんて思考が頭をよぎる頃には、アサシンは俺の服をひん剥いた後である。

 何で従ってるんですかね、俺の身体。

 多分、本能レベルでアサシンの癒しを求めているからに違いない。

 

「素直ですね……可愛いですよ、マスター」

『ぁぇぇ』(貴女、やりたい放題ね)

「すいません。何を言ってるか、流石にわかりませんよ、オルガ」

 

 上半身を丁寧にふきふきするアサシンを愛おしく思い、鉛のような自分の体に「頭を撫でろ」のコマンドを出した。あ、ダメだわ。動かん。

 というか、オルガにまでアホ化の影響が出てるのはなぜ?

 

「ぇぅぁぁ」(念話って思考を繋げてんじゃないっけ?)

『ぅぇ』(なんか上手く繋がらないのよ)

「二人とも、もしかして今、会話してます?」

 

 可愛い笑顔を引き攣らせながら、呆れの成分を多量に含んだジト目を向けるアサシンだったが、俺の背中側に回るとその声音が一気に変わる。

 

「あのですね、マスターさん」

「ぅ?」(どしたん?)

「一度、思いっきり、ぎゅうしてもいいですか?」

「『ぅぃ』」(どうぞ!)

「今のは、私でもわかりましたねー」

 

 それでは遠慮なく、と彼女の細い腕が優しく回されて、背中に心地の良い温もりを感じる。

 段々と回された腕には力が込めらていき、少し苦しいぐらいになったところで、止まる。

 

「おっきな、背中になりましたね……」

「…………」

 

 瞼を下ろして、コツンと額を背中へ当てたアサシンは、しばらくの間、そのまま無言で俺を抱きしめ続けていた。

 

「……さて、今だけは、反撃は怖くないですし、私が目一杯に褒めて甘やかして、どろっどろに蕩してあげましょうか?」

 

 燃料補給が終わったのだろうか。

 腕の力を緩めたアサシンは、艶やかな声音で囁いてから、ふぅっと俺の耳に息を吹きかける。

 

 それも悪くないなぁ、と甘美な誘いに理性が負けを認めかけたそのときに。

 

「やぁ、結君。調子は重畳かね?」

「せめてノックはしてください」

 

 万能の天才が、空気を壊して乱入した。

 

 

◇◆◇

 

 

「いやぁ、すまないすまない。まさか、看病という名目でよろしくやってるとは思わなくてね」

「よろしくやってないです、残念ながら」

「ぅぇぇ」(今からやっちゃう?)

『ぉぁ』(まごうことないセクハラね)

「そっち二人は、まだまだ回復には程遠いみたいだね……」

 

 呆れと心配とが混ざった苦笑を見せてから、闖入者ことダ・ヴィンチちゃんは俺に向かって本題を切り出した。

 

「どうするつもりだい?」

「…………」

 

 なんのこと、とは思わなかった。

 

「君ならやりかねない、そう思ってはいたけれど——最初から、引き分け狙いだったのかな?」

 

 そう、立香との決闘は引き分けで終わった。 

 

 時間切れ。

 俺はそうなった場合というものを、ルールに書いていない。

 一番わかりやすい残りサーヴァント数で、決める……ということでも、マシュと邪ンヌの一人ずつ、という最終結果となっている。

 

 ダ・ヴィンチちゃんからすれば、俺が勝敗を有耶無耶にして、結論を先送りにしたとも見れるだろう。

 

 だが、違う。

 本当に、本気で、俺はアイツらに勝つ予定だった。

 

 そして、それを彼女はわかっていた。

 

「本気でしたよ」

「…………アサシン、それはどういう——」

「マスターは、ずっと本気でしたよ」

 

 淡々と、彼女は述べる。

 話すことのできない間抜けな主人の思いを、違うことなく、次々と、言葉を連ねていく。

 

「初手から詰ますために、立香に余裕を与えないために、邪ンヌへと令呪を使った。それによる瞬間移動と代償強化による透明化で状況の撹乱に成功。あのカメラマンの一撃で立香を落とすはずが、マシュの防御がマスターの想定を上回りました。ここで、マスターは標的を立香からジークフリートへと変更し、邪ンヌを囮として隔離します。次に…………」

 

 オルガとダ・ヴィンチちゃんが、唖然とした様子でアサシンを見ていた。

 恐ろしいくらいの分析と思考量がそこにはあった。アサシン……カーマ/マーラというサーヴァントが誇る実力の所以がそこにはあった。

 

 彼女らの驚きに、平然とアサシンは肩をすくめる。

 

「——マスターのことなら、なんだってわかります。わかってみせます。だから、断言しましょう……今回の戦闘で、マスターは全く手を抜いていません」

 

 暗紅色の瞳の奥に、揺れることのない輝きが灯っている。

 どこか、何かを決心したかのような覚悟が、そこにあるような気がした。

 

 コホン、と一度咳払いを挟んで、固くなってしまった空気を解してから、アサシンはその可愛らしいお顔の隣に、人差し指を立てる。

 

「……ということで、立香達が頑張ったご褒美に私から一つ提案があるのですが、聞きますか?」

 

 

◇◆◇

 

 

 三日後。

 シミュレーター 訓練場。

 

 

「あのですね、結? 最近、私のことを便利屋か何かと勘違いしてはないですかね?」

「してないしてない……多分きっと恐らくメイビー」

「扱いが雑すぎませんかッ!?」

 

 知性の回復した俺は、隣でふわふわと浮かんでいる魔王様のご機嫌取りをしているところだった。

 

「今回に限って言えば、俺じゃなくてカーマが悪いだろ。安請け合いしたのはアイツの方だ」

「いや、そうなんでしょうけど…………はぁ、仕方ないですねぇ」

 

 すたり、と地面へと降り立ってから、若干納得しきれていない様子の魔王様は、()()()の方へと歩いていった。

 

「さてはて、これが吉と出るか、それとも凶と出るか……」

 

 視線の先に、二人の少女がいた。

 

 降り注ぐ幾多の刃。

 振り撒くは殺意の雨霰。

 死地へと放り込まれた彼女らは、目を閉じたまま、動くことなく、その場に立っている。

 

 カーマさん曰く。

 アレが訓練なのだと。

 

『……死を司るマーラがありったけ殺意を込めた刃を受け続ける、ね。中々なことしてるわよ』

「攻撃自体は当ててはねえけどな…………本気の殺意ってやつは、向けられただけでゾクってくるもんだ。慣れてねえやつなら、一秒や二秒、思考に乱れが出てもおかしくない……そして、それは戦場において余りにも致命的だ」

『だから、()()()、殺意に慣れる……そういうこと?』

「多分な」

 

 立香の頬を掠めるようにして、槍の穂先が通り過ぎる。

 マシュの玉肌を撫でるようにして、曲刀が空を滑る。

 目を閉じたままの立香とマシュの額には玉粒の汗が浮かんでいて、時間が経つにつれて呼吸が乱れていく。

 

 やがて、五分もしない内に立香の身体がグラリと揺れた瞬間、向けられていた凶刃の全てが空中で停止した。

 

「はぁ…………はぁ…………っ、はぁ……」

「だい、じょうぶ……ですか、せん、ぱい?」

 

 殺意を向けられたことによる緊張からの解放により、立香はその場に座り込んだ。

 恐らく、思うように身体に力が入らないのだろうと予想をつけて、彼女の元へと向かう。

 

「立香さんは、ここまで。マシュさんは残りなさい」

「……はぁ、はぁ…………り、がとう、ございました…………ッ!?」

 

 立香は、ペコリと一礼して、マーラへお礼を言った。

 それから、邪魔にならないようにと移動しようとして、バランスを崩す。

 

「はい、確保」

『お疲れ様、立香』

 

 そこをキャッチして、お米さん抱っこへと移行。

 威厳たっぷりに冷酷な教師感を出していたマーラが、キラキラした瞳でこちらを見てきたが、お前を抱っこする予定はない。

 

「……あせ、ついちゃうよ」

「集めて売ったりしないから安心しとけ」

『その発想がセクハラよ。超弩級のセクハラだから』

「冗談に決まってるだろ」

「結の汗ッ!?」

「頼むから冗談だと言ってくれ」

 

 マーラを適当にあしらってから、離れた場所で立香を下ろした。

 

 彼女の息が整うまでは、訓練の続きを続けるマシュの訓練の様子を眺め続ける。

 

 ……うん。強えわ、あいつ。

 

 決闘の終盤に、俺はアイツの勇気を利用してジークフリートの鉢巻を奪い取ったわけなのだが、一か八かの賭けなんかではなかったのかもしれない。

 少なくとも、今なら、彼女が滅多なことでは怯まないことを信じられそうだった。

 

「…………あのさ、結はこれでよかったの?」

 

 ポツリと立香が、そう問いた。

 

「————よくない。この選択が原因でお前が死んだのなら、絶対に俺は俺を許せない」

 

 立香に対してアサシンが示した妥協案。

 それが、()()()()()()()()()()()()()()、であった。

 気配遮断、魔力探知、擬似直感、受け身の技術、魔術の知識、などなど様々エトセトラな、()()()()を高めるために必要な技術の習得を、アサシンは補助するつもりらしい。

 魔術の知識に関しては、俺の代償強化を利用して、立香が攻撃をできないように調整するとのこと。

 代わりに、何かの能力を上げるって言ってたが、なんだったかな。

 

「アサシンは、お前を鍛えるつもりだ。何が理由かはわからんが、お前に何かしらの共感でも持ったんだろうな……」

「……共感」

 

 あのとき、立香が叫んだ思いを忘れはしない。

 彼女は『俺を止めるために』と、そう言った。

 

「————なあ、立香。いざってときに、お前は、俺を殺せるか?」

「……………………殺してでも、救ってみせる」

「なるほどね……頼りになる後輩だな」

 

 グイッとその場で伸びをする。

 立香には、伝えていないのだが、アサシンは、目論見とする生存能力を底上げするための能力強化——だけで、立香達の特訓を終わらせるつもりはない。

 

 ある程度、強くなって。

 ある程度、穢れに向き合って。

 ある程度、地獄にその身を置いたのちに。

 

 それでも、彼女らの意志が揺らいでいないのであれば、状況によっては『戦闘能力』の向上へと移行するとのこと。

 

 痛み分け。そう評するには、ちょいとばかり、向こうの要求が通り過ぎている気がしなくもないのだが、とりあえず、立香の弟子入りに関する騒動に収拾はつきそうだ。

 

「つまり、お前らはアサシンに弟子入りしたってことで良き?」

「え、アサシンの上司が結なんだから、結に弟子入りって形になるらしいよ? アサシン曰く」

「……聞いてねぇな」

「ではでは、これからよろしくお願いしますね、お師匠様」

 

 ニコッと微笑み、上目遣いで俺を見る立香さんの目には、どこか温かく眩いものがあって、思わず顔を逸らす。

 

『あら、浮気の気配かしら?』

『ハッ、寝言は寝て言え。俺ほど一途な男は中々いねえぞ』

『冗談に決まってるでしょうが。言われなくても知ってるわよ』

 

 個人用の念話で揶揄ってきたオルガへと、心の底からの本音でピシャリと返答する。

 

「……? どうかした?」

「いーや、なんでもねえ…………よし、そろそろ飯にするぞ。あいつら引っ張って、風呂でも行ってこい」

 

 はーい、と元気な返事とともに、立香は二人の元へと走っていく。

 

 

◇◆◇

 

 

 その小さな背中を、青年は見ていた。

 

 ——選択を、間違えたのかもしれない。

 そんな思考が頭の片隅にこびりついて離れなかった。

 

 けれども。

 

「守り抜く。何があっても、絶対に」

 

 ただ、それだけだ。

 誓いは、今も昔も何一つとして変わらない。

 

 

「家族を守る——例え、世界を壊しても」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()その青年は、シミュレータによる仮初の空を見上げて、そう独り言るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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