カーマさんとイチャコラしながら人理修復する話     作:桜ナメコ

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 すいません。
 一次創作の長編を一本仕上げてみたのですが、気がつけば、こちらの小説の書き方を完全に忘れてしまいました。
 圧倒的、スランプ。
 変になってないといいのですが……

 亀速度ですが(亀に失礼)、生存報告代わりにどうぞ。



50話 助言

 

 

 

 

落ちる。

 

落ちる。

 

落ちる。

 

するりするりと、身体がほどけて。

 

ぴし、ぱしと、四肢にヒビが広がっていく。

 

そのなかで、確かに感じるこの引力はなんなのだろうか。

 

沼底へと引き摺り込まれるような感覚に、争うこともできずにただどこかへと落ちていく。

 

暗く、暗く、暗く、暗く。

 

落ちて落ちて落ちて落ちて。

 

身体が溶けていく。

 

意識が薄れていく。

 

零して、溢して、こぼして。

 

ゆっくりと、ゆっくりと。

 

ただひたすらに、天が遠ざかっていく。

 

「◼️◼️◼️◼️◼️」

 

ああ、陽が眩しい。

 

身体が焼けてしまうかのような輝きに、どこまでも澄み渡る蒼穹に、手を伸ばす。

 

愛しき誰かのことを想起しようとして、その名前が思い出せないことに気がついて、思考が硬直する。

 

「……ぁ、れ?」

 

わからない。

わからない。

わからない。

わからない。

わからない。

わからない。

 

あの子の顔が、あの子の声が、あの子の名前が。

 

何一つ、わからない。

 

「……ぁ、ぇ…………っ?」

 

薄れていく意識の中にノイズが走る。

 

軋む記憶。

 

鈍痛の響く頭を押さえたまま。

 

落ちて、落ちて、落ちきって。

 

とす、と小さな音を立て、大地へと背をつける。

 

やがて、夜を溶かしたような黒の長髪の少女は呆然と口を開いた。

 

 

 

 

「わたし、は……だれ、だっけ?」

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「あら、ウリボーじゃない。こんな所で何してるのよ」

「こっちのセリフだ、アホ。姿見せねえと思ったら、こんな所で何してんだ、お前」

「おや、知り合いか、蜥蜴娘。こんな所で再会など、にゃんとも奇遇な縁ではないか」

 

 宝箱の中から覗く四つの目。

 オルガの魔術で洞窟内の明るさを上げてもらい、その姿を確認する。

 そこに居たのは、オルレアンで共闘したエリザことエリザベート・バートリーと、見知らぬケモミミの女性であった。

 

 ほら、引き起こしなさいよ、とどこか上からな物言いでこちらへ手を伸ばすエリザに、アサシンが殺意を向けていたが、そういうのではないので、気にせずに引き上げる。

 エリザに感じているのはペットのような愛嬌なので、めくじらを立てるなら、オルガにしときなさい。

 

『何で私に飛び火?』

「むぅ……」

『何もしてないわよ!?』

 

 わたわたと慌てるオルガのことは放っておいて、エリザともう一人の方へと意識を向ける。

 色々と聞きたいことはあったのだが、エリザが一緒にいるのであれば、敵というわけではないだろう。

 まずは洞窟を出て、話はそれからか。

 

「んじゃ、帰るぞ。邪ンヌちゃん、先頭よろしくー」

「肉壁要員ね、わかったわ」

「指示出しづらくなるから、直球やめて?」

 

 まあ、容赦なく出すけどね。

  

 

 

 そんなこんなで浜辺へと帰還。

 こちらを一瞥した女神ステンノは、無傷の俺たちを見てつまらなさそうにため息をついた。

 ため息を吐きたいのはこちらの方なんですが、そこんところ、どうお考えで?

 

「あら、顔が怖いわよ、勇者様」

「マジで全く悪びれもしてねえじゃねか。ここまで来ると逆に好感持てるな」

「ふふ、そんなに褒めても何も……追加のキマイラぐらいなら——」

 

「「『いらない』」」

 

 全員揃って、うんざりとした顔をすれば、ステンノはその美しい紫の髪を風に靡かせて、コロコロと鈴の音を鳴らすような笑い声を上げた。

 ほんと、いい性格した女神様だこと。

 

 くい、と袖を引く小さな力を感じて、視線を落とすと、姿を幼女状態へと戻したアサシンがそっぽを向いたまま、俺の左腕を抱えるようして立っていた。

 

「どーしたよ?」

「どうも、してないです」

 

 何こいつ可愛い。

 やっぱ、お前しか勝たんわ。

 

 アサシンに気を取られているうちに、会話の題材は改めて、この特異点に関する情報交換というものになっていたようで、オルガが幾つかの質問をエリザにしているところだった。

 

 一度じっくりと優先順位を考えて、それから、彼女らの会話を耳からシャットアウトし、アサシンの目線の高さに合わせるようにしゃがみ込む。

 

「ほい、どうしたんですかい、お姉さんや」

「なーんーでーもー! なーいーでーすー!」

 

 むぅ、と頬を膨らませたまま、それでも袖を離すことのないアサシンに苦笑しながら、わしゃわしゃとその髪を撫でつけていると、すぐ隣に人の気配。

 

「…………?」

「むははははっ! そこな仲麗しい夫婦よ、二人でイチャコラするには、まだまだ陽が高いと我は思うのだワン」

 

 立派なケモミミ。

(なぜか)メイド服。

(なぜか)語尾がワンで、好物はニンジン。

 俺がこれまで出会ったサーヴァントの中で最も理解し難い彼女の名は確か——

 

「タマモキャット……だったか」

「キャットでいいぞ!」

「語尾は?」

「ワンなのだな……ワン」

 

 うーん、この圧倒的混沌っぷりについていける自信がない。

 なんなんだ、コイツ。

 

「チェンジで」

「却下だなっ!」

 

 うん、知ってた。

 まあ、別にいいか。今まで関わってきた多くの変人たちの誰とも違う新種だと思って接しよう。

 

 ……というか、君はいつまでそうしてるつもりなのかしら?

 

「夫婦、夫婦…………ふふっ」

 

『はいはい、真面目な話してるところなんだから、ちゃんと参加しなさい色ボケども』

 

 ニマニマと緩みっぱなしの頬を押さえていた我らが女神様は、その内、癌の特効薬になると思います。

 

 

◇◆◇

 

 

 どうやら、エリザ、キャットの両名はステンノが現界する際に引っ張り出してきた言わば護衛のようなものだったらしく、戦力の借り受けは断られてしまった。

 キャットの戦力は未知数なのでなんとも言えないのだが、オルレアンの際の活躍を考えると、出来ることならエリザを一匹ほど確保しておきたかったというのが本音だ。

 

 洞窟攻略にかけた時間もあり、疲労もそこそこ溜まっているだろうと結論づけて、今日の野宿はこの島で行うことにする。

 ステンノ曰く、島から北西へと向かえばローマへと辿り着けるとのことだったので、明日の早朝に出発することにした。

 

「……さて、んじゃ食事だけど——」

「あはははは! 我に任せよ。何と言っても我の趣味は喫茶店経営なのだからな、ワン!」

「キャラがブレ過ぎて残像が見えるぞ」

「キャラがブレないところをブラさないのが、キャットクオリティーなのだぞ」

「傍迷惑極まりませんね……」

 

 アサシンのため息もなんのその。

 

 キャットの本気、見せるとき! などと叫び、むふふと笑いながら俺の腕を掴んできたタマモキャットは、ピッカーンッと自身の口で叫びながらその姿をメイド服から裸エプロンへと変化させ——

 

「テイッ」

「目が痛いっ!?」

『……良くやったわ、アサシン』

 

 おかしくない?

 お前らが仲良くてお兄さんは嬉しいです。

 

 アサシンに潰された目を擦っていると、隣から邪んぬちゃんからのドン引いた視線を感じ取る。

 

「アンタ、何で今の流れでニヤついてるのよ」

「それは確かにドン引きしていいな」

 

 俺でも心配になるもん。

 目潰しされてニヤついてるとかドMの領域を超えて、人外に足を踏み入れているとしか思えん。

 

「む? どうした、ご主人? 目が真っ赤だぞ……そんな血走った目で我の全身を眺めたいとは、いやはやご主人も中々」

「喧しいわ」

 

 ……腕掴まれたときに思ったんだけど、コイツ、肉球つきの掌で料理するのだろうか?

 

 

 相も変わらず、カルデアとの連絡は取れないので、俺たちの手元には持ち込みの携帯食以外に食料がなかった。

 そう話した数秒後に、キャットが洞窟から馬鹿みたいにデカい肉を運び出してきたので、食糧難に陥ることは無さそうだった。

 

「……多分恐らく絶対に、アレ、キマイラの肉ですけどね」

「『毒抜きも完璧だワン』って言ってたからな。蛇引きちぎってたし」

「マスターちゃんの為にもアンタは普通の食事を取った方がいいんじゃない?」

「…………やっぱ、そう思うよねぇ」

 

 鼻歌混じりに調理を始めていらっしゃるキャットを横目に、アサシンと邪んぬちゃんがそんなことを言ってくる。

 仮に毒抜きが完璧だったとしても、食いたいかどうかは怪しいラインの肉なのだが、どうするべきか。

 というか、だ。

 

「その論で行くと、擬似サーヴァントのアサシンと霊基が異常塗れの邪んぬちゃんも食わない方がいいと思うぞ」

「あのアイドル蜥蜴娘と澄ました顔した女神に押しつけましょうか」

「無差別に喧嘩売るのやめて?」

 

 ああだ、こうだと騒いでいる内に、キャットの鼻歌が止まる。

 タイムアップの文字が全員の頭の中に浮かび、調理現場へと視線が集中する。

 

 そして。

 

「これが、キャット特製スペシャル人参オムライスなのだな! あはははっ! 人参たっぷりで美味だぞ、ご主人!」

 

「「「『肉何処行ったぁぁぁぁ!?』」」

 

 

 因みに、オムライスは滅茶苦茶美味かった。

 納得がいかねぇ。

 

 

 

◇◆◇

 

 

「あら、もう旅立つのね、人間の勇者様」

「ステンノ……見送りか? 中々な気遣い上手だが、俺はただの散歩中だぞ」

「ふふっ、その不遜な物言いは好きよ。可愛がってあげたくなるから」

「超怖えぇ」

 

 早朝。

 自然と目が覚めた俺が浜辺を散歩していると、気配もなく彼女は俺の背後に現れた。

 少なくともアサシンよりアサシンしてるアサシンだなぁ、とそんな感想を抱きながら、雑談を交わす。

 思考の起き具合が察せられる感想だな。

 

 オルガとアサシン、邪ンヌに見張りとして名乗り出てくれたキャットの全員が睡眠を取っていることは確認できており(おい最後)、この浜辺には俺とステンノの二人しかいない。

 

 ああ、ならば、()()()()

 

「…………カルデアとの連絡はまだ取れない」

「あら、そう。大変ね」

「ピクリともしねえのな、その表情筋」

「ふふっ、驚いてはいるのよ? それこそ、本当に興味が出てきそうで心配になるぐらいには」

 

 先日の夜、オルガに頼んで、この島のことを調べてもらった。

 

「…………大層な結界だな。アサシンすら、張られていることに気づけなかったぐらいだ。何があったら、こんなもんを準備する必要がある?」

「……………………」

「直球で聞いた方がいいか? お前はこの特異点の何をそんなに恐れている?」

 

 その言葉に、ステンノは一瞬間だけ目を丸くしたように見えた。

 

「…………恐れている、と。そう見えるのね」

「……違うのか?」

「……いえ、そうね。恐れている……遠いようで、強ち間違いでもないのかしら」

 

 海の奥。

 空が触れる境界のその奥を見るように視線を投げたステンノは、やがて、どこか心ここに在らずといった様子のまま、ポツリと口にした。

 

「受け入れがたい……許容できないモノ……ああ、そうだわ。あってはならないことが、起きている」

「それは————」

 

 言葉の次を追おうとして、フルフルと首を横に振った彼女の姿を視界に捉えて、口を閉じる。

 初めて見る表情だと、そう思った。

 真剣そうに、物事に真っ直ぐ向き合おうとしている彼女の姿は恐らくとんでもなく貴重なモノのような気がして、少し得した気分になる。

 

 のちに、彼女が零した一言の意味を知ったとき、俺は彼女の真意を理解することになるのだが……

 

 ——真紅の夜に気をつけなさい。

 

 朝日差し込む浜辺にてそう告げた女神の姿は、一枚絵のような美しさを纏っていて、不本意にも一瞬、意識を取られて悔しくなった。

 

「やっと人間らしい所を見せてくれたわね?」

「うっさい。やめろ、ニヤニヤすんな」

 

 ステンノが、ぱぁっ! と表情を明るくしたのを見て、面倒臭いことになったとこめかみを抑える。

 

 やけに嬉しそうにこちらへ突っかかってくる女神さんとの追いかけっこは、十数分後に過去最高近くまで機嫌を悪くしたアサシンの乱入によって終わりを告げるのだった。

 

 

◇◆◇

 

 

 

 アサシンと呼ばれていた少女。

 ぷんすかと怒り心頭といった様子であったその女神が、あの手この手であの青年に懐柔されていくのをぼんやりと眺めて、ほうと息を吐く。

 ……何故か、少々のつまらなさを覚えたが、それを認めてやるのも癪である。

 現界時に引っ張り出してきたエリザベート、キャットまでからも、それなりの好感を得ているあたり、あの青年は中々な人たらし……英雄たらしの気があるのかもしれない。

 

 ……まあ、面白くないことはない人間だったと思う。

 今度、妹達に話してあげてもいいぐらいには。

 

 そんなことをぼうっと考えながら、飽くまで、傍観者としての立場を崩すことなく、私は彼らを見送るのだ。

 

 

 ……………………いえ、別に過度に心配するつもりはないのだけど。

 

 その、ワニさんボートとサメ型フロートで地中海超えをするのは、無理があるのではないかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 
 祝50話とか言えるテンションじゃねーです。
 改めて、小説って書くのムズイですねぇ。
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