カーマさんとイチャコラしながら人理修復する話     作:桜ナメコ

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繋ぎ話です。
イチャイチャは我慢。


プロローグ 〜寂寥〜

 

 アサシンと青年が別れてから、二週間程が経過していた。

 

 

「……働きたくねぇ……寂しすぎるんですけど、どうしてくれますかね。あの女神様?」

 

 

 死んでも会えないんだろうなぁ……元は男神のはずだし、なんて独り言を零しながら自宅へと向かう。

 

 そろそろ立ち直らなければいけない。

 それは、分かってはいるのだが……気合いだけでどうにかなる程、人間は単純にできてない。

 時には、気合いだけでどうにかする必要もあるわけだが……

 

 

 

 青年がアサシンを見送ったことによる弊害は、至る所に出ていた。

 

 まず一つ、独り言を呟く癖がついた。

 

 霊体化した彼女と時折、散歩を行っていたからだろう。

 ブツブツ呟きながら30分ほど、散歩する。

 その後、帰宅してから、先ほど口に出来なかった反論や文句、時偶に共感をアサシンが膨れっ面で言ってくる……そんな時間は、心底楽しかった。

 ま、こちらは重要な問題ではない。

 元々、女神様から変わっているとのお墨付きをもらった青年が、変人として認識されるだけである。

 

 

 

 大事なことは、もう一つの方。

 

「味が……しないんだよなぁ」

 

 最近では、視覚にも支障が出てきている気がする。色彩感覚がなくなってきているのだ。

 ふとした瞬間に、世界が灰色に染まって見える。二度、三度と瞬きを繰り返すと、普段通りの光景が戻ってくるのだが……その頻度は日に日に増えてきていると感じる。

 

 青年が原因がわかり切っている悩みについて、考えを巡らせながら歩き続けていると、自宅が見えてくる。

 

 そして、知るのだ。

 

「郵便物に魔術の匂いって……『人理継続保障機関 カルデア』?厄介ごとなら、お断りしたい所なんだが……今の俺、精神状態不安定すぎる」

 

 カルデアが招集した総数48人のマスター適性を持った人物達。

 魔術の名門から30人分。

 そして、数合わせに存在する一般人枠が10人分。

 その10人分の一般枠に、青年が選ばれたということを……

 

 

「マジで?……特に重い期待もかけられずに、住み込みで働けるの?何その良環境、就活面倒だし……ッ」

 

 不純な動機を口にしても、そこにツッコミを入れてくれる彼女の姿はない。

 

「……気張れよ、俺。寂しさで死ぬとか、ウサギかっての」

 

 頬をパンっと両手で叩き、青年は遠出の準備を始めた。

 

 

◇◆◇

 

 

『ー塩基配列 ヒトゲノムと確認

 

 ー霊基属性 善性・混沌と確認

 

 ようこそ、人類の未来を語る資料館へ。

 ここは人理継続保障機関 カルデア。

 

 指紋認証 声紋認証 遺伝子認証 クリア。

 

 魔術回路の測定……完了しました。

 

 登録名と一致します。

 貴方を霊長類の一員であることを認めます。

 

 はじめまして。

 貴方は本日 最後から一つ手前の来館者です。

 

 どうぞ、善き時間をお過ごしください。

 

 ……申し訳ございません。

 入館手続き完了まであと180秒必要です。

 

 その間、模擬戦闘をお楽しみください。』

 

 

 

 

 ………………まぁ、所々気になることがあった気もするが、気にせずいくか。

 

 

 目隠しされた状態で遠くまで運ばれて、久しぶりに言葉を聞いたと思ったら、模擬戦闘を行うように命じられていた。

 

 目を開かせないように、青年へとかけられていた魔術が消え去る。

 

 目を開けた少年の前には……目元が暗くなっていて表情は判断できないが、たしかに一人のサーヴァントが立っていた。

 サーヴァントの前にはゴーレムが三体。

 青年が動かなければ、状況は変化せずに時間だけが過ぎていく。

 

 ……模擬戦闘、その意味がよくわかった。

 

 そして、嫌な予感がした。

 こんなバカみたいな技術を持った施設なんかにきて、一体何をさせられるのだろうか?

 

 そんなことを考えたからである。

 

 ……少し短絡的だったかな、と今更ながらに選択を後悔しそうになったが、仕方がないと割り切ることにした。

 

 何も指示を出さない青年に、青の衣に身を包むセイバーらしきサーヴァントAIとゴーレムは、気持ち困ったような表情を浮かべた気がしたが、ごめんなさいと手を合わせるだけにしておく。

 

 ……なんだか、後ろから刺されそうな気がしたからだった。

 

 

 青年がここへやってきたのは、職を持っていなかったから。

 それが、表向きの理由。

 

 

 本当の目的は

 

 心にできた穴を無理矢理、埋めるため。

 

 戦い続けることで、痛みを忘れようとしているだけであった。

 

◇◆◇

 

 

 カツリ、カツリと人気のない廊下を歩いていく。

 

 どっかに向かってくれ、との指示を受けたのだが……全く話を聞いていなかったので困った。

 誰か道案内をしてくれる人を探しながら、適当にほっつき歩いている、というわけだ。 

 

 

「……ん、こっちじゃないのか?」

 

 

 どうもおかしい、そう考えて来た道を引き返す。

 すると、そこには……

 

「朝でも夜でもありませんから、起きてください、先輩」

 

「……えぇ」

 

 この数分で何が?

 

 アサシンが見たら、蟀谷に手をあてるであろう想定外の光景が待っていた。

 

 廊下で眠っていた明るい茶髪の女性を、メガネっ子が声をかけ、そしてリスのような謎の白い動物がテシテシと前足で頰をつつくようにして、起こしている。

 

 因みに全員結構可愛い……悪寒がすごいな、風邪でもひいたか?

 

「……あなた、は?」

 

 ポツリと目を擦りながら茶髪の女性が、疑問を口にする。

 メガネっ子は、少し困ったような表情をしてから落ち着いて返答する。

 

「いきなりの難しい質問ですが……名乗るほどのものではないーーとか?」

 

「そんなセリフを直に聞くことが出来るとは、思ってなかったよ」

 

「「え?」」

「フォウ?」

 

 思わずツッコミを入れてしまった。

 そして、例の如くこちらの姿を見て、彼女らは一歩退く。

 

 ……ははは、泣きそう。おいこら、リスまで逃げてるんじゃない。

 

「怪しいものじゃない……といっても信じないだろうけど」

「いや、その……あははは」

「安心してください、先輩。カルデアのセキュリティは万全です」

 

 青年の心が地味に傷ついたことを察したのかもしれない、茶髪の女性は苦笑いを浮かべる。

 メガネっ子は少しズレているような気もするが、両手で小さく拳を作り、意気込んでいる姿は可愛いから、気にしない。

 

 ……大丈夫、だよな?

 

 青年は辺りを見回した後、ホッと息を吐く。青い炎とか、飛んでくる矢とかの姿は見られなかったからだ。 

 

 

 メガネっ子がフォウさん、と名付けたらしいその動物の紹介を終えたところで、カツリカツリとこちらに近づく足音がした。

 それと同時に、フォウさんは何処かへ逃げていってしまう。

 

 

「やぁ、マシュ。ダメだぞ、断りもなく移動してはーーーほう」

 

 その、気配が自然過ぎたため、思わず、余りの気持ちの悪さに、その人物の首元へ左手を向けてしまった。

 

「……ッ!」

 

「おっと、これは失礼。どうか手を下げてもらいたい」

 

 飄々とした態度で、両手を上げたままそう言ってくる緑色のコートと帽子を身につけた男の笑みは崩れない。

 

「……どちら様で?」

 

「私はレフ・ライノール。ここで技師を務めている者だ。君たちは……そうか、一般人枠の適性者たち……ん?君は、魔術の心得があるのでは?」

 

 その紳士らしさも、貼り付けられた笑顔も、何もかもに気持ちの悪さを感じる相手だが、同じ職場のスタッフだというのなら、上手くやることも大事だろう。

 

「魔術?……魔法みたいなものですか?」

 

「いや……よくわかった。今の質問は取り消しにしておくよ」

 

 誤魔化せた。

 魔術と魔法には明確な違いがある。

 それは常識だ。魔術師だと疑われた際によく使う回答だが……かなり便利である。

 ……魔術に深く関わっている者ほど、この回答に腹を立てやすいからだ。

 

「そちらの君は?訓練期間はどのぐらい?」

「え、えっと……訓練なんて、したことはない、です」

 

 矛先が変わったようで、何より……なんて考えていたらトンデモ発言が耳に届いた。

 

「ということは、二人ともが全くの素人……ああ、君たちは数合わせの子たちか。すまない、配慮が欠けていたね。でも、安心してくれ、今回のミッションには全員の協力が不可欠なんだ」

 

 本当は胸ぐらを掴んで、名門だけで事足りる、って正直に言えよ……と文句をつけたいところなのだが、それをすれば俺が魔術師であることもバレてしまう。

 

 わざわざ、多くの魔力を感じ取られないよう細工をしているのに、それはもったいない。

 

 しばらく考え込んでいたら、目的地が決まったようだ。

 青年も彼女らの後へついていく。

 

 

 取り敢えず、道案内は見つかったからいいとする。

 

 

 呑気な考えを浮かべていた青年は、最後までその存在に気付くことができなかった。

 

 レフ・ライノールという悪意の塊の存在に。

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