ガルパンRTA 大洗の鬼神ルート   作:なつのヒーロー

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 今回は人によっては苦手だったり不快になるかもしれません。


抽選会

 紅葉とはどうやって知り合ったかって?

 知ってるかもしれないけど私と彼女は幼馴染みなのよ。小学校の低学年の頃からずっと同級生。特に特別なきっかけとかそういうのはなかったわ。

 お互いになんとなく仲良くなったから、なんとなく一緒にいただけ。……特に面白みがないって?そういうものでしょ、幼馴染みに夢見すぎよ。

 それで、私が黒森峰に入学するまではほとんど毎日あの子と過ごしてたわ。

 何やるにしてもいつも2人一緒。よく探検とかいって2人であちこち出かけたものだわ。そうそう一度森の奥まで行って迷子になったこともあったわね。

 紅葉が半泣きになりながらも私がリードして、何とか帰ってこれたけどお互い親に怒られたわ。いつもそうなの、私が紅葉の面倒を見てる。

 …え?『エリカが半泣きになって大変だった』とか言ってたわけ?何嘘ついてるのよあいつ。

 ……とにかく、私と彼女はいつも2人一緒だった、たった1つの例外以外は。

 それが、戦車道。どういうわけか知らないけど頑なに戦車道をやるのを拒んでたわ。戦車道どころか戦車を見るのも嫌がってて、戦車の話題が出ると無言でどこかに立ち去って、もう面倒くさかったわよ、少し。

 私は彼女に戦車道をやらせたかったわ。彼女は1つのことに集中すれば誰よりも上にいくことができる。……結果はあなたもよく知ってるでしょ。

 いくら誘ってもやらないの一点張りだったからそのうち私も誘うのはやめたわ。無理強いはしたくなかったし、嫌々やられてもこっちが迷惑だわ。

 だから、抽選会であいつの口から戦車道を始めたと聞いた時は自分の耳を疑ったわよ。

 

 

 

 ※

 

 

 

 はい、よーいスタート。

 

 つづきからやりましょう。抽選会です。もしほもちゃんが隊長だったらこのイベントも意味があったんですが、隊長は西住殿なので特にやることがないです。

 静かに結果を見てましょう。

 

 >紅葉達、大洗女子学園の生徒は全員揃って全国大会の抽選会にやってきた。

 こういうのは野球しか知らないが、全国大会って予選とかあるものじゃないのかな?前に聖グロと練習試合しかやってないし、急な全国出場に紅葉は少し戸惑う。

 敷居が高そうだしやってる学校が少ないのかな。抽選会はたくさん人が来てるけど、学校単位で見れば少ないのかも知れない。よく知らないけど。

 みほさんが代表となって抽選している。紅葉はトーナメント表を見ていた。中々ユニークな名前の学校が多い。

 聖グロはBC自由学園というところと当たってる。聞いたことがある。何か生徒同士の仲が凄い悪いんだった気がする。

 

 『大洗女子学園、8番』

 

 >みほさんが腕を掲げた。その手には8番と書かれたカードがある。8番、8番……サンダース大学付属高校だ。ここは聞いたことがない。大学付属ってことだしきっと頭の良い人が行くところなんだろう。私には無縁だ。

 私達と当たって喜んでいる生徒達がいる。きっと彼女達がサンダースの子なんだろう。まぁ、無名の高校だしそういう反応も仕方がないんだろうけど、少し失礼なんじゃないだろうか。

 

 「サンダース高…」

 「それって強いの?」

 「優勝候補の1つです」

 「そうなんだ」

 

 >なんと優勝候補らしい。初戦から大変そうだ。何がどう強いのか紅葉は知らないが、紅葉は負けられない。いくら優勝候補とはいえきっと勝てる方法はあるはず。多分きっと。

 今から気持ちで負けちゃ駄目だ。紅葉は気を引き締めた。

 

 

 抽選会が終わったら、カバさんチームの人達と過ごしましょう。あんこうチームに誘われる前に。

 誘われたら黒森峰とのイベントに巻き込まれます。長いし別に成長とか因縁とかほもちゃんには無いので無視無視。

 

 >みほさんに戦車喫茶に誘われた。残念だけど、先に先約があったため断った。なんだかいつも断ってる気がする。

 

 …てか、西住殿エンカウントしすぎだろ。ここ武部殿がいつもは誘ってきてくれたんですけど。まぁ、関係ないですけどね。

 

 >紅葉はカエサルさん達と自由行動を過ごした。なんてことのない時間だけどこういう時間はとても大切だと思う。

 

 「……ん?」

 「どうかしたでござるか、本城?」

 「……ごめん、ちょっと用ができた」

 「え?あ、おい本城!?」

 

 何勝手に行動してるのこいつ。

 

 >紅葉は皆を置いて駆け出した。近くに幼馴染みの姿が見えたからだ。彼女と会うのは実に久しぶりだ。お互いに成長して容姿も少し変わってるが、彼女の姿を間違えるなんて絶対に私にはない。

 やはり彼女だ。私は彼女の名前を口に出す。

 

 「エリカ!」

 

 >淡い色の髪、目付きの悪い顔、少し不機嫌そうな顔、間違いない。私の大切な幼馴染み、逸見エリカだ。

 

 

 ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!!(地団太を踏む)

 

 

 

 ※

 

 

 

 「…紅葉?あなた何でここにいるのよ」

 「久しぶりに再会した幼馴染みに開口一番で言うのがそれ?」

 

 私はやや呆れ気味になる。少しは嬉しそうな顔をしても良いだろうに。

 

 「悪かったわよ。少し不機嫌だったから」

 「へぇ…」

 

 いつもでしょ、と言おうかと思ったが流石に怒られると思ってやめた。

 

 「抽選会がそこであったでしょ?」

 「えぇ、そうね」

 「私の学校が全国出場するから見に来た。私も出るし」

 

 その言葉を口にすると、エリカの目の色が変わったことに気づいた。一体どうしたのだろうか。

 

 「……ごめんなさい。耳の調子が悪いわ。もう一度言って」

 「だから私が出場するから抽選会に来たんだ」

 「……出場?ちょっと待って、あなた戦車道を始めたの?」

 「うん。私の学校にみほさんって子がいるんだけど、その子に触発されて。エリカ、お前も会ってみなよきっと仲良」

 「その子の名前ってもしかして、西住…みほ?」

 「知ってるんだ」

 「…えぇ、知ってるわよ」

 

 紅葉はエリカがみほさんと知り合いということに驚いた。世界は思ったより狭いなぁ。

 

 

  

 

 ※

 

 

 のんきな顔をしてたわよ、あいつ。私の気持ちもわからないで。

 少なくとも私は彼女と誰よりも仲が良かったって認識でいたわ。多分、向こうもそう思ってたはず。

 なのに、私が何度誘っても頑なに拒否されてきて、諦めていた彼女との戦車道、転校してから間もない仲のはずのみほはなんなくそれを成し遂げた。

 黒森峰から逃げた彼女が、逃げた先で私の夢を奪い取った。

 私がどれだけ悔しかったのかどれだけ屈辱だったか、紅葉は今でも知らないでしょうね。

 口に出さずに心の中に留めることができた私を誉めてあげたいわ。

 …ただ、そのおかげで気づけたのよ。紅葉の後ろに、みほが居たことに。

 彼女、こっちを見て驚いてたわよ。何に驚いたのかは知らないけど、紅葉と私が幼馴染みだってことに驚いてたんじゃないかしら。あの子、そういうことは言わないから。

 彼女を見てわかったわ。あの子もきっとそうなんだって。そのときはまだ自覚してなかったらしいけど。

 私の夢を奪われたんだから、少しやり返してやったわ。…別に暴言とかじゃないわよ。

 

 

 

 ※

 

 

 

 「あの、エリカ?どうかした?」

 「別になんでもないわよ。ところで紅葉、本当に久しぶりね」

 「そうだね。たしか、高校入ってからはお互い電話だけじゃなかったか?」

 「会えて良かったわ」

 「急に素直になるなよ……ってうわっ!?」

 

 エリカが私を抱き締めてきた。

 

 「どうしたのエリカ」

 「別になんとなくよ。よくやってたじゃない」

 「寒いときにね。今は暑いよ」

 「別にいいじゃない」

 

 エリカがこういった行動を自発的に行うのはとても珍しい。何か企んでいるのだろう……ご飯を奢らされるのだろうか。

 まぁ、悪い気はしない。海外ではあいさつ代わりにハグするらしいし、黒森峰ってドイツの影響があるらしいしエリカもその影響を受けてるのかもしれない。

 私は抱き返した。やっぱり暑かった。

 

 「サンダースと当たるらしいじゃない」

 「うん。でも勝ちにいくよ。そのために頑張ってるんだからね」

 「へぇ…まぁ、頑張りなさい。期待はしないけど」

 「厳しいなぁ」

 「客観的事実よ。それと無様な負け方は承知しないわよ。この大会は戦車道のイメージダウンをするような学校は参加しないのが暗黙のルールなのよ。無名校のあなた達は本来参加することもおこがましいの」

 「へぇ、そう」

 

 まぁ、無名校なのは事実だし。負ける前提で言われるのは仕方がないことかもしれない。

 紅葉は少し雑談した後、エリカと別れた。戻るともうすっかり夕方だ。本当に時間が過ぎるのはあっという間だ。

 学園艦の見晴らしが良いところにみほさんが居た。夕日に沈む海を眺めている。そのせいで顔を確認することができなかった。

 

 「紅葉さん」

 

 声をかけようとしたら彼女の方が先に声をかけた。何だろういつもと少し雰囲気が違う。

 みほさんはゆっくりとこちらを向いた。

 

 「試合、勝とうね」

 

 

 

 

 ※

 

 

 紅葉さんが走っていく姿を見かけるのは偶然だった。彼女があんなに焦っている姿を見るのは珍しくて、私はつい追いかけてしまった。

 そこで私は知った。彼女が語っていた幼馴染みがあのエリカさんだっていうことを。

 エリカさん……黒森峰のときの友達だった人。彼女とは色々あったが、友好関係を築けていた。そして私はそれを壊してしまった。

 胸の中に感情が入り交じる。罪悪感と恐怖心、そして何か。

 エリカさんが私を見た。彼女は私にだけ見えるように笑顔を向けて、紅葉さんに抱きついた。

 

 「え?」

 

 思わず口から声が出る。なぜ彼女は急に抱きつくなどという行動に出たのかわからない。

 私は胸が痛くなる。黒森峰のときの件とはまた違った心の痛み。

 痛い痛いよ。

 私はそこから逃げ出すようにその場から離れた。

 わからない。この胸の痛みは何なのか。紅葉さんと出会ってから私はどこか変だ。

 沙織さんから酷い顔をしてるって言われた。鏡を見る。そこには顔面蒼白となった私の姿が写っていた。

 わからない、わからないよ。

 夕日に沈む海を眺めていた。後ろから気配がする。紅葉さんだろう。

 

 「紅葉さん」

 

 私は自分でも何でこんな言葉が出たのかがわからなかったが、驚くほどスラスラとその言葉を口に出す。

 

 「試合、勝とうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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